がん患者指導管理料イは、これまで患者1人につき1回しか算定できませんでした。しかし、がん治療では再発や終末期など、複数の局面で診療方針の大きな変更が生じます。この実態を踏まえ、令和8年度診療報酬改定は、がん患者指導管理料イの算定要件を見直しました。本記事では、この見直しの具体的な内容と背景を、初めて学ぶ方にもわかるよう解説します。
今回の見直しは、がん患者指導管理料イの算定要件を2点変更するものです。第1に、病状の変化により診療方針の変更等の話し合いが必要となった場合、更に1回まで算定できるようになりました。第2に、末期の悪性腫瘍の患者について、「入院中の患者以外」という制限を撤廃しました。これらの見直しの狙いは、診療方針に関する意思決定支援と、患者の心理的不安を軽減する指導を推進することにあります。
がん患者指導管理料イとは何か
がん患者指導管理料イは、医師と看護師が患者と診療方針を話し合った場合に算定する診療報酬です。具体的には、届出を行った保険医療機関において、医師が看護師と共同して診療方針等を十分に話し合い、その内容を文書等で患者に提供した場合に算定します。がんと診断され、継続して治療を行う患者が対象です。
この管理料は、平成26年度改定で新設され、その後段階的に拡充されてきました。新設時は「がん患者カウンセリング料」を組み替えたもので、医師と看護師の共同による治療方針の話し合いを評価する仕組みでした。令和4年度改定では、対象を末期の悪性腫瘍の患者にまで広げ、診療方針に関する意思決定支援を実施した場合も算定できるようにしました。今回の令和8年度改定は、この意思決定支援の評価をさらに一歩進めるものです。
変更点①:病状変化時に「更に1回」算定できる
今回の見直しの中心は、算定回数を柔軟にした点です。現行では、がん患者指導管理料イは患者1人につき1回に限り算定できます。この回数に加えて、改定後は次の条件を満たす場合に更に1回算定できるようになりました。すなわち、病状の変化に伴って診療方針の変更等について話し合いが必要となった場合です。
この変更の根拠は、がん治療における意思決定の局面が複数あるという点にあります。がん治療では、病期の進行や治療効果の変化に伴い、診療方針の変更を検討する必要が生じます。特に、根治を目的とした治療の後に転移や再発が判明し、根治が困難な状況となった場合には、治療方針の大きな変更が必要となります。こうした重要な意思決定の局面ごとに、患者への支援を評価できるようにしたわけです。
変更点②:末期がん患者の「入院患者以外」制限を撤廃
もう一つの変更は、末期がん患者への算定対象を広げた点です。現行では、末期の悪性腫瘍の患者への意思決定支援は「入院中の患者以外」に限って算定できました。この「入院中の患者以外」という文言を、改定後は削除します。これにより、末期がんで入院中の患者に対する意思決定支援も算定の対象となります。
この撤廃は、意思決定支援を必要とする場面を制度が取りこぼさないための見直しです。終末期においては、治療方針の大きな変更が必要となることが多く、患者本人への精神的支援や意思決定支援が求められます。従来はこの支援を、入院患者には算定できませんでした。制限の撤廃によって、療養の場を問わず、必要な支援を評価できるようになります。
見直しの背景と意義
今回の見直しは、意思決定支援と心理的不安の軽減を推進するという方針に基づきます。厚生労働省は、悪性腫瘍の患者に対する診療方針等に関する患者の意思決定支援を推進する観点を掲げています。あわせて、患者の心理的不安を軽減するための指導の実施を推進する観点も示しています。この2つの観点が、算定要件を見直す土台となっています。
こうした方針は、がん医療の現場が抱える課題を反映したものです。がん患者が直面する意思決定は、診断時の1回だけではありません。転移や再発により根治不能と判断され、診療方針を大きく変更する必要がある場合にも、重要な意思決定が求められます。今回の見直しは、この実態に制度を近づけ、質の高いがん医療及び緩和ケアの評価につなげる一歩といえます。
まとめ
令和8年度改定は、がん患者指導管理料イの算定要件を2点見直しました。第1に、病状の変化により診療方針の変更等の話し合いが必要となった場合、更に1回まで算定できます。第2に、末期がん患者について「入院中の患者以外」という制限を撤廃し、入院患者も対象としました。これらの見直しは、診療方針に関する意思決定支援と心理的不安を軽減する指導を推進する狙いを持ちます。がん治療の複数の局面で必要となる患者支援を、制度として評価する内容といえます。
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Summary
令和8年度の診療報酬改定により、がん患者指導管理料イが見直されました。これにより、病状変化に伴う治療方針の変更時に再度算定が可能となり、末期がんの入院患者への算定制限も撤廃されました。患者の意思決定支援と心理的不安軽減を目的とした、医療現場の現実に即した重要な変更です。
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