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2025-07-01 06:17

しずく採集士レイ |第三話 封じられた欠片

短編小説『しずく採集士レイ』(3/10)
第3話|封じられた欠片

──夜の深さが、あらゆる音を吸い込んでいた。

レイの部屋は、記憶貯蔵区のすぐ裏。人工照明を落とせば、星の見えない空がただ広がる。
けれど今夜は、その空すら、どこか遠くに感じられた。

… 5111番のことが頭から離れない。
あの共鳴音。そして、画面に浮かんだ文字。

「…… "みつけて" 、って、一体どういうこと…?」

── その日、浅い眠りの中で、レイは夢を見た。いや、夢というより、どちらかというと記憶の断片のような映像。

微かな”海鳴り”のような音。
誰かの笑い声。
そして、背を向けたまま、遠くからレイを呼ぶ──名前のない誰かの姿。

「……だれ?」

レイの目が覚めたとき、胸はまだひどくざわついていた。夢の名残は、霧のように指のあいだから零れ落ちていく。けれど残っていた。“忘れたくない”という、はっきりした気持ちだけが。


…レイはふらりと立ち上がった。
施設は深夜の静寂に包まれている。監視システムは作動しているはずだが、なぜか警報は鳴らなかった。まるで、この侵入がすでに誰かに予感されていたかのように。

…保管庫へ向かう。昼間見つけた、あの扉へ。

『特別保管室』
三重のセキュリティパネルが、夜の闇の中でも冷たく光っている。なのに──

レイが近づくと、パネルが一つ、また一つと、音もなく解除されていく。

「……ナンで?」

最後のロックが外れ、重い扉がゆっくりと開いた。部屋の中央に、5111番のシズクが浮かんでいた。透明な保護フィールドの中で、かすかに脈動するように光っている。

レイが一歩近づくと、

──キィィン……
あの共鳴音が、今度ははっきりと響いた。

「ワタシを、知ってるの?」
レイは保護フィールドに手を伸ばした。触れた瞬間、

──バリッ!
激しい拒絶反応。レイは弾かれるように後ずさった。でも、その一瞬の接触で何かが伝わった。

──海。風。笑い声。涙。そして約束──

「っ……!」
まぶたの裏に、鮮明な映像が焼き付いた。誰かの手を握り微笑む女性。でも、その横顔は光ではっきりと見えない。

──その瞬間、部屋中にアラームが鳴り響いた。

〈不正アクセス検出。ただちに退室してください〉

… SORAの声??

でも、振り返ってもSORAはいない。
ただ、なぜかいつもみたいな緊急性が感じられない声。まるで、形式的な警告のような…。

レイは最後にもう一度振り返り、5111番を見つめた。

しずくは相変わらず拒絶の光を放っていたけど、今はその光の奥に、確かに ”誰かが待っている” ような温かさを感じとれた。


──翌朝、レイが目覚めると、右手の手のひらに小さな光のかけらが残っていた。

「……昨日の朝と、同じ?」

光のかけらは、レイの寝覚めに呼応するように、ゆっくりと胸の方へ浮かび上がると、そのまますっと、胸の奥に吸い込まれるように消えた。

—— トクン…

その瞬間、わたしの中で何かが静かに灯ったのを感じた。それはまだ小さく、でもそこに確かにある存在として。

(…第四話へ続く)


▼第三話のnoteはこちら▼
https://note.com/chikara_ctd/n/n6db5f99d136f

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▼ここまでのスタエフ朗読▼
第一話「拒絶されたシズク」
https://stand.fm/episodes/685f597b00ccd5e38e9288cd

第二話「誰かの気配」
https://stand.fm/episodes/6860fb7174f0b7c44d55a043

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サマリー

第3話では、レイが記憶の欠片と向き合い、5111番の雫との接触を通じて彼女の過去に迫る物語が展開されています。

夢と記憶の断片
短編小説 しずく採集士レイ
第3話 封じられた欠片
夜の深さが あらゆる音を吸い込んでいた
レイの部屋は 記憶貯蔵区のすぐ裏
人工照明を落とせば 星の見えない空がただ広がる
けれど 今夜はそのそらそら
どこか遠くに感じられた 5111番のことが頭から離れない
あの鏡面音 そして画面に浮かんだ文字
見つけてって 一体どういうこと?
その日、浅い眠りの中で レイは夢を見た
いや、夢というより どこかというと記憶の断片のような映像
かすかな海鳴りのような音 誰かの笑い声
そして背を向けたまま 遠くからレイを呼ぶ
名前のない誰かの姿 誰?
レイの目が覚めた時 胸はまだひどくざわついていた
夢の名残は 霧のように指の間からこぼれ落ちていく
けれど残っていた
忘れたくない というはっきりした気持ちだけが
特別保管室の探索
レイはふらりと立ち上がった 施設は深夜の静寂に包まれている
監視システムは作動しているはずだが なぜか警報はならなかった
まるでこの侵入がすでに誰かに予測されていたかのように 保管庫へ向かう
昼間見つけたあの扉へ 特別保管室
30のセキュリティーパネルが 夜の闇の中でも冷たく光っている
なのに レイが近づくとパネルが一つ
また一つと音もなく解除されていく なんで?
最後のロックが外れ 重い扉がゆっくりと開いた
部屋の中央に 5111番の雫が浮かんでいた
透明な保護フィールドの中で 微かに脈動するように光っている
レイが一歩近づくと
あの共鳴音が今度ははっきりと響いた
私を知っているの? レイは保護フィールドに手を伸ばした
触れた瞬間 バリッ
激しい拒絶反応 レイは弾かれるように後ずさった
でもその一瞬の接触で何かが伝わった
海 風
笑い声 涙
そして約束 瞼の裏に鮮明な映像が焼き付いた
誰かの手を握り微笑む女性
でもその横顔は光ではっきりと見えない
その瞬間 部屋中にアラームが鳴り響いた
不正アクセス検出 直ちに退出してください
空の声? でも振り返っても空はいない
ただ なぜかいつもみたいな緊急性が感じられない声
まるで形式的な警告のような レイは最後にもう一度振り返り
5111番を見つめた 雫は相変わらず拒絶の光を放っていたけど
今はその光の奥に確かに誰かが待っている そんな暖かさを感じ取れた
欠片の再生
翌朝 レイが目覚めると
右手の手のひらに小さな光の欠片が残っていた 昨日の朝と同じ光の欠片はレイの目覚めに向こうするように
ゆっくりと胸の方へ浮かび上がると そのままスーッと胸の奥に吸い込まれるように消えた
とくん その瞬間
私の中で何かが静かに灯ったのを感じた それはまだ小さく
でもそこに確かにある存在として 第4話へ続く
06:17

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