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ゴミ箱から拾われた奇跡。キング『キャリー』が原点にして傑作の理由
2026-10-28 21:41

ゴミ箱から拾われた奇跡。キング『キャリー』が原点にして傑作の理由

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▶︎「恐怖小説の巨匠」スティーヴン・キング。彼がまだ無名の高校教師だった頃、記念すべき長編デビュー作が『キャリー』です。

血まみれのプロムシーンがあまりにも有名な本作。あらためて読んでみると「思春期のヒエラルキーの残酷さ」が自分の記憶にも重なります。

ゴミ箱に丸めて捨てられていた原稿を、妻のタビサが拾い上げたという裏話も大好き!



▶︎今夜の勝手に貸出カード

・スティーヴン・キング著、永井淳訳『キャリー』(新潮文庫) https://link.amazon/B00OYRpJS  

▶︎配信内で触れた関連書籍・情報

・スティーヴン・キング著、田村義進訳『書くことについて』(小学館文庫)  https://link.amazon/B00zoj4NK 

・スティーヴン・キング著、矢野浩三郎訳『ミザリー』(文春文庫) https://link.amazon/B0gzU75gj 

・Amazon Prime Videoのオリジナルドラマシリーズ『キャリー』 https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0H8V2T2XM?ref_=atv_dp_share_cu_r 


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「真夜中の読書会」は毎週水曜日08:00配信です。ぜひ番組のフォローと評価をお願いします。番組へのご感想、メッセージ、リクエストはInstagram の @batayomu からお寄せください。一つ一つ大切に読ませていただいております!

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サマリー

スティーヴン・キングの長編デビュー作『キャリー』を、原作とドラマ版の両面から読み解く。高校生のヒエラルキーやいじめ、母親マーガレットの抑圧、プロムでの悲劇を通して、単なるホラーではない青春小説としての普遍性が語られる。キングが捨てた原稿を妻タビサが拾い、完成を勧めた誕生秘話や、高校教師としての経験も紹介される。新聞記事や調査記録を挟む構成が、破局への過程にドキュメンタリー的なリアリティを与えている点にも注目する。

