あの、あなたが子供の頃、どうしても欲しかったのに、なんか買えなかったおもちゃって覚えていますか?
あー、ありますね、そういうの。
デパートのおもちゃ売り場で、ガラスのショーケースにへばりついて眺めていた、あのキラキラした光景というか。
えー、親に誕生日まで我慢しなさいなんて言われて。
そうそう。
で、結局別のものになったりして、心のどこかにずっと残り続けるんですよね。
なりますよね。でも、大人になった今、もしそのおもちゃがさらにかっこよくなって目の前にあって、
はい。
自分の稼いだお金で、自由に買えるとしたら、あなたならどうしますか?
いやー、買っちゃいますよね、それは。
ですよね。実は今、そのあの、あの日買えなかったおもちゃを手にする大人たちが、ある業界の常識を根底から押し寄りしているんです。
へー。
今回の深堀セッションは、がんじ市場が子どもから大人へとターゲットを広げている、その驚きのプロセスに迫ります。
このおごぎは本当にダイナミックで、全く新しい市場の景色を作り出していますよね。
そうなんです。今日手元には、国内外の市場レポートとか、ハピネットやサーカーナといったリサーチ会社のデータ、
それに心理学の学術論文やマーケティング専門家の分析コラムなど、多角的な資料の束があります。
かなり充実した資料ですね。
はい。さて、ここから深堀していきましょう。
まずは今回のキーワードでもある、キダルトについて整理したいんですが、
へー。
これって単なる子どもっぽい大人っていうわけではないんですよね。
全く違いますね。キダルトは、英語のkids、つまり子どもと、アダルト、大人を組み合わせた造語なんですけど、
はいはい。
経済的にも社会的にも自立した大人でありながら、子どもの頃の趣味や感性を持ち続けて、
おもちゃやキャラクターグッズを積極的に楽しむ層のことなんです。
なるほど。自立した大人なんですね。
そうなんですよ。重要なのは、彼らが高い購買力を持っていて、質の高い体験に対してなら、惜しみなく投資する成熟した消費者だということなんです。
へー。質の高い体験にお金を払う大人たちか。では、そんなキダルトたちが一体どのようにして市場を揺るがしているのか。
ええ。
まず資料を見ていて、一番引っかかったあるパラドックスがあるんです。
何でしょうか。
日本って深刻な少子化が進んでいて、子どもの数は年々減っついますよね。
そうですね。かなりのスピードで。
普通に考えれば、おもちゃ業界は自利品になるはずじゃないですか。
ええ。そう思いますよね。
ところがデータを見ると、元気市場は成長し続けているんですよ。これってどういうことですか。
その通りなんです。日本元気協会のデータによれば、2024年度の国内元気市場規模は、前年度比で7.9%増加して、
はい。
1兆9992億円を突破したんです。これ実は過去最高を更新しているんですよ。
え?子どもが減っているのに過去最高ですか。
そうなんです。驚きですよね。
それってどういうからくりなんですか。
この矛盾を解く鍵こそが、まさにキダルト層なんです。
ここでキダルトが出てくるんですね。
ええ。ハピネットの調査では、日本の18歳から60歳におけるキダルト人口は、なんと約535万人に上ると推定されていて、
500万人以上?
はい。市場規模は約780億円に達しているんです。
すごい規模ですね、それは。
さらに、明治安田総合研究所のデータで非常に興味深い事実が明らかになりました。
何ですか。
2024年の単身世帯におけるおもちゃへの年間支出が14498円だったのに対して、
はい。
子どものいる2人以上世帯の支出は12367円だったんです。
えっと、ちょっと待ってください。つまり、一人暮らしの大人が、
ええ。
子育て世帯が子どもに買い与えるよりも多くのお金を自分のおもちゃに使っているっていう逆転現象が起きているってことですか。
まさにそういうことです。
いやあ、それは衝撃ですね。でも、なぜ大人はそんなにお金を突き込むんでしょう。趣味にしても他にもいろいろあるじゃないですか。
学術論文の分析によれば、その背景には深い心理的要因があるんです。
心理的要因ですか。
一つは心理学者アドラーの補償という理論で説明されるものです。
補償ですか。
はい。子どもの頃に経済的な理由で買えなかったという欠乏感を経済力を手にした大人になってから、
報復的な消費によって満たそうとする真理ですね。
ああ、なるほど。報復的消費って言葉は強いですけど、すごく腑に落ちますね。
そうですよね。
つまり、デパートで親にダメって言われて泣く泣く諦めたあの瞬間の自分が、
ええ、ええ。
今の自分のクレジットカードを握って、今度こそ全部買ってやるって言ってるようなものですよね。
はは、はは、まさにそんな感じです。
そしてもう一つの要因がストレス回避と癒しです。
癒しですか。
ええ。複雑でプレッシャーの多い現代社会において、
おもちゃは現実の悩みから切り離されたハクチュームの楽園として機能しているんですよ。
いやあ、なるほど。つまり大人にとってのおもちゃはただの娯楽じゃなくて、
はい。
過去の自分を癒すタイムマシンやり、現代の過酷な社会を生き抜くための心の防空壕のようなものなんですね。
素晴らしい表現ですね。まさにその通りです。
でもちょっと疑問があるんですが、
何でしょう。
企業がそうやって資金力のある大人ばかりをターゲットにして、高価格帯の商品を作り始めたら、
おもちゃのジェントリフィケーションというか高級化が起きて、
ええ。
本来の子供たちが遊べるものがなくなってしまいませんか。
ああ、それは非常に鋭い指摘ですね。
はい。
しかし企業側もそこは巧みに戦略を分けているんです。
と言いますと?
