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2020-11-03 14:00

【第33夜】「まって」「生きてる?」生存確認しがちな推しがいる人にぜひ読んでもらいたい『推し、燃ゆ』

「推しの時代」がやってきた! 隠キャな自分と陽キャな自分を使い分けて、推しながら生きていく。ファンサイドを描いたファンフィクション・宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』に新しい時代を感じました。「まって、死にそう」と書き込んだことのある全ての人に読んでほしい小説です。

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三森 真夜中の読書会 おしゃべりな図書室へようこそ
こんばんは、KODANSHAウェブマガジン三森編集部のバタやんこと川端です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる、をテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
はい、第33夜となりました。今日は先週予告していた通り、宇佐美凛さんの【推し、燃ゆ】を紹介したいと思います。
これは前回ご紹介した文芸2020年秋号に全文掲載されたんですけど、最近単行本としても出版されています。
【推し、燃ゆ】というタイトルの通り、推しが炎上する話なんですね。
推しってアイドル用語ですかね。 あっちゃん神推しとかって、主に多分グループのアイドルの中の特定の誰かをご悲喜にする。
推すって推薦するの推ですけれども、自分でめでるだけじゃなくて他人にもプッシュするみたいな、
集団の中からこの人を押し上げるみたいな意味合いが含まれている気がしますね。
この小説の主人公である高校生のあかりちゃんは、マザマザという男性のアイドルグループのまさき君という一人を推している追っかけのファンなんですが、
そのまさき君がファンを殴ったとして炎上しているというところからこの小説は始まります。
この小説、そんな誰か推しがいる人にぜひ読んでほしい、あるあるがいっぱいのリアルファンフィクションなんですね。
ファンフィクションって、アイドルを主人公にした二次創作とか妄想小説みたいなのをファンフィクションって言ったりしますけど、
これをファンの側を描いたファンフィクションですね。この小説の魅力はそのファンあるある、推しがいる人あるあるともう一つあって、主人公であるあかりちゃんは高校生なわけなんですけど、
ハイティーン、ローティーンじゃなくてもうちょっといったハイティーンの女の子、独特の自分の体や自分の頭が自分のものでありながら、
ままならないっていうか、もてあましてるっていうんですかね。
そのいろんなままならなさを描いていて、その文学的な表現とか言語化が見事で、なんというか女太宰治というか、新しい時代の太宰治ってこういうことなのかなって私は思ったりしました。
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うさみりんさんは1999年生まれか、20歳か21歳ってことですね。すごいですね。
そのまずファンあるあるとしての魅力からご紹介したいと思います。
その冒頭、炎上を知ったあかりの描写がすごいんですけれども、読んでみますね。
無事?メッセージの通知が待ち受けにした推しの目元を犯罪者のように覆った。なるみからだった。
翌日、電車の乗車口に駆け込んできたなるみは、開口一番、無事?と言った。
これわかりますかね。あのLINEの通知がスマホの画面にパッて出た時に、犯罪者の目線みたいに入ったよってことは、
だいぶアップの顔を待ち受けにしてるんだなって私思ったんですけど、こういうのって推しを待ち受けにしたことがある人にしかわかんない感覚っていうか、そんなリアルな描写が続いてるんですよね。
だいたいこの友達が無事って聞いてくる感じとかはリアルですよね。
推しがいる人たちって生存確認しがちじゃないですか。
死にがちだから。良いことがあっても死ぬし、悪い幸せがあっても死ぬ。
新作発表があっても写真が可愛くても死ぬし、殺しにかかってるとかよく書くし、彼氏とか彼女がバレたりしても死にますしね。
すぐ死んだ。死亡案件とかって言いますよね。
次のページに推しは命に関わるからねっていうセリフが出てくるんですけど、これもほんとそれなって思いました。
この小説と関係ないんですけど、推しがいる人の口癖はもう一つ待ってがあると思っていて、私本名のツイッターアカウントとは別にファン活動用のアカウントを持ってるんですけど、
タイムラインの品質ワードは待ってだと思ってます。なんか発表があったりとか雑誌とかテレビとか音楽番組露出があると待って待って待って待って待って待って待ってで埋まるのをそのタイムラインが。
待って聞いてない、待って死んだんだけど、待って可愛いすぎるんだけど、待って上手すぎるんだけど、待ってやばいんだけどって、いつも待ってって言って。
またこの可愛い、待って可愛いすぎるんだけど、可愛いって男性にも女性にも使うと思うんですけど、その可愛いの表現もこの小説がまたすごいんですよ、それちょっと読みますね後半で。
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甘めな感じのフリルとかリボンとかピンク色とかそういうものに対する可愛いとは違う。顔立ちそのものに対する可愛いとも違う。
どちらかといえばカラスなぜ泣くの。カラスは山に可愛い7つの子があるからよの歌にあるような可愛いだと思う。
