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2026-11-01 06:38

費用対効果評価で5品目の薬価引下げ|11月1日適用の改定薬価まとめ

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令和8年8月5日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第654回)では、費用対効果評価の結果を踏まえた薬価の見直しが議題となり、5品目・7規格の改定薬価が示されました。改定薬価は令和8年11月1日から適用されるため、医療機関と薬局は在庫や請求への影響を事前に把握しておく必要があります。本号では、対象品目の改定薬価、引下げ幅を決めた評価結果、評価の分かれ目となった論点の3点を解説します。

今回の見直しでは、評価を受けた4品目(テッペーザ、トロデルビ、パキロビッド、アウィクリ)と、トロデルビの類似品目であるダトロウェイを合わせた5品目・7規格の薬価が、0.3%から11.0%引き下げられます。引下げ幅は、各品目の費用対効果を示すICERの区分と、薬価の算定方式によって決まりました。最も大きく下がったのは、ICERが最上位の区分となったトロデルビと類似品目のダトロウェイで、いずれも11.0%の引下げです。評価の過程では、4品目すべてで、専門組織が企業の分析ではなく公的分析の結果を妥当と判断しました。

1. 価格調整の対象と改定薬価(11月1日適用)

価格調整の対象は、5品目の7規格です。評価結果そのものは、テッペーザとトロデルビが令和8年5月13日、パキロビッドとアウィクリが同年6月24日の中医協総会で承認されています。ダトロウェイはトロデルビの類似品目として、アウィクリ700単位はアウィクリの規格追加品目として、本体と同じ評価結果で調整されます。

テッペーザ点滴静注用500mg

* 薬価:1,175,904円 → 1,111,100円

* 引下げ:64,804円(5.5%)

トロデルビ点滴静注用200mg

* 薬価:187,195円 → 166,604円

* 引下げ:20,591円(11.0%)

ダトロウェイ点滴静注用100mg(トロデルビの類似品目)

* 薬価:311,990円 → 277,672円

* 引下げ:34,318円(11.0%)

パキロビッドパック300

* 薬価:12,538.60円 → 12,001.20円

* 引下げ:537.40円(4.3%)

パキロビッドパック600

* 薬価:19,805.50円 → 18,956.70円

* 引下げ:848.80円(4.3%)

アウィクリ注 フレックスタッチ 総量300単位

* 薬価:2,081円 → 2,074円

* 引下げ:7円(0.3%)

アウィクリ注 フレックスタッチ 総量700単位(アウィクリの規格追加品目)

* 薬価:3,809円 → 3,793円

* 引下げ:16円(0.4%)

※引下げ額・引下げ率は、資料の現行薬価と改定薬価から筆者が算出しました(引下げ率は小数第2位を四捨五入)。

改定薬価の適用日は、7規格すべて令和8年11月1日です。適用までに一定の猶予期間が設けられたのは、医療機関の在庫への影響などを踏まえたためです。高額な注射薬であるテッペーザやダトロウェイは1瓶あたりの差額が大きいため、11月1日をまたぐ在庫と請求の管理に注意が必要です。

今回の5品目を含め、費用対効果評価を終えた品目は、令和8年8月5日時点で60品目になりました。一方で、評価中の品目は同日時点で20品目あります。この中には、ケサンラやゼップバウンドのように市場規模の大きい品目や、今回の総会で新たに対象に指定されたマルシロンとサークリサが含まれます。

2. 引下げ幅を決めた評価結果と価格調整係数

引下げ幅は、「ICERの区分」と「薬価の算定方式」の2つで決まります。ICER(増分費用効果比)とは、比較対照の治療と比べて、健康な状態での1年(1QALY)を追加で得るのに必要な費用です。ICERが高いほど「費用に見合う効果が小さい」と判断され、価格調整係数が小さくなり、薬価が大きく下がります。

価格調整の対象は、薬価全体ではなく、薬価の一部に限られます。類似薬効比較方式で算定された品目では、既存薬より優れた点を評価して上乗せされた「有用性系加算部分」が対象です。原価計算方式で算定された品目では、「有用性系加算部分」と「営業利益部分」が対象です。資料に示された計算式は次のとおりです。

* 類似薬効比較方式(トロデルビ、パキロビッド、アウィクリ) 価格調整後の薬価 = 価格調整前の薬価 - 有用性加算部分 ×(1-β)

