岩田さんは印刷の世界なので、木版画の方ですね。
以前にも常さんのお仕事は見ていただいているような。
一応今日はオンラインでつないでますけど、常さんとは先月ですよね。
一回直接東京でお話しして、いろんなお話を印刷屋の立場から聞かせてもらいましたけど。
すみません。訂正で千蛇札と言っちゃったのを千蛇札と訂正していただきつつ。
千蛇札なんですね。
千蛇札。
千万、十万とかの千と八代、あとは札荷と書いて千蛇札という。
僕も千蛇札と思っていました。濁ると思って。
千蛇札。
千蛇札だとちょっと濁るんで、千蛇札って言ってますね。
大柔軟。
ってことですね。すみません。勉強になりました。
ごめんなさい、話を途切らしてしまって。
今、プロフィールの中で堀氏っていうことですけども。
僕、この倉田氏ラジオで印刷関係担当みたいな感じで、たまに印刷の話をさせてもらってますが。
正直、木版印刷と言っていいのか、木版画のことって、はっきり言って全然知らないので。
今日は常さんのことも、個人の作られてることとかもお聞きしたいんですけど。
まずは木版画とか、その業界というか世界って何ぞやっていうところから勉強したいなっていう感じなんですけど。
すみません、今、逆に僕も純粋に知りたいんですけど。
お仕事で木版画をやってる工房があること自体に驚いてるんですけど、どういう感じのお仕事なんでしょう?
東京と大きく分けて京都にあるんですけど、東京と京都でもちょっと仕事の内容が違いまして。
東京だと浮世絵の復刻だったり、戦車札っていう江戸の文化なんで、あとポチ袋とか。
ポチ袋なんですね。
京都になると、それプラスあとセンスの文化があるんで、センスを木版で作ったりしますね。
へー。
センス繋がりっすね。
うたさんもセンスのお仕事で。
そう、だから僕はその中でもバッタモンっていうかね、木版よりオフセット印刷なんで僕がやってるのは。
バッタモンって言うとセンス屋さんに悪いな、訂正しますけど。
訂正多いですよ。
だから僕の場合はセンスっていうところで、僕の仕事の中ではオフセット印刷でセンスの絵柄を作る仕事をしてるし、同じセンス屋さんが木版で作るセンスも作ってるっていうことで。
だから今ちょうどオフセット印刷と木版画の印刷の話出たんですけど、圧倒的に生産性みたいなのが変わりそうだなって素人目には思うんですけど、木版画ってどれぐらいのものを一つの版で作ったりするんですか?
どれぐらいのものを一つの版で。
例えばセンス何個分とか。
それは、絵柄に何色入ってるかとか、注文される方のデザインによりますよね。
でも全て手作業なんで、時間はすごくかかりますね。
そうですよね。
木版画全体の話もちょっとお伺いしたいなと思ったんですけど、まず原案というか絵柄みたいなものはあるわけなんですよね。
昔の浮世絵とかの複製とかになると、元々その時代に作ったもののリプロダクションっていう形で、
今の現代の絵描きさんに描いてもらったものとかは新規で作る新しい浮世絵版画として作っている。
全体の工程みたいなのは、絵があります、一応彫りしてお伺いしているので、常谷さんがそこをいきなり彫っていくっていう感じなんでしょうか?
そうですね。絵師の前に阪本っていうところがありまして、阪本さんがこういう絵を作ろうよっていうそういうのを企画して、
その絵師を選んで、こういう絵師だったらこういう彫り師が適任だなっていうので、
京都にいる職人さんの中で振り分けするんですよ。
で、水師の方が最後すったら、またそれが阪本さんに戻って、その絵描きの人と合成をするって感じです。
じゃあ基本的な分業構造とした阪本、絵師、彫り師、すり師っていうこの4プレイヤーっていうことですか?
そうですね。
で、その中で常谷さんは彫り師で。
そうですね。彫りの方をやってますね。
じゃあすり師の方は結構存在感は常谷さんのポジションからはちょっと遠い感じですか?
いやもう本当にすり師とは何だろう、コンビじゃないといいものはできないです。
なるほどなるほど。
どういう理由?
