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2021-04-07 12:08

昔の感情を思い出してザワザワする小説。今ならわかるあの子の気持ち【第53夜】

「昔の感情を思い出してザワザワするような小説があれば教えてください」というリクエストにお答えして、奥田亜希子さんの『リバース&リバース』をご紹介します。ティーン誌のお悩み相談コーナーを担当している編集者の禄。お悩みを送る少女も、今の禄も、私のことかもしれないと思ってザワザワしちゃいます。あなたの中学生の頃の1番の悩みは何でしたか?

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みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと川端です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる、をテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、第53夜となりました。今夜のお便りをご紹介します。
ペンネーム、チョコミントさんからいただきました。
バタやんさん、こんばんは。
こんばんは。
紹介されていた映画、あの子は貴族を見ました。
久しぶりに映画館で映画を見ました。
とっても面白かったのですが、私も地方からの状況組なので、キコちゃんが地元に帰るシーンなど、胸がザワザワして集中して見られませんでした。
昔の感情を思い出してザワザワするような小説があれば教えてください、といただきました。
ありがとうございます。
なるほど、ありますよね、ザワザワね。
そう、あの子は貴族の場合は、キコちゃん派かムギちゃん派かっていうのもあるし、
キコちゃんと同じ状況組の映画では山下梨央さんが演じられていた、平田リエイさん、あの子に感情を移入する部分もあったりとか、
石橋静香さんが演じられていた、バイオリン弾きのイツコちゃんのセリフも、いちいちザワザワするところがありますし、
私の会社の先輩は甲羅健吾君のお母さん、高橋ひとみさんになっていた役ですけど、
母さんに感情移入したって言っている人もいました。
なんかそんな風に、これは私のことだって思える、多少デフォルメされているところもありますけれども、
この感情は私のものだと思える人を描きますよね、山内麻里子さんは。
そんな山内麻里子作品をお気に召したチョコミントさんへお勧めしたいのは、奥田亜紀子さんという作家さんです。
今日の勝手に貸し出しカードは、奥田亜紀子さんのリバース&リバースにしました。
2017年の作品ですが、最近文庫になったばかりなので、文庫の新刊コーナーにちょうど今並んでいるかもしれません。
リバース&リバースがどんな小説かと今注目している奥田亜紀子さんがどんな作家さんなのか、後半でお話ししていきたいと思います。
奥田亜紀子さんは1983年生まれの作家さんですね。
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83年生まれというと、青山七江さんや島本里夫さん、金原ひとみさんとかが同じ年ですかね。
奥田亜紀子さんのファミリーレスという連作短編集を読んで、この人すごいなと思って、今日はそのファミリーレスにするかリバース&リバースにするか迷ったんですけど、
昔の感情を思い出してザワザワするという意味ではリバース&リバースにしました。
リバース&リバースという小説は、ティーン向けのファッション雑誌で働く編集者のロックという青年が主人公で、
彼はそのティーン誌でお悩み相談のページを担当しているんですね。
しかも彼が回答者となって読者のお悩みに答えてるんです。
その投稿してきた男の子とちょっとトラブルになっています。
おいおい専門家でもないのに勝手に思春期のこの悩みに答えちゃって大丈夫?
そんなんでいいのって思ったりしたけど、よく考えたらこの真夜中の読書会だってお悩みというか相談のお便りに専門家でもない私が勝手に答えてますからね。
まあありえるか、答えた相手とトラブルになるってこともありえますよね。
そのあたりから私自身がザワザワしてきちゃって、冷静に読めない先に進めない感じなんですが、
冒頭でこんなお悩み相談が掲載されています。ちょっと読みますね。
ずっと親友だと思っていた子からアチュのことが好き友達としてじゃなくて好きなのと告白されました。
その子は女です。小学校からの大の仲良しでずっと一緒にいました。
正直ありえないとしか思えなかったし気持ち悪いです。
女同士なんて絶対に変。もう友達でいるのも無理です。私はどうしたらいいですか。
長野県14歳アチュって書いてありますね。
同性が好きかもしれない、あるいは女この子のように女友達と思ってた子から告白されてしまった。
そういった相談が今は昔より、私が中学生だったような頃より多そうですよね。
昔より言ってもいいというかオープンにしていい感じはありますもんね。
とはいえ、世間一般的に認められているっていうことと、党の当事者であるっていうことはまた全然違いますから、
