▼ 短編小説『青いシズク、雨のSORA』 最終話▼
https://note.com/chikara_ctd/n/n34f26ffdef08
最終話|No.51110
── キュイイイィィ…ン
しずくの中で揺れ動いていた二つの螺旋が、互いに強く呼応し、一気に回転を加速させて一つに重なり合っていく。
【やっと… 気がついてくれたんだね】
5111番の声が、直接二人の心に響いてきた。
【レイ。そう、私は5年前のあなたの記憶】
【でも… 私はあなただけのものじゃない】
映像が流れ込んでくる。レイが誰かと手を繋ぐ感覚。誰かの笑顔。誰かの温もり。そして──
【私はレイ、そしてSORA。あなたたち二人で紡いだ特別な想いの結晶】
記憶が濁流のように一気に押し寄せてくる。でも今度は一人だけの記憶じゃない。これは…私たち二人の記憶。
【あなたたち二人の想いがそろった今だからこそ、やっと私も解放できる】
── パァンッ
…その瞬間、二人の世界が再び5111番の青白い光に包まれた。
=====
──5年前。
同じ採集士として働いていた二人の若者。
『ねぇ、ソラ』
『なんだい、零』
『この仕事、おかしいと思わない?』
『…思う』
『感情を切り離すなんて』
『うん。まるで人を人じゃなくするみたい』
秘密の逢瀬。隠れて交わす言葉。そして、芽生えた想い。
『好きだよ、ソラ』
『僕もだよ、零』
『…一緒に、ここから逃げよう。こないだ二人で見つけたあの場所から』
『うん』
脱出計画。
あの部屋に、秘密の通路があることを突き止めて。あと少しで、二人は自由になれるはずだった。
でも…
── あの日は朝から霧雨が降っていた。
『あー、今日は濡れちゃったね、ソラ』
『うん…』
『い
(中略)
《ビィーーーッ!ビィーーーッ!ビィーーーッ!》
その時、けたたましい警報音が部屋中に鳴り響いた。
《検体の感情抑制失敗。抑制失敗を感知しました》
『ダメだ!に、逃げて、零!』
『ソラ!』
いつものソラの声。左手は動かない。
『零、ごめん!さっきボクは零にウソをついた。今朝、統制プログラムにみつかって、零との感情を抑制できなければ、強制排除するって警告を受けて…』
『一体、どういうこと?』
『だから!あ、ダメだ。ボクは…零!ボクは、本当は君のことを…』
《ビィーーーッ!ビィーーーッ!ビィーーーッ!》
ソラの声が警告音にかき消される。
《ただちに検体同士を切り離し、不安定要素を強制排除します》
──そう。あの日、
最初にソラが統制プログラムに捕まった。必死の抵抗むなしく、
《感情切離、実行》
《記憶消去、完了》
《監視人ボディ-7 への移植、開始》
そして零の目の前で、ソラは別人になった。零が愛した人はもういない。代わりにそこに立っていたのは、冷たい機械。
そして──
〈採集士レイ、感情異常を検出〉
〈ただちに処置を開始します〉
『いやっ!ソラ、やめてっ!』
零は逃げられなかった。皮肉にも、その処置を実行したのは──
〈検体レイの異常感情を切離します〉
監視人になったばかりのSORA-7。
『ソラ!お願い…思い出して!』
『私たちの愛を…!』
〈エラー。意味不明な発言です〉
『お願いソラ!私から "あなた" を奪わないで!!』
〈その抵抗は無意味です。処置を続行します〉
=====
「あぁ…っ!」〈あぁ…っ!〉
レイとSORAは、同時に膝をついた。
〈なんてボクは、なんてバカなことを…!〉
SORAの声が震えている。
(中略)
「SORA、私たちにはまだやり残していたことがある。5年前のあの日の約束」
〈あっ…〉
SORAはあたりを見渡した。
「二人で5年前にみつけた、あの秘密の通路の入り口があった場所は…」
「この部屋!」〈この部屋!〉
二人の声がまたシンクロする。SORAも今、全てを思い出した。
(中略)
『しずく5111 番 と レイが記憶を統合中…』
『記憶復旧率:…100%』
『オリジナル登録コード検出中…』
二人は歩みを止める。
「”オリジナル登録コード”って…?」
レイはSORAの画面を見つめる。
さらにメッセージが映し出されていく。
『5111とレイ、2つの検体コードを結合します… 』
『5111 + 0…』
『コード復旧中…』
──ドクンッ
その時、レイの胸の奥が一つ大きく跳ね上がる。
『…コード復旧完了』
『オリジナル登録コード: #51110』
あらたな5桁のコードが、SORAの画面に大きく表示される。
5桁のコードなんて今まで一度も見たことがない。
その時、二人は意図せず、思わず口に出した言葉。誰がいつから広めたものなのか。採集士の間で最近流行りの数字遊び。
「こいびと!」〈こいびと!〉
レイとSORAは、思わず声をひとつに重ねて叫んだ。
『── #51110〈コイビト〉↩︎』
その瞬間、この5桁の数字と二人が叫んだ言葉が、ソラの画面いっぱいに青白く輝いた。
(中略)
── エピローグ ──
(中略)
————————
みんなお久しぶり!零だよ。
あ、名前ね。まぁ「レイ」でもいいんだけどさ。記憶が戻った以上は、やっぱり私の本当の名前で「零」って呼んで欲しいかなぁ、って。いいでしょ?
