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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる素朴な疑問は、スペリングに注意 proceed と recede というお題です。
これ、ラジオの上での発音だけではわかりません。両方とも seed という部分を持っているんですが、スペリングが違うんですね。
proceed これ前進するっていうことですが、これ pro ですね。その後 c-e-e-d というふうになります。
ところがですね、後退する、後ろに下がるってことですね。これ re というセット字をつけて seed なんですが、これは r-e-c-e-d-e ということになります。
この seed の部分が共通の発音にもかかわらず、前進するでは c-e-e-d となっており、後退するでは c-e-d-e となっているってことですね。
これは非常に間違いやすいスペリング上、そういう問題ということになりますね。
実際、語源を探るとですね、この seed の部分、これは共通の、同じ語源なんですね。
ラテン語のけでれという、進む、行くということですね。一般的な動詞ですが、このけでれという c-e-d-e-r-e とあるんで、これで一定なわけです。
さらにですね、それがフランス語に入った形も c-e-d-e-r っていうことで、これも一定です。
ですので、そのまま英語に入ってくればですね、ラテン語から直接であれ、フランス語を経由してであれですね、一つの定まったスペリングで入ってくるはずなんですね。
おそらくは c-e-d-e という形で一貫して英語に取り込まれたはずなんですが、どうもですね、この期待される形になったのは receive の方であって、
この proceed の方は e-e-d ですね。 c-e-e-d なので、ちょっと違った形で定着しちゃったっていうことになりますね。
実はこの seed を持つ単語、動詞っていうのは、他にも英語にいくつか入ってましてですね、これがまた単語ごとにどっちのスペリングを取るか、つまり proceed 型なのか receive 型なのかっていうのはですね、バラバラなんです。
これはもうランダムに近いと言っていいですね、もうとんど見極める判断基準がないっていうことですね。
で、先にまず予想される c-e-d-e となったもの、これを挙げたいと思うんですね。
こっちの方が多いんですけれども、いきます。 seed, exceed, concede, intercede, precede, repeat, precede というこの 7 語っていうことですね。
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一方、 proceed 型、つまり c-e-e-d となってしまったものは exceed, proceed, succeed ということになります。
この 10 語のうちですね、7 語までが c-e-d-e となったわけなんですが、これが予想される形ですね。
ですが残りの 3 語、割とよく使うやつですよね。 exceed, proceed, succeed っていう、この 3 語についてはなぜか c-e-d-e となっていると。
すべて語源もこの seed の部分は一緒にもかかわらず、2 つの異なるスペリングが混在してしまっているっていうのが、非常に混乱のもとっていうことですね。
英語のスペリングについてはいろいろと批判、問題点っていうのがあるわけなんですが、これなんかも一つの問題っていうことになりますね。
歴史を振り返りますと、やはりですね、最初はこのラテン語の c-e-d-e-r-e あるいはフランス語の c-e-d-e-r これに由来するわけですから、すべてですね、今挙げたような単語は c-e-d-e でおよそ入ってきたんです。
これ、単語によって中英語記だったり初期近代英語記だったりするんですが、いずれも最初に英語に入ってきた時の綴り字は予想される c-e-d-e だったわけなんですね。
ところが同じこの seed、e-e の音を表すのに e-e と e をダブらせるスペリングというのも行われていたためにですね、混乱の時期に入ります。
そして、いずれの単語もですね、両用に綴られるという時代になるわけですね。
例えば、初期近代英語なんかですね、intercede, precede, recede なんていうのは、今と反対の、つまり現在の標準的な綴りと反対の綴り字で使われていた。
こういうこともあったわけなんですけれども、互いに類推作用が働いたり、また逆類推作用が働いたりして、
この繰り返しによってですね、各々の単語がほとんど結果的にランダムに最終的に標準化したと、現在落ち着いた形になったということなんですね。
現代の英語学習者である我々からするとですね、語源に沿った c-e-d-e じゃなくてもいいので、つまり c-e-e-d だっていいんですが、
とにかくこの一文の単語、動詞に関しては一貫してくれよと、一貫して揃えてくれよと我々は言いたくなるわけなんですが、
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どうもこの中英語記から初期近代英語記にかけての様々な類推、逆類推の混乱で、結局単発で決まっていったということですね。
一文がトトを組んで、同じ語尾、スペリングに一致するというような形にはならなかった。
これは大変残念なことなんですけれども、英語のスペリングの歴史の中では非常によくある話なんですね。
もう一つ c-e-d ではないんですが、よく似たような状況がですね、もう一対の単語に見られます。
これはですね、ディスクリートというもので、もともとは一つの単語なんですが、現在では辞書的には二語に分かれています。
スペリングが違うということもありますね。一つは d-i-s-c-r-e-t-e というふうに e-t-e となるもので、
これはバラバラの分離した別々の別個からなるという意味ですね。一つ一つのという、そういう意味になります。
もう一つはディスクリート d-i-s-c-r-e-e-t と書くもので、発音は全く同じなわけですが、
こちらのほうはですね、資料分別のあるということです。日本語でも分別というように、分けて別々にするというのが原理で、
やはり同じ単語、もともと同じ単語ということがわかるわけなんですが、少し意味がずれているということで、
二つの単語へと分化していったということなんですね。分化したからには、形、スペリング上も分かれているほうが見えるほうがいいということで、
二つの異なるスペリングで、現代ですね、別々の二語ということになっています。これなどもよく間違えられてですね、大変迷惑な話といえば迷惑な話ですね。
最後にですね、少し面白い例をあげたいと思うんですが、これ complete っていう、完全なっていう意味なんですね。よく使う形容詞。
これは E-T-E と書いて、これ一種類しかない言い訳ですね。C-O-M-P-L-E-T-E ということです。
ところが歴史的に言いますと、やはりですね、今日取り上げた proceed, recede とか discrete のように、異なる綴り字がいくつかありまして、
現代定着したこの E-T-E の他にですね、 E-A-T みたいな綴り字もありましたし、それから E-E-T みたいなものもありました。
で、目まぐるしくですね、変異して三つのスペリングが使われていたんですけれども、最終的にはですね、どういうわけかということですが、
E-T-E の形で落ち着いたというわけなんですね。ところがですね、その古い時代のスペリングの一つ、E-A-T と綴るやつですね、これがですね、有名な本のタイトルに使われたという事例がありまして、
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何かと言いますと、1653年に Isaac Walton という人が書いたですね、The Complete Angler or the Contemplative Man's Recreation ということで、これ釣りの本なんです。
この本に非常によく売れた、今なお読み続けられている名著なんですけれども、随筆なんですけれどもね、これで Complete が E-A-T で綴られたということが影響してですね、現在でも何々大全という時にはですね、
この E-A-T のスペリングが使われたりする、そういうことがあったりするんですね。厄介ですね。それではまた。