00:04
この番組では、毎週一冊の邦訳アメコミを取り上げて、その内容を紹介しています。
今日取り上げるのは、ザ・デス・レイ。
ティーンレイジャーのアンディは学校のはみ出し者。しかし彼には、ひねくれ者だが誠実な友人のルイがいた。
2人はいじんこに絡まれる毎日を送っていたが、ある日アンディがタバコを吸ったことをきっかけに、そんな日常は終わりを告げる。
自分は何でもできるという自信と、強力なスーパーパワーを身につけたアンディは、世界を変えるための戦いに身を投じるのであった。
といったストーリーですね。
スパイダーマンのオリジンと似てますね。
似てる感じだね。
どっちも学校とヒーロー生活の二重生活をね、描いた作品ではありますが。
高校生がある日突然ね、スーパーパワーを持っちゃうんですね。
学校ではいじめられっ子だけど、でも本当はっていう、あれですね。
夢の物語ですね。
夢の物語です。
今回ライターはダニエル・クローズ。
ライターっていうか、今回文業じゃなくて、絵も多分自分で描いてるんで、作者っていう感じかな。
日本の漫画家的な方式なんですね。
的な感じかな。
このダニエル・クローズ、オルタナティブコミックの代表的な作家らしいですね。
オルタナティブコミック?
何そのわざとらしいやつ。
教育テレビっぽくない?
説明しよう。オルタナティブコミックとはね。
オルタナティブって何ですかね。
オルタナティブって、何だろう。辞書で聞くと多分二者卓一とかって出てくると思うんだけど。
他のとか、もう一方のみたいな意味で使われる。
傍らに流れると書いて暴流とかっていう言葉を当てると、しっくりくるんじゃないかなと思う。
はー、なるほどね。
ロックでもさ。
オルタナティブロック。
オルタナティブロックってあるじゃないですか。あるらしいという噂は聞いたことがある。
ちょっと説明はできないんだけど、それが何かって。
でも私の理解だと、いわゆるロックロックしたロックに対して、
ロックロックしたロック。
他ジャンルとかを持ち込んだりして出てきたのが、オルタナティブロックの起こりなのかなって。
はー。
でも今ロックも多様性の時代だからさ。
ジャンル分けって難しいよね。
確かに。よくわかんないよね。
わかんない。
そもそもね。
いや、そうなんだよ。だから何かを学ぼうと思ったら、どんなものであれ、歴史と思想を知っていく必要があるんだよね。
はー、なるほどね。
もっと学校で倫理の授業とかちゃんと受けとけばよかったよね。
確かに思うわ。
倫理の授業でオルタナティブロックの話もされてたんだろうね。
知ってたよ、きっと。
今回もM1グランプリで優勝したマジカルラブリーが、漫才じゃないみたいなこと言われて。
へー、そうなんだ。
つまりあれはオルタナティブ漫才ってことですよ。
なるほどね。
オルタナ漫才。
そう。
はー。
多分括弧たる漫才みたいなのがあるわけですよ。
みんなの心の中に。
そうそうそう。
なるほどね。
括弧たるロックってのがあって、オルタナティブロックがあって、括弧たるコミックってのがあって、オルタナティブコミックがあるんじゃないかな。
03:05
なるほどね。
主流に対する暴流としてデスレイがあるということですね。
なるほど。
今回これやるにあたって、ネットでオルタナティブコミックについて軽く検索してみたらですね。
ほうほう。
オルタナティブコミックとは、主流じゃないコミックのことだって定義付けてて。
はー。
すげーって思ったね。
めっちゃ幅広くらい。
だから、難しいと思うんだけど、DCとかマーベルとかは違うよねっていう。
あーなるほどね。
タートルズとか入ってくるのかな。
そう。
それ言わないでほしかった。
タートルズって、すごいマイナーな、同人誌みたいなやつから今このコンテンツになってるらしい。
へー。
マイケル・ベイの監督作品まで映画になるくらいの。
元同人誌的なアレなんだ。
すごい何千部とかっていうレベルのコミックだったらしいですよ。
そうするとさ、またややこしくなるよね。何がオルタナティブで何がオルタナティブじゃない。
オルタナティブが主流派になることもあるということですね。
ほぼメジャーなオルタナティブとかね。
ジャンル分けは難しいということですよ。
なるほどね。
