everyの語源の発見
おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の渡部裕一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
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今回取り上げる話題は、everyの語源はナントever+eachだった、という驚きの語源ネタです。
everyone, everydayのあのeveryですね。
これは、つづり字上everと書いて、その後にyの一文字だけ添えるという形になっていますが、実はこのeverは文字通りeverなんですね。
そしてこのyの部分が、これだけ短くなってしまったんですけれども、もともとは実はeachだったんです。つまりevereach。
eachの強めってことですね。everは強めの副詞です。
考えてみれば、このeveryとeachっていうのは、使い方がとてもよく似ているわけですよね。
everyone, everydayと言えるのと同じようにですね。eachone, eachdayというふうに言えるわけですよね。
ポイントは、すべてのとか、めいめいの、おのおののとか、いろいろ訳すことはあるかと思うんですが、一つ一つに注目するんですよね。
この点でallなんかとは違う。all students study Englishというと、すべての学生が英語を勉強するということなんですが、
これをeveryに変えるとevery student studies Englishというふうに単数扱いになる。
意味的には結局みんな勉強するわけなんですけれども、個々に注目するということですね。
同じようにeach student studies Englishというふうに、これも個々に見るわけですね。
everyとeachの違いはといえば、この個々に見るという性質が、everyの方がeachより強いというぐらいの違いですね。
それもそのはずで、everyというのはeachをeverで強めたわけですから、こうした性格も強まるということになるわけですね。
さて、eachそれ自体の語源も考えておきたいと思うんですけれども、
このeach、これも一つの語のようでありながら、実は二つの語が合体してできたものなんですね。
その二つの要素は何かと言いますと、小英語で言うところのa、j、l、i、t、この二つです。
aとj、l、i、tという単語が重なってl、tというふうに、小英語の形でl、tになったんですね。
これが後にeachになっていくものです。
ではこの小英語の二要素a、j、l、i、tってどういう意味かというと、aというのは強めです。
alwaysぐらいのいつもとか常にっていう感じですね。
それからeachっていうのはこれはtalk alikeという単語と語源が関係しています。
なのでいつも似ているもの、つまりおのおのの、同じものが繰り返される感じですね。
いつも似ているということでおのおののものというぐらいの意味の発展です。
このa、j、l、i、tというのが重なり、さらに包まってl、t、後に発音の変化を経てeachになったということなんですね。
つまりeach自体がもう二つの単語から成り立っている。
さらに後にですね、このeachだけでは意味が弱い、形も弱まってしまったということで、
意味および形を強化する、強める単語としてeverというのが前に付けられたということです。
なので細かく分割するとですね、この5は3語からなっていると言ってもいいわけですね。
それがどんどん短くなって今ではeveryという比較的短い単語に収まっているということなんですね。
このようにだんだん短くなってしまってですね、結果的にこのeveryの最後のyだけがもともとのeachの痕跡になってしまったということなんですが、
ちょっと短くなりすぎではないかと思われると思うんですね。
そもそもeachのこのちっていう最後のちの部分はどうなってたんだということですね。
語源の変化と意味の弱まり
もともとこの複合語が生まれた時点ではですね、everyちっていうふうにちゃんとちの音があったんです。
everyちっていうことですね。
もちろんeachそのものではちはちゃんと今だに残っているわけなんですが、
everyちとなった場合のちはいつ頃消えたんだろうかと。
このちっていうのは単体の単語では残っていることが多いんですね。
そのeachがそうですし、他には例えばwhichのちも一緒ですし、suchのちなんかも同じ実は語尾なんですね。
ところがeveryちの場合には全体が長くなりすぎたからということもあるんですが、最後のちが消えていってしまったんですね。
これは中英語期のことです。
中英語期というのは1100年から1500年ぐらいのことを言うんですが、この間にですね、徐々に消えていったと。
つまり消えたバージョンの発音と消えてないバージョンの発音というのが長らく共存していたんですけれども、
およそ14世紀半ばぐらいにどどどっとこのちが消えていったんですね。
このeveryちからちが消えてeveryになったわけですが、他にもかなり重要な語でですね、このちが消えています。
一つはですね、Iです。これ一人称単数の代名詞です。
私はですね。あのIも実は小英語での形はichと言ったんですね。
ichです。ちがあったわけです。
これドイツ語のIに対応するものはichとありますね。
ドイツ語ではひなんですが、同じゲルマン系で、もちろん語源、元の形は一緒ですが、英語ではこれがひではなくちになっちゃったんですね。
小英語ではichと言っていた。
ところがこれがですね、やはり中英語期に先ほどのeveryichとほぼ同じ時期にですね、このちが消えていったってことなんですね。
その結果いいという発音になっちゃいました。
つまりichだったのがいいとなって、
これが母音の変化を経てですね、今Iと言っているものに相当します。
他に重要なものがもう一つありまして、これは語というよりも設備字なんですけれども、lyで綴られるあのリーです。
典型的に福祉語尾として使われるあれですね。
terriblelyであるとかslowlyっていう時のあのlyで綴られるりなんですが、これももともとは実はリッチという形、リッチだったんですね。
ちがあったんです。
ですがこれもやはりeveryやiの場合と同じような時期にですね、だいたい14世紀半ばぐらいに消えていってですね、今残るのはlyの部分だけということになります。
ある意味では今挙げた3号、3要素と言いますかね。
every、i、何とかlyですね。
これはちを失ってしまった兄弟のような関係にあるということです。
eachからeveryの流れをですね、もう一度おさらいしますと、もともとはeach、これ自体がめいめいのそれぞれのおのおののという意味だったんですが、
だんだん使われていくうちにですね、形も弱くなって、そして意味も弱くなってしまった。
これを再び意味的にも形的にも強めるために、頭にeverという強めの副詞を持ってきてeveryのような言い方になった。
ところがこれ自体もだんだん短くなってeveryのちが落ち、最終的にはeveryになりましたね。
今では二つ目のeも読まれないので、事実上三音節の振りをしていながらですね、実際上の発音は二音節でevery、everyの二音節にまで短くなってしまったということになります。
現在はeveryoneとかeverydayというわけなんですけれども、さらにこれを強調したいというときにはですね、every single dayみたいな言い方がありますよね。
singleをつけてこれは単に一つのという、それだけのという強めなんですが、これを補って表現することもあるということなんですが、ある意味では歴史が繰り返されているかのようにも思えます。
もともと意味としてはですね、ここの、めいめいのと比較的強い意味なんですが、意味上、形上弱まってくると何かサポートするものですね、あるいは強化するものをくっつけて長くしてですね、意味的にも重みがあるかのように、そして形上も実際重みがある形にして際立ちを与えると。
ただそれもどんどん使われるうちにやはり弱まって、意味的にも形的にも弱まって、さらなる次の強調語のサポートが必要になってくるというような、そんなふうに見えますよね。
というわけで、everyの語源はなんとever plus eachだったというびっくり語源の話題です。