うーん、まあ何て言うんだろうな、彫り師って料理で言ったら本当に良い材料を提供しているだけなんで、
すり師の人がそれを調理するっていう形なんで、その調理の仕方が違うと全然違うのができちゃうんで、
感覚だったりちゃんとコミュニケーションが取れるっていうのがやっぱり大前提です。
なるほど。
なんかもう普通に印刷ってありふれたものになっちゃいましたけど、
入校したら終わりって世界だと思うんですよね。
普通、例えば雑誌とか。
だからその後の、例えば一回擦ってみてちょっと調整みたいなこともしたりするもんなんですか?
しますね。
もちろんその構成の段階で色味だったりちょっと形だったりを全部修正して、
時計が出てから本釣りをするっていうことですね。
もうその時点で掘っちゃってるけど、やり直しをする?
手直しって感じですかね。もしあれば。
例えば掘りの方は修正ないけど、釣りの方では色ちょっとこういう風にしてとか。
その構成の段階で全部掘りも釣りもチェックするって感じですね。
岩田さんどうですか?この印刷の。
例えばオフセット印刷の場合ね、もうほとんどの仕事はCMYKっていう4色の掛け合わせで色を作るわけですけど、
木版の場合はそこの顔料のそれぞれの版ごとの色分け自体。
っていうかこういうテクニカルな話にいきなり進んでいいのかちょっと番組の構成的に心配になってきたんですけど。
っていうところで、すごい今の話で気になるのは誰がイニシアティブを取るんだろうなっていう。
多分物によって違うと思うんですけど、版元がこの色はいいよねっていう判断をするのか、絵師がするのか。
場合によって掘り師がするのか、擦り師の判断に任せられているのか。
一番重要室の絵師の意見ですよね。
あ、絵師なんですね。
掘り師と擦り師はその意見は言える感じはないんで。
はいはいはい。
絵師の解体に忠実に近いものをやるっていうのは。
そっかそっか。それで言うとだから僕がやってる仕事ともなんか通じるものが、やっぱり原画が全てなんで。
そうです。
原画をいかに再現するかっていう。
そういう共通のゴールに向かうみたいな感じ。
木版画って伝統版画と創作版画って大きく分けると2種類あるんですけど、
伝統版画はやっぱりそういう忠実にっていう。
創作版画は色がちょっと違っちゃっても全然気にならないっていうか、別にOKって感じなんですけど。
正解がそんなに別にどうですかね。
そのたまたま出てしまった感じがまた面白いよねってポジティブにお伝えすると。
いやなんか、そんなアナログなんだと思って。
アナログだとは思ってたんですけど、結構もうそばにいないとダメぐらいの感じですね。
いやー。
そうでもない?
そうでもないですね。
一回できたものを送って、見てもらって、コメントもらってってことがある。
基本そうですね。
彫り師と擦り師が一緒に仕事をしてるっていう環境がそんなになかなかないんで、
彫り師は彫り師の工房、擦り師は擦り師の工房って分かれてるんで。
工房の、だってね、必要な器具自体も違うもんね。
これ例えばですけど、京都だと、
センス屋さんって割と結構集まってるんですよね、エリア的に。
いわゆる藩元に近い立場のいわゆるセンス屋さんのあるエリアって、
京都の中でもある一定のところにまとまってるし、
それの分業でそれぞれやる業者さんも、
割と近いところに距離的にいたりするんですけど、
例えば別の分野だと、例えば西陣っていうエリアに、
折物のいろんな工程の業者さんが集まってるみたいなのがありますけど、
東京の場合も、木版画関連の工房がここには集まってるみたいなエリアがあったりするんですか?
特にないですね。結構バラバラですね。
そもそもまだそういう常さんがおられるような工房って残ってるものなんですか?
ありますね。
結構あります?
結構でもないんですけど、東京と京都で合わせて10軒ぐらいですかね。
なるほど。
多いのか少ないのか分かんない。
多いのか確かに、多いのか少ないのか分かんない。
一応僕京都は2軒ぐらいしか頭に浮かぶところがないんですけど。
そうなんですね。
東京と京都にしかなくて。
そんなことなくて、東京で修行してた人がその人の生まれた土地で地元でやってるとか。
やっぱり素人的には木版画の歴史とかっていうと浮世絵とかのイメージをすごいするんで。
そうするとやっぱり江戸の文化っていう勝手なイメージが湧く。
ですよね。
そういうのだったら東京に結構まだ残ってるのかなっていう感じも。
でも若い方とかも修行に入られている方が何名かいますけど、そんなに多いっていう感じはないですね。
そうっすか。知らないことだらけで。
そもそも私版物ってなんだろう。
版物って何からそんな話します?