ただこのダニエル・クローズって人はやっぱそういうインデペンデント系と言いますか、大手の出版社とかのいろんな編集者とかライターとかアーティストとかがいるような環境とは違うところで作品を発表しているということらしいですね。
なるほど。
他の作品もデスレーじゃないんだけど、やっぱり映画化したりとかしているらしいんで。
まあわからん。本当にわからん。わからんがオルタナティブコミックなんだなと。
なるほど。
ということでやっていければいいんじゃないかな。
わかりました。
これさ、この前、てか昨年だね。アメコミの翻訳をたくさんしている中澤俊輔さんの講演会に行ったときに、中澤さんの仕事一覧みたいなのがあって。
その中で検索していったら、このザ・デスレーってのを見つけたんだけど。
なるほど。
もうジャケ買い。
これジャケットいいですよね。
最高だねこの表紙がね。この真っ黒の表紙にスパイダーマンの偽物みたいなコスチュームを着た男が一人暗闇の中に立っていて。
しかもまたポーズがさ。なんだろうこのポーズね。
絶妙なダサさですよね。
そう。力の抜け具合というか。
B級感すごいですよね。
すごい。で、あともう一個感動したのは、タイトルがカタカナで書いてあるじゃないですか。
あーそうだね。
でも書き文字っていうかさ、ちゃんとデザインされた文字でザ・デスレーってカタカナで書いてあって、これもまたいい味出してるよね。
06:02
確かにこういうのって珍しいよね。
なんかやっぱりほら、普通のフォント使って置き換えちゃったりとかしがちなところでさ。
特にアメコミとか洋画みたいなやつだとね、なかなかここまで手がかかるもんね。
カタカナでデザインし直すとさ。
フォントがあるとはいえね、カタカナで作り直すわけだから大変だよね。
この2011年の作品とは思えない雰囲気が最高ですね。
ちょっとレトロ感ありますよね、全体的に。
あのさ、この裏拍子もさ、ザ・デスレーってこっちもまたね、ちゃんとカタカナで書いてあってね。
すごいよね。
すごいよ。デザイナーさんすごいね。
あとね、値段のところがですね、よく見るとネフダシールで貼ってあるネフダみたいな感じのものが貼ってあって、これ印刷でそういう風で表現してるんだけど。
ネフダ風に印刷されてますよね。
そう。セールプライス1000円って書いてあんだよね。
ちゃんとここまでローカライズして。
ここまでちゃんとローカライズしてるんですよ。
すごいね。
本文の中にもホメロスのオデッセイアをぶち破るシーンがある。
スーパーパワーを使ってね。
スーパーパワーを使って本を引きちぎるシーンがあるんだけど、ここもちゃんと全部のコマにちゃんとザ・デスレーって書き換えててね。
さすがに効果音はそのままなんだけど、たぶんこの辺はアメコミらしさを残すためなんだろうね。
なるほどね。確かに効果音全部元のまんまですね。
すごいわ。このローカライズの仕方は本当に気合が入ってて。
この出版社はどこですか?
プレスポップさんがこの作品を日本の人に読んでもらいたいんだっていう。
なるほどね。
丁寧な仕事ぶりが伝わってくる。
細かいよね。いちいち日本語に直していくなんて。
すごい。吹き出し以外のところでもちゃんとそうやってるんですよ。
確かに。
こだわりの作品ですね。
ローカライズといえば悪名高きピクサー映画ですよね。
ピクサーね。よく言われるよね。
お店の看板とかね。
日本語字幕で見てるはずなのに店の看板が日本語にローカライズされてね。
民調体?ゴシック体かな?みたいな。
すごい雑なんだよね。
雑なフォントでね。
日本語に変えられてるところだけ浮いちゃってるんだよね。
確かにね。あそこだけ浮いちゃうよね。
シュガーラッシュっていう映画があるじゃないですか。
ゲームの中の世界で大冒険みたいな。
ヒロインのペネロッペちゃんが嫌われ者の主人公ラルフに手作りのお菓子のメダルを出すシーンがあるんだけど。
09:04
ゴシック体でね。
私のヒーローって書いてあってね。
いいシーンなのに邪魔!ってなりましたよね。
なんか現実に戻されますよね。
調べたらやっぱり元々はお菓子のデコレーションみたいな感じで、
手書き風の劇団のYou Are My Heroって書いてあったらしいんだけど。
ゴシックでね。
色だけ揃えて私のヒーローになれるわ。
メダル割れるシーンありましたよね。
あるある。
割れた後はどっちでしたっけ?