『キャリー』のあらすじと高校のヒエラルキー
真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室へ、ようこそ。
こんばんは。第261夜を迎えました。今夜のお便りご紹介します。ペンネーム一さんからいただきました。
こんにちは。59歳の男性です。いつもポッドキャストを楽しく拝聴しています。
落ち着いたお声で、朝の通勤時間の大切なお供になっています。
このポッドキャストをきっかけに、本を読む機会が増えました。
ありがとうございます。
実は昨日、スティーブン・キング原作の映画、サンキューチャックを見ました。
スタンドバイミーも好きですが、それ以上に心にさかさる作品でした。
最近、もやもやしていたのですが、気持ちが少し晴れた気がします。
原作も読みたくなり、早速購入しました。これから読むのが楽しみです。
久しぶりにスティーブン・キングを手に取るのですが、渡山さんはお好きでしょうか?
おすすめの作品があれば、ぜひ教えていただけると嬉しいです。
これからも配信楽しみにしています。といただきました。
リクエストありがとうございます。
スティーブン・キング好きですよ。好きです。
私が一番好きなキング作品は、ミザリーなんですね。
ミザリーをぜひご紹介しようかなと思って、久しぶりに読んでみようと思って、
読み返していたんですけれども、
読み返している途中に、アマゾンプライムでちょうど、ドラマのキャリーが始まりまして、
見たらすごい面白くて、私はキングのキャリーという作品を知っていたんですけれど、
何回目かの映画でも見て、超能力を持ったいじめられっ子の女の子の話という、
ざっくりストーリーは知っていたんですけれど、
原作を読んだことがなかったかもなと思って、
そしたらすっごい面白くて、
というわけで、今日はスティーブン・キングの、なんと輝かしいデビュー作にして、
著名作のキャリーを、今夜の勝手に貸し出しカードとして、
いちさんと、それからみなさんと、読み解いていきたいと思います。
私が持っているのは、永井潤さん役の新調写文庫のバージョンになるんですけれども、
古本で買いまして、ちょっと日焼けをしていますけれども、
まずはあらすじを簡単にご紹介しますね。
物語の主人公は高校生のキャリー・ホワイトでして、
彼女は地味な見た目と、果敢症気味の母親から厳格に育てられたせいで、
ちょっと世間知らずと言いますか、世間ズレしているところなんかもあって、
学校で同級生たちから、ひどいいじめの対象にされているんですね。
彼女はある日、自分に粘土力、テレキネシスというやつが、
特殊能力があることに気づきます。
粘じると物が動いたり浮き上がったりするという能力が自分にあるということに気づくんですね。
そんなキャリーに天気が訪れまして、
高校のプロムっていう卒業ダンスパーティーに出席する、
学校でも有名なイケメンの同級生の男子パートナーに、
パーティーに出るということになるんですよ。
生まれて初めて綺麗なドレスアップをして、
スポットライトを浴びるのですけれども、
その先で残酷で悲しい悲劇が起こるというお話です。
映画をご覧になった方もいらっしゃると思うんですけど、
あるいは、見てはいないけどちょっと知っている、
DVDのパッケージとかで知っている方は、
映画の血まみれのプロムのシーンっていうのがあまりに有名なので、
精算なパニックホラーっていう印象が強い方もいらっしゃると思いますし、
私もそういう印象があったんですけれども、
実際小説を改めて読んでみますと、
ドラマを改めて見てみたところ、
高校生っていう、女子高生特にっていう非常にヒエラルキーの強い、
誰が誰の上なのか下なのか、
何とか自分より下に置いてやろうっていう力学が働くところで、
それは見た目のことだったり、
彼氏がいるとかいないとか、誰が先に経験したとかしないとか、
勉強ができるできない、スポーツができるできない、
ダンスが上手いとか、本当にいろんなことで誰が誰より上なのか下なのかという、
ヒエラルキーの力学が働くところで起こった悲劇ということで、
非常に普遍的な、よくできた青春小説だったんだなというふうに改めて思いました。
生理の場面に凝縮された母親の恐怖
そのプロムのシーンも有名なんですけれども、冒頭のシーンがですね、また先列なんですね。
シャワー室の女子ロッカールームでいじめのシーンから始まるんですけれども、
それが非常に先列なんですね。
1時間目の体育の授業が終わって、バレーボールだったかなの授業が終わって、
女の子たちがロッカールームで着替えてシャワーを浴びていると、
キャーキャー言って石鹸とか飛ばし合いながら、
いわゆるキラキラした高校生活の安心って感じですよね。
そんな中でキャリーはちょっと身を固くしてたたずんでいる、
さながら白鳥の群れの中のカエルっていうふうにこのキングの小説では表現されています。
そしたらうまくキャリーが生理が始まっちゃうんですよね。
血が出てるって言って、また女の子たちが騒ぎ始めて、
一方ちょっと驚くべきことにキャリーはそれが初兆で、高校生だからちょっと遅めですよね。
しかもその生理が自分に起こるっていうことを認識していなかったようで、
自分から血が流れていくことに驚いてパニックになっちゃうんですよね。
女の子たちはそんな滑稽なキャリーを見て早仕立て、生理用品やらタンポンやらを投げつけて騒ぎまくるわけですよ。
