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ミモレ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンミモレ編集部のバタやんこと河童です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる、
をテーマに皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、第99夜を迎えました今夜のお便りをご紹介します。
ペンネームベゴニアさんからいただきました。
5年付き合っていた彼氏にプロポーズされました。おめでとうございます。
それぞれの実家や親戚に挨拶に行ったり、これから一緒に住む家を探したりしています。
彼のことは好きだし、結婚も嬉しいけれど、変わっていく周りの状況に、
なんだか自分の気持ちだけが取り残されているような気になります。
これがマリッジブルーってやつかなんて、ちょっと呑気に構える自分がいる一方、
なんとなく不安を感じる自分もいて、嬉しいはずの変化を素直に喜べなくなってしまっています。
そんな自分の気持ちと向き合うような本があれば教えてくださいといただきました。
リクエストありがとうございます。
そっかそっか、どういう本をご紹介しようかなとずっと考えていたわけなんですけれども、
ちょっと今日はもう一つお便りをご紹介したいと思います。
ペンネームホンキリンさんからいただきました。
毎日夫の介護をしています。
友人や知り合い、ケアマネージャーさんなどいろいろな方たちに頼って助けてもらっていますが、
どうしても自分の人生の貴重な時間を奪われていると思ってしまい、
イラついて夫に当たってしまいます。
夜中何度も起こされて寝不足が続くと叫びたくなります。
介護を面白おかしくさせてくれるような気持ちが軽くなるような作品があったら教えてくださいといただきました。
それはありがとうございます。ホンキリンさん素晴らしいですね。
本当に頑張っていらっしゃって、どちらのリクエストにも全力でお答えしたいなと、
どんな本がいいかずっとずっと考えていたお便りでした。
そして今夜の勝手に貸し出しカードは川上美恵子さんのエッセイ集、人生が用意するものにしました。
これから結婚されるちょっとリッチブルーなベゴニアさんと旦那さんの介護をされているというホンキリンさん、
そんなお二人に同じ本を勧めるのかよっていう話はちょっとこの後詳しくご紹介するとして、
なんで今日この本にしたのかっていう夫婦のお話とはもう一つ別の理由からお話ししたいと思います。
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この川上美恵子さんの人生が用意するものは2012年の8月に初版が刊行されていて、
2011年から12年にかけて週刊新聴とか日経新聞に掲載されたエッセイをまとめたものなんですね。
多くの章でほとんどのところで2011年の3月11日の東日本大震災のことに触れられています。
震災のことそれ自体というか震災後の社会に対して思ったことなんかをエッセイの中で綴られている本なんですね。
まもなく2022年の3月11日がきますけれども、この本にある震災直後、何度もループして流れた被災の映像だったりとか、
審議のわからないいろんな噂が流れたり、それに対するSNSの反応だったり、有名人の人の不謹慎な発言でバッシングされたり、
政府の発表、それって本当かなとか隠してるんじゃないかとか、そういう不審感を抱いたり刻一刻と変わっていく状況とか、ニュースに対してざわざわしたり胸を痛めたりするやり場のない思いを川上美恵子さんが生々しく綴っていらっしゃる本なんですね。
今またその時と似てるっていう言い方はちょっとふさわしくないかもしれないんですけど、少し前のコロナがもっとどんなものか全然わからなかった頃の不安な感じとか、それでも東京オリンピックはやるんだっていうことに対するなんか不思議な気持ち、やりきれない気持ちとか、
そしてまた昨今の理不尽な武力行使にニュースを見たり、それに対するSNSを見たりするとやっぱりすごい何とも言えない不安な気持ちとか怒りとか、やり場のない思いに押しつぶされそうになることもあると思うんですよ。
私もそうなんですけど、そんな時に川上さんの言葉がちょっとお救いになる部分もあるなと思って今日この本にしました。
自分の中でもうまく整理できないような抱負の感情だったりを生々しく言葉にしてくれるっていうのがやっぱり川上さんはすごいなって思ったのと、エッセイってこういう効き目もあるんだなっていうふうに思いました。
