酸素の供給がないATPがどんどんなくなっていくと、収縮したまんまの状態になっちゃう。これが硬くなってしまう死後硬直というメカニズムなんですね。
この死後硬直はATPが分解され始める頃から徐々に起こって、筋肉中にATPがなくなる頃に最も硬くなると。最大の死後硬直ということですね。
死後硬直は、閉めた直後、魚を釣って、血抜きとかした状態の魚というのは柔軟性があるんですけども、
最大硬直、ATPがなくなる頃に最も硬くなるんだけども、これを最大硬直時に達すると、頭を持って魚体を横にしても、
尾っぽは垂れ下がらないほどになるぐらい固まっちゃう死後硬直しちゃうということなんですね。
死後硬直はどんな魚でも起こるんですけども、開始時間や持続時間は魚種や大きさ、貯蔵温度、生きている時に持っているATPの量、
ATPの分解スピードなど様々な条件によって変わってくるんですね。魚種によって変わるということなんですね。
動物が持っているATPの量は、ほとんど体の大きさに比例してるんですね。
なので一般に魚体が小さいほど、ATPは少ないので硬直は早く始まって、持続時間も短くなっちゃうということなんですね。
例えばハゼのような小さな魚は、死後数分で硬直が始まるんですけども、マダラは硬直するまでに2〜8時間かかると。
魚の占め方によって、死後硬直に至る時間は異なるんですけども、大体の目安として、死んでしまってから2〜3時間ほどで硬直が始まると言われてるんですね。
そしてATPの分解スピードは、カツオやマグロなどの赤身魚やタラ類は早く、足が早いと呼ばれる魚は腐りやすいということですから、
硬直の持続時間は短い。ATPの分解速度が早いから。
ヒラメやマナイなどの白身魚は、硬直する時間は遅いし、持続時間も長いと言われてるんですね。
魚の化学と呼ばれる本によると、生け締め後、0度で貯蔵したハマチは硬直開始が2時間後で、持続時間は約20時間ということなんですが、
ヒラメでは3時間後に硬直が始まって、約70時間も硬直状態が続くと言われてるんですね。
もちろん同じ魚でも貯蔵温度が異なれば、硬直開始時間や持続時間が変わっていくということで、
マイワシやマサバなどの足の速い魚は、硬直開始時間が1時間で、持続時間は10時間ですし、
マゴチは硬直開始時間が7時間で、持続時間は72時間なので、マナイも結構長くて、
硬直開始時間が4時間で、持続時間が56時間ということで、魚種によってATPの量も違うし、分解速度も様々だし、貯蔵量って変わってくるんだけども、
そういったことがよく言われているということなんですね。
このATPが分解されていくと、どんな物質になるのか。
筋縮縮の時は、ATPからADPに分解されて、ミオシンが悪心引き寄せて、筋肉を縮縮するんだけども、
このADP、時間が経っていくと、ADPはさらにですね、AMP、アデノシン1リン酸、リン酸また1個減りました。
IMP、イノシン酸で、イノシンになり、ヒポキ酸鎮へと分解されていくんですね。
ATPがADP、AMP、IMP、イノシン、ヒポキ酸鎮へと分解されていくわけなんですね。
このIP、IMPっていうのはどういうものかっていうと、カツオ節の主な旨味成分で、
このIMPは非常に旨味成分ですから、硬直してATPからIMPに分解される時間、時が最も美味しいと言われているんですね。
なので、締めた直後よりも、そういった分解されていって旨味成分が出る、硬直中の方が、死後硬直で硬くなった時の方が、魚は美味しいとされているんですね。
この硬直していって、この硬直の期間が過ぎると、今度は逆に解凍と、硬直が溶けて柔らかくなることを解凍と言うんですけども、
筋肉がまた柔らかくなるんですよ。難化と呼ばれます。なので、硬くなって持続時間が終わると、今度は逆にまた筋肉が柔らかくなるということなんですね。
この筋肉の解凍と難化の詳細な仕組みについては、現在のところまだ完全に解明されていないんだけども、
この解凍になった時、タンパク質分解酵素の作用によってタンパク質が分解されたり、組織の構造が脆くなったりすることが原因と考えられていて、
硬くなってまた柔らかくなると。この筋肉の難化が始まると、魚自身が持つタンパク質分解酵素によってタンパク質が分解されていって、これを自己消化と言うんですね。
この自己消化が進むと筋肉はさらに柔らかくなって、体の中、魚体に付着していた微生物が急速に繁殖をし始めて、
そして微生物の繁殖が進むと腐敗臭や毒性が出てくる。腐る、腐敗するというような状態になると。
締めた直後はまだ柔らかいので、死後硬直する。さらにまた硬直時間の持続時間が過ぎると解凍。
今度は死後硬直が溶けていく。柔らかくなると、魚体に付いた微生物が増えて腐るという状態になるんですね。
なので、魚は体は死ぬと、死後硬直が溶ける、解凍、軟化、自己消化という過程を経て、最終的には微生物の繁殖によって腐敗に至るという流れなんです。
なぜ硬くなるかというと、ATPを分解するスピードで、ATPの供給が無くなると硬まったまま、筋肉が収縮したまま、その状態が死後硬直ということで、死後硬直よりもちょっと置いた方が良い。
硬直中にATPがIMPの旨味に変わると、刺身が美味しくなるということなんです。
牛肉や豚肉は、筋肉が柔らかくなった時に腐敗を気をつけながら熟成させて食べるので、肉によって加工の仕方が違うんです。
硬直の状態で食べちゃうと筋肉は硬いので食べられないから、それを軟化してから熟成させるというのが、肉の特徴によって分けているんだけど、魚の場合は硬直している時が一番美味しいということと、硬直している時には寝かした方が旨味が出るので美味しいということなんですね。
ということで、魚の話をしていると食べたくなりますし、刺身とか生で食べる場合は硬直して旨味が出る頃、魚によって違いますから、それを調べながら最適な処理の仕方と最適な保存の仕方をやると、より美味しく食べれるかもしれません。ということで、今日はこの辺にしたいと思います。
それではみなさん、さよなら。バイバイ。