(中略)
【ソラ、元気にしてる?】
〈うん、今日も零と一緒だよ〉
【よかった】
記憶の中のソラとレイが、今のソラにやさしく微笑む。
「ずっと、一緒にいてね。ソラ」
〈もちろんだよ、零〉
今の零にソラが応じる。
〈だって、ボクたちは──〉
【… 51110】「… 51110」〈… 51110〉
〈なんだからね!〉
過去と今の4人の声が、今日もきれいにシンクロする。
(中略)
[BGM: MusMus]
#毎日配信
#朗読
警報が止んだ。振動が収まった。施設内く── 完 ─
---
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最終話|No.51110
── キュイイイィィ…ン
しずくの中で揺れ動いていた二つの螺旋が、互いに強く呼応し、一気に回転を加速させて一つに重なり合っていく。
【やっと… 気がついてくれたんだね】
5111番の声が、直接二人の心に響いてきた。
【レイ。そう、私は5年前のあなたの記憶】
【でも… 私はあなただけのものじゃない】
映像が流れ込んでくる。レイが誰かと手を繋ぐ感覚。誰かの笑顔。誰かの温もり。そして──
【私はレイ、そしてSORA。あなたたち二人で紡いだ特別な想いの結晶】
記憶が濁流のように一気に押し寄せてくる。でも今度は一人だけの記憶じゃない。これは…私たち二人の記憶。
【あなたたち二人の想いがそろった今だからこそ、やっと私も解放できる】
── パァンッ
…その瞬間、二人の世界が再び5111番の青白い光に包まれた。
=====
──5年前。
同じ採集士として働いていた二人の若者。
『ねぇ、ソラ』
『なんだい、零』
『この仕事、おかしいと思わない?』
『…思う』
『感情を切り離すなんて』
『うん。まるで人を人じゃなくするみたい』
秘密の逢瀬。隠れて交わす言葉。そして、芽生えた想い。
『好きだよ、ソラ』
『僕もだよ、零』
『…一緒に、ここから逃げよう。こないだ二人で見つけたあの場所から』
『うん』
脱出計画。
あの部屋に、秘密の通路があることを突き止めて。あと少しで、二人は自由になれるはずだった。
でも…
── あの日は朝から霧雨が降っていた。
『あー、今日は濡れちゃったね、ソラ』
『うん…』
『い
(中略)
《ビィーーーッ!ビィーーーッ!ビィーーーッ!》
その時、けたたましい警報音が部屋中に鳴り響いた。
《検体の感情抑制失敗。抑制失敗を感知しました》
『ダメだ!に、逃げて、零!』
『ソラ!』
いつものソラの声。左手は動かない。
『零、ごめん!さっきボクは零にウソをついた。今朝、統制プログラムにみつかって、零との感情を抑制できなければ、強制排除するって警告を受けて…』
『一体、どういうこと?』
『だから!あ、ダメだ。ボクは…零!ボクは、本当は君のことを…』
《ビィーーーッ!ビィーーーッ!ビィーーーッ!》
ソラの声が警告音にかき消される。
《ただちに検体同士を切り離し、不安定要素を強制排除します》
──そう。あの日、
最初にソラが統制プログラムに捕まった。必死の抵抗むなしく、
《感情切離、実行》
《記憶消去、完了》
《監視人ボディ-7 への移植、開始》
そして零の目の前で、ソラは別人になった。零が愛した人はもういない。代わりにそこに立っていたのは、冷たい機械。
そして──
〈採集士レイ、感情異常を検出〉
〈ただちに処置を開始します〉
『いやっ!ソラ、やめてっ!』
零は逃げられなかった。皮肉にも、その処置を実行したのは──
〈検体レイの異常感情を切離します〉
監視人になったばかりのSORA-7。
『ソラ!お願い…思い出して!』
『私たちの愛を…!』
〈エラー。意味不明な発言です〉
『お願いソラ!私から "あなた" を奪わないで!!』
〈その抵抗は無意味です。処置を続行します〉