ひどい話でしょ。
そしたら高校の体育の女の先生が何やってるんだって言って入ってきて、
っていうのがキャリーの冒頭の幕開けのシーンなんですね。
ここにはこの数ページにこの物語が書こうとしているいろんなことが凝縮されていて見事だなと思ったんですけど、
まず彼女は生理というものを理解していなかったようで、
こんなに私血が出たら死ぬんじゃないかとパニックになっちゃうんだけど、
体育の先生がケアしてくれて、お母さんに教わらなかったのって疑問に思うわけですよね。
過干渉気味の母親というふうにさっき言ったんですけど、
彼女は教神的にある諸女性みたいなのを崇めるようなキリスト教、教育、宗教、信仰を守っていて、
言うなれば神の名を借りた毒親というやつですかね。
娘が自立した一人の女性として、社会とか愛とか性とかを知って大人になっていくっていうのを拒んでいるっていう、
一つ大きなテーマがあるんですね。キャリーの特殊能力っていうホラーの要素の他に、もう一つ大きな恐怖の要素がそのキャリーの母親であるマーガレットホワイトという
キャラクターの恐ろしさっていうのがですね、物語を非常にパワフルにしています。
その片鱗がこの冒頭のわずか数ページでちょっと明かされるっていうところが、上手だなと思います。
この思春期の女の子独特の残虐さっていうのかな、過害性みたいなものが、
生理をネタにいじるっていう、担保を投げつけるとか、本当にね、男性読者の行為ってなると思うんですけど、
ありえるなーって思ったのは、私も高校生じゃなくて、中学生とか小6ぐらいだった気もするけど、
生理が来てる子もいれば来てない子もいるみたいな年頃の頃に、ネタにいじめるとか、騒ぎ立てるとかっていうのを経験が実はあって、だからリアルだなと思ったんですよ。
でもキングはよくこんなシーンを鮮明に鮮烈にリアリティを持って描けてすごいなって思ったんですけど、
ゴミ箱から拾われたデビュー作
そこにはちょっと秘密がありまして、このキャリーがデビュー作として出版される背景の裏話が、この文庫の後書きにちらっと書かれています。
スティーブン・キングの書くことについてっていう自伝エッセイがあるんですけれども、これにもうちょっと詳しくキャリー誕生の背景が書かれていて、ちょっとご紹介しますね。
実はそのキャリーという作品は若い頃の作家を目指していた、まだ作家に慣れていなかったキングが、ちょっと書いて途中まで書いて、これはダサくだなってグシャグシャってゴミ箱に捨てたと。
その捨ててたのを帰ってきた奥さんが見つけて、奥さんの旅さ、通称旅が拾って読んで、これはすごくいいよと、あなた光るものがありますよと。
女の視点とか学校のディテールを私が教えるから、ちゃんと書き上げた方がいいってすごく言って、書き上げたっていう話が載ってます。
キングは実は作家になる前は高校の先生もやっていて、だから女子高生たちのヒエラルキーの残酷さとか、プロムっていうのがいかに大事かっていうこととかは、なんとなく体感として分かっていたこともあったでしょう
し、
実際そのいじめられっこ、標的になりやすい子っていうのは、キャリーのモデルとして2人、実在する2人のモデルがいるっていうようなことも、この書くことについての方に書かれていました。
そんな冒頭のシャワールームのシーンは、ちょっとこのままこのディテールを書いていけそうにないなとか、自分はちょっとキャリーのことがあんまり好きになれないなとか思って、キング自体はこれをボッツにしようと
してたんだけど、奥さんがなんか光るものがあるから、今までのボッツになった小説とは違うから、書き上げた方がいいというふうに見出したね、奥さん。
旅がすごいですよね。
女子高生のリアリティみたいなものは奥さんが多分ちょっと教えて、ディテールを足して、高校教師もやっているキングの実体験も交えながら誕生したのがキャリーというわけだったんです。
記録文書が生む破局へのカウントダウン
はい、ちょっとこの本作の最大の特徴はですね、単純な三人称の物語、客観的な視点で描かれた物語ということではなくて、書簡対エピストラリースタイルとかって言われるんですけれども、書簡ですね、日記とか新聞記事
とか裁判記録とか、
そういういろんな文章で物語を包む形式のことを言うんですが、キャリーという本はキャリー自身の自分語りの章というか、自分語りになっているところの間に地元新聞の報道記事とか、プロムで起こる事件に関する調査委
員会の記録だったかなとか、
という公文書のようなものがパッチワークみたいにコラージュされて話が進んでいくんですね。この構造になっていることにより、読者の私たちは冒頭からキャリーという少女が原因で、高校のプロムで大惨事が起こ
って、チェンバレンという町なんですけど、
チェンバレンの町ごと、悪滅的な大量の死傷者を出した大事件があったということを、あらかじめ知っているという、その結末をあらかじめ知らされた状態で読み進めることになるわけなんですよ。
だからこれは、ホラーであり恐怖小説でありながら、サスペンスになっていて、サスペンスの焦点は何が起こるのかっていうことじゃなくて、どのようにして破局に至るのかっていう追体験になっているっていうことが非常
に特徴的ですね。
なんでプロムで大惨事が起こるってこと、ちょっと先にこのポトキャストでも言っちゃったんですけど、その結末自体が大事なわけじゃなくて、その結末の破滅にどうやって向かっていっちゃったんだろうっていうのを追体
