小児医療では、造血器腫瘍のゲノム検査やRSウイルスの予防薬など、高額な検査・薬剤を用いる場面がある。こうした高額な項目の多くは、入院料や小児科外来診療料に「包括」されてきた。包括されると、その費用が個別に評価されず、医療機関の持ち出しになりやすい。本メルマガでは、この課題に対応した令和8年度診療報酬改定の見直しを解説する。
今回の見直しは、高額な検査・薬剤を包括の対象から除外し、別に算定できるようにする2点からなる。第一に、造血器腫瘍等を対象とするがんゲノムプロファイリング検査を、小児入院医療管理料や集中治療系の入院料の包括対象から除外する。第二に、抗RSウイルス薬「ニルセビマブ」の投与当日を、小児科外来診療料の算定対象から除外する。いずれも、高額な項目を出来高で算定できるようにし、必要な医療を提供しやすくする点で共通する。
がんゲノムプロファイリング検査を入院料の包括から除外
がんゲノムプロファイリング検査のうち造血器腫瘍等を対象とするものは、小児入院医療管理料や集中治療系の入院料の包括対象から除外され、別に算定できるようになった。この見直しの理由は、検査料が高額でありながら、入院中に実施する必要性が特に高いためである。
がんゲノムプロファイリング検査とは、腫瘍の多数の遺伝子を一度に調べ、治療方針の決定に役立てる検査である。この検査は、白血病やリンパ腫といった造血器腫瘍を含む小児がんで用いられる。検査料は高額で、専門家会議による結果の検討に対する「評価提供料」も伴う。
こうした高額な検査は、従来、これらの入院料に「包括」されていた。包括とは、複数の医療サービスをまとめて一つの点数で評価する仕組みである。包括された項目は、実施しても入院料と別に算定できない。そのため、高額な検査を行うほど医療機関の負担が大きくなっていた。
今回の改定では、造血器腫瘍又は類縁疾患を対象とする場合に限り、この検査を包括対象から除外した。除外の対象となる入院料は、救命救急入院料、特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料、小児特定集中治療室管理料、小児入院医療管理料の5つである。これらの病棟では、当該検査に係る検査料と評価提供料を、入院料と別に算定できるようになった。
抗RSウイルス薬ニルセビマブを小児科外来診療料から除外
抗RSウイルス薬「ニルセビマブ」の投与当日は、小児科外来診療料の算定対象から除外された。これは、従来から同様に扱われてきた「パリビズマブ」と足並みをそろえる見直しである。
小児科外来診療料とは、小児科の外来診療を包括的に評価する点数である。この点数は、検査や処置、投薬などをまとめて1日単位で算定する。ただし、高額な薬剤を用いる日には、包括では費用をまかないきれない場合がある。
高額な薬剤を用いる日を包括の対象外とする扱いは、従来から「パリビズマブ」で行われてきた。パリビズマブは、RSウイルス感染症を予防する抗体製剤である。RSウイルスは、早産児や基礎疾患のある乳幼児で重症化しやすい呼吸器感染症を起こす。こうした高額な予防薬を投与する当日は、小児科外来診療料の対象から除外し、薬剤を別に算定できるようにしてきた。
このパリビズマブと同じRSウイルス予防薬として、令和6年5月に「ニルセビマブ」が薬価収載された。ニルセビマブは、抗RSウイルスヒトモノクローナル抗体製剤に分類される。今回の改定では、このニルセビマブの投与当日も、パリビズマブと同様に小児科外来診療料の算定対象から除外した。あわせて、施設基準で定める対象薬剤も、「抗RSウイルスヒトモノクローナル抗体製剤」へと整理された。
2つの見直しに共通する考え方
2つの見直しは、高額な項目を包括から切り出し、出来高で算定できるようにする点で共通する。出来高とは、個々の医療サービスごとに算定する仕組みである。この仕組みなら、高額な検査・薬剤の費用が、そのまま診療報酬に反映される。
この考え方の背景には、包括評価と費用のバランスがある。包括評価は、日常的な医療をまとめて評価し、算定を簡素にする利点がある。一方で、高額な項目まで包括に含めると、その費用が評価されず、必要な医療の提供が妨げられかねない。そこで今回の改定は、必要性が高く高額な項目を包括から除外し、両者のバランスを整えた。
まとめ
令和8年度診療報酬改定は、小児医療の高額な検査・薬剤を包括から除外する2つの見直しを行った。第一に、造血器腫瘍等を対象とするがんゲノムプロファイリング検査を、小児入院医療管理料や集中治療系の入院料の包括対象から除外した。第二に、抗RSウイルス薬ニルセビマブの投与当日を、小児科外来診療料の算定対象から除外した。いずれも、高額な項目を出来高で算定できるようにし、必要な小児医療を提供しやすくする見直しである。
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サマリー
日本の小児医療において、高額な検査や薬剤が定額の診療報酬(包括)に含まれることで医療機関の負担となっていた構造的な問題に対し、令和8年度の診療報酬改定で重要な見直しが行われました。具体的には、造血器腫瘍に対するがんゲノムプロファイリング検査と、RSウイルス予防薬ニルセビマブの投与が包括の対象から除外され、個別に費用を算定できる「出来高」に変更されます。これにより、高額な医療が必要な子どもたちに対し、病院が経営上のジレンマなく最適な医療を提供できるようになります。
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