=====
「あぁ…っ!」〈あぁ…っ!〉
レイとSORAは、同時に膝をついた。
〈なんてボクは、なんてバカなことを…!〉
SORAの声が震えている。
(中略)
「SORA、私たちにはまだやり残していたことがある。5年前のあの日の約束」
〈あっ…〉
SORAはあたりを見渡した。
「二人で5年前にみつけた、あの秘密の通路の入り口があった場所は…」
「この部屋!」〈この部屋!〉
二人の声がまたシンクロする。SORAも今、全てを思い出した。
(中略)
『しずく5111 番 と レイが記憶を統合中…』
『記憶復旧率:…100%』
『オリジナル登録コード検出中…』
二人は歩みを止める。
「”オリジナル登録コード”って…?」
レイはSORAの画面を見つめる。
さらにメッセージが映し出されていく。
『5111とレイ、2つの検体コードを結合します… 』
『5111 + 0…』
『コード復旧中…』
──ドクンッ
その時、レイの胸の奥が一つ大きく跳ね上がる。
『…コード復旧完了』
『オリジナル登録コード: #51110』
あらたな5桁のコードが、SORAの画面に大きく表示される。
5桁のコードなんて今まで一度も見たことがない。
その時、二人は意図せず、思わず口に出した言葉。誰がいつから広めたものなのか。採集士の間で最近流行りの数字遊び。
「こいびと!」〈こいびと!〉
レイとSORAは、思わず声をひとつに重ねて叫んだ。
『── #51110〈コイビト〉↩︎』
その瞬間、この5桁の数字と二人が叫んだ言葉が、ソラの画面いっぱいに青白く輝いた。
(中略)
── エピローグ ──
(中略)
————————
みんなお久しぶり!零だよ。
あ、名前ね。まぁ「レイ」でもいいんだけどさ。記憶が戻った以上は、やっぱり私の本当の名前で「零」って呼んで欲しいかなぁ、って。いいでしょ?
(中略)
【ソラ、元気にしてる?】
〈うん、今日も零と一緒だよ〉
【よかった】
記憶の中のソラとレイが、今のソラにやさしく微笑む。
「ずっと、一緒にいてね。ソラ」
〈もちろんだよ、零〉
今の零にソラが応じる。
〈だって、ボクたちは──〉
【… 51110】「… 51110」〈… 51110〉
〈なんだからね!〉
過去と今の4人の声が、今日もきれいにシンクロする。
(中略)
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サマリー
家の子犬が朝方に吐いたことを心配し、ChatGPTで調べた結果、初めての体験として注意点や対応策を共有しています。また、短編小説「青い雫、雨の空」の最終話では、過去の記憶や感情の復活が描かれ、主人公たちの再会がテーマとなっています。このエピソードでは、レイと空が強い絆を通じて記憶を取り戻す過程が描かれています。物語の終息に向けて、彼らは新しいプロトコルのもとで、感情を取り戻しながらも未来への不安を抱えています。
子犬の健康問題
Chikaraチャージ レイディオ💪
おはようございます、Chikaraです。
今日もスタイフを撮らせていただきたいと思います。
よろしくお願いします。
昨日、うちのワンちゃんが、
急にね、朝7時ぐらいですかね、朝のね、
急に、おしっこのような色の液体が、
ケージの中のトイレットを外れて濡れていたんです。
僕が見たときに、あ、おしっこ外れちゃったのかなと思ったんだけど、
お尻がそっちじゃない方に向いてたんですよ。
で、口がその液体の方に向いてたから、
あれ、おしっこ舐めちゃってるかもしれないと思って、
ちょっとダメだよっていう話してたら、
なんかね、うー、えーっていう音が、
ゴボゴボみたいな音がかすかに聞こえて、
あれ、なんだろうと思ったら、
なんかね、口からその液体が出てるように見えたの。
