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2020-05-19 11:06

【第9夜】真っ白にはなれないけど、点々のままでいよう

「寝る前にほっとする小説が読みたい」というリクエストにお答えして、今回ご紹介するのは原田マハさんの短編集『星がひとつほしいとの祈り』です。くすぶった思いを抱えながら、ひとりで訪れた温泉旅館。そこで出会った盲目のマッサージ師の老婆から聞いた昔話。温泉に浸かったからといって、旅行したからといって、急に真っ白にはなれないけれど。点々としたまま、少しだけ自分を優しく受けとめて。

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みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAウェブマガジン、みもれ編集部のバタやんこと川端です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて、明日が楽しみになるおテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、第九夜となりました。東京は先週は夏みたいな日がありましたけど、一転して今週は冷たい雨の一週間ですね。
いかがお過ごしですか?さて、今日のお便りをご紹介します。
神奈川県にお住まいのすじっ子さんからいただきました。ホワイトさんのふんわりとした、でもしみいる作品が大好きです。
そんなふんわりとした、夜寝る前にホッとする小説が他にもあったら教えてください。
あとは旅のお供も知りたいです。子供の頃に深夜特急を読んで以来、旅行機も大好きです。とのお便りをいただきました。ありがとうございます。
小川さん、いいですね。ミモレでもインタビューをさせていただいて、ライオンのおやつをご紹介しました。
ライオンのおやつもすごくいい作品ですけど、夜寝る前にホッとするっていうタイプではないかな、感情ちょっと揺さぶられすぎちゃって眠れなくなりそうですね。
小川さんの回もまたやりたいと思います。というわけで、今日は勝手に貸し出しカードは原田マハさんの星が一つをほしいとの祈りをご紹介したいと思います。
この本は20代から50代までいろんな年代の女性を主人公にした7つの短編集です。
いろんな悩みというか、影を抱えた女性たちが希望とか光、星を見つけるお話ですね。
原田マハさんの回をやってくださいというリクエストも実はいくつかいただいてまして、今年採用面接をやった時も好きな作家は原田マハさんと履歴書に書いている女の子が結構多くて、それが印象的でしたね。
原田マハさんといえば、楽園のカンバスとか暗幕のゲルニカとか、絵画やアーティストをモチーフにした骨太なアート小説が有名ですけれども、
総理の夫とか本日はお日柄もよくとか、コミカルな要素があるアートウォーミングなエンタメお仕事小説も私も結構好きですね。
キネマの神様っていう作品も、そっちのハートウォーミングなお仕事小説のジャンルであって、今年山田陽次監督で映画化っていうのをすごい楽しみにしてたんですけど、
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若き日の豪という主人公を須田雅樹くんがやって、現代の豪を志村健さんが演じる予定だったんですよね。志村健さんがこのコロナで亡くなってしまって、映画も中止なのかなって思ってたんですけど、
その志村さんの役を沢田健次さんが引き継ぐことになったと、昨日かな、ほんと数時間前にニュースになっていてね、なんか、
須田雅樹くんが年を取ったら志村健になるっていうのもなくはない気もするし、沢田健次になるっていうのも合ってる気もしますよね、しませんか?不思議な役者さんですね、須田雅樹くん。
楽しみですね。2021年の公開を目指すとニュースにありました。
ちょっと話が逸れてしまいましたが、この星が一つ星との祈りは、そのアート作品のタイプでも、エンタメお仕事作品のタイプでもなくて、
女の人の日常を切り取って描写した映画の中の一部分だけみたいな、そんな短編集です。
いろんな寂しさだったり、後ろめたさだったりを抱えている女性たちが出てくるので、すごく明るい話というわけではないですけれども、どれも後味が優しいので、
寝る前にぴったりなんじゃないかなと思いました。後半はこの短編集の中から、表題作の星が一つ星との祈りをご紹介します。
表題作の星が一つ星との祈りの主人公は、35歳の大手広告代理店に勤めるブレッココピーライターのフミカです。
仕事はすごく順調なんですが、本音は真面目なんですけど、無礼を気取るっていうんですかね、ちょっとハスに構える、
