令和8年度診療報酬改定では、適切な訪問看護提供体制の構築と指定訪問看護事業者の適正な手続きの確保を推進するため、運営基準の見直しが行われます。今回の見直しでは、指定訪問看護に係る安全管理に関する内容や適正な請求等について、運営基準に新たな規定を設けます。本改正は、指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準(平成12年厚生省令第80号)の改正として実施されます。
今回の見直しは、運営基準への4つの新規定追加と2つの既存規定の改正で構成されます。新規定では、適正な手続きの確保、健康保険事業の健全な運営確保、経済上の利益による誘引禁止、特定の主治医・事業者等への誘導禁止を、第五条の二から第五条の五として義務付けます。既存規定では、第二十八条を改正し、安全管理体制の確保を新たに義務化します。さらに、第三十条を改正し、訪問看護記録書など6種類の記録整備を明示的に義務付けます。
適正な手続きと健全な運営の確保
第五条の二と第五条の三では、指定訪問看護事業者に対して、適正な手続きの実施と健康保険事業の健全な運営確保を義務付けます。これらの規定は、指定申請や訪問看護療養費の請求に関する基本的なルールを明確化するものです。
第五条の二では、申請・届出等の手続きと費用請求手続きの適正化を求めます。具体的には、厚生労働大臣または地方厚生局長等への申請・届出に係る手続きを適正に行わなければなりません。さらに、訪問看護療養費に関する費用の請求も適正に行うことが求められます。この規定により、行政手続きと診療報酬請求の双方で適正性が担保されます。
第五条の三では、健康保険事業の健全な運営を損なわないよう努めることを求めます。この努力義務は、指定訪問看護の提供全般に及びます。健全な運営の確保は、後述する誘引禁止規定の基礎となる原則でもあります。
経済上の利益による誘引と特定事業者等への誘導の禁止
第五条の四と第五条の五では、訪問看護事業者による不適切な誘引行為と誘導行為を明確に禁止します。これらの規定は、利用者の自由な選択と公正な事業運営を守るために設けられました。
第五条の四では、経済上の利益の提供による誘引を2つの観点から禁止します。1つ目は、利用者本人への誘引であり、収益業務に係る物品の対価の値引きなどが該当します。2つ目は、紹介者への対価提供による誘引であり、他の事業者やその従業員への金品提供などが該当します。いずれも、健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益が対象です。
第五条の五では、特定の主治医や特定の事業者等への誘導の対償として金品その他の財産上の利益を収受することを禁止します。対象となる事業者等は、指定居宅サービス事業者(特定施設入居者生活介護に限る)から指定介護予防支援事業者まで第一号から第七号として列挙された7類型です。さらに第八号では、これらの事業者等と併せて利用する事業者であって、当該事業者等と特別の関係にある事業者も対象に含まれます。これらの事業者等から、誘導の対償として財産上の利益を収受してはなりません。
安全管理体制の確保と記録整備の義務化
第二十八条と第三十条の改正では、安全管理体制の確保と記録整備の義務化を行います。これらの改正は、訪問看護の質と透明性を高めるための重要な見直しです。
第二十八条では、事故発生時の対応に加えて、新たに第3項として安全管理体制の確保を義務付けます。具体的には、指定訪問看護事業者は、指定訪問看護に係る安全管理のための体制を確保しなければなりません。この義務化により、事故発生後の対応だけでなく、事故を未然に防ぐ体制づくりが求められます。
第三十条では、整備すべき記録の種類を明示的に列挙します。具体的には、訪問看護記録書、訪問看護指示書、訪問看護計画書、訪問看護報告書、市町村等に対する情報提供書、市町村等との連絡調整に関する記録の6種類です。これらの記録は、完結の日から2年間保存しなければなりません。さらに、記録は正確かつ最新の内容を保つよう整備することも求められます。
まとめ:訪問看護事業者に求められる体制整備
令和8年度診療報酬改定における指定訪問看護の運営基準見直しは、適切な訪問看護提供体制の構築と適正な事業運営の確保を目的としています。具体的には、適正手続き・健全運営・誘引禁止・誘導禁止の4つの新規定により事業者のコンプライアンスを強化し、安全管理体制の確保と6種類の記録整備義務化により提供体制の透明性を高めます。指定訪問看護事業者は、これらの改正内容を正確に理解し、施行に向けた体制整備を計画的に進めることが求められます。
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サマリー
令和8年度に刷新される訪問看護の運営基準について解説しています。この改正は、特定の施設への誘導や紹介者への金品提供といった不正行為を明確に禁止し、制度の信頼再構築を目指します。また、安全管理体制の義務化と6種類の記録整備を通じて、ケアの透明性と安全性を高め、患者が安心してサービスを選べる環境を整備することを目的としています。
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