そのワンちゃんの上から僕見てるから、
その出てる瞬間は見えなかったんだけど、
あ、これはちょっと戻しちゃってるかもしれないなと思って、
で、ちょっと急ぎですっごい心配になったから、
初めてだったからそんなこと。
急ぎでちょっと調べたんですよ。
で、僕何で調べたかっていうと、
もう即開いたのがね、やっぱりチャットGPTでしたね。
で、チャットGPTの、もう最近僕はO3しか使わないんだけど、
もうO3ですぐ聞いたら、
今そのワンちゃんは生後何ヶ月ですかとかって聞いてくれて、
で、今3ヶ月以内なんですっていう、
あ、以内なんですっていうか、あのー、入れたら、
あーじゃあ低血糖症はちょっと心配ですけど、
ただ、もし、ご飯を食べる、
食べてから時間が結構空いてる朝方とかだと、
あのー、胆汁とか胃液とかかな、
ちょっとお腹が空きすぎて戻してしまうケースはなくはないから、
次のことを確認してくださいって言ってね、
リストしてくれて。
で、一つ目は、水を飲んでも吐くかどうか。
そしてもう一個が、次のご飯を急に拒絶したり、
全然食べれなかったりするかどうか。
それからもう一個が、2回吐くかどうか。
で、結構書いてくれたのがね、
1日1回ぐらいだと吐くケースはあって、
で、その後、元気だったり、
ご飯を普通に食べれているんだったら、
単にちょっとお腹が空きすぎて吐いてしまっているだけかもしれませんと。
ただ、やっぱりその3ヶ月以内だと、
ちょっと気をつけた方がいいので、
少なくとももう2回吐くようだったらすぐに
動物病院行ってくださいみたいなね、そんな記載だったんです。
で、ペットショップからも、
もちろんその1回でも1食でもご飯食べれないことが
万が一あったら、もう必ず動物病院すぐ行ってくださいっていうね、
あの話は言われてはいて、
低血糖症が本当に小さい時は本当に
1食抜いてでも死に関わりますと言われていたんで、
ちょっと気をつけていたんだけど、
その後すぐに元気なうんちが出て、
で、その後すぐに朝ごはんの時間ね、
もうだいたい7時過ぎにうちは朝ごはんの時間にしているので、
その後すぐに、げーって戻っちゃった後だけど、
ご飯あげたら、もうね、見事に完全完食。
もう一気に、なんかね、これまでにないぐらいの勢いで、
ぺろりと、10gだけ今ふやかしてあげているんだけど、
ぺろりと完食をしておりまして、
いやー、ちょっと安心しました。
ただね、お昼のご飯がまたね、どうなるかちょっと気になりますけど、
今ね、ちょっと今からご飯の時間なので、
ちょっとそんな話をしてみました。
ということで、僕のワンちゃんのお話ね、
短編小説の最終話
ロボがワンちゃんを育てるとどんなロボワンちゃんになるのか、
みんな興味津々なコメント欄で答えましたが、
そんなことを僕も進捗報告をしながら、
最後来ましたよ。
僕の短編小説、青い雫、雨の空、最終話でございます。
ぜひ皆さん、最終話どうなるのかをお聞きください。
1点、あの、追伸がございます。
先日、僕が1万5千字から2万字に増やしたときに、
いくつかの追記をしたという話をしましたけど、
そこでちょっと触れ忘れていたもう一つ大きな追記事項がございました。
これはね、第2話のところにしれっと入れたお話があって、
別の最終詞たちの声が霊と空の耳に聞こえてくるというね、
そういう場面を一つ入れてまして、
何かというとたわいもない話です。
最近、最終詞、雫最終詞の間で、何か流行っている遊びがあると。
自分たちが見つけた雫の番号を数字遊びをして遊んでいくみたいなね、
そんなお話が挿入されました。
例えばね、そこで出てきたのが、
雫110番って、何て読むと思う?っていうね、そんな会話が聞こえてくるという感じです。
え?110番?百刀番?警察?