割れた後は元に戻ってた気がするな。
わかんないけど。
ローカライズいろんな国にやってから大変なんでしょうね。
いろんな言語で多分やっていくんでしょうね。
あらゆる言語でね。
もうやらなくていいのにって思っちゃうんだよな。
確かに。
そのまんまね。
やっぱり子供たちとかに見せるためには、
カタカナとかに変えたほうがいい、日本語に変えたほうがいいって思うっていうのかな。
あの文字読めるっていうのが子供の喜びに繋がるのかもしれないね。
そうか。
わかんないけどな。
ちょっとやめてほしいなって。
苦手ではありますね私も。
もし自分がスーパーパワー手に入れたら何します?
いや、それはもちろんあれですよ。
正義のために戦いますよね。
誰と戦うんですか?
敵、悪ですよ。
悪?
悪。
悪って言うと、例えば?
バットマンのジョーカーみたいなレッドスカルとか鉄十字団とか。
いないじゃん。
そういうこと?
まあ、いないよね。
そんなこと言ったら俺もスーパーパワー持ってないけど。
スーパーパワーを持っただけ、世界は変わらない。
俺だけスーパーパワーですね。
銀行強盗とか泥棒とかと戦いますよ。
銀行強盗とか見たことあります?
ない。
私もないです。
いないんじゃないですか?もしかして。あんまりいないんじゃない?銀行強盗って。
確かに銀行強盗ってニュースでも聞かないよね。
あんまり聞かないよね。
フィクションだとめちゃくちゃ見るけどね。
しょっちゅういるよね。ドルマークついた袋持ってよく逃げてるよね。
よく逃げてる。言われてみればそうだね。
あんまり見ないよね。
え、じゃあ何と戦います?
えー、どうしようかな。
というところでですね、今回のオルタナティブコミックだけあって、デスレイはですね、スーパーパワーを手に入れるんですが、結局戦うべき敵が誰もいないっていうのが大きなテーマとして描かれてますよね。
確かに。
悪なんかないんですよね。いや、悪はあるんだけどさ、戦うべき悪とかってあんまりないですよね。
あー、その分かりやすい。
万力で解決できる悪とかって身近にならせんもんね。
まあ、そうだね。
12:00
だからこの物語の主人公たちもスーパーパワーを手に入れた後に何とかしてこのスーパーパワーを発揮する場所を探すんですよね。
はいはいはい。
悪い奴を探そうとするんですが、悪い奴なんかいないんですよね。
そうだね。
そうそうね。
銀行強盗に合わないし、泥棒にも合わないし、おじさんが殺されることもないわけで。
はいはいはい。
そうだね。
だからこの人たち、あれだもんね、悪を探すために自分で財布を置いて、わざと盗ませるっていう。本末転倒も鼻晴らし。
やってるもんね。
やばい奴らですよね。
確かに。
自分からチンピラに絡みに行くとかね。
一番最初にさ、ゴミをポイステした奴に絡むじゃないですか。
あーあるね。
まあでも確かに身近に出会える悪って、まあこの辺だよね。
確かに。これは見たことある。ゴミをポイステする奴。
ポイステする奴。
銀行強盗に比べればまあ見る。
路上喫煙とか。
あー路上喫煙。
でもそれをスーパーパワーで保護したらなんかもうちょっとどっちが悪だかって感じになってきちゃうもんね。
やりすぎ感ありますよね。
結構さ、突然スーパーパワーを持っちゃう系のお話ってさ、まあ別にアメコミに限らずいろいろあると思うんだけどさ。
最初にさ、誘拐犯とかさ、銀行強盗とかさ。
あの幼馴染に誘拐されちゃうとか、銀行行ったら偶然強盗に出くわしちゃうとか。
よくあるよね。あるある。
よく見る。よく見るわ。
でも確かに現実にはねえわ。
やばない。
もうさらわれる幼馴染すらいないし。
確かに。
会話をかわせる幼馴染とか存在しないしね。
しないもんなあ。
あー。なるほど。