守ってあげたくなる切なくなるような可愛いは最強で、推しがこれから何をしてどうなっても消えることはないだろうと思う。
すごいですよね。その、そんなあかりちゃんをしている可愛い彼は、そうして炎上してしまい、引退グループは解散となるわけなんですが、事務所の発表を待たずにインスタライブなのかな。
インスタライブとは書いてないんですけど、多分インスタライブ的なもので、本人がファンと直接話したかったって言って喋っちゃうんですよね。
このあたりの描写やファンの反応がまたリアルなんですよ。
今ってすごく推しの時代だと思っていて、推しがいる、何かのオタクです、追っかけですっていうのが、こんなにオープンでメジャーになるとは思ってなかったですし、私は経済を動かす時代にどんどんなっているなという気がしています。
宝塚とかジャニーズのファンのパワーっていうのは昔からあったと思いますけれども、もっと言えば歌舞伎とかそういう推しを推す人たちの力っていうのは経済を回してたところあったとは思うんですけど、
今はそれがさらに細分化して、このコロナでより加速した気がしています。
この小説にもあるように、個人個人がインスタライブとかYouTubeとかショールームとか、そういう事務所の下で作り込まれたグループ像とかとは別に個人個人の発信の場が増えた、劇的にこのコロナで増えたっていう生もあるのかなと思いますね。
採用面接をうちの会社のねやっていても、最近ここ数年本当に僕何々のオタク、私何々のオタクなんですっていう子がすごい増えていて、私陰キャなんで何々のオタクやっていてとかって、
いや本当の陰キャでオタクは面接で面接官にそんな風に爽やかに告白したりできないタイプの子だと思ったりしますけど、
全然ずっとクラスの人気者でバーベキューとかやったらしきってちゃんとお肉を焼いてみんなに分けて、
妖道に話振ってとかできそうなタイプの子に限ってそういう風に言うんですよ、自分のこと。
推しがいるってことはある種の今はファッションの一つなんだなって思うんですよね。
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自分を表現する、自分らしさを表現する一つのファッションとしての推しみたいな感じを感じます。
それが悪いとかその子たちが嘘をついてるってことじゃなくて、
オタクイコールネクラ、友達がいない引きこもりみたいなステレオタイプの時代ではなくなっていて、
陰キャな部分と陽キャな部分はみんなあって、友達もいっぱいいるけど私だけの神様がいるみたいな部分が、
自然というか今の子って上手に使い分けているし、大事なところを見せたり見せなかったりっていうのを知っているのかなって思ったりします。
うさみさん、うさみりんさんが生きているのはまさにそういう世代、時代なんだなって思いますね。
今日はこの推しも言うから神フレーズをご紹介したいと思います。
生まれてきてくれてありがとうとか、チケット当たらなくて死んだとか、目が合ったら結婚だとか、
行儀惜しいものを言い寄せる人は多い。なるみも私も例外ではないけど、調子のいい時ばかり結婚とか言うのも嫌だし、
辞める時も健やかなる時も推しを押す。と書き込んだ。電車が止まり、セミの声が膨らむ。送信する。隣からいいねが飛んでくる。
私の言った新しい時代の太宰治って思う部分でもあり、推しに対して辞める時も健やかなる時も推しを押すっていうのすごい良い言葉だなぁと思って。
推しもね、やっぱり栄枯成水があって押せる時に押せって言ったりする人もいるけれど、スキャンダルとか脱退とかあったりもするし、
用紙の劣化とかね、いろいろ言う人もいるし、アンチじゃなくてすごいファンだった人ががっかりさせられたっていう時の反動みたいな、アンチに転んだ時の叩きぶりとか恐怖を感じるような粘着質な場合がありますよね。
この小説で言うとまさきくんがファンを殴っちゃったことはもちろん悪いし、読んでる限りはその後の態度とか対応とかもあまり良くないなとは思うんですけれども、
だけどそんなに叩いていい、人格を指定していいっていう権利はないよねっていうね、ガイアにはね、と思ったりしました。
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ファンの人はすぐ死んだって言うけど、私もまあ結構言ったり書いたりしちゃいますけど、本当には死なないじゃないですか。チケット買えなかったからといって。
でもツイッターに書き込んだその人格を否定する言葉のせいで、著名人側は死ぬことはあり得るわけで、
この刀は、ペンは剣より強いの、刀は差し違える刀じゃなくて、著名人側はおもちゃの剣しか渡されてないのに、
ファンの側は真剣、殺傷能力のある剣を持っているっていうことを自覚しないといけないなって思いました。
最近のいろんなニュースとかを見ていて、
ちょっと最後真面目な話になっちゃいましたけど、押井もゆうはすごく面白い作品なので、ぜひ読んでみてください。
宇佐美凛さんのこれからの作品も楽しみです。
今日はこんなところで最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりなと出出はこんな感じで、皆さんからのお便りをもとにしながら、いろいろなテーマでお話ししたり、本を紹介したりしています。
ミモレのサイトからお便り募集しているので、ぜひご投稿ください。
また来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
14:00

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