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おはようございます。英語の歴史を研究しています、慶応技術大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
星と星座の語源
今回取り上げる話題は、星の star と星座の constellation という話題です。
これはどういう問題かと言いますとですね、この星は star ですね。star という風に r で終わるわけですよね。
ところが、明らかに関連語だろうと思われる星座を意味する constellation
これはですね、con というセット字があって、その後に星に相当する単語が来るんですが
stellation ということで、ll という風に l が重なっているんですね。
r が一回も出てこないっていうことなんです。
これ明らかに語源的にも意味的にもですね、この stellar という部分と英語の star ですね。
これ関連しているだろうなと思われるんですが、なぜ r が ll という形になっちゃっているのかというような問題なんですね。
英語では star という風に s-t-a-r なんですが、この constellation という単語の元はですね、
ラテン語の星を意味する stella から来てるんですね。
この stella というのはやはり s-t-e-l-l-a ということで l なんですよ。
l が重なっているっていうことです。
con というのは集合的な意味を表しますね。
つまり、星が集合を成しているっていうことで、
ation ということで、その名詞形ですね。
全体で星が集まった一つの塊ということで星座ということで。
分かりやすい構成ではあるんですが、この五感部分っていうんですかね。
これが、星を意味するところが stella という風に、ラテン語では ll なんですよね。
ゲルマン語とロマンス系言語の音の関係
ところが英語では、そして他のですね、ゲルマン語の英語の仲間たちも基本的に r なんですよ。
これどういう関係なのかと。
西洋の言語では r と l というのは、基本的にしっかりと分けられた音ですね。
区別された音で、いわゆる日本語でのラ行音。
r でも l でもどっちでもいいというか、一緒くたになっているものが、
西洋語では基本的にこの二つの r, l ですね。
ラ行音というのは分けるっていうことになっている。
にもかかわらず、英語とですね、ラテン語とでは違うではないかという、そういう事例になるわけです。
この謎に迫ってみたいと思うんですね。
さあ、星を意味する単語ですね。
英語の star に相当する単語の引用詞語の形。
これが再建されていまして、これはですね。
star という風に、やはり引用詞語でも、どうも r というのが基本らしいんです。
この r を含む形がですね、例えばギリシャ語では astel という形になって、
ここから英語の astrology ですね、先制術なんていうのも入ってきます。
これは r ですよね。
で、ゲルマンス語でもですね、この r がちゃんと受け継がれてですね、
小英語では steola という風に r の音です。
他にドイツ語でも stern という風に r ですし、
オランダ語でも ster という風に r の音が出るんですね。
なので、ゲルマン語としてはずっと r が続いている。
ですから英語の star っていうこの r も理解できるわけですよね。
ところがですね、イタリック語派、ラテン語を筆頭にその娘言語たちですね、
ここではどうもですね l が現れるんですよ。
ラテン語には最初に述べたようにですね、
stella という形で伝わっています。
stella ということで r は消えてしまっています。
代わりに l が出てるんですね。
フランス語では、現在のフランス語で etoile という風に言いますが、
これ最後の le っていうのは明らかに l ですね。
だからイタリア語でも stella という風に l が出るわけですよ。
r じゃないんですね。
スペイン語では面白いことに estrella という風に r と l が両方現れるっていう非常に面白い形になってるんですけれども、
基本的にはラテン語とその娘言語たちですね、
いわゆるロマンス系の言語では l という方が優勢であると。
音の同化作用と星の単語
このゲルマン語の r 対ロマンス系言語の l っていうのはどういう関係なのかっていうことですね。
これは説があるようなんですけれども、
一つはですね、このラテン語の stella という l, l ですね。
これどっから来たのかというと、もともとはやっぱり r だったんだと。
陰陽祖語でそうだということはですね、再現されているわけなんで、
それに stel っていう形ですね、 r で終わる stel っていう形に la という始章字がついたものではないかっていうんですね。
始章字って何かっていうと、小さいものを指す言葉って意味です。始章字。
ちっちゃいものを表すのにですね、語尾にちょろっとした設備字をつけるっていうことがあるんですね。
これの典型的なものがですね、 la であった。
つまり stel と r で終わる語尾に la という始章字をつけて、
ちっちゃな星ぐらいの意味にしたっていうんですね。
で r, l と続きますよね。
stel, la っていうことなんで、 r と l が接続したところで、
ここで音の同化作用って言いますが、もともと同じラ行音ですから、やっぱり音似てるんですね。
これは別に日本語に限らず、やっぱり似てる音なんですよ。
ということで、二つ重なると、一つのに寄ってくるって言いますかね。
今回の場合は stel, r で終わって、そして始章字 la ということなので l が続くという形。
r, l という形なのが、後ろの l が前の r を飲み込んだ形でですね、
音的には近いわけですので、飲み込んだ形で l, l となった。
これがラテン語 stel, la, l, l の語源ではないかと言われてるんですね。
つまりこれは r が l に変わったというよりはですね、
r で終わるはずの語幹に、ちっちゃいを意味する la という la の始章字がくっついてですね、
最終的にこの l がその1個手前の r にも影響を及ぼして l, l になってしまったということで、
違う語という言い方も変ですけれども、語形性上プラスしてるんですよね、何かを。
la という始章字音。これが包まった形が stel, la ということになると。
そういう説明になってくるわけです。
こうしたわけでラテン語であるとか、その娘言語では星を意味する単語に、
r ではなく典型的に l が出てくるということになりました。
そしてこの stel, la というラテン語で星を意味する単語に基づく発声語であるとか、
そこから展開した語が改めて英語に釈用された結果、
星を意味する単語でもベースとなるのは star というこの r で終わるものなんですが、
発声語に関してはそれに関連する長い語に関しては、だいたい r ではなく l が出るというわけなんですね。
星座を意味する constellation というものもそうですが、
星のを意味する stellar ですね。
これ stellar ということですね。
それから stellate 星状の、星状のということで
こんな単語があるわけです。
私もイギリス留学中にお世話になった庶民的なビールがあります。
これは Stella Artois というものですが、
これはよく飲みましたが、星よりもお世話になったのではないでしょうか。
LLA このビールです。
ではまた。