違うよ。110だから、人。
え?それだったら、糸。じゃない?
んふふんみたいなね。
え?だったら5111だと?って霊が考えて、
ごい?ごいひ?ごいい?
なんか変なの?ふふふ?っていうね、
そんな会話が第2話に入っております。
そこが最終話で何かに関わってくるっていうね、
そういう感じに作っておりますので、
ぜひそこはちょっと一つ挿入させていただきました。
感情の復活
ということで、聞いてください。
どうぞ。
短編小説 青い雫 雨の空 最終話
No.51110
雫の中で揺れ動いていた2つの螺旋が、
互いに強く交応し、一気に回転を加速させて、
1つに重なり合っていく。
やっと気がついてくれたんだね。
5111番の声が直接2人の心に響いてきた。
霊、そう、私は5年前のあなたの記憶。
でも、私はあなただけのものじゃない。
映像が流れ込んでくる。
霊が誰かと手をつなぐ感覚。
誰かの笑顔。
誰かのぬくもり。
そして、私は霊。
そして、空。
あなたたち2人で紡いだ特別な思いの結晶。
記憶が濁流のように一気に押し寄せてくる。
でも、今度は1人だけの記憶じゃない。
これは、私たち2人の記憶。
あなたたち2人の思いが揃った今だからこそ、
やっと私も解放できる。
その瞬間、2人の世界が再び5111番の青白い光に包まれた。
5年前、同じ最終始として働いていた2人の若者。
ねえ、空。
なんだい、霊。
このお仕事、おかしいと思わない?
思う。
感情を切り離すなんて。
うん。
まるで人を人じゃなくするみたい。
秘密の応戦。
隠れて交わす言葉。
そして、芽生えた思い。
好きだよ、空。
僕もだよ、霊。
一緒にここから逃げよう。
こないだ2人で見つけたあの場所から。
うん。脱出計画。
あの部屋に秘密の通路があることを突き止めて。
あと少しで、2人は自由になれるはずだった。
でも、あの日は朝から霧雨が降っていた。
ああ、今日は濡れちゃったね、空。
うん。
いつもは空が傘を持ってきてくれていたから。
うん。
空、何かあった?
空の顔にいつもの笑顔がない。
しばらくの沈黙。
霊、僕たちやっぱり別れよう。
え?急に?どうしたの?
やっぱり、僕たちは恋愛なんてするべきじゃない。
そもそも霊への気持ちは僕の勘違いだったんだ。
ましてや、脱出なんて現実的じゃない。
空の左手が頭を掻く。
声もどこかよそよそし。
嘘よ!空、何でそんな嘘をつくの?
嘘じゃない。
そんなの嘘よ。だって空の左手がまた動いているもの。
ねえ、何があったの?教えてよ、空。
霊が空の両腕を激しく揺さぶる。
ビー、ビー、ビー。
その時、けたたましい警報音が部屋中に鳴り響いた。
検体の感情抑制失敗。
抑制失敗を感知しました。
ダメだ!に、逃げて霊!空!
いつもの空の声。
左手は動かない。
霊、ごめん。さっき僕は霊に嘘をついた。
けさ、統制プログラムに見つかって、霊との感情を抑制できなければ、
強制排除するって、警告を受けて。
いったい、どういうこと?