験するというところが、この小説の面白さです。
ただ、このモキメンタリーみたいなスタイルがちょっと読みづらさも生んでいてっていうのは、私語りだけで進めば単純なんですけど、途中に間々に記事の一部分とか、住民たちの告白メモみたいなのが挟まるので、いや
いや読みづらくはあるんですけれども、
そのおかげでリアリティがあると言いますか、ただの超能力少女のぶっ飛んだオカルト話じゃなくて、本当にあった事件のドキュメンタリー化のようなリアリティを生んでいるっていうところが面白いなと思いました。見事
だなと思って、それがこれがデビュー作なのかって思うと、やっぱりキングの才能たるやっていう風に思いますね。
さて、そろそろ紙フレーズをご紹介したいと思います。
今日はキャリーからではなくて、先ほどご紹介した書くことについてというエッセイの本から、キャリーの書き方について触れたところをちょっと読みたいと思います。
この書くことについてという本は、キング自身の自分の小説の解説にもなってますし、文章特本と言いますか、小説の書き方の指南本にもなっていて、なので文章の書き方とかドラマの脚本なんかに興味がある方にもとって
もおすすめ、すごく面白い本です。
さてさて読みますね。
私は登場人物の身体的特徴や服装をこと細かに説明するのをあまり好まない。
誰がどんな服を持っているかなどはどうだっていいことではないか。
服の説明を読みたければ、J.Crewのカタログを開けば済むことだと言っております。
ちょっと皮肉屋なところもキングの好きなところなんですけれども。
続けてキャリーについてはですね。
キャリーホワイトはクラスののけもので顔色が悪く見慣れもパッとしないと、それだけ言えば後は読者が全部考えてくれる。
ニキビがどうのこうのとかスカートがどうのこうのとかをいちいち書き込む必要はない。
誰だって高校に一人や二人はいた落ちこぼれのことを覚えているはずだ。
私がそれをコマゴマと書いたら、そこに読者が入り込む余地はなくなり、両者の相互理解の絆を失われるとあります。
そうかなるほどと思ってすごいハッとしたんですよね。
原作とドラマ版、読者の思い込み
ドラマでキャリーを演じている女優のサマー・エイチ・ハウエルだったかな。
彼女はとてもキュートなルックスで可愛いんですよ。
映画も、3番目の映画はクロエ・モレッツが演じていて、多分私はそれを見たような気がするんですけど、
それもちょっとルックスが良すぎるという批判がありました。
原作のキャリーはもっと見にくいはずだと、私も確かにそうだなと思ったんだけど、
キングが書いている通り、読み返してみると、そんなにブサイクだという描写はこと細かには書かれていないんですね。
でも、キャリーはこんなにいじめられるんだから、もっとブサイクで太ってて、
やぼったい服を着て、吹き出物だらけでっていう見た目のはずだっていう風に、
多くの人が思っていて批判をしているし、私もそう思ったのは、それは私のバイアス、私の思い込みで、
そこに一番ギョッとしたっていうね、
プロムの夜に大惨事が起きて、学校と町が地祭りになるっていう、逃れられない破滅へのカウントダウンなんですね、この小説は。
その破滅へのカウントダウンを見守る役割として、自分もいじめっ子側の一人として、
あるいは偽善者ぶった傍観者として見守るしかないっていう立場に、自分を置かれてしまうという恐ろしい物語でした。
デビュー作から始まったキングの歩み
はい、そんな普及の名作ですね。
ドラマ版は、いじめのあり方とかがアップデートされていて、SNSなんかも絡めて、今っぽくなっていて、非常に見応えがありましたし、
お母さん役といじめる側のクリスっていうね、女の子が怖いんですけれども、彼女は彼女でとても魅力的で見応えがありましたので、
いちさんもぜひドラマ版と、そして原作とどっちが先でもいいですが、合わせて楽しんでいただけたらと思って今日ご紹介しました。
最後にちょっとほっこりしたお話も紹介します。
キングはキャリーがですね、初めて出版社に買ってもらえて、さらに売れてですね、20万ドルだったかな、最初に手にしたのは出版権を渡したときに最初に手にした20万ドルで、
お母さんに奥さんにプレゼントを買わなきゃって思うんですよ。
だけどその街にドラッグストアぐらいしかその時開いてる店がなくて、ドライヤーを買って帰るっていういいお話が出ています。
そこからはもうすごくたくさんたくさん名作を書き続けていて、恐怖小説というジャンルではもう誰にも抜けないぐらいの累計部数を生み出しているんじゃないかと思いますけれどもね、そんなデビュー作キャリーをぜひ
読んでいただけたらと思います。
リクエストありがとうございました。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、リスナーの皆さんからのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介しています。
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お届けしたのは講談社のバタヤムこと川端理恵でした。
また水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
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