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令和8年度改定|訪問看護の適正化と記録書記載の明確化を解説
2026-04-27 05:58

令和8年度改定|訪問看護の適正化と記録書記載の明確化を解説

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訪問看護は、在宅医療の中核を担うサービスとして利用者数が増加している。一方で、利用者の状態に応じない画一的な訪問や、短時間訪問の濫用、記録書の記載内容のばらつきが課題となってきた。本稿では、令和8年度診療報酬改定における「適正な訪問看護の推進」の改定内容を、訪問看護ステーションの実務担当者向けに解説する。

本改定は、訪問看護の実施基準の明確化と記録書記載要件の厳格化を進める。第一に、標準時間(30分から1時間30分程度)を下回る訪問が頻繁に行われている場合は、指定訪問看護を実施したと認めない旨を明文化する。第二に、看護目標及び訪問看護計画に沿った実施を明記し、漫然かつ画一的な訪問を禁じる。第三に、利用者の状態を踏まえない一律の日数、回数、実施時間及び人数の決定を認めないことを明確化する。第四に、目標達成の評価と訪問看護記録書への記録、及び実際の訪問開始時刻と終了時刻の記載を求める。

改定の背景と基本的な考え方

本改定は、利用者の状態を適切に把握し、適正な訪問看護を提供するため、記録書の記載内容を明確化することを目的としている。背景には、訪問看護の利用拡大に伴う実施内容のばらつきと、画一的な訪問や短時間訪問の濫用への懸念がある。改定の方向性は、既存の人員・運営基準に立ち返り、その遵守を通知レベルで明文化する点にある。

訪問看護の利用拡大は、改定の出発点である。在宅医療の推進により、訪問看護ステーションの利用者は年々増加してきた。この拡大の中で、利用者の心身の状況に十分配慮しない訪問や、評価を伴わない訪問が一部で見られるようになった。こうした状況が、本改定の必要性を後押ししている。

画一的な訪問と短時間訪問の濫用は、本改定が踏み込む論点である。一律の日数や回数による訪問は、利用者ごとの状態に即した看護とは言えない。また、標準時間を下回る訪問の頻繁な実施は、診療報酬の趣旨に反する運用である。本改定は、通知において具体的な禁止事項を示すことで、こうした懸念に対応する。

標準時間を下回る訪問の規制

本改定により、標準時間を下回る訪問の頻繁な実施に対する規制が通知に明文化される。訪問看護基本療養費(Ⅰ)及び(Ⅱ)の標準時間は、1回の訪問につき30分から1時間30分程度である。標準時間を下回る訪問が頻繁に行われている場合は、指定訪問看護を実施したとは認められない。本規制は、短時間訪問の濫用を防ぐ趣旨である。

標準時間の位置づけは、改定の前提である。訪問看護基本療養費(Ⅰ)及び(Ⅱ)では、1回の訪問につき30分から1時間30分程度が標準時間とされている。この標準時間自体は、現行通知から変更されていない。改定で追加されるのは、標準時間を下回る訪問への取扱いに関する留意事項である。

頻繁な短時間訪問の規制は、新設される運用ルールである。具体的には、同一日に同一の利用者に複数回、又は複数の利用者に対し、標準時間を下回る訪問が頻繁に行われている場合が対象となる。これらのケースでは、指定訪問看護を実施したとは認められない。ただし、標準時間の訪問計画を作成し、訪問時の利用者側のやむを得ない事情により標準時間を下回った場合は、規制の対象から除外される。

訪問看護実施における基本原則の明確化

本改定により、訪問看護の実施に関する2つの基本原則が通知に明記される。1つ目は、看護目標及び訪問看護計画に沿った実施の徹底である。2つ目は、利用者の状態を踏まえない一律の決定の禁止である。両原則ともに、既存の運営基準を実務レベルで具体化したものである。

看護目標及び訪問看護計画に沿った実施は、第1の原則である。実施にあたっては、利用者の心身の状況等に応じて妥当適切に行うことが求められる。妥当適切な実施とは、漫然かつ画一的なものにならない訪問を意味する。この原則の根拠は、指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準(平成12年厚生省令第80号)第14条第1項にある。

利用者の状態を踏まえない一律の決定の禁止は、第2の原則である。一律の決定とは、利用者の心身の状況等を考慮せずに、訪問看護の日数、回数、実施時間及び人数(指定訪問看護の日数等)を定めることを指す。さらに、定期的な指定訪問看護を実施していない者が指定訪問看護の日数等を定めることも認められない。この禁止事項により、計画と実施の連動性が担保される。