銀行強盗と世話焼のちょっとカチキな幼馴染は同じくらいの頻度でしか遭遇できないという感じ。
なるほどね。もうまあ運の良い悪いは差はあるけど確率はすごい低いんだね。
いやそうだね。まあそういう嫌なリアリティがこの作品ありますよね。
そうだね。確かに自分がスーパーパワーを持ったら発揮したくなるし、正義のために戦いたくなるけど、いないから頑張って悪を探して何なら作り出しちゃうって共感しちゃうわ。
そうだね。結局このお話は最後まで自分と対になるような悪役の存在はないまま終わるよね。
そうなんだよね。自分をいじめていたいしめっ子も実はそんなに悪い奴じゃないということが。
大人になってね、ちゃんと社会貢献とかしてたりしてね。
そうそう。
なんかやりきれなくなっちゃう。
太陽光発電の事業に勤しむ立派な市民になっていたみたいな。
いやーだからこのお話すごく神奇臭いじゃないですか。
神奇臭い。暗い話ですね。
これ今まで読んだアメコミの中で一番辛かったかも。読むのが。
15:02
確かにね。
確かに悲劇的なお話もあるんだけど、もっといろんな悲劇的なお話がアメコミにあるわけじゃないですか。
そうだね。悲劇っていう枠組みで見るとね。
自分がクローンだったとかあったりしたわけじゃないですか。人がみんな死んじゃうとか。
あるある。
これも作品も人は死んじゃうんだけど、救いのなさみたいなのはやっぱり大きいですよね。
スーパーパワーを持ってても、結局何にも変わらないんだっていう。
世界を変えることなんかできないんだって。
そういう小さいがゆえに、逆に自分の無力さを突きつけられたような気持ちになっちゃって。何とも言えない。
主人公も言ってますもんね。世界を良くしようと努力しても、それが何になる?
まったく40億人のろくでなし相手じゃ勝ち目なんてないさ。
その通りなんだけど。
それを言っちゃおしまいよっていうかさ。
身も蓋もない感じが。
一冊通してこのテーマをずっと語り続けるお話ですよね。
そうだね。
そういう意味では設定はやっぱりスパイダーマン的な二重生活なんだけれども、実際描かれるのはまさに暴流ですよね。
メインストリームのコミックスが描かなかったような嫌なリアリティ。我々が無意識のうちに目を背けていたものを。
そうだね。このラジオでもさ、スーパーバワー憧れるよね?的話何回かしたと思うんだけど。
欲しい欲しい。
実際持ったらこんなもんなんかなっていうね。
救いがないわ。ヒーローの無力さみたいなのをすごく感じますよね。
いやもう人間の無力さだね。
ああ確かにね。
そうだね。やっぱり現実的に悪と戦うってことを考えたら、不平等とか貧困とか差別とかね。そういうのと戦っていく。
もう腕力ではどうしてもないもんね。その部分って。
そういう人間が悪いのか。
そうだね。なんか話してて辛くなってきた。自分の無力さと人間の愚かさを。
これリンゲを滅ぼそうっていう発想に至る悪役の思考じゃないかな。
タイトルのデスレイ。
デスレイ。
殺人光線。
デスレイですね。殺人光線。
死ビーム。
死ビーム。ビームはそのままなんだ。死光線。
死光線。アンディは身体能力をすごく高めると同時に父親から受け継いだデスレイっていう武器を持ってるんですよね。
またダサいんだよね。銃とラッパが合体したみたいな黄色いやつ。
レトロフューチャーの光線銃ですよね。イメージ的には。
そうだね。
どんな銃かと言いますと、撃つと撃たれた対象を抹消してしまうって言ったらいいんですか。
跡形もなく消えるっていうね。
やばい銃ですよね。
18:01
しかもこれはアンディにしか使えないっていう。
そうだね。他の人が引き金を引いても効果はないんだけど、アンディが引き金を引くと無機物だろうが有機物だろうが何でもかんでも消してしまうというとんでも光線ですね。
