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2024-10-16 10:05

heldio #88. なぜ否定語が文頭に来ると VS 語順になるの?

#英語史 #英語学習 #英語教育 #倒置 #語順 #否定 #古英語 #ゲルマン語
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おはようございます。英語の歴史を研究しています、慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった 英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる素朴な疑問は、なぜ否定語が文頭に来ると VS 語順になるの、というものです。
否定の典型的には副詞が多いのですが、否定語であるとか、否定表現ですね、一般にが最初に現れるとですね、その後が通常の英語の語順である SV ではなくてですね、疑問文でもないのに
VS という風に、動詞主語という語順になるという現象があります。 例えばですね、典型的にはこんな文ですね。
Only after considerable hesitation did she say no. かなり躊躇した後で、初めて彼女は no と言った、というような文ですね。
普通に言えばですね、これ she said no, only after considerable hesitation と言えばいいところなんですけれども、これあえてですね、否定語を前に持ってきて強めると
Only after considerable hesitation did she say no. のように、did she というような、あたかも疑問文であるかのような VS 語順ですね、この場合常動詞
did を使うわけですが、こんな古文っていうのが、少し固めのフォーマルな言い方ですがありますよね。
他に、Not until we lose our health do we realize its value. なんていうことですね。
健康を失って初めてその価値に気づく、というようなことですね。 これも統治せずに普通の語順で言えば、
We don't realize the value of health until we lose it. みたいな言い方になると思うんですよね。
もう一つだけ挙げておきましょう。 Little という否定の副詞ですね。これを使って little did I dream that such a thing would happen みたいな言い方ですね。
そんなことが起ころうとは、夢にも思わなかった、というような言い方で、 否定の、定期的には副詞、副詞句、あるいは副詞節ですが、
こういうものが来ると、その後があたかも疑問文を作るかのように、 助動詞であることもあるんですが、VSという主語と助動詞がひっくり返った形になるというのは、
フォーマルな英語ではこういう表現を使うということは、 よく文法で習ったりするわけです。
この変な文法は何なのかというと、歴史的に言うと、 実はゲルマン語特有のV2語順であるとか、Verb 2ndと呼んでいる現象なんですけれども、
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動詞が2番目の要素として文の中で来るというような、 統合上の原則というのがあります。
これは英語をはじめとする、いわゆるゲルマン系の言語に特徴的で、 例えばドイツ語なんかでは、これはかなり原液で、非常に強い原則として生き残っています。
他に、北欧の言語であるとか、オランダ語であるとか、 そういったゲルマン語でも、およそ守られているわけですね。
英語も、英語の段階までは非常に強く残っていました。 普通、主語で文を始めると。
その場合、当然その次に来るのが動詞ということで、 必ずVerb 2ndになるわけですよ。
ですが、最初に来るのが主語ではなくて、 他に例えば目的語であってもいいですし、他の副詞要素でもいいですし、
とにかく、何らかの要素が最初に来ると、 その次はVerb 2ndの原則によって動詞が来ると。
つまり、主語以外のものが最初に来ても、 動詞が次に来ると。
そうすると、主語はその次に来る、 第3番目の位置に来るということで、
あたかも統一が起こっているように見えるということですね。 これは本来のゲルマン語の文法規則ということなんですね。
これが小英語までは、そこそこきっちりと強い形で、 英語にも存在したわけなんですが、
その後、この規則がうやむやになって、 最初に副詞のようなものが来ても、その後もSVというような、
とにかくSとVというこの語順が重要であるというふうに 変わっていったんですね。
全体としてVerb Secondというよりは、 最初に何かこういうのが、とにかくSVというこの順番は、
なるべく変えないようにということで、 語順の文法が変化してきたということなんですね。
それでも、かつての痕跡がいくつかの部分で残っています。
例えば、今回否定の語句が最初に来た場合に VSになるっていうことでしたが、他にも、
例えば、Here comes the busですね。 バスが来たっていうとき、
Hereというここにという副詞が来て、 その後、comesと来ますよね。
から、the busというふうに主語が後ろに来ていると。
つまり、副詞要素が来て、VSということで、 Verb Secondが守られているっていうのは、
ある意味では、この小英語からのといいますか、 ゲルマン語の元々のVerb Secondの名残りということもできるわけですね。
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同じように、There goes the trainですね。 これは電車が出るよっていう時に使ったりするわけです。
このある意味、流れとして、 副詞要素であることが多い、この否定語句ですね。
これがまず文の第一要素として出ると、 その後はあたかも疑問文を作るかのように、
主語・動詞がひっくり返る、あるいは、 動詞・主語・助動詞・主語という語順になるということですね。
改めて、これを意識しながら、 最初に挙げた3つの例文を読んでみますと、
ここまでが第一要素ですね。 否定的なonlyがあります。
Did she say no?ということになります。 Did she?となってますね。
同じように、Not until we lose our health ここまでが否定的な副詞説ということになりますね。
その後に、Do we realize its value?というふうに、 Do weというふうに助動詞・主語、vsが現れている。
そして、Little、これが副詞的な副詞ですね。
Did I dream that such a thing would happen? Little, did I dream that such a thing would happen?のような言い方になるわけです。
これも副詞要素が来て、その後vsという語順ですね。
このように、否定語句で始まるものが、 その後、これが文法に来ると、その後vs語順になるということを、
実は公英語からのある意味、文型なのだと。 もっと言えば、ゲルマン語の文型を引き継いだものなんだということで、
今まで説明してきたんですけれども、 これも実は50%正しいんですが、
50%でちょっと言い過ぎというところもありまして、 というのは、今読み上げたこの3つの例文に関しては、
これDoとかDidが出る文であえて例文を出したんですけれども、
このDoとかDidが出る、そもそも助動詞として出る文というのは、 16世紀以降に確立した公文ですので、公英語にあるはずはないんですね。
ですので、V2であるということ、 Verb2であるという型、意型ですよね。
公文上の意型が、そのままゲルマン語、公英語、 そして近代以降にも引き継がれて、そして現代にもあるという言い方は正しいんですけれども、
このDoとかDidを使った、この文自体が公英語からあったということではないので、
これは少しミスリーディングなわけですね。
公英語からの連続であるという言い方は、 少し気をつけなければいけないということが一つ。
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もう一つは、このVerb2、確かに公英語期から、あるいはゲルマン語の時代から、
一つの文型上の意型ではあったわけなんですけれども、 この役割がちょっと変わってきてるんですね。
歴史を通じて。公英語自体までは、一つの統合上のバリエーション。
意味があるとしても、少しこの部分を強調しようかなと。
否定の意味を強調して出そうかなというような、 意味合いが強かったんですが、近代以降は必ずしも強調というよりは、
今、語感から分かるとおり、文語であるとか、 少し堅苦しいというような言い方になっているわけですね。
役割も変わってきているというのがポイントだと思います。 それではまた。
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