記録・評価に関する具体的要件

本改定により、訪問看護の記録と評価に関する2つの要件が新設・明確化される。1つ目は、目標達成の評価と訪問看護記録書への記録である。2つ目は、実際の訪問開始時刻と終了時刻の記載である。両要件ともに、提供されたサービスの妥当性を客観的に検証する仕組みを目指す。

目標達成の評価と記録は、新設される要件である。指定訪問看護の提供にあたっては、目標達成の程度及びその効果等について評価を行わなければならない。評価に関する内容は、訪問看護記録書に記録することが求められる。評価結果に応じて、訪問看護計画書の見直しと改善も努力義務として位置づけられる。

実際の訪問開始時刻と終了時刻の記載は、明確化される要件である。従来の通知では「開始時刻及び終了時刻」とのみ記載されていた。改定後は「実際の指定訪問看護の開始時刻及び終了時刻」と明記される。この明確化により、計画上の予定時刻ではなく、実績時刻の記録が必須であることが示される。

訪問看護ステーションが取り組むべき実務対応

本改定への実務対応は、訪問計画・実施運用・記録の3点を整えることに集約される。第一に、標準時間に基づく訪問計画を作成し、計画に沿った実施を徹底する。第二に、利用者ごとの状態に応じて訪問条件を決定する運用ルールを徹底する。第三に、訪問看護記録書において評価内容と実際の訪問時刻を記載する。

訪問計画の整備は、第1の対応事項である。計画には、標準時間(30分から1時間30分程度)に基づく訪問時間を設定する必要がある。計画には、利用者の心身の状況に基づく看護目標も具体的に記載する。これにより、短時間訪問の濫用を防ぎ、後続の評価と計画見直しが実効性を持つ。

実施運用の整備は、第2の対応事項である。訪問の日数、回数、実施時間及び人数は、利用者の状態を踏まえて個別に決定しなければならない。定期的な指定訪問看護を実施していない者が訪問条件を定めることは認められない。この運用ルールを組織全体で共有することが、改定対応の鍵となる。

訪問看護記録書の整備は、第3の対応事項である。記録書には、毎回の訪問内容に加え、目標達成の程度や効果に関する評価を記載する。訪問時刻については、計画上の時刻ではなく、実際の開始時刻と終了時刻を記録する。これらの記載は、算定要件を満たすための必須事項である。

まとめ

令和8年度改定は、適正な訪問看護の推進に向け、実施基準の明確化と記録要件の厳格化を進める。訪問看護ステーションは、標準時間に基づく訪問計画の作成、看護目標及び訪問看護計画に沿った実施、利用者の状態に応じた個別対応、目標達成の評価と記録、実際の訪問時刻の記載という5点を確実に整える必要がある。これらの対応は、診療報酬の算定要件であると同時に、訪問看護の質を高める実務改善の機会でもある。



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サマリー

令和8年度の訪問看護診療報酬改定は、画一的で短時間な訪問看護の問題に対処するため、その適正化と質の向上を目指します。具体的には、標準時間に基づく個別訪問計画の義務化、実際の訪問開始・終了時刻の記録、そして看護目標の達成度評価と記録の厳格化が求められます。これにより、訪問看護の価値を可視化し、利用者一人ひとりに寄り添った質の高いケアの提供を推進する狙いがあります。