ドラえもんの独裁スイッチみたいなものですね。
確かにね。それが近いね。
まず最初にアンディ何を撃つかというと、リスですね。動物を撃ちます。
ビンを撃った後。
そうだね。次はリス撃ってみようぜって言われて、リスを撃ってリス消えます。
それに対してすごくショックを受けるんですよね。
めちゃくちゃアンディはこのリス消しちゃったことを気に病んでますよね。夜も眠れず悶々としてるし。
無益な折衝っていうことでショックなんですかね。
ルイにもう一回さ、またリスがいるから消してしまおうぜって誘われた時もさ、二度とそんなこと言わないでくれ。絶対に。冗談じゃ済まないんだって。
ちょっとヒーローっぽさがあるよね。
なんですが、とはいえやはり力を持ったら使い難くもなるもんで。
リスの次に撃つのはルイのお姉さんの彼氏。
ひどい男らしいという噂を聞いて、そんなひどい男だなということで。
これもさ、ひどい男らしいなんだよね。
これすごいよね。結局その姉の彼氏がどんな人間かってアンディはわかってないんですよね。
そうだね。この作品の中じゃ我々読者もわかんないし、アンディも別にこの人と接する機会ないんですから。
単なる噂で撃って消しちゃうんですよね。
消しちゃいますね。
実質殺人ですもんね。
そうだね。
その彼氏が撃った結果ですね、今度はそれを一緒に見ていたルイがですね、非常に大きな罪悪感を抱くんですよね。
そうだね。ルイが頼んだってこともあるし、彼女に対してね、神様どうか俺を善人にしてくださいって言いながら泣きついてますね。
なるほど。
そしてルイはどうするかと言いますと、アンディを連れ出して、アンディを殺してしまおうとするんですよね。
そうだね。
この辺もオルタナティブコミック的な嫌なリアリティも。
そうだね。
結構ルイも殺すチャンスは何回かマンガの中で出てくるんですけど、なかなか手を出さないんですよね。
はいはいはい。
ある別の人間、自分たちをいじめてる奴を消すために二人で散歩して、そいつを探しに行くという途中で、ルイはアンディを殺そうとするんですが、ルイがアンディに言うんですよね。
本当にやるのか。
21:00
アンディが当然の報いだ。
これもしかしてアンディがやらないって答えてたら、もしかしたら殺そうともしてなかったかもしれないよね。
そうだね。つまりこの正義感が助長しちゃって、誰かで構わず殺してしまうようになるってことにルイは恐れを抱いたのかもね。
自分が焚きつけたっていう責任感もあったのかもしれないですね。
そうだね。
殺そうとするんですが、二人が揉み合ってるうちにアンディはルイもまたデスレイで撃ってしまうと。
ねえ、友達全然いなかったのに。
唯一の友達ですからね。
ルイを。
存在を抹消しますからね。
さすがにこれはショックだったみたいで、その後デスレイを封印するんだけど。
ちょっと大人になってからですね。
アパートの隣の階に住んでる奴がすごく嫌な奴である。
自分の飼い犬を噛まれた。夜も騒がしい。よし!って言って、かつての恋人に預けてたんだけど。
デスレイを取り戻して隣人を撃つと。
いやー、この辺もリアリティだなと思って。
罪悪感を感じつつもその力をついつい繰り返し使ってしまうってありそうだよね。
またデスレイが本当にパッて消し去るやつで。
残骸とか何も残らずに消していくから。
確かに隣人が嫌な奴だったら消したいって思ってしまう気持ちは否定しきれないよな。
そういう人間の嫌なリアリティがあるよね。
しかもこれ取り戻した後、結構何発もちょこちょこ使ってるんですよね。
まあもう二度と使わないみたいなことを言うかと思ったけど、何回か使ってるらしいですね。
彼がこの世から消し去ったのは四歳。鳩に唾を吐いた男。三回の女性の離婚した元夫。