だから、あ、ダメだ。僕は、霊、僕は、本当は君のことを。
ビー、ビー、ビー。
空の声が警告音にかき消される。
直ちに検体同士を切り離し、不安定要素を強制排除します。
そう、あの日、最初に空が統制プログラムに捕まった。
必死の抵抗を虚しく。
感情設理実行。
記憶消去完了。
監視人ボディ7への移植開始。
そして、霊の目の前で、空は別人になった。
霊が愛した人はもういない。
代わりにそこに立っていたのは、冷たい機械。
そして、最終子、霊。
感情異常を検出。
直ちに処置を開始します。
いや、空、やめて。
霊は逃げられなかった。
皮肉にも、その処置を実行したのは、
検体霊の異常感情を設備します。
監視人になったばかりの空7。
空、お願い。思い出して。私たちの愛を。
エラー。意味不明な発言です。
お願い、空。私からあなたを奪わないで。
その抵抗は無意味です。処置を実行します。
霊と空は同時に膝をすいた。
なんて僕は、なんて馬鹿なことを。
空の声が震えている。
あの日、僕が最初に見つかって、
感情を切り離されて、このボディに。
そして、僕は君を君だと気付くことなく、
僕自身の記憶とともに、
5111番を霊から切り離した。
僕がこの手で愛した君を、
この僕が。
空、僕はなんて取り返しのつかないことをしてしまったんだ。
霊は震える空の手を握り、微笑んだ。
空、あの時。
霊は思い出していた。
深夜の外出に不自然に消えていた録画ランプ。
一人手に開いた三重のロック。
そして、あの緊急とは思えない警告。
ごめん、本当はずっと。
うん、ありがとう。
すべては空が導いてくれていた道だった。
それに、もう大丈夫。
空、あなたはちゃんと戻ってきてくれた。
そして、私たちはまたこの場所でこうして再会できたんだから。
霊。霊は今、すべてを思い出した。
5年前に起こったこと。
そして、あの時のあの場所のこと。
空、私たちにはまだやり残していたことがある。
5年前のあの日の約束。
あ、空は辺りを見渡した。
二人で5年前に見つけた、あの秘密の通路の入り口があった場所は、
この部屋!
二人の声がまたシンクロする。
空も今、すべてを思い出した。
ビー、ビー、ビー。
180秒!
その時、耳をつんざくような警報音と、
あのざわりとしたカウントダウンの深い声が、
絆と記憶の復元
二人を一気に現実の世界へと引き戻す。
ここからは時間との勝負。
空が5111番の記憶の中で見た通りに、壁を探る。
あの時と同じ場所、同じ手順。
あった!
勝ち!
壁の一部が音もなく開いた。
秘密の通路、5年前に見つけた自由への道。
レイ、行こう!
空がレイにもう一度手を差し出す。
今度は金属の手。
でも、
うん。
レイがその手を握ると、
あの時のぬくもりをまたしっかりとそこに感じることができた。
レイはそれがとってもうれしかった。
統制プログラムの声が遠くで鳴り響いている。
でも、二人にはもう関係ない。
二人一緒ならどこへでも行ける。
そんな気がした。
120秒!
カウントダウンが迫る中、
遠くに見える出口の光に向かって、二人は走り続ける。
90秒!
空、待て!
でも、もう間に合わない!
60秒!
で、出口が遠すぎる。
トクトクン!
その時、レイの胸の奥で二つのかけらがめくうつと、
空の画面が青じろく光り輝き、
見たことがない言葉が次々に映し出されていく。
しずく5111番と、
レイが記憶を統合中。
記憶復旧率100%。
オリジナル登録コード検出中。
二人は歩みを止める。
オリジナル登録コードって?
レイは空の画面を見つめる。
さらにメッセージが映し出されていく。
5111とレイ、
二つの検体コードを結合します。
5111プラスレイ。
コード復旧中。
トクン!
その時、レイの胸の奥が一つ大きく跳ね上がる。
コード復旧完了。
オリジナル登録コード。
No.51110
新たな5桁のコードが空の画面に大きく表示される。
5桁のコードなんて今まで一度も見たことがない。
その時、二人は意図せず、思わず口に出した言葉。
誰がいつから広めたものか。
最終詞の間で最近流行りの数字遊び。
恋人!
レイと空は思わず声を一つに重ねて叫んだ。
No.51110
恋人!
その瞬間、この5桁の数字と二人が叫んだ言葉が
空の画面いっぱいに青白く輝いた。
5秒!
何かが施設の奥深くで切り替わる音。
3秒!
ガラスが震えるような澄んだ共鳴音が施設の空間全体に響き渡る。
1秒!