後半ではその夫婦にこれからなろうという方と今解放されている方にどうしてこの本を選んだのかっていうお話についてご紹介していきたいと思います。
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まずは震災の後の感情をどのように川上さんが書いてらっしゃるかを少しだけご紹介しますね。
3月の記憶という章があって、タイトルだけでもすごいなって思うんですけど、それぞれの感受と憂鬱の場所でとか我々を襲う感満な何か、一人でに洗練されていく噂なんていう見出しが並んでいます。
今の感覚と似てるなって思うところもあるし、できる人はいないのですかっていうタイトルも秀逸だなって思いました。
すごいなって思ったところを1個読もうと思います。
まるでわからなさの足し算と掛け算で世界はもりもりと出来上がっているかのよう、あるいは豪雨の中の頼りないワイパーみたいな心境になるね。
ぬぐってもぬぐってもなあの感じ。車の場合はどこかしらへの到着という終わりがあるけど、人間にはそれも期待できないのがまた切ないところ。
豪雨の中の頼りないワイパーみたいってすごい言葉だなって思って、ぬぐってもぬぐっても終わりのなさみたいなことってありますよね。
人間の終わりが期待できないのがまた切ないところってすごい言葉だなというふうに思いました。
さて、夫婦について書かれた章をいくつかご紹介したいと思います。
不思議なお墨付きパワーっていうタイトルの章があって、そうは言っても夫婦とか家族っていうのはなんでこんなに強いんだろうな、この強さはなんだろうっていう話が書かれています。
例えば比較的フランクな仕事の場所であっても差し入れを持ってくるのが彼女だとニコニコしながらもちょっとこうしこんどうすんなよみたいな空気がちらっと流れて、
妻、奥さんだとどうもいつもすいませんみたいなオフィシャルな感じになるっていうね。
比較的フォーマルなパーティーとかでも配偶者を連れてくるっていうのは認められていて、
オフィシャルなパーティーじゃなくてカジュアルな上司のバーベキューパーティーっていうか、
自宅に招かれるとかでも彼女を連れてきたのかよっていうのと奥さん連れてきましたっていうのだと全然違うだろうなっていうのありますよね、確かにと思って。
2人の仲良さ関係はそこには何ら変わりはないけど、それはやっぱり奥さんっていう社会的保障というか信用があるゆえんなんじゃないかっていうふうに書かれていて、
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この連帯というか認識はいったいいつまで有効なのかと川上さんとしては問題提起をされている章なんですね。
この本のこのくだりを読んでちょっと別な本を思い出したんですけど、
綾瀬丸さんの「やがて海へと届く」っていう小説がありまして、これ4月に映画が公開になるのでぜひ見ていただきたいと思います。
岸井幸野さんと浜辺美奈美さんが主演で、あまり言っちゃうとネタバレになるからあれですけど、
震災で片方が亡くなってしまうんですよね。
その悲しみを乗り越えられない、受け入れられないっていうのが大きなテーマになっているんですけど、
2人はすごく心を通い合わせて仲良しで一緒に住んだりもしてたんですけど、
女同士の親友っていう関係って社会的には何の保障もされていないから、
有事が起こった時、そういう大きな震災とか事故とか病気になったり怪我をしたりした時に連絡きたりはしないんですよね。
その時に映画を見てすごい思ったんですけど、やっぱり家族とか夫婦っていうのは有事の時代の時にできることが大きくて、
心の繋がりがどっちが強いとか弱いとかすることに関係なく、
親友とか同棲しているだけの相手って言ったらあれですけど、できることがすごく少ない今のところですよ、
社会的にはそうなんだなっていうことをすごい思いましたね。
マリッジブルーでいろんな手続きとかめんどくさいなっていう気持ちになるかもしれないけど、
結婚しろってわけではないんですけど、
夫婦という肩書きが今のところ社会的に割と川上さんの言い方をすれば、
これは水戸孝文の院老的な何かって書いてらっしゃいましたけど、
水戸孝文の院老的な肩書きとして発揮される部分が結構大きいので、
持っていけるなら持っておいてもいいものじゃないかなっていうことを考えたりしました。
もう一つこの本の中から好きな章をご紹介したいと思います。
さて私がこの本で一番好きな章、何度も読んだ章は表題作の人生が用意するものっていう章なんですね。