* 原価計算方式(テッペーザ) 価格調整後の薬価 = 価格調整前の薬価 - 有用性系加算部分 ×(1-γ)- 営業利益部分 ×(1-θ)

テッペーザは、ICERが750万円以上1,000万円/QALY未満の区分となり、営業利益部分に係数(θ)0.67が適用されました。対象集団は中等度から重症(CAS3点以上)の活動性甲状腺眼症で、比較対照はステロイドパルス療法と放射線外照射の併用療法です。資料では有用性系加算部分の係数(γ)は「-」とされており、営業利益部分の33%にあたる額が引き下げられた結果、引下げ率は5.5%となりました。

トロデルビは、ICERが1,500万円/QALY以上の区分となり、有用性加算部分に係数(β)0.1が適用されました。対象集団は化学療法歴のあるホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能・再発乳癌で、比較対照はエリブリンです。資料の区分図では、1,500万円/QALY以上は係数が最も小さい区分にあたります。有用性加算部分の9割が引き下げられた結果、引下げ率は11.0%となり、類似品目のダトロウェイも同じ率で引き下げられます。

パキロビッドは、比較対照と効果が同等で費用が増加する「費用増加」と評価され、有用性加算部分に係数(β)0.1が適用されました。対象集団は重症化リスク因子を有する新型コロナウイルス感染症患者(小児を除く)で、比較対照はモルヌピラビルです。収載時の有用性系加算率が5%と小さいため、引下げ率は4.3%にとどまりました。

アウィクリは、4つの対象集団で評価が分かれ、各集団の結果を患者割合で加重平均した価格が改定薬価となりました。2型糖尿病でインスリン療法の治療歴がない集団(71.4%)と、基礎インスリン療法の治療歴がある集団(16.9%)は、効果も費用も同等の「費用同等」とされ、係数(β)は1.0です。1型糖尿病の集団(5.0%)と、2型糖尿病で基礎-追加インスリン療法の治療歴がある集団(6.7%)は「費用増加」とされ、係数(β)は0.1です。患者の88.3%が係数1.0の集団にあたるため、引下げ率は0.3〜0.4%の小幅にとどまりました。

3. 評価の分かれ目となった論点:4品目とも公的分析を採用

評価の過程では、企業の分析と国の公的分析で設定が分かれ、専門組織は4品目すべてで公的分析を妥当と判断しました。公的分析とは、企業の分析を第三者の立場で検証し、必要に応じて再分析する仕組みです。主な論点は、テッペーザが再発率と薬剤費、トロデルビがQOL値、パキロビッドとアウィクリが追加的有用性の有無でした。

テッペーザの論点は、再発率と薬剤費の設定です。企業はテッペーザの眼球突出の再発率を0%としましたが、公的分析は複数の臨床試験を統合した72週時点の24%を採用しました。比較対照の再発率についても、企業は文献値の最大値と最小値の中点である30.5%を用いましたが、公的分析は治療反応と再発の定義が明確な文献の18.4%を採用しました。薬剤費は、企業が体重50kgと仮定したのに対し、公的分析はNDB(匿名医療保険等関連情報データベース)の実際の算定バイアル本数から算出しました。専門組織は、再発率0%には違和感があり、症例数と長期の観察も不十分だとして、公的分析を支持しました。

トロデルビの論点は、QOL値の設定です。企業は、トロデルビ群は腫瘍が縮小した状態で過ごす期間が長いとして、同じ健康状態でも治療群ごとに異なるQOL値を設定しました。公的分析は、両群の平均値を用いて、同じ健康状態には同じQOL値を当てはめる形で再分析しました。専門組織は、モデルの健康状態は「無増悪(PFS)」「増悪(PD)」「死亡」の3つだけで腫瘍縮小は区別されていないとして、公的分析の方法を妥当としました。

パキロビッドの論点は、モルヌピラビルに対する追加的有用性の有無です。企業は、デルタ株流行以前にワクチン未接種者を対象とした試験の間接比較から、追加的有用性があると主張しました。公的分析は、オミクロン株流行下のワクチン接種環境では追加的有用性は示されていないと判断し、費用を比べる費用最小化分析を行いました。企業は不服意見を出しましたが、専門組織は、現状はワクチン接種者や既感染者が大部分であることなどを踏まえ、公的分析の結果を妥当と結論付けました。