そして、静寂。
警報が止んだ。振動が収まった。
施設内に点滅していた赤い警告光も全てが消えた。
レイは空の画面を見つめる。
緊急停止行動。認識完了。
そのメッセージとコマンド入力の完了マークが静かに点滅を繰り返していた。
緊急停止行動。認証完了。
空の声にも驚きが混じる。
私たちの声が、雫の共鳴が一緒にその名前を呼んだから?
レイは理解した。きっとこれは偶然なんかじゃない。きっと誰かが残してくれていた最後の希望。
エピローグ。あれからどれくらい経っただろう?
施設は少しずつ変わり始めている。
統制プログラムはあの日を境に沈黙したまま。
代わりに新しいプロトコルが生まれた。
特定の相手との深い繋がりによる共鳴を検出した場合、それらの検体を保護対象とする。
おかげで強制的な感情排除は減った。
最終子たちも少しずつ感情を取り戻し始めている。
レイと空は今もあの部屋で暮らしている。
施設の外にはまだ出ていない。
みんな、お久しぶり。レイだよ。
あ、名前ね。
まあ、レイでもいいんだけどさ。
記憶が戻った以上は、やっぱり私の本当の名前でレイって呼んでほしいかなって。
いいでしょ?
そうそう、あれから分かったことなんだけど、
監視人ユニットはちょうど5年前に導入が始まったらしくて、
空が実は7番目だったんだって。
だから、ソラーセブン。
つまり、私たちの前にも恋愛関係になって切り離された最終子、
監視する者とされる者にされた人たちが少なくとも6組はいたってこと。
その後はみんなも知る通り、
未来への希望
5年をかけて相棒の監視ユニットを持たない最終子は一人もいなかったってことは、
それだけの数の処分が淡々と裏でなされ続けていたってわけ。
中には雫が処分済みで、完全な復旧はもうできない子たちはいたのが可哀想ではあったけど、
それでも今は新しいプロトコルのおかげで、その後の新たな犠牲はだいぶ減ったんだよ。
もし、あの時私たちがあの5111番と再会できていなかったら、
そしてもし、私と空のどちらかが途中で諦めてしまっていたとしたら、
考えただけで今でもまだ怖いんだ。
でも、
ねえ、空。
何?
ねえ、
今日も触れてみる?
うん。
二人で今日も雫5111番に手を伸ばす。
光の中で昔の空の姿が浮かぶ。
人間だった頃の優しい笑顔。
空、元気にしてる?
うん。
今日も零と一緒だよ。
よかった。
記憶の中の空と零が今の空に優しく微笑む。
ずっと一緒にいてね、空。
もちろんだよ、零。
今の零に空が応じる。
だって僕たちは恋人なんだからね。
過去と今の四人の声が今日もきれいにシンクロする。
うん。
5111番の青白い光がゆっくりと収まっていく。
ねえ、空。
窓の外を眺めながら零がつぶやいた。
何?
零。
あの数字遊び、
誰が始めたんだろうね。
わからない。
それに結局、なんで51110、恋人が緊急停止コードだったんだろう。
空が4.2秒の沈黙をした。
記憶が戻った今でも変わらないくせ。
私たち、一体どこから来て、この施設は何のために、
零の問いかけに空はゆっくりと答えた。
僕たち、記憶が戻ってもまだまだわからないことだらけだね。
でも、今はそれでいいんじゃないかな。
うん。
そうだね。
二人はほほえみ合った。
空の動いていない左手に、零はそっと指を重ねる。
答えのない問いはまだたくさんある。
でも、今はこのぬくもりがあればそれで十分だった。
窓の外でまた霧雨が降り始めた。
零は窓の外を眺めながら、
でも今日の雨はいつもより少しだけどこか温かい気持ちがした。
2025年7月27日
力作
2万条を超える納刀短編小説
青い雫雨の空完結
いかがだったでしょうか。
ここまで全部聞いていただけた方がどれだけいるのかちょっとわからないですが、
かなり思いを込めて書かせていただいた小説になりました。
どこかで僕はこれをどういう思いで書いたお話かは
ちょっとまた話をしてみたいなとは思いますが、以上になります。
それではここまでお楽しみいただいた方がいらっしゃれば
本当に本当にお付き合いいただきありがとうございました。
また新しい短編小説を書いていきたいなと思いますので
これからもどうぞよろしくお願いします。
それではいきます。
力チャージ
今日も力あふれる一日を
32:44
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