【本日紹介の一冊】
『FUTURES LITERACY(フューチャーズ・リテラシー):未来という難問を解く』(NewsPicksパブリッシング、松島倫明・著)
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【エピソード概要】
いまでこそ『WIRED』日本版の編集長として知られる松島倫明さん。かつてはNHK出版の書籍編集者として、『FREE』『SHARE』『PUBLIC』『MAKERS』など、ノンフィクションの翻訳書で数々のムーブメントを巻き起こしてきました。『FREE』では発売前に全文をネットで無料公開し、約43時間で1万人に届けています。
そんな松島さんが、今度は自ら「未来」についての本を書きました。今回はWIRED編集部にお邪魔して、著者インタビューをお届けします。
目的は二つ。一つは、17年越しの答え合わせ。あの頃、本を通じて描いていた未来と比べて、いまの状況をどう見ているのか。無料、共有、公開、個人のものづくりは、流行で終わったのか、それとも今になって社会を動かし始めているのか。当時からその本を追いかけてきた内藤 順が、真正面から伺います。
もう一つは、本書のツールを使って出版の未来を語り合うこと。いま思い描く未来は、19世紀の「鉄の馬」になっていないか。本書が示す「7つの問い」のうち、稀少さと潤沢さ、物理的と実質的、生成的と再生成的という三つの軸を出版業界に当てはめ、AI時代に本を読む意味、電子書籍が変わらない理由、出版のエコシステムをどう立て直すかまで話が広がりました。
【チャプター】
() オープニング
() 今日はWIRED編集部から
() 優秀な人ほど、同じ未来を描く
() その未来は「鉄の馬」では?
() 『FREE/SHARE』17年越しの答え合わせ
() 紙のメディアに再び黄金時代が来る
() この本の執筆でキーになった一冊
() 「7つの問い」で出版の未来を考える
() 出版のエコシステムは再生成できるか?
() それでも未来が楽しみですか?
【番組内で紹介した本】
『FREE』(クリス・アンダーソン)
『SHARE』(レイチェル・ボッツマン、ルー・ロジャース)
『〈インターネット〉の次に来るもの』(ケヴィン・ケリー)
『テクニウム』(ケヴィン・ケリー)
『ポスト・ヨーロッパ』(ユク・ホイ)
【出演】
ゲスト:松島倫明(『WIRED』日本版編集長)
ナビゲーター:内藤 順
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サマリー
松島倫明は『FUTURES LITERACY』を、未来を予言する本ではなく、誰もが納得しがちな未来をいったんほどき、自分たちが望む別の未来を探すための本だと説明する。企業の未来予測が自動運転車やAI、ドローンに収束するのは、優秀な人々が調査を重ねる結果として同じ未来を描くためであり、SF作家などの想像力や多様な視点で「乱数」を入れる必要があるという。人型ロボットを合理的な未来とみなすことへの疑問や、予測される未来と望ましい未来を分けて考える「フューチャーズコーン」も語られた。過去に松島が編集した『FREE』『SHARE』『PUBLIC』『MAKERS』を振り返り、無料・共有・公開・個人のものづくりは一時の流行で終わったのではなく、長い時間をかけて社会を動かし始めていると確認する一方、物のシェアや3Dプリンターの普及は想定ほど進んでいないと話す。『FREE』では発売前に全文をネット公開し、約43時間で1万人に届けた経験も紹介された。松島は本書の背景としてケヴィン・ケリーの『〈インターネット〉の次に来るもの』を挙げ、変化の表層ではなく長期的なパラダイムを捉える姿勢を受け継いだと述べる。後半では、本書の「7つの問い」を出版に当てはめ、AIによってテキストや知能が潤沢になるほど、本を読む時間や本によって刺激を受ける経験が希少になる可能性を議論する。電子書籍が紙のページを再現する段階にとどまるなか、空間コンピューティングやAIによって、本が物理的・仮想的に立体化する可能性も示された。さらに、書き手を育てる雑誌と読者に本を届ける書店という出版エコシステムの入口と出口が細っている現状を指摘し、本を単独で完結させず、ポッドキャストやAI、スキルファイルなどを通じて再生成していく仕組みが必要だと語る。知能が機械によって広く利用可能になる時代には、自分の頭で本を書くこと自体が贅沢な楽しみとなり、人間が本を書く「次の黄金時代」が来るかもしれないという。最後に松島は、困難を楽観視するのではなく、未来という難問を解けると信じて向き合う「戦う楽観主義」を示した。