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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。 このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも受証も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を癒しになっていただければと思います。 今回取り上げる話題は、「want の原義は欠けている」
ということですね。
want と言えば、最も頻度の高い英語の動詞の一つと言ってもいいですよね。
日常会話、それからトラベル英会話なんかでは、もう絶対に欠かせない基本となる動詞。 欲する、何々が欲しいという時なんですね。
I want something であるとか、I want to do something という言い方が基本ですけれども、これは非常に日常会話では
否定される動詞だと思うんですね。 実際の統計的に見ますと、この want という動詞はですね、
全英語の単語、英語語彙の中で頻度としてはですね、第62位という堂々たる超高頻度語と言っていいと思いますね。
実はこの want という動詞、あまりに日常的な当たり前の単語なわけなんですが、深掘りするとですね、どんどんいろんな面白いことが出てくるっていう英語史上なかなか面白い単語なんですね。
今回はこの want の意味に注目してみたいと思うんですね。
さあ、want の意味っていうと、先ほど挙げたようにですね、通常 I want something であるとか、I want to do something のように、欲する、何々をしたいというふうに使う。
欲しい、欲するというのが基本的意味ですよね。 いくつか例文を挙げてみますと、I want some chocolate
であるとか、それから、What do you want to eat? なんていうのがありますね。
Do you want this pie hot? であるとか、I don't want to talk about it anymore のように一般的に用いられるわけなんですけれども、他にですね、
欠いている、何々を欠いている、不足しているっていうラックぐらいの意味ですね。 これで使われるっていうことも実はたまにあるんですね。
例えば、She wants courage っていう場合ですね。 彼女は勇気を欲しているというよりは、普通の文脈だとですね、
彼女には勇気がない、勇気を欠いている、 勇気が欠けているぐらいの意味になります。
それからこんな表現がもありますね。The time wants 10 minutes to fall.
何て言うと、これ時間はですね、4時に向かって10分足りないって意味なんです。 つまり、4時10分前だというぐらいの意味なんですが、元の意味は欠けているぐらいなわけですよね。
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他には、The sum wanted 2 dollars of the desired amount. その金額は希望額に2ドル足りなかった、なんていう時。
でですね、この足りない、欠けているっていうことになると、 どうしてもこれを埋めたくなりますよね。
なので、必要がある。何々の必要があると、2度ぐらいの意味で使われることも出てきます。
例えば、This dirty floor wants a scrub. この汚れた床は磨く必要がある。
Wants a scrubっていうことですね。これ磨く必要があるっていうことになります。
だから、This seedy player wants repairing. のように、wantプラス同名詞によって、何々する必要がある。
修理の必要があるっていうことですね。 だから、Your hair wants to be cut.
というと、君の髪の毛は刈る必要があるということになるわけですね。 つまり、needぐらいの意味が出てくる。
つまり、大元は欠けているって意味なんです。 不足している。不足していると、これ必要になるってことですから、欠乏っていうことですから、 そこから必要って意味が出てきます。必要とする。
さらに、必要が講じると、欲しくなるっていうことになって、 意味的には通じているっていうことは確かですよね。
実際、この順に意味が発展してきました。 もともとの意味は、欠けている、欠いているというラックぐらいの意味からスタートしたんですね。
その後は必要とする。 そして、今、最も普通の意味である欲しい、欲するというふうに、 今、発展してきたっていうことなんです。
実際に英語の歴史をたどってみますと、 まずですね、このwantというのは、もともとの英単語ではないんです。 これ驚きですよね。
先ほど述べたように、62の非常に高頻度の単語なんですが、 これがですね、実は本当の英語ではないっていうことなんですね。
じゃあ何語から来たかというと、実は古のオルド語です。 これはバイキングが話していた、北欧のバイキングが話していた言語です。
これがですね、バイキングの襲来っていうのが、 8世紀後半以降ですね、11世紀ぐらいにかけて起こったんですが、 その結果として英語に入ってきました。
しっかりとですね、文献上現れるの、確認されるのは英語の中ですね。 これは1200年頃です。
もともと、古のオルド語のこの動詞、wantaのような形だったんですが、 これがですね、かけているを意味して、そのまま英語に取り込まれたっていうことです。
これがwant、1200年ぐらいです。 当時の意味は、書いている、かけているっていうことですね。
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ほぼ同時期に名詞としてもですね、 欠乏という意味で取り入れられました。
そして次の時代、中英語期の終わりぐらいになってからですね、 先ほど述べたように、この必要であるっていう語彙が生じたんですね。
かけているものがあれば、それは当然必要となってくるということでですね、 必要とすると、そういう意味、needの意味が出てきます。
さらにですね、その後に欲する、欲しいという、 今、最も普通の意味がようやく生じてくるんですが、
この欲するという今風の意味はですね、 1621年の文例がどうやら最初のようです。
近代になってからの比較的新しい表現だということになります。
しかもですね、これに不停止が続く、 今、最も我々が普通に日常会話で使う、
I want to do something のような、 want to do の表現ですね。
want to 何々という表現に至っては、 初例がですね、1698年となっていますが、
しかも、さらに確かな例ですね、 これがはっきりと確立した例として現れたのはですね、 もっと後で18世紀なんです。
つまり、今、長がつくほどの頻度の高い動詞でもあり、 しかも表現ですよね、I want to do something。
これは実は非常に新しくて、せいぜい18世紀ぐらいから生まれて、 歴史としては300年ぐらいしかないということなんですね。
これはなんとも驚きの事実ではないでしょうか。
ただ、もともとの意味、原義ですね。 書いているであるとか、必要とするという意味で使われるということはですね、
先ほどもいくつか例文を挙げたように、 現在でも残っているわけなんですね。
大抵、意味変化というのは面白いもので、 古い意味から新しい意味に乗り換えるというよりは、
古い意味も残りながら、新しい意味から 付け加わってくるということが結構多いんですね。
なので今でも、欠乏している、欠けているであるとか、 必要とするという意味はちゃんと残っている。
名詞も一緒です。 欠乏であるとか、必要というような意味ですね。
例えば、for want of、何々不足のために、 何々がないから、なんていう時に使う表現としてですね。
for want ofという表現があります。 for lack ofぐらいに言い換えることができます。
これで非常に有名なのは、マザーグースの伝承的な童謡、 nursery rhymeというものがありまして、
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一種教訓を含む、子供のための引用文詞ですね。 これで非常に有名なものがあります。
for want ofというのを繰り返して使う表現なんですが、 聞いたことある人もいるかもしれません。
for want of a nail, the shoe was lost. for want of a shoe, the horse was lost.
for want of a horse, the rider was lost. for want of a rider, the battle was lost.
for want of a battle, the kingdom was lost. and all for the want of a horseshoe nail.
ということで、釘がないと定鉄が打てない。 定鉄が打てないので馬が走れない。馬が走れないので騎士が乗れない。
騎士が乗れない。騎士が乗れないので戦いができない。 戦いができないので国が滅びた。
すべては定鉄の釘がなかったせい。 というような nursery rhymeということですね。
それではまた。