訪問看護の現状と令和8年度改定の目的
あの、ちょっと想像してみて欲しいんですが、あなたが宅配便を頼んで、配達員が毎日あなたの家の玄関に顔を出して、
おかわりないですか?って3分だけ聞いて、肝心の荷物は渡さずに帰っていくとしたら、どう思いますか?
いやー、それは、なんだろう、かなり困りますよね。
ですよね。でも実は、今、在宅医療のようである訪問看護の世界で、これに近い何というか、流れ作業のようなケアが一部で問題になっているんですよ。
そうなんです。訪問看護の利用者が年々急増している中で、一部の事業所が利用者の状態よりも、とにかく訪問件数をこなして利益を上げることを優先してしまっている現状がありますね。
はい。そこで今回私たちが深掘りしていくのが、令和8年度の訪問看護における診療報酬改定の資料です。
これを見ると、国がこの事態にどうメスを入れようとしているのかが見えてきます。
そうですね。ただ、資料を深く分析していくと、国は単にそのルールを厳しくして、現場を罰するわけではないということがわかるんです。
罰するわけではないと。
本来あるべき、その人に寄り添った個別ケアを取り戻すための、かなり戦略的な構造改革なんですよね。
なるほど。戦略的な構造改革ですか。ではまず一番わかりやすい、訪問時間と回数のルールのメスから見ていきましょうか。
短時間訪問の規制と個別計画の義務化
さっきの宅配便みたいな、極端に短い訪問を防ぐ対策ですよね。
はい。今回の改定では標準時間、つまり30分から1時間30分程度の訪問ですね。
これを下回るケースが頻発した場合、原則として指定訪問看護として認められなくなるという、かなり強めのラインが引かれました。
ということは、実際の体調とかを無視して、とりあえず毎日15分だけ様子を見に来る、みたいな訪問はもうNGになるってことですね。
ええ、まさにその通りです。
でもちょっと意地悪な見方をすると、病状が安定していて、本当に短時間で十分な人もいるじゃないですか。
一律に絶対に30分以上いなさいってするのも、かえって利用者の負担になる気もするんですが。
ああ、そこはすごくいい視点ですね。実はそこがこの制度の肝心でして。
はい。
もちろん、利用者側の体調や都合など、やむを得ない事情がある場合は例外になります。
国が本当に問題視しているのは、病状に関係なく事業所の都合で一律に短い時間を設定することなんですよ。
ああ、なるほど。事業所側の都合ってことですね。
そうなんです。だからこそ今回は、一人一人の状態から逆算した個別の訪問計画を立てることが絶対条件として明記されました。
学位置的なスケジュールありきじゃなくて、患者さんの状態ありきで動きなさいというメッセージですね。
状態に合わせた個別計画の義務化。それは自想的です。
記録要件の厳格化と目標達成評価の導入
でも、あなたがもし現場の責任者だとしたら、こう思いませんか?
ルールが厳しくなったなら、書類上だけ、今日は30分訪問しましたって書いておけばいいんじゃないかって。
まあ、確かにそう考える人もいそうですよね。
正直、予定通りに書くだけの自己申告なら、いくらでもごまかせるシステムじゃないですか。
ええ、以前の仕組みならその抜け道が通用したかもしれません。
ですが、今回は国もその部分を徹底的に塞いできました。
だからこそ記録の要件が驚くほど厳格化されたんですよ。
厳格化ですか?
はい。単に予定を定形文で書くのではなくて、1分単位で実際の訪問開始時刻と終了時刻の記録が義務化されました。
実際の時間。確かにそれなら、安易なごまかしは効かなくなりますね。
でも、ただ滞在時間をストップウォッチで測ればいいってわけでもないですよね。
もちろんです。時間という量だけではなくて、中身の証明も求められるのが今回の大きな変化でして。
中身の証明。
ええ。単に今日は血圧を測って会話しましたという業務日誌では不十分で、
あらかじめ設定した看護目標に対して今回はどれくらい達成できたのかを毎回評価し、
その結果をもとに次の計画をどう見直すかまでがセットになったんです。
つまり、時間の実績と目標達成度という両方を客観的なデータとして残さなければいけなくなったと。
そうですね。
訪問看護の質向上と現場の課題
これは現場の看護師に対すると、今までの感覚的なケアを第三者が見ても明確に分かる論理的なプロセスに翻訳する作業が求められるってことですよね。
まさにその翻訳作業が提供しているサービスの妥当性を証明する鍵になります。
書類仕事が増えるというネガティブな側面ばかり注目されがちなんですが。
見方を変えれば、看護師が日々行っている見えにくいケアの価値をしっかりと可視化し、質を担保するシステムがようやく整ったとも言えるんです。
なるほど。
今日の深掘りから見えてきたのは、令和8年度の改定が単なる報酬の条件変更ではなくて、
標準時間に沿った計画、個別対応、そして実績と評価の徹底的な記録を通じて、
訪問看護の質そのものを底上げしようとする国の強い意思でした。
真摯に質の高いケアを提供している事業所にとっては、自分たちの正当性を客観的にアピールできる絶好の機会になるはずです。
そうですよね。
ただ、これを聞いているあなたに最後に一つ考えてみてほしいんです。
ルールの厳格化によって質の高い個別ケアが可視化されるのは素晴らしいことです。
はい、間違いないですね。
でもその一方で、分単位の実績記録や詳細な目標評価が求められる現場の看護師たちは、
限られたリソースの中で膨大な記録業務と目の前の患者さんへのケアのバランスを今後どうやって取っていくべきなのでしょうか。
うーん、難しい問題ですね。
あの流れ作業には絶対に戻りたくない。でもタブレットの記録画面ばかり見て患者さんの顔を見れなくなってしまっては本末転倒です。
このジレンマ、あなたならどう解決しますか。ぜひ考えてみてください。
はい。
05:58

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