子供向けの定番商品は価格を抑えてしっかり維持しつつ、
大人向けのプレミアムラインを全く別のターゲットとして展開しているんですよ。
なるほど。住み分けができているんですね。
そうなんです。むしろ大人市場から得た住宅な利益が、
子供向け商品の開発や維持に還元されるというすごく良いサイクルが生まれています。
へえ。大人の爆買いが結果的に子供たちのおもちゃ環境を守っている側面もあるんですね。
はい、そう言えると思います。
では企業は具体的にどうやってこのタイムマシンや防空壕を求めている大人たちの心を掴んでいるのでしょうか。
ええ。
単に昔のものをそのまま再販するだけじゃ一家制で終わっちゃいますよね。
おっしゃる通りです。
成功の法則はノスタルジー、つまり懐かしさに現代性を掛け合わせることにあるんです。
現代性を掛け合わせる。
はい。今の大人たちが求める高い品質とかインテリアとしての美しさ、そしてSNSで発信したくなるような価値を付加しているんですよ。
懐かしさだけでは財布の紐は緩まないと。具体的な成功例ってどんなものがありますか。
最も象徴的なのはレゴの大人向けレゴというキャンペーンですね。
ああ、なんか聞いたことあります。
彼らは単に複雑なお城や風景船を作ったわけではないんです。
例えばボタニカルコレクションという盆栽や風景をレゴで作るシリーズを大ヒットさせました。
お花や盆栽、それは確かにリビングのインテリアに馴染みますよね。
ええ。
でもなぜそれがそんなに大人の心に刺さったんでしょう。
レゴは大人がブロックを組み立てるプロセスそのものに価値を見出したんです。
プロセスですか。
はい。スマホや仕事の通知から離れて、説明書に従って無心でピースを組み立てる時間が大人にとってのマインドフルネスやストレス解消として機能しているんですよ。
うわあ、それはすごいパラダイムシフトですね。
そうなんですよ。つまり彼らはブロックを売っているのではなく、デジタルデトックスの体験を売っているわけです。
おもちゃイコール遊びではなく、おもちゃイコールセラピーとして再定義したわけだ。他にもありますか。
たからとみのホトジェニックリカも面白いですよ。
リカちゃん人形ですか。
リカちゃん人形の関節が稼働するようになって、自然なポージングができる大人向けモデルなんです。
へえ、ポーズが取れるんですね。
はい。大人が綺麗な風景やカフェのスイーツと一緒にリカちゃんを撮影して、ハッシュタグリカツとしてインスタグラムなどで発信するためのアップデートなんですよ。
なるほど。人形遊びがSNSを通じた大人の自己表現のツールに進化したんですね。
そういうことです。
私が資料を読んでいてここからが本当に面白いなと思ったのは、この市場の価格設定の謎なんです。
ほう、価格設定ですか。
気だる塗装って300円のガチャガチャで手軽にコレクションを楽しむ一方で、平気で3万円以上するプレミアム商品にも投資しますよね。
ええ、しますね。
普通大人になればコスパに厳しくなるはずなのに、おもちゃに対してはなぜこんなに財布の紐がよろむんでしょう。
そこがまさにアイデンティティへの投資だからです。
アイデンティティへの投資。
はい。大人は子供向けの安い代用品を求めているのではないんです。
なるほど。
自分のこだわりを満たして自分の好きな世界観を完璧に再現してくれる高品質なものであれば、
ええ。
それはもう趣味や自己投資と同じ扱いになって適正な対価を払うんですよ。
なるほど。もはやアートを買う感覚に近いのかもしれませんね。
ええ、まさに。
そしてこの高品質化に拍車をかけているのがテクノロジーとの融合だと資料にはありました。
はい、そこも大きなポイントですね。
でもテクノロジーが進化すればするほど、逆に物理的なものであるおもちゃの価値って何か下がるんじゃないかと思っていたんですが、
ええ。
実際はどうなんですか。
実は全く逆で、テクノロジーが物理的なおもちゃの価値を劇的に拡張しているんです。
拡張している。
はい。今、物理的なフィジカルとデジタルの境界が曖昧になるフィジタルな体験がトレンドになっています。
フィジタル、具体的にはどういうことですか。
例えば、私たちが子供の頃に熱中したたまごっちです。
おお、たまごっち、懐かしい。
最新のたまごっちUにはWi-Fiを搭載していて、世界中のユーザーのたまごっちと交流できるメタバース空間、たまバースと連動しているんです。
え、あの小さな白黒画面でうんちの掃除をしていた孤独な遊びが、今やグローバルなメタバースにつながっているんですか。
