入院基本料や特定入院料の施設基準は、平均在院日数や在宅復帰率などの基準の達成を求めます。このうち在宅復帰率などの患者割合は、病棟から退院した患者を分母と分子に振り分けて算出します。しかし、ひとつの病棟で複数の入院料を算定する場合、どの患者を計算対象に含めるかが曖昧でした。そこで令和8年度診療報酬改定は、患者割合の計算方法を明確化しました。本稿では、その明確化の内容を3つのポイントで解説します。
今回の明確化は、患者割合の計算ルールを統一し、現場の解釈のばらつきを解消します。第一に、在宅復帰率の計算で、他の入院料を算定する患者を計算対象から除外します。第二に、特定入院料の患者割合の計算でも、同様の除外を通則として明文化します。第三に、1病棟で届け出られる特定入院料を2種類までに制限します。
1. 在宅復帰率の計算対象を明確化する
在宅復帰率の計算では、他の入院料を算定する患者を計算対象から除外します。除外の対象は、病床単位で算定する特定入院料や、短期滞在手術等基本料を算定する患者です。この除外は、急性期一般入院料1などの自宅等退院割合と、療養病棟の在宅復帰機能強化加算の両方に適用されます。
在宅復帰率は、病棟から退院した患者のうち、自宅などに退院した患者の割合です。急性期一般入院料1などの施設基準は、この割合が一定以上であることを求めます。計算では、直近6か月間に退院した患者数を分母とし、自宅等に退院した患者数を分子とします。
この計算から除外する患者が、今回の改定で追加されました。従来から、再入院患者や転棟患者、救急患者連携搬送料を算定して転院した患者、死亡退院した患者などが計算対象外とされてきました。ここに、退院時に他の入院料を届け出ている病床・病室の患者と、短期滞在手術等基本料を算定する患者が加わります。
療養病棟入院基本料の在宅復帰機能強化加算でも、同じ除外が適用されます。この加算は、在宅に退院した患者の割合が5割以上であることを求めます。改定後は、他の入院料を届け出ている病床・病室の患者と、短期滞在手術等基本料を算定する患者を、分子と分母の双方から除きます。
2. 特定入院料の計算方法を通則で統一する
特定入院料の患者割合の計算でも、他の特定入院料や短期滞在手術等基本料を算定する患者を除外します。この除外は、個々の入院料ごとではなく、特定入院料に共通する「通則」として規定されます。通則化により、すべての特定入院料で計算ルールが統一されます。
特定入院料とは、回復期リハビリテーション病棟入院料などの、特定の機能を持つ病棟・病室の入院料です。これらの施設基準は、それぞれ患者割合などの要件を定めます。同じ病棟内に別の特定入院料や短期滞在手術等基本料を算定する病床があると、計算対象が複雑になっていました。
改定後は、これらの患者を計算対象から除く扱いが通則に明記されます。通則とは、個々の入院料に共通して適用される基本ルールです。通則に規定することで、入院料ごとに同じ除外規定を繰り返す必要がなくなります。
3. 1病棟あたりの特定入院料を2種類までに制限する
1病棟で届け出られる特定入院料は、2種類までに制限されます。この制限は、患者割合などの要件が過度に複雑になることを防ぎます。背景には、病棟が1つの看護単位として機能すべきという考え方があります。
従来は、1病棟で届け出られる特定入院料の種類数に明確な上限がありませんでした。種類が増えるほど、病床ごとに異なる患者割合を管理する必要が生じます。この管理は、病棟を1看護単位として運営するうえで過度な負担となっていました。
改定後は、この種類数を2つまでとする規定が新設されます。規定は、特定入院料の施設基準の通則に置かれます。上限を設けることで、病棟ごとの管理が簡素になります。
4. 経過措置を確認する
今回の明確化には、2つの経過措置が設けられます。在宅復帰率と在宅復帰機能強化加算については、令和9年5月31日まで従前の例によることができます。特定入院料の種類数の制限については、当分の間、新基準に該当するものとみなされます。
在宅復帰率の計算は、一定期間、従来のルールを使い続けられます。対象は、令和8年3月31日時点で急性期一般入院料1などの届出を行っている病棟です。これらの病棟は、令和9年5月31日まで従前の例によることができます。
特定入院料の種類数の制限には、別の経過措置が適用されます。対象は、令和8年3月31日時点で特定入院料の届出を行っている病棟・病室です。これらは、当分の間、2種類までの基準に該当するものとみなされます。
まとめ
令和8年度改定は、患者割合の計算方法を3つの点で明確化しました。第一に、在宅復帰率の計算から、他の入院料や短期滞在手術等基本料を算定する患者を除外します。第二に、特定入院料の計算でも、同じ除外を通則として明文化します。第三に、1病棟の特定入院料を2種類までに制限します。これらの明確化は、現場の解釈のばらつきを解消し、病棟管理の事務負担を軽減します。経過措置を活用しながら、自院の届出状況を早めに確認しておきましょう。
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サマリー
令和8年度診療報酬改定では、病院の入院基本料における患者割合計算の複雑さを解消するため、3つの主要な変更が導入されます。まず、在宅復帰率の計算から短期滞在手術等基本料を算定する患者を除外することで、病棟の真の機能評価を可能にします。次に、特定入院料の計算方法を通則として統一し、さらに1病棟で届け出られる特定入院料を2種類までに制限することで、現場の事務負担を大幅に軽減します。これらの明確化は、医療現場が患者ケアに集中できる環境を整えることを目指しています。