いろいろ言いますね。
やっぱ力を持つと力を使いたくなってしまうんですかね。
確かにワンタッチで人を消せるってなったら、ちょっとイラッとしたら押しちゃう可能性がある。
確かに押しちゃうわ。
そういう自分の嫌な部分に向き合わせてくるからこのコミックは読んでて辛いですわ。
そうだね。
この作品、回想形式になってるんですよね。
24:00
2004年のアンディっていうコマから始まって、
そこから自分が高校生だった頃の思い出を語っていく感じなんだけど、
コマと時系列がずれてるところがあって、
ティーンエイジャーの時のアンディから出てる吹き出しなんだけど、
そこの中に書いてあることが、ルイとの間に起こった出来事以来、
銃を箱に戻してダスティに送った。
そしてそのまま20年が過ぎたんだって言ってて。
確かにね。
そうそう、だからこれこの場面で発されたセリフじゃないんだよね。
2004年の時点から発したセリフをティーンエイジャーだった頃のアンディが吹き出しの中で喋ってる。
なんかおしゃれな演出。
過去と未来、だから昔起こったことが、
この20年以上経った今にどういう影響を与えているかっていうのを表現するコマなんだと思うんだけど。
なるほどね。
この辺もちょっと読み方面白いなと思うし。
確かに。
あとモノローグがとにかく多いですね。
そうだよね。
それは確かにちょっと私も思いました。
小説でいうところの字の文っていうか、いわゆるセリフじゃない部分も結構吹き出しで喋らせちゃってて。
確かに。
一番多いって思ったのは、アンディが自分の意思で初めて煙草を吸ってスーパーパワーを発揮する場面なんだけど。
ルイがね、いじめられてるからそこに行く。
助けてあげようって時はね。
今回の吐き気は数秒で止んだ。そして沸騰した体液が血管に流れ込むのを感じた。全身が巨大な断魂と化してそそり立ったような気がした。
っていうのを。
これ明らかにさ、なんていうんだろう、信頼語っていうかさ。
そうだね。
心の中で思っていたことなんだけど、普通に吹き出しで表現されててちょっと面白い。
確かに。そういう意味では彼すごく無口なんですよね。
そう、多分だからこのセリフって実際には喋ってないんだよね。
喋ってないんでしょうね。
だって目の前が真っ暗になったって喋りながら目の前が真っ暗になったやついないもんね。
いないもんね。
彼のモノローグを無くして本当に彼が誰かと喋るためにっていうかコミュニケーションのために使っている言葉ってものすごく少ないんですよね。
そうだね、無口なキャラだね。
これ読んで私は夏目漱石のボッチャンっていう小説を思い出して。
あー。
親譲りの無鉄砲で。あれも鉄砲が出てきますね。
無鉄砲か。くだらねー。
話ガチャガチャしちゃう。
ボッチャンだと江戸っ子気質の主人公が四国に行って天野ワイヤーみたいな話じゃないですか。
でも実際読んでみると賑やかなのは字の分だけで、彼が本当にセリフとして喋る言葉ってすごく少なくて、本当は彼は無口な口気なやつなんじゃないのかなんて言われたりするじゃないですか。
なるほどね。
一人称小説だから彼が喋ってるところ多いんだけど、体の外に出してるっていうか。
27:02
そうそうそう。
コミュニケーションのために使ってる言葉は。
かぎ括弧に入れる言葉みたいなのはすごく少なかった。
今回もモノローグ多いしすごく饒舌に見えるんだけど、言われてみれば確かにほとんど現代というか大人になったアンディが振り返って喋ってる言葉だもんね。
そうだね。
あとあれだよね、吹き出しが切れちゃってる。
結構多いよね。
あえての表現だと思うんだけど、っていう演出結構いっぱいありますね。
確かに。これやっぱりアンディにとっては聞こえてないってことなのかな。
かな?
