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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、受証も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を癒しになっていただければと思います。
今回取り上げる話題は、z と r の発音は意外と似ていたという発音に関する話題です。
z と r の発音は意外と似ていたという発音に関する話題です。
英語でも日本語でも同じことですね。2つの異なる音として分けるということにしている。発音も慣れているし、聞き取りも慣れているということで、違う音に聞こえるわけなんですが、音声学的に言いますと、この z と r は思いのほか近いんですね。
両方とも舌を歯茎に近づけるわけなんですが、z の場合はかなり近づいて、息が漏れるときに摩擦が生じるんですね。歯と歯茎と舌の間の狭い隅は空気が通り抜けるので、z というような摩擦の音が聞こえる。
それに対して r の音はもう少し摩擦が弱いと言いますか、ほとんど摩擦がないぐらいになって、あくまで歯茎に舌が近づいているぐらいですね。それほど狭まっていずに、単に近づいているぐらいということで接近音なんて言いますね。
z のことを摩擦音というのに対して、r の音は接近音というふうに言っていますが、結局使う場所は一緒です。同じ歯茎ですし、両方とも生体が動く、すではなくずなんですよね。
という意味では、音声学的には確かに近い音なんです。ここから z の音が r の音になったり、あるいはもともと s という s で表される音だったのが、何らかの環境で濁って優先音化してまず z になる。
この z が近い r の音に化ける。ス、ズから r の音に化けるというような音の変化が実は英語の歴史でもあるいはゲルマン語の歴史でも起こっていますし、系統的には異なるラテン語なんかでも起こっています。
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なのでよく見られる現象なんですね。それぐらいやはり両音が近いということなんです。例えば英語からまず例を挙げてみたいと思うんですけれども、これあの結びつけて考えたことなかったと思うんですけれども、
we ですね。私たちはというあの代名詞、一人称複数の代名詞ですが、これは we are us ours とやりますよね。活用するわけですよ。
所有格は our という形で、それに対していわゆる目的格の形は us ということになります。つまり us の方は語尾がつで終わってますね。それに対して所有格は our というふうに文字で書くと our とあるように、r なんですよ。
この s と r というのはだいぶ違う音に見えますが、語源的には一緒だということです。
あすですね。これもともと、うーすというふうに小英語では発音されていました。
このうーすの後ろにですね、母音みたいなものが来ると、このすの部分がですね、その母音の優勢音である母音に引っ張られて、す自体も優勢化します。つまりずになるんですね。
例えば、e がついたら、うーせではなく、うーぜっていうふうになります。
そうすると、ずからこの r の音、おえはもう一歩っていうことですよね。非常に近いので、これ変わりうるってことです。
これがうーるとかうーれという形になり、現在の所有格 our。だいぶ母音部分も発音が変わってしまいましたが、あすと our っていうのはそういう関係なんです。
もともとすだったものが、ある環境でずになり、そのずが近い音である r に化けた、そういうことなんですね。
他にはですね、ルーズ、これ失うって意味ですね。
これ今では、過去分詞形は lost という、t がつく形になっていますが、古くはですね、実は lorn っていう形がありました。ルーズの過去分詞形で l o r n っていうことですね。
このルーズのずが r に化けて、その後 n がついた。
n っていうのは、例えば drive, drove, driven とか write, wrote, written っていったときに en 語尾がつきますよね、過去分詞に。
あれと同じ n なんです。
なので、この lorn の r というのは、もともとはずだったということになります。
現代でも、設当時で for がつくと forlorn っていうふうに、失われた、打ち捨てられた、なんていう、侘しい、なんていう形容詞、過去分詞形容詞がありますが、それと関係するっていうことですね。
他には、育てるって意味で raise。家畜を育てる場合ですかね、だいたい raise ってありますが、もう一つですね、これ人間を育てるという意味でですね。
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類義語と言っていいと思うんですが、 rear ってのがありますね。
r-e-a-r, rear つまり raise と rear。
家畜を育てるか、人間を育てるかで、まあ違いますけれども、全体的には育てるという、同語言であってもおかしくない単語なんですが、この raise に対して rear は、語尾に r がありますね。
ずとるの関係で、やはりこれは同語言ということがわかります。
他に、さらに驚くのはですね、実はもっと非近なところ、日常的なところで、これが観察されます。
was と were の関係です。
was っていうのは、すとかずっていう音ですね。これ語尾にあるわけですが、複数形では were っていうふうに、
w-e-r-e, r が出ています。
これは was の後ろに、別の要素がついてですね、
ずが r に化けたという例になります。
つまり、was と were、このずとるというシーンはですね、全く同一の起源に遡るということです。
でもっと言うと、この was はほとんど直接的ではないんですが、実は is と are の関係も一緒です。
is のずに対して are の are、つまり現在形の b 動詞でもですね、同じことが言えるということなんですね。
意外とこのずと are の関係というのは、いくつかの今単語ペアを挙げてきましたが、
当たり前の単語にも、ちゃんと例があるということはわかると思うんですね。
これはまあだいたい英語の話なんですけども、実はラテン語でも同じような変化が起こっているんですね。
すがずになって、それがるという r の音になる。
こういうふうによく見られるので、一応名前がついていまして、これは rotacism っていうふうに呼んでいます。
rota っていうのは、あるアルファベットの r のことをギリシャ文字では rota って言いますよね。
なので、まあ r のことです。
r に変化する、そういう音変化のことを rotacism と呼んでいるんですが、
ラテン語でもこの rotacism っていうのが確認されます。
例えばですね、ローマ神話の Venus ですよね。
これ Venus と書いて、Venus と英語読みするわけなんですが、
ここから発生した、後ろに語尾をつけてですね、別の単語を発生させる場合に、
この Venus のスの部分が r に化けるんですよ。
例えばですね、Venus っていうのは愛の女神ということで、
愛、敬愛、それから欲望。
悪い方に行くと、愛欲、肉欲、肉、なんて出てくるんですが、
いろんな意味が発生しますが、
例えば、Venerable、尊敬する、Venerate っていうのは、
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愛する、敬愛する、尊敬する辺りから出てきたもので、いずれも r を持ってますよね。
それから、愛欲のとか性欲のという意味からは、
性病のという意味で Venereal という形容詞がありますし、
高色のことを Venerate って言いますね。
それから、罪が重くない、軽いって意味で Venial。
これは、愛から許しという方向に意味が変化してですね、
罪を許してあげるという意味から、罪が軽いってなったりしますね。
このように、Venus から、派生したと考えられるようなですね、
たくさんの単語がありますが、
数ではなくて r を持ってるっていうのがポイントです。
これが、ラテン語におけるロータシズムということになります。
それではまた。