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ブリィビアクト薬価4.3%引き下げ|費用対効果評価の結果を解説
2026-10-05 06:13

ブリィビアクト薬価4.3%引き下げ|費用対効果評価の結果を解説

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2026年(令和8年)5月13日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第650回)で、抗てんかん薬「ブリィビアクト錠」の費用対効果評価結果に基づく価格調整が示されました。費用対効果評価による薬価の見直しは、計算式や専門用語が多く、公表資料だけでは内容をつかみにくい制度です。本号では、ブリィビアクトの価格調整について、結果、仕組み、根拠の3点を順に解説します。

ブリィビアクトの薬価は、2026年8月1日から約4.3%引き下げられます。価格調整の結果として、25mg錠は373.30円から357.30円に、50mg錠は609.30円から583.20円に下がります。価格調整の仕組みとして、ICERが1,000万円/QALY以上の区分とされたため、有用性加算部分に最も低い価格調整係数0.1が適用されました。価格調整の根拠は、公的分析が主に4つの論点で企業の分析を再分析し、専門組織がその結果を妥当と判断したことです。

価格調整の結果:2規格とも約4.3%の引き下げ

ブリィビアクトの価格調整では、25mg錠と50mg錠の2規格がそろって約4.3%引き下げられます。新しい薬価の適用は2026年8月1日からです。

新しい薬価は、次のとおりです。

* 25mg 1錠:373.30円 → 357.30円(16.00円、約4.3%の引き下げ)

* 50mg 1錠:609.30円 → 583.20円(26.10円、約4.3%の引き下げ)

※引き下げ額と引き下げ率は、資料の数値から筆者が計算したものです。

新薬価の適用日は、今回の総会から約2か月半後の2026年8月1日に設定されました。この猶予期間は、医療機関の在庫への影響などを踏まえて設けられたものです。医療機関や薬局は、8月1日の切り替えに向けて、在庫量や薬価マスタの更新時期を確認しておくとよいでしょう。

ブリィビアクトは、2024年8月7日の中医協総会で費用対効果評価の対象に指定された品目です。ブリィビアクトの効能・効果は、てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)です。ブリィビアクトの評価区分は「H1」で、ピーク時の市場規模予測が100億円以上(178億円)の品目に当たります。ブリィビアクトの費用対効果評価結果は、2026年4月8日の中医協総会ですでに承認されています。今回の総会では、この承認済みの評価結果を薬価に反映する具体的な価格が示されました。なお、2026年5月13日時点の評価終了品目一覧には、ブリィビアクトを含めて55品目が掲載されています。

価格調整の仕組み:有用性加算部分の9割を削る算式

ブリィビアクトの価格調整は、ICERの区分に応じた価格調整係数を、薬価のうち有用性加算部分だけに掛ける仕組みで行われました。ICERが1,000万円/QALY以上の区分に入ったため、係数は最低の0.1となりました。

ICERとは、新しい薬が既存の治療と比べて、健康上の効果を1単位増やすために追加でいくらかかるかを示す指標です。ICERの「健康上の効果」には、QALY(質調整生存年)という単位が使われます。QALYは、生存期間に生活の質(QOL値:完全な健康を1、死亡を0とする数値)を掛け合わせた値です。ICERが高いほど、薬の価格に比べて得られる効果が小さい、つまり費用対効果が悪いことを意味します。

有用性系加算等の価格調整係数(β)は、資料の図ではICERの区分ごとに4段階で示されています。ICERが200万〜500万円/QALYの区分では係数1.0で、有用性加算部分は引き下げられません。ICERが500万〜750万円の区分では係数0.7、750万〜1,000万円の区分では係数0.4、1,000万円以上の区分では係数0.1となります。ブリィビアクトのICERは1,000万円/QALY以上の区分とされたため、係数0.1が適用されました。なお、評価終了品目一覧には、評価の結果、価格が引き上げられた品目(例:レケンビ)や変更なしとなった品目も含まれています。

価格調整後の薬価は、次の算式で求められます。

価格調整後の薬価 = 価格調整前の薬価 - 有用性加算部分 ×(1 - β)