だってプロデューサー的ポジションなのかなと思って今で言う。
版元って要するに出版社っていう。
そうですね。今で言う現代の出版社ですね。
だから企画を考え、漫画で言うとこういう。
漫画で言うと衆影者とか。
そういうとこになっちゃうんですけど、版元って話で言うと。
ちょうどあれですよ。もう2024年も終わりに近づいてきていますけど、来年の大河ドラマが、津田谷十三郎って人なんですよね。
全然知らないです。
知ってますか?この人。
知らないです。
他の津田谷ではないの?
多分ね、版元っていうものを作った人ですね。
へー。
めっちゃトリビア。
多いね。
江戸時代の後半に近い方になるのかな。
江戸時代の後半に、宇多摩呂とか、シャラクとか、広茂とか。そういう浮世絵の有名な絵師たちを集めて、こういう絵描きみたいなのを企画して、本にしたり広告にしたりみたいなことをやった人。
そうなんですか。
ぐらいの知識しかないですけど。
塩子さん大丈夫ですか?版元とは。
分かってきた。
津田谷って人は、津田谷書店の津田谷さんではない?
直接関係ないですけど、むしろ津田谷がリスペクトして津田谷って付けたみたいな感じみたいですよ。
そうなんだ。
大阪の方はですよね。もともと確か。
それだけ影響力があったって人なんよね。
だから浮世絵だけじゃなくて、里見八犬伝の滝沢馬球とか、ああいう人の出版物とか企画したり。
じゃあ普通に読む本を印刷してたってことですよね。
最初は吉原のガイドブックみたいなのを作ってたみたいな。詳しくは来年の大河で。僕これ以上は分かんないです。
阪本っていうのがだいぶ分かってきました。
津田さんは阪本に所属する堀市なんですか?
修行に入ったらたまたま阪本だったって感じなんですよ。もう全然わからない世界で。
堀の修行入りたいって紹介されたところが阪本なんです。
さっきプロフィールにあった高橋工房さんですか?が阪本なんですね。
高橋工房さんでやられてるお仕事っていうのは、いわゆる自社企画もあれば、さっきおっしゃってみたように依頼されて何かをやるっていうこともあるんですか?
そうですね。その両方ですかね。
依頼してくるっていうのは、センスもそうだけど。
だし、例えばオリジナルの版画を作りたいっていうので、こういうの作れますかっていうので相談に来て。
これ結構塩さん、ゲストの方に発注しがちなんですけど。
松田?
塩さんがね。あり得るんですか?こんな版画作れますかって。
ある。
ある。
ある。
まあ、そんなんでも一応ご相談はできるってことですもんね。
でもさ、やっぱりこう、元の絵がちゃんと版画として成り立つ絵なのっていうのは問題じゃない?
無邪気に写真みたいなの持ってって、これを版画にできますか?みたいなそんな面倒くさい話とかってどういうふうにお受けしたい?
それはその本元が判断して、これ木版画に向き不向きっていうのを、例えばこういうふうにしてった方がいいですよとかアドバイスしながら少しずつ変えるとか。
逆にこれは完全に木版向きじゃないから他の印刷の方がいいって断るパターンもあると思うんですよ。
うちじゃないんですけど、岩田さんって人が京都にいる、なんせやってくれそうなんでみたいな。なるほどっすね。
さっきその伝統版画と新作版画っていうのは。創作家っていうのがお話ありましたけど、
その伝統版画っていうのはいわゆる宇多摩路とか広茂とか北斎とかの有名な浮世絵の名作みたいなものを吸ってくれみたいな話ですか?
伝統版画の場合は材料とかも100年以上変わらず同じものを使っている。技法とか。
掘るのは掘り師、するのはすり師って文行なんですよ。
創作版画の場合は全部一人の人がやる。文行じゃない。
そうなんですか。掘るのもするのも自分でやる。
じゃあ常さんはその創作の自分で吸ったりみたいなのをやったりもするんですか?