なんて答えたらいいんだろう。私ならなんて答えるかなと思う。真剣にここで止まっちゃうぐらい考えちゃいますね。
そんなロク兄さんの話が進んでいくのと並行して、僕が所属しているティーン氏の愛読者の少女、
ヒクミちゃんの話が書かれていきます。ヒクミちゃんはアスカちゃんという親友がいるんですけど、
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ヒクミちゃんはアスカちゃんに友達以上の感情を抱いているわけですね。
ロク君の編集部でのあれやこれや、相談者とのまいざこざの話と、ヒクミちゃんとアスカちゃんの話がパラレルに書かれているわけなんです。
冒頭の相談をしてきた子はこの子じゃないかなって思いながら読むんですけど、どうもこっちの話とあっちの話はリアルタイムではなくて、
時間軸が違うっぽいってこともわかってきます。それがどこでどうつながるのっていう四角形は言わないでおくんですけど、
なるほどっていう驚きとある種カタルシスのある小説ではあります。
そのザワザワポイントとしてはですね、すごく仲のいい友達がいて、中学生とか高校生とか、
10代の頃に、その子に彼氏ができたり好きな人ができたり、好きな人はクラスの子とかじゃなくてジャニーズのなんとか君とか言うこともありえると思うんですけど、
その友達の気持ちの何十パーセントがそっちに持っていかれちゃうっていうのがすごく寂しいっていう気持ちってありますよね。
私といる方が楽しいよね。私の方が何々ちゃんのことはよくわかってるよって言いたくなってしまうという経験ね。
彼、悪い噂があるとか、中学の頃こんな人たちと付き合ってたみたいだからあんまり付き合わない方がいいよとか、嘘だったり悪い話を吹き込んだりね、
そんな経験があるんじゃないでしょうか。
それが恋愛感情なのか、独占欲なのか、執着みたいなことなのか、
2人でいる時あんなに楽しかったはずなのに男の子に取られちゃった、気持ちを取られちゃったみたいなね、何とも言えないですよね。
その嫉妬心というか、自分にそういうネガティブな感情があることに気づいちゃうところとかね。
10代の頃もあったし、大人になってから親友が結婚した、結婚するって聞いた時とかもちょっとあるかなぁ。
そんなモヤモヤする気持ちを思い出してザワザワしたりしました。
ザワザワポイントはもう一つ、リバースっていうタイトルにも象徴されているんですけれども、
被害者と加害者、いじめられる側といじめる側、正しいことと正しくないこと、否定する側と否定される側、
それらは入れ替わることがあるっていう、どっちになる可能性もあるってことなんですね。
ずっとどっちかってことはないっていうのがこの小説のテーマなのかなと思うんですけど、
今日はこのリバース&リバースから紙フレーズをご紹介します。
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まだわからないの?人はね、ずっと被害者の立場ではいられないの。
日常生活の中では誰もが被害者にも加害者にもなるの。
なっちゃうの。何かでは傷つけられる側にいても、また別の何かでは人を傷つけている。
私たちはね、許したり許されたりしながら、何度も何度も関係をひっくり返しながら、
なんとか進んでいくしかないんだよ。そうできない相手なら、距離を置いた方がずっといい。
この言葉は何回か言い回しを変えながら小説の中で出てくるんですけれども、
オセロのようにひっくり返したり、ひっくり返されたりしながら続けていく関係に心当たりがある方もいらっしゃるんじゃないかなと思ったりしました。
セリフに出てくるように距離を置くっていう手段もあるかもですよね。
正しいことを言って相手を傷つける場合もあるでしょうし、適当なことを言ってそれに救われるってこともあったり、
後になって正しさに気づくこともあるかもしれないし、あの時カッとなったことを許そうとか、そんなことを思い出したり、ザワザワしながら読んだ小説でした。
先ほどご紹介したファミリーレスの方は、ファミリーをテーマにした短編小説集なんですけれども、
ここにも中学生の男の子が出てくる話があって、中学生ってこんな感じだったかなって、どうでしょうね、子供っていうと小学校の時とか高校生の時の感情の方がなんとなくよく覚えている気がして、
中学生の自分がどんな感情、どんな黒い感情を持ってたか、あんまり忘れてたんですけど、奥田さんの小説を読むとパーッと鮮やかに蘇るみたいな感じがありました。
ぜひ手に取って見てみてください。今日はチョコミントさんリクエストありがとうございました。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりなと出室は、こんな感じで皆さんからのお便りをもとにしながら、いろいろなテーマでお話ししたり、本を紹介したりしています。
MIMOREのサイトからお便り募集しているので、ぜひご投稿ください。
また来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。
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