アウィクリの論点は、週1回投与という利便性を含めた追加的有用性の有無です。企業は、HbA1cの改善に加え、利便性による治療満足度や治療継続の向上を有用性として主張しました。公的分析は、HbA1cの差は臨床的に意味のある大きさとはみなせず、低血糖はむしろ多い傾向があるとして、追加的有用性を認めず費用最小化分析を行いました。専門組織は、企業が根拠とした指標(DTSQ)は満足度の尺度でありQOLの尺度ではないとして、公的分析を支持しました。その後、企業の不服意見を受けて、訪問看護を受ける患者の割合や訪問看護の減少回数(月1〜2回)を設定した追加分析が公的分析で行われ、専門組織はこの追加分析の結果も妥当としました。

まとめ:11月1日から5品目7規格の薬価が下がります

令和8年8月5日の中医協総会では、費用対効果評価の結果に基づき、5品目・7規格の薬価を0.3%から11.0%引き下げる改定薬価が示されました。引下げ幅は、ICERの区分と算定方式で決まり、最上位の区分となったトロデルビと類似品目のダトロウェイが11.0%と最大です。評価の過程では、4品目とも専門組織が企業分析ではなく公的分析を採用しました。改定薬価は令和8年11月1日から適用されるため、高額な注射薬を中心に、在庫と請求の切り替えを確認しておきましょう。

(参考資料:中医協 総-6-1〜6-4、総-6参考1〜3(令和8年8月5日))



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サマリー

費用対効果評価によって、薬の追加的な価値に見合う価格かどうかが判定され、トロデルビは薬価の上乗せ部分の9割を削減され、全体で11%引き下げられました。テッペーザでは企業側の再発率0%に対し、公的分析が臨床試験を統合して24%を採用し、パキロビッドではデルタ株・未接種者中心の古いデータではなく、オミクロン株流行下の医療環境が重視されました。週1回投与のアウィクリでは、企業が治療満足度や利便性を追加的価値と主張した一方、公的分析は客観的な健康状態の改善とは認めませんでした。限られた医療財源の中で、患者の使いやすさや心理的負担を薬価に反映すべきかという課題も提示されます。