吹き出しが建物の影に入っちゃってて見えないっていう演出とかあってさ。
はいはいはい。
夜のパトロールしてるし。
パトロールの場面かな。
多分これ聞こえてないっていう意味で使ってるんじゃないかな。この吹き出しが切れるっていう演出は。
この演出オシャレだね。
オシャレてるよね。
遠くにいるからニュアンスしか伝わってこないっていうのを漫画の上で表現しようとするとこうなるってことかな。
三次元的でかっこいいよね。
かっこいいかっこいい。オシャレ。
この辺はやっぱ2011年の作品って感じがしますね。
確かにね。なるほど。
これがね古臭い感じというか。
どうやら新聞で連載されてる漫画をパロディーっていうか意識した絵柄とかコマ割りだったりするみたいなんだけど。
なるほどね。
やっぱり新しい作品なんだね。
吹き出しが途切れてるシーンが多いっていうことはアンディ多分人の話あんま聞いてないんじゃないかなって。
あーなるほどね。
なんか買い物帰り道を歩いていたらその辺のおじさんに悪口をどうやら汚い言葉をかけられて。
まあ怒ってそいつもデスレイで打つんですけど。
そのシーンもやっぱ吹き出しをあえて隠すことによって聞こえてないっていう話をしたりしていて。
あんまりコミュニケーション能力が高いタイプではないのかなと思ったり。
あー無口だしね。
無口だし人の話は聞かないし恋人に繰り返し手紙を送るんだけど全然返ってこないとか。
あーそうだね。
やっぱり私思うんですけど、正義の味方ってコミュニケーション能力が大事だと思うんですよ。
人の話を聞く。自分の目を伝える。
例えばさ、助けてって言われてるからその人を助けるために暴力を振るっても許されるわけじゃないですか。
あーなるほど。
誰かが助けを求めてる。だからそれを助けてあげられる。
それは暴力じゃない。正義だ。
でもその人がどういう状況がわかんないのにいきなり行って周囲の人間を殴りつけ始めたらやっぱりちょっとやばいや。
はいはいはいはい。
悪人じゃないですか。通り魔じゃないですか。
で思うんで、そういう意味でやっぱり人の話を聞いてあげるって大事なのかな。
そうかそうか。やっぱり人とのコミュニケーションっていうか関係性の中で力を振るわないとそれはただの暴力になってしまうからね。
よく言うじゃないですか。ほら、天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ、悪を倒せと俺を呼ぶって。
よく言うか?
よく言わないから。
ストロンガーしか言ってるの聞いたことないけど。
でもやっぱり呼ばれるから行って暴力を振るって許されるわけじゃないですか。
30:03
なるほどなるほど。
だからアンディが今回作品の中でいろんなヒーロー活動をするんだけど上手くいかない。
それを読んでる我々の無力感を感じちゃうのは、結局彼が守備との関係性を上手く築けてないからデスレイを。
彼の中では納得した上でデスレイを使ってるんでしょうが、絶妙にこの正義の正当性みたいのは揺らいじゃうよね。
アンディがヒーローだなって思えないのはそういうとこなのか。
そういうとこなのかなって。
離婚2回してるしね。
離婚した奥さんの浮気相手も売ってますね。
でも結婚2回できるだけの魅力があるんですね。
確かに。魅力的な人ではあるのかもしれないね。
いやでも自分もそんなコミュニケーション能力ないからそういう意味でもやっぱり読んでるつらい。
確かに。私も人付き合いとか苦手だからスーパーパワー持っても正義の味方にはなれないかもしれないな。
職場の飲み会サボっちゃうもんな。
わーめっちゃわかる。
でもそれじゃあヒーローにはなれないってことだね。
ちゃんと上司にお釈迦して初めてヒーローになれるのか。
そうか!?