この算式で調整の対象となるのは、薬価全体ではなく有用性加算部分だけです。ブリィビアクトは、薬価収載時に類似薬効比較方式(Ⅰ)で算定され、有用性系加算(加算率5%)が適用されていました。係数0.1を当てはめると、有用性加算部分の90%が薬価から差し引かれます。25mg錠の場合、有用性加算部分は約17.78円と逆算でき、その90%に当たる16.00円が引き下げ額となります(逆算は筆者による試算です)。

価格調整に用いられた対象集団は、「併用療法による治療を受ける患者」のみで、その患者割合は100%とされました。費用対効果評価の分析枠組みでは、「単剤療法による治療を受ける患者」も分析対象集団に含まれていました。しかし、単剤療法の集団は、公的分析で「分析不能」という結果になりました。企業は、単剤療法の試験を計画中であることを理由に、この集団の評価を中断するよう求めています。この中断の要望の扱いについて、今回の資料には結論が記載されていません。

評価の根拠:公的分析による4つの論点の再分析

ブリィビアクトのICERが1,000万円/QALY以上の区分とされた根拠は、公的分析が主に4つの論点で企業の分析を再分析し、専門組織がその結果を妥当と判断したことです。4つの論点は、追加的有用性、維持治療の継続率、後治療、QOL値です。

費用対効果評価の流れを確認しておきます。費用対効果評価では、まず製造販売業者(企業)が分析を行います。次に、公的な立場の分析(公的分析)が企業分析を検証し、必要に応じて再分析します。最後に、費用対効果評価専門組織が両者の結果を検討し、評価案をまとめます。ブリィビアクトの併用療法の集団では、比較対照技術(比べる相手)は「レベチラセタム+薬物療法」とされました。レベチラセタムは、ブリィビアクトと同じ薬理作用を持つ既存の抗てんかん薬です。

1つ目の論点である追加的有用性について、公的分析は「発作抑制について、レベチラセタムに対する追加的有用性は示されていない」と判断しました。ネットワークメタアナリシスでは、完全発作消失率のオッズ比が1.208(95%信頼区間0.457〜3.194)でした。一方、50%レスポンダー達成率のオッズ比は0.787(同0.554〜1.118)でした。2つの指標が相反する結果となり、信頼区間の幅も広かったため、公的分析は発作抑制に関するアウトカムにオッズ比1.000を適用して分析しました。

2つ目の論点である維持治療の継続率について、公的分析は企業の推計方法を修正しました。企業は、ブリィビアクトにはランダム化比較試験(RCT)のデータを、レベチラセタムにはレセプトデータベースを用いた観察研究のデータを用いていました。公的分析は、研究デザインが大きく異なるデータを単純に比べることには課題があると指摘しました。そこで公的分析は、レベチラセタムの維持治療中断率に「有害事象による治療中断」のオッズ比0.678を掛けて、ブリィビアクトの継続率を推計し直しました。

3つ目の論点である後治療について、公的分析は企業が設定した「費用0・QOL値0」を修正しました。後治療とは、ブリィビアクトやレベチラセタムを中止した後の、他剤による多剤併用療法、迷走神経刺激療法、外科手術などによる治療を指します。企業は、後治療の費用とQOL値をともに0と設定していました。しかし、費用とQOL値が0になる状態は「死亡」と同じ扱いを意味します。公的分析は、後治療の患者は生存していることから、近い健康状態である「非レスポンダー」の費用とQOL値を当てはめて再分析しました。

4つ目の論点であるQOL値について、公的分析は企業が用いた韓国のビニエット法のデータを、臨床試験で患者本人から得たデータに置き換えました。ビニエット法とは、文章で描写した健康状態を一般の人に想像させ、QOL値を評価する手法です。企業が用いたデータ(Kang 2014)は、発作時に「意識消失、転倒、記憶障害」が必ず起こり、月10回以上発作が生じる重い状態を想定していました。公的分析は、ブリィビアクトの臨床試験(N01252、N01253、N01254試験)で患者本人から得たQOL値を用いて再分析しました。