費用対効果評価とトロデルビの11%引下げ
あの、新しいスマホを買うときって、なんかプロ版のカメラが少し良くなるだけで、数万円高くなったりするじゃないですか。
ええ、よくありますよね。
その時、この追加機能って本当に値段に見合ってるのかなって、リスナーのあなたも悩むことありませんか?
実は今、医療の世界でも全く同じような、シビアなコスパ計算が行われているんですよね。
はい、そうなんです。今日深掘りする公的資料を見ていくと、この11月買った主要な薬の価格が最大11%も一気に引き下げられることがわかります。
11%って結構な値下げですよね。
その理由がまさに、プロ版としての追加機能が価格に見合っていないと、国からジャッジされたからなんですよ。
なるほど。でもそのコスパ評価ってどうやって決めてるんですか?
基準になるのがアイサーと呼ばれる指標なんです。
これは健康な状態での1年を追加で獲得するために、どれだけ余分なコストがかかるかを計算するシステムですね。
健康な1年を買うための追加費用ってことですね。
そうです。今回最大11%の値下げ対象になったトロデルビという薬は、このアイサーが最も悪い区分に分類されてしまったんです。
ということは、薬全体の基本料金が全品11%オフのセールみたいに丸ごと割引されたってことですか?
いや、基本料金が下がったわけじゃないんですよ。新薬には通常既存の薬より優れているという理由でプレミアム価格、つまり加算部分が上乗せされるんですね。
オプション料金みたいなものですね。
その通りです。
ただ、アイサーのスコアが悪かったんで、国はそのプレミアムに十分な価値がないと判断して、上乗せ部分の9割を強制的に削り落としたんです。
9割もですか?
ええ。その結果としてトータルで11%の値下げにつながったというからくりですね。
なるほど。オプション料金が大幅に剥奪されたわけですね。でも製薬会社も、はいそうですかって黙って価格を下げられたわけじゃないですよね。
もちろんです。資料を読むと製薬企業と公的機関の間でかなり白熱したデータバトルがあったことがわかります。
テッペーザとパキロビッドの公的分析
やっぱりすんなりとはいかないですよね。
ええ。今回評価された4品目すべてで、企業のデータはそのままでは受け入れられませんでした。
そこで第3者による公的分析が採用されたんですね。
はい。製薬会社はどうしても自社に有利なベストシナリオを提示しがちですから、例えばテッペーザという薬の評価では企業側はなんと再発率0%というデータを提出したんですよ。
ちょっと待ってください。0%ですか?それって深夜のテレビショッピングで絶対に壊れませんって歌うカデみたいで逆に怪しくないですか?
ええ。審査側もさすがに違和感を抱きました。症例数が少なすぎる点や長期的な観察が足りない点を指摘したんですよね。
当然ですよね。で、どうなったんですか?
公的分析で複数の臨床試験データを独自に統合して再計算した結果、24%という遥かに現実的な数値を突きつけたんですよ。
理想的なデータと現実的なデータのぶつかり合いですね。
そうですね。あと公的機関は都合のいい数字だけじゃなくて、時代遅れの前提にも目を光らせているんですよ。
前提を変えてくるパターンですね。それってコロナ治療薬のパケロビットの話じゃないですか?
まさにそれです。企業側はかなり古いデータを引っ張り出してきていて、まだデルタ株が流行していてワクチンを打っていない人が大多数だった時代のデータだったんですよ。
いやいや、今はもうオミクロン株が主流だし、大多数がワクチンを打っているから感染経験ありますよね。
だから公的分析では現在のリアルな医療環境に合わせて評価を修正しました。ウイルスの状況が変われば薬の相対的な価値も変わるという客観的な判定です。
データをどう切り取るかっていう、まさに知恵グラビですね。でもこれって単なる数字遊びじゃなくて、私たちが病院で払うお金とか現場の医療に直結する話ですよね。
アウィクリの利便性は価値として認められるか
だからこそ、何をもって薬の価値とするかっていう基準が非常に重要になってくるんです。ここで興味深いのが、アウイクリという糖尿病治療薬をめぐる議論ですね。
アウイクリって週に1回の投与で済む薬でしたっけ?
そうです。企業側は週1回で済むから患者の治療満足度が大きく上がると主張して、価格の上乗せを求めたんです。
いや、毎日薬飲んだり注射したりするより週1回で済むなら絶対にそっちの方がいいですよ。患者としては間違いなく価値を感じます。
しかし公的機関はその満足度を医学的な生活の質の向上とは認めず却下しました。
認められなかったんですか?なんでですか?
彼らの厳密な評価基準では生活の質の向上というのは生存期間が伸びるとか身体的な症状が明確に改善するといった客観的な健康状態の向上を指すからなんです。
ということは単なる心理的な利便性とか手間の削減はカウントされないってことですか?
はい。臨床的な価値としてはカウントされなかったんですよ。
でもそれって頭で勝ちすぎませんか?あなたが患者だとして毎日の治療のストレスから解放されるのって間違いなく生活の質の向上ですよね。
おっしゃる通り。ビジネスの世界では使いやすさや快適さという主観的な価値にお金を払うのが当たり前ですよね。
そうですよ。冒頭のスマホのプロ版だってそうですし。
ただこれは限られた公的医療費の分配を決めるシステムなんです。
主観的な満足度や便利さをすべて価格に上乗せしてしまえば医療保険制度自体がパンクしかねません。
まあそれはわかりますけど。
だからこそ冷酷なまでに客観的な臨床データで線を引かざるを得ない側面があるんですよね。
数値と患者の使いやすさの線引き
なるほど。あなたがもし医療現場で働いているならこの11月をまたぐ高額医薬の在庫管理ってこうした評価システムに振り回されるシビアな問題ですよね。
非常に現実的な問題です。
でもあなたがただの患者であったとしても無関係じゃないんです。
このデータバトルが私たちがどんな治療をいくらで受けられるかを根底で決めているんですから。
はい。限られた財源の中で医療を維持するためには厳しい費用対効果の線引きは不可避と言えます。
だとしても最後にリスナーのあなたに考えてみてほしいんです。
公的分析では患者の満足度は生活の質の向上ではないと切り捨てられました。
データ上の数値が優先された形ですね。
でも数値だけを追い求め患者の日々の使いやすさや心の負担が軽くなることを価値として価格に反映しない今の評価システムって本当に私たちの求める医療の姿なのでしょうか。
非常に考えさせられるテーマですね。
次に薬局でお薬を受け取るときその価格の裏にあるシビアな攻防を少しだけ想像してみてください。
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