フリをしているみたいな感じのある女性で、その代理店の上司と不倫をしているんですね。
町お越しの仕事で四国へ二人で出張するんですが、フミカはプライベートにもう一泊遠泊したいとねだるんだけど、その上司の人は家庭の事情があるのか、帰ってしまって、
それで一人でフラット道後温泉に寄るっていうお話です。道後温泉の旅館で盲目のマッサージ師のおばあさんにマッサージをしてもらって、そこからはそのおばあさんの方の思い出話がメインに切り替わります。
ラストはちょっとびっくりする展開で、そう来るのかっていう、さすがマハさんの普通には終わらないよねって感じなんですけど、そこはちょっと言わないでおきますね。
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これを読みながら、若狼は小学生っていう青い鳥文庫の大ヒットシリーズがあるんですけど、それを思い出して、この間アニメ版の映画をNHKで放送されてたの、ご覧になってた方いらっしゃるかな、私あの映画が大好きで、本当大人こそ号泣するから見てほしいという感じなんですけど、
その旅館の若狼は、両親を事故で失った小学生の女の子なんですけど、その旅館にもポルシェで乗りつける一人旅の女の人が出てきて、グローリー・スイリオさんっていう占い師をやってる女性なんですけど、彼女も仕事は順調だが、男の人に振られて、その旅館にやってきたっていう女性なんですよ。
このフミカーがグローリー・スイリオさんと、私の中では重なって、アニメではホランチアキさんがスイリオさんの役を吹き替えてるんですけど、途中からずっとフミカーの声がホランチアキさんの声で脳内再生されるっていうね、なんかそんな風に違う作品が自分の頭の中で勝手にミックスされるっていうことありません?
今日はこの星が一つ欲しいとの祈りから紙フレーズをご紹介します。ぜひ皆さんもホランチアキさんの声で脳内イメージしてくださいね。
今日ばかりは何も考えず真っ白でいよう。いや、ただの点々で。仕事のことも、あの人のことも、締め切りも、絞り出さなければならない言葉の数々も、全部忘れて。
これはフミカーが旅館の大浴場に一人で行って、知らない女の人、裸の女の人がたくさんいる中で、広い湯船に浸かりながら考えたことなんですけど、真っ白でいよう。いや、ただの点々でっていいですよね。
真っ白って高潔な感じがするけど、そんなに自分は純白でもないっていうこの主人公と、点だらけ、点だらけですよね。やってしまったことや、やらなきゃいけないこととか、
旅行に行ったからといって急に真っ白にはならないし、ただの点々でいようっていいなぁと思いました。
絵画に造形が深い原田真波さんならではの表現、たとえだなぁと思いましたし、頭の中にキャンバスが常にあるのかなと思って、面白いと思いました。
この本は確か、身漏れのディレクターの大草直子さんに借りたというか、もらった本なんですけど、実は一緒にプライベートで沖縄に旅行した時に、
毎日雨が降っていて、今みたいにそれですることがないから、私持っていた本を全部読み尽くしちゃって、暇してたんですよ。
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そしたら私読み終わって、これすごい良かったからあげるよって言って、大草さんにもらったんですよね。
ここで喋るためにもう1回この本を読み返したら、その時の沖縄の湿気とか雨の音とか鳥が遠くで鳴いてたりとか、
ぬるくなっちゃったオリオンビールの気の抜けた味とか、なんかそういうのがグーッと蘇ってきました。
本を再読すると、その時に読んだ情景とか、その時考えごとしてたこととかがリフレインすることがありますね。
今風に自由に旅行に急に決めてパっていくみたいなことが、また戻ってこないかなと思いつつ。
この本に収録された短編は、このお話のように旅そのものを描いた話だったり、
またどこかを主人公が訪れる話だったり、旅小説として読めるものもたくさんあるので、
旅行期好きなすじっ子さんの旅のお供におすすめかなと思ってご紹介しました。お便りありがとうございました。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会、おしゃべりな図書室はこんな感じで、皆さんからのお便りをもとにしながら、
いろんなテーマでお話ししたり、本をご紹介したり、緩やかにやっていきたいと思います。
また来週水曜日の夜にお会いしましょう。今日は最後までお付き合いいただきありがとうございました。
おやすみなさい。おやすみ。
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