僕は自分ではやらないですね。伝統版画の方で絵師と掘り師は自分でやって、
手裏はすり師のお願い師って伝統版画の作り方で自分のを作ってます。
なるほどなるほど。
ある意味新しい手法。
何も知らんから全部が新しいですよ。
全部聞いて私はもうやっと追いついてきた感じだけど。
ちなみに顔料とかってさっき伝統的なっておっしゃってたんですけどどういう顔料を使ってるんですか?
本当の江戸時代とか本当の大昔は例えば黄色を使いたいって言ったらウコンってありますよね。
あれを煮て黄色を抽出して全部自然のものでっていう感じだったんですけど
当時のものって色の対象が結構すごいひどいっていうか。
経年で変わっちゃうってことですね。
あと今もしやろうとするとものすごく高価、高くなっちゃうんで岩絵の具が結構メインですね。
じゃあ日本画と似てる?
日本画と近いです。
絵の具の材料ですね。
テキスタイルの染めで黄色出すときウコン使うか。
サフランとかですよね。
昔はあまり変わらなかった。
とはいえ岩絵の具もまあまあ高いですよね。
普通の合成の染料から比べたらそんなイメージありますけど。
そんなバンバン使えるようなイメージはないですけどね。
常さん的にはそういうもんみたいな表現ですかね。
もうその世界におられるからあんまり染料のコストみたいなのは。
ただ昔のものって色が消えていっちゃうっていうのを想像しないといけないじゃん。
昔はこうやって作られていたからこの色だったんだろうって想像しなきゃいけないってことですかね。
そうです。
複製の場合、例えば江戸時代に作られたものをまた新しく神経で作ろうってなった時に
それも刃元のスタイルなんですけど
例えばそれを忠実に退色したのを複製するのか
実はもっとこういう鮮やかだったんじゃないかっていうその想像で
複製するものよりもっと明るめに作るっていうパターンがありますね。
なるほどですね。
あとこれは聞くのが失礼になってたらあれなんですけど
例えばそういう伝統の絵面でも何でもそうなんですけど
刃元が木版画で再現するか
いわゆる現代的なオフセットでやってしまえみたいな
それ両方あり得たりするものなんですかね。高橋工房さんは。
木版に関して浮世絵とかに関してはやっぱり木版画オンリーですね。
そういうことなんですね。
ちなみにさっき顔料の話出てきたんですけど
もうすべてだから木とかする道具とかも江戸時代から変わらない。
全部変わらないですよ。
僕は堀市が使うギターも山桜っていう材料なんですけど
ずっとそれ使ってますし
全部変わらないです。
結構手に入れづらくなったりとかしませんか。
全然いいものがなくなっていってますね。
だって分かりきって話しちゃうけど
温暖化とかで木の種類が変わってくるんじゃない?今後。
いろんな伝統工芸で植物に関わる人たちと
だんだんいろんなものがなくなってきたっていうのをチラホラ聞くからね。
自分が修行に入ったのは15年ちょっと前なんですけど
その当時に掘ってた板とかの方が掘りやすかったなって。
15年前で自分がまだ始めてるばっかだから
15年経ったら
むしろ腕が上がってて
毎回木って違うんで掘った感触とかも全然違うんですよ。
例えば板屋さんに板注文して
その中で自分が板の目とか色味とかをもった感じとか
重さが軽いと水分が抜けちゃって
油も抜けてるから結構バサバサして掘りづらいんですよ。
いいのを見ながら選んで掘ってるんですけど
昔掘ったやつの方が掘りやすかったなっていうのもありますね。
当たり前のように今と昔の話を聞いてるんですけど
倉田市ラジオでいろんな伝統技法とかを
引き継いでる方に共通する話なんですけど
基本的にビジネスが細まってるっていうのが
現代ほとんどなくても継ぐのが大変とか
そういう話が結構あるあるというか
ほぼそれがベースで話を聞くことが多いんですけど
木版画が残ってる理由ってなんだろう
そんなに普通に存在してるもんなんですかね
もともとは印刷技法の一つだったと思うんですけど