企業は専門組織の判断に不服意見を出しましたが、専門組織は公的分析の結果が妥当であると結論づけました。企業の主な主張は、有用性加算の根拠である「治療方法の改善(利便性)」がICERに反映されない点や、後治療を考慮しなかった前例(ビンゼレックス)がある点などです。専門組織は、ビンゼレックスの措置は評価対象と比較対照の後治療への移行確率が同等だったために行われたものであり、今回の判断の根拠にはならないとしました。また専門組織は、患者本人から得たQOL値が存在する場合はそれを使うべきだとしています。さらに専門組織は、今後新たなエビデンスが見いだされた場合は「H3品目として対応すべき」としています。なお資料では、総合的評価において企業分析と公的分析の双方に一定の科学的妥当性が認められていることも付記されています。

まとめ:ブリィビアクトは8月1日から約4.3%の引き下げ

ブリィビアクトの薬価は、費用対効果評価の結果に基づき、2026年8月1日から約4.3%引き下げられます。価格調整の結果、25mg錠は357.30円に、50mg錠は583.20円になります。価格調整の仕組みでは、ICER1,000万円/QALY以上の区分に当たる係数0.1が、有用性加算部分に適用されました。価格調整の根拠は、公的分析が追加的有用性、維持治療の継続率、後治療、QOL値の4点で再分析し、専門組織がその結果を妥当と判断したことです。医療機関や薬局は、8月1日の切り替えに向けて在庫と薬価マスタの準備を進めておきましょう。

参考資料:

* 中医協 総-7「ブリィビアクトの費用対効果評価結果に基づく価格調整について」(令和8年5月13日)

* 中医協 総-7参考1「医薬品等の費用対効果評価案について」(令和8年4月8日 中医協 総-2)

* 中医協 総-7参考2「費用対効果評価対象品目一覧」(令和8年5月13日時点)

* 費用対効果評価の詳細は、国立保健医療科学院から公表される報告書を参照してください。



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サマリー

抗てんかん薬ブリビアクトの薬価が、2026年8月1日から25mg錠・50mg錠とも約4.3%引き下げられる背景を解説する。ICERが1,000万円以上の区分となり、有用性加算部分に係数0.1が適用されたため、加算部分の9割が削減された。企業分析では後治療の費用とQOLをゼロとしていたが、公的分析は患者が生存して治療を続ける実態に合わせ、非レスポンダーの値で再分析した。また、一般人の想像に基づくQOL値を、臨床試験参加患者本人のデータに置き換えた。