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生きていれば取り返しのつかないことってあると思うっていう話から始まって、
他人のある部分を取り返しのつかないことにしてしまうかもしれないギリギリのラインを走っている職業について語られているんですね。
そう聞いて一番最初に思い浮かべるのは医療関係の人かなって思うんですけど、
ここに書いてあるのは美容院の話で、
確かに美容師さんっていうのは人生のその人の風貌、外見とかキャラクターとかのかなりの大きな部分を占める髪型っていうものを
切ったり変えたりするっていうことがすごい職業だっていう風に川上さんは表現されていて面白いなと思いましたが、
取り返しがつかないってことはないけど髪は伸びるから、
でもある意味そんなデスマッチというか一期一会をよく毎日毎日やってのけることができるなって書かれていて面白いなって思います。
あと建築家の方なんかもねその人のお家っていうすごい人生に影響するものをデザインするっていうのが震えるようなすごい職業だっていうことは書いてありますが、
もしかしてというか確実に子育てとか介護も添えて人の一部を取り返しのつかないことにしてしまうかもしれないラインギリギリを走っている、
いやというか影響がその美容師さんとかより全然大きいのに特に何の訓練も受けずに医療とかみたいにね、
なんかすごく学んだりするわけじゃないのに担わなきゃいけないってすごいことだなーって思いました。
さて今日はここから紙フレーズをこのままご紹介したいと思います。
そんなことできるわけないと子供の頃に思っていたことが知らないうちにできる大人になっていて、できていたそのことができなくなる日がいつか再び来るのだなぁ。
あーすっかり風が秋の匂いだね。
とあります。
なんとすごい1文、2文かでしょうかと思いましたよ。
今旦那さんの介護をされているという、
ホンキリンさんね、
友達とか知り合いとかケアマネージャーさんがみんな手伝ってくれて旦那さんを助けているというその環境、
このタイトルは人生が用意するものなんですけれども、
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旦那さんの人生に用意をされたっていうホンキリンさんが本当にすごいことですよと思ってこの歌手をご紹介したいなと思いました。
先にご紹介したベゴニアさんからいただいたメッセージお便りは去年の初めぐらいだったかな。
ちょっと時間が経ってしまったので、もしかしたらもう無事に結婚されて新しいお家に住まわれているかもしれないですね。
そうだといいな。
いろんなめんどくさい手続きとかご挨拶とか儀式的なことを終えられて楽しい2人の新居での生活を送られているといいなと思いながらご紹介させていただきました。
素敵なリクエストありがとうございます。
お二人とも心から応援しています。
そしてそして来週はですね、ついにこのポッドキャスト100回目の配信を迎えることができそうです。
できるかな。
皆さんからいただいたお便りでなかなかちょっとご本が思いつかなくて紹介しきれてないものも多いですし、
あと感想だけリクエストじゃなくてメッセージとか感想もたくさんいただいているので、来週はできるだけたくさんご紹介したりお答えしたりできたらと思っています。
皆様からのお便りをお待ちしております。
今日も最後までお付き合いいただきありがとうございます。
と、いつもならここでエンディングに向かうのですが、一つ追加のお知らせがありました。
今日ご紹介した川上美恵子さんの人生が用意するもの、私が持っているのは単行本版なんですけど、2017年にこの人生が用意するものと全部後に残るものっていうのを一緒にしてカポン化した文庫、すべてはあの謎に向かってっていうのが出ているんですね。
もしこのポトキャストを聞いてくださって、読んでみたいなって思ってくださった方、これから求めになる方、図書館で借りる方がいらっしゃったら、すべてはあの謎に向かってという文庫の方が分量的にもお値段的にもお得かもしれませんという追加のお知らせでした。
最後までありがとうございます。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室は皆様からのお便りをもとに、いろいろなテーマでお話したり、本を紹介したりしております。
みもれのサイトからお便り募集していますので、ぜひご投稿ください。
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また水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
おやすみ。