関係性を築いて初めてね。
まあでもただ力を持ってるだけじゃダメってことだね。
コミュニケーション能力。コミュニケーション魅力。
一番のスーパーパワーはコミュニケーション魅力と。
そういうことですね。
やっぱりリクルートが正しかったということですね。
なるほど。
就活と一緒でしたヒーロー活動は。
はい、というわけでザ・デスレインでした。
はい。
いやーまあなんとなら新規臭い作品でしたね。
いやー本当にね。
まあ悪い意味じゃないんだけど。
すごい閉塞感ですよね。
やっぱりいつもね我々がやってる作品はさ。
そうだね宇宙に行ったりとか過去に行ったり未来に行ったり平行宇宙をね助けたりすることもありますもんね。
そのスケールから見るとやっぱりこの作品本当に自分の半径数メートルっていうね。
狭い狭い。
世界観だからね。
うーん。
いやーまあそれがオルタナティブコミックたりゆえなのかな。
なるほどね。
気はしますけど。
最後のさエンディングいいですよね。
これいいよね。
あのチューズユアオンアドベンチャー。
選べ君だけの冒険を。
いいねー。
物語の結末は決めるのは君だって言ってて。
三択にエンディングがなってるんですね。
小学生くらいの時によくやったゲームブックのノリでいいよね。
Aの選択肢がアンディは世界中の人間を消して一人になる。
おーいいじゃん。
独裁スイッチパターンですね。
B、彼は自分に銃を向ける。彼のいない世界は続く。
これもね。
これもまあ。
ちょっとハードボイルな感じがしていいかなと思いますよね。
綺麗な終わり方な感じがするね。
C、非常に長いんだけど。
お願いします。
彼はそれまでの25年間と同じように生き続ける。
ダイアンの死後、ミッキーと名付けたホックステリアを買い、その後コリーを買う。
33:00
3階に住む離婚したばかりの女性を勘違いして追いかけ、その後すぐに60代の女性と数年間付き合う。
図書館を退職して北カリフォルニアに移住するつもりが資金が足りずに断念する。
彼がこの世から消し去ったのは司祭、鳩に唾を吐いた男、3階の女性の離婚した元夫。
デスレイはインディアナ砂丘に穴を掘って埋めた。
父親の書類は燃やし、灰は湖に撒いた。
その後ある日彼はおそらく肺癌で死ぬ。
お疲れ様でした。
長かった。
長い。
もうA、B、Cのこの選択肢の熱量からも言って。
それからこの作品全体のテーマから言っても、マッシーの選択肢なんだろうなっていうね。
自分自身を断罪することもできず、かといって世界を変えることもできず。
これまでの日常がそれからもまた続いていく。
そして死ぬ、そして死ぬ。
辛い。
辛いわー、この嫌なリアリティ。
辛いわー。
やっぱさ、潔く人は消えたりできないよね。
普通の人はさ。
世界を変えることもできないんですよね。
スーパーパワー持ってるだけじゃね。
持ってるだけじゃね。
終わりなき日常は続いていくんですね。
いやー。
まあでもやっぱりこの、最初に言ったけど、ローカライズ。
そうだね。
ちゃんとデザインした。
すごく丁寧だね。
フォントとかにも気を使ってね。
ぜひみなさんに読んでいただきたいですよね。
やっぱそういう工夫や手間をかけてでも、この作品を届けたいって出版社の人に思わせる力のある作品だったんじゃないかな。
確かに。
ちょっとね、いわゆるメジャーなアメコミとは違うけど、これもこれでぜひ読んでもらいたいですね。
こういう切り口のヒーローコミックってすごく面白いんでね。
注意すべき点は1点。
サイズがでかいんで。
サイズ感は結構でかいですね。
いつものアメコミって大抵B版だと思うんだけど、A版ですかね。
人回り大きいんで。
溢れる可能性がありますね。
我々のラジオでやったのだとマリファナーマンと同じサイズなんで。
あれもマリファナ吸ってスーパーパワーを得る話だから。
今回タバコを吸ってスーパーパワーを得る話。
なるほどね。やっぱり親和性があるのかな。
ということで、今回はここまで。また次回。さよなら。