ブリビアクト薬価の4.3%引き下げ
あのー、新薬の価値を証明するデータで、なんと患者さんが計算上死亡扱いになっていたって聞いたら、あなたはどう思いますか?
いやー、ちょっとギョッとしますよね、それ。 そうですよね。今日はそんな驚きの事実から始めていきたいと思います。
今回の徹底解剖テーマは、2026年8月1日から適用される抗転換薬、ブリビアクトの約4.3%の薬価引き下げについてです。
はい。4.3%って聞くと、なんか単なる小さな値下げニュースかなって思いがちなんですけど、実はその裏で、製薬企業と公的機関による、もう熾烈なデータの攻防があったんですよね。
そうなんですよ。ただの値下げじゃないんです。今日のミッションは、この一見地味な数字の裏にある、超難解な費用対効果評価の仕組みを、あなたと一緒に分かりやすく読み解いていくことです。
よろしくお願いします。
まずは、具体的に何が起きるのか整理したいんですが、価格が下がるんですよね。
そうです。ブリビアクトの25ミリグラム錠と50ミリグラム錠が、それぞれ約4.3%引き下げられます。
なるほど。
具体的な数字で言うと、25ミリグラム錠の場合は、373.3円から357.3円への変更になりますね。
薬の値段が下がるのは分かるんですけど、この4.3%って、すごく中途半端な数字じゃないですか。
確かにそう見えますよね。
ICERと有用性加算の価格調整
これ、薬全体の基本価格が一律に下がったわけじゃないんですよね。私、これ飛行機のチケットに例えると分かりやすいと思うんですけど。
飛行機ですか?
はい。基本の運賃はそのままなんだけど、追加で払っていたプレミアムシート代、つまり薬でいうところの有用性加算の部分だけを狙い撃ちされて。
そこをなんと9割も削り取られた、みたいな状態ですよね。
まさにその通りです。そのプレミアムシート代の評価が今回の最大の争点だったんですよ。
なるほど。
専門的に言うと、患者さんの健康状態を1年分改善するのにかかる追加費用をアイサーって呼ぶんですけど。
アイサー、はい。
今回の分析では、これが1000万円以上という非常に高額な区分だと判定されてしまったんです。
1年分の健康に1000万円以上?
そうなんです。その結果、有用性加算部分に対して本来の1割しか価値を認めない0.1という一番厳しい係数がかけられてしまったわけです。
1000万円以上か。それは確かにプレミアムシートの価値が厳しく査定されるのもうなずけますけど、でもなんでそこまで厳しい判定になったんですか?
後治療を死亡扱いにしない再分析
それはですね、既存薬であるレベジラセタムと比較した際に、公的機関が企業の提出したデータを再分析したからなんです。
再分析?
ここで非常に興味深いのが、後治療とQOL、つまり生活の質のデータの捉え方なんですよ。
そこで冒頭の死亡扱いの話につながるわけですね。
そういうことです。
企業の分析データを見ると、この薬での治療を中止した後の、後治療にかかる費用とQOLをどちらもゼロに設定してたんですよね?
はい、そうなんです。
いや、ちょっと待ってって思いません。ただ別の治療法に変えるだけなのに、計算上は患者さんがいなくなってる、つまりゼロになってるって、いくらなんでも極端すぎじゃないですか?
いや、本当にその通りで。治療法を変更したとしても、後治療を受けている患者さんは当然生存して生活を続けてますよね。
当たり前ですよね。
ですから公的機関の再分析では、この費用とQOLをゼロとする設定を修正したんです。
具体的には、薬が効かなかった状態、つまり非レスポンダーとしてのリアルな患者データを当てはめて計算し直したというわけです。
なるほど。つまり現実の医療現場の姿に合わせて、データをちゃんと生きている患者さんのものに補正したわけですね?
その通りです。
ビニエット法と患者本人のQOLデータ
でも、費用をゼロにするのもかなり強引ですけど、もう一つの争点だったQOLの測り方、こっちにもかなり意図的な数字の作り方が見え隠れしてますよね?
よくお気づきですね。企業側はビニエット法っていう手法を使ってたんです。
ビニエット法?
はい。これは一般の人に対して意識消失や転倒があって、月に10回以上発作が起きる重い状態っていうのを文章で読ませて、
それで、想像で算出してもらったQOLデータなんですよ。
えー、想像で?なるほど。一般の人に最悪の事態を想像させれば、治療前のQOLが異常に低く算出されますよね?
ええ。
そうしておけば、自社の薬を使った時の改善幅が壮大的にものすごく大きく見せられるからってことですよね?
まさにそのロジックです。でも当然、公的分析はこれを退けました。
まあ、そうなりますよね。
代わりに、実際の臨床試験に参加した患者さん本人から得たデータに差し替えたんです。
一般人が想像した最悪のシナリオと、実際の患者さんのリアルな声、そりゃ結果が全く違って当然ですね?
そうなんですよ。
誰がどう測定したデータなのかを批判的に見ることが、いかに重要かすごくよくわかりました。
薬価評価とリアルタイムQOLの未来
ええ。医療機関や薬局は、8月1日の切り替えに向けて、在庫やシステムの確認を進める必要があるんですが。
はい。対応が必要ですね。
ただ、このたった4.3%の引き下げの裏には、医療費の最適化とイノベーションのバランスを保つための、これほど緻密で科学的な議論が存在しているということなんです。
いやー、本当に。データ一つ、計算式一つで、国レベルの医療費がここまで大きく動くなんて驚きです。
本当ですよね。
これを聞いているあなたに、最後に一つ考えてみてほしいんです。
もし将来、私たちが日常的につけているスマートウォッチみたいなデバイスが、患者のリアルタイムなQOLを24時間自動測定するようになったら、一体どうなるでしょう?
それは面白い視点ですね。
薬の値段は、まるで株価みたいに、毎日の患者のQOLデータに合わせて、リアルタイムで変動するようになるのでしょうか?
あなたはどう考えますか?
ということで、今回の徹底解剖はここまでです。
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