そうなんです。物理的なデバイスを手元に所有する喜びと、デジタルの無限の広がりが融合しているんです。
それはすごいですね。
レゴでも、組み立てたブロックをスマホのAR、拡張現実ですね、それでスキャンしてゲームの中で動かせるような連携が進んでいます。
それはずるいですね。物理的なものの温みや所有欲を満たしながら、デジタルでしかできない体験も味わえるなんて。
ええ、本当にうまくできています。
リスナーの皆さんも自分の身の回りを思い返してみてください。スマホと連動するからこそ手放せなくなっている物理的なアイテムって意外とたくさんありませんか。
確かに、スマートウォッチなんかもそうですよね。
テクノロジーは敵ではなく最高のアドオンなんですね。
その通りです。物としての価値をテクノロジーがさらにブーストしている状態といえます。
さて、ここまで禁だる市場の現在地を見てきましたが、今後はどうなっていくんでしょうか。
ええ。
一家制のブームで終わるのか、それとももっと広がっていくのか。
これからの市場を占う売れで重要なのは社会的な需要度の変化ですね。
需要度ですか。
はい。かつてのオタク文化ってどちらかというと内向きで、限られたコミュニティの中だけで楽しむイメージがありましたよね。
確かに。昔は大人がアニメグッズやおもちゃを集めていると、ちょっとキーな目で見られる空気がありましたよね。
ええ。でも今は推し文化にシフトしています。
ああ、推し活ですね。
そうです。SNSを通じてこれが私の推しですと堂々と発信して、世界中の人とつながることが当たり前になりましたから。
なるほど。この隙を隠さない文化の定着が禁だると市場を後押ししているわけですね。
ええ。そしてこれをより大きなビジネスの視点で捉えると、市場の安定化という極めて重要な構造変化が見えてくるんです。
安定化ですか。
韓国の市場調査が非常に示唆に富んでいるんですが、今、おもちゃ市場ではツースピード市場と呼ばれる現象が起きています。
ツースピード市場。スピードが二つあるということですか。
はい。一つ目は子供向けのヒット商品やアニメの流行による瞬間的な需要のスパイクというスピードです。
そして二つ目が大人による習慣的で計測的なコレクション需要というスピードなんです。
なるほど。従来のおもちゃ業界ってクリスマスや子供の誕生日に売り上げが極端に依存する季節性の強い吸い物ビジネスだったわけですね。
その通りです。おもちゃメーカーは年末の商戦に1年分の社運をかけるような戦いをしていましたから。
しかし、キンダルトという大人のコレクターが参入したことで、彼らはクリスマスを待たずに欲しいときに1年中おもちゃを買ってくれます。
確かに。大人はボーナスもありますしね。
そうなんですよ。これによっておもちゃ業界に通年で安定した収益基盤が生まれたんです。
これはビジネスモデルとしてめちゃくちゃ強力ですね。
つまり、通年での安定したキャッシュフローがあるからこそ、企業はクリスマス商戦の剥奪に頼らずに、
ニッチで高品質な大人向け商品の開発という新たなリスクを取ることができる。
完璧な好循環じゃないですか。
まさにその好循環が今の市場を力強く牽引しています。
さらに、この舐めは他業界へも波及しているんですよ。
他業界にも?
クロスインダストリーの動きですね。
例えば、カンロのピュレグミがバンダイのガシャポンで可愛いリングのコレクションになったり。
あー、見かけたことあります。すごく可愛いんですよね。
ええ。さらにはアパレル、旅行、ホテル業界までが気だる塗装をターゲットにしたコンセプトルームやツアープランを打ち出しています。
お菓子とおもちゃの境界線が解け、さらには旅行やライフスタイル全般にまで広がっている。
はい。
気だるとはもはや、玩具業界の枠を超えた巨大な経済圏になりつつあるんですね。
間違いないですね。
さて、あっという間に時間が来てしまいました。
最後に今回の深掘りを振り返って、これは私たちにとって何を意味するのでしょうか。
ええ。
気だると現象は、ただ大人が子供帰りしているわけではないんですよね。
全く違います。
現代のストレス社会において、自分らしさを保つための自己表現であり、心を癒すセラピーなんです。
なるほど。
そして何より、年齢や世間体にとらわれずに、自分の好きなものを堂々と好きだと言える、多様性の需要が進んだ成熟した社会の結果だと言えますね。
大人はこうあるべき、という見えない鎧を脱いで、純粋な遊び心を取り戻す、それが気だるとなんですね。
はい、素晴らしいまとめだと思います。
ありがとうございます。最後に、リスナーのあなたに一つ考えてみてほしいことがあります。