1. 技術者かねまるの「プラントライフ」
  2. #74 化学式は3次元で見るべし..
2026-03-04 15:52

#74 化学式は3次元で見るべし!興味深い立体化学の世界

spotify apple_podcasts youtube

今回はものづくり系ポッドキャストの日の共通テーマ「三次元」にちなんで、立体化学の話をしています!キラルは奥が深い。

📚参考資料

――――

プラントライフは、化学プラントの技術者「かねまる」が、化学プラントの技術者が、化学を軸に皆さんの視野を広げていく番組です。感想は #プラントライフ を付けてXにてお待ちしています!

📅 配信スケジュール

毎週 水曜日・日曜日 の朝に更新!

LISTENで先行公開後、各種Podcastアプリ(Spotify/Apple/Amazon/YouTube)にも配信されます。

💬 お便り募集中

番組への感想や、聞いてみたいテーマなどお気軽にどうぞ!

https://forms.gle/EDHYXorTnk35gu91A

🤝 かねまるの「ここだけの話」メンバー募集!

noteでメンバーシップを開設しています!言いたい・残したいけどオープンにはしたくない「ここだけの話」をお届けするメンバーシップです!

https://note.com/webview/chem_fac/membership

🔗 関連リンク

X:かねまる@化学プラント技術者 https://x.com/chem_fac

プラント技術解説ブログ「ケムファク」 https://chem-fac.com/

MONOist連載記事「はじめての化学工学」 https://monoist.itmedia.co.jp/mn/series/40825/

🎵 Music

RYU ITO https://ryu110.com/

サマリー

今回のプラントライフでは、化学プラント技術者のかねまるさんが、共通テーマ「3次元」にちなんで、化学の世界における立体化学の重要性について解説します。学校で習う二次元の化学式とは異なり、実際の分子は三次元の立体構造を持っており、その構造の違いが薬の効果や匂いなどに影響を与えることを、リモネンやサリドマイド事件を例に説明します。さらに、特定の立体構造を持つ分子だけを選択的に合成する「不斉合成」の技術や、野依良治博士が開発したキラル触媒「BINAP」についても触れ、立体化学の奥深さとその応用について紹介しています。

はじめに:共通テーマ「3次元」と立体化学の世界
こんにちは、かねまるです。 プラントライフは、化学プラントの技術者が、科学を軸に、皆さんの視野を広げていく番組です。
まずは、前回前々回と調子を崩してたような放送を出していたんですけど、復活しました。
今は元気です。 花粉症が残ってるぐらいですね。
それも、ゼッカ治療を今期受けるんで、どんどん元気になっていく予定です。
せっかく復活しましたので、2月のモノづくり系ポッドキャストの日の共通テーマ、3次元についてお話ししようと思います。
まず、モノづくり系ポッドキャストの日っていうのは、その名の通り、モノづくり系のポッドキャスターが共通テーマに沿って話す企画なんですけど、今回の共通テーマが3次元。
3次元っていうと、皆さん何を思い浮かべますか?
モノづくりの領域だと、他の方はやっぱり3Dプリンターとか、3D CAD、図面の製作のソフトですね。
そして3Dシミュレーター、そういった話が多い印象です。
私は少し経路を変えて、科学の世界で3次元の話をします。
この3次元っていう概念は、文字通り私たちの命や生活を左右するほど極めて重要なテーマなんです。
そこで今回は、科学式は3次元で見るべし、興味深い立体科学の世界をお届けします。
私たちが学校で習う科学式、例えば水はH2Oとか、二酸化炭素はCO2ですね。
そういう科学式っていうのは、紙の上に書かれた2次元の姿にすぎません。
実際の分子は縦・横・高さ、3次元の立体物です。
厳密にはちょっと違うんですけど、原子を棒る科学結合を棒に見立てて、分子のモデルを作っていきます。
市販品の分子模型ってありますね。
その分子模型を使って分子を組み立てると、紙で書いたのと全然違う形になるんです。
そして、分子の3次元的な違いによって薬が毒になったり、匂いが変わったりします。
興味深い3次元・立体科学の話を始めていきます。
分子が三次元構造をとる理由:電子の反発
まず、分子がなぜ3次元構造をとるのかっていうところから始めていきます。
例えば、都市ガスの主成分であるメタンはCH4、炭素を中心にして4つの水素がくっついています。
紙に書くと真ん中に炭素Cがあって、その中心から上下左右十字架みたいに90度の角度でH水素がくっついています。
でも現実のメタンっていうのは静止面体という形をとっています。
正三角形が4枚くっついたピラミッドみたいな立体の形をしてまして、
ピラミッドの中心部に炭素Cがあって、ピラミッドの各頂点、先端部分に水素Hが存在するような形です。
なぜそんな形をとるんでしょうか。
それは電子の反発が原因です。
もともと分子模型として棒と玉で立体構造を作るという話をしました。
原子同士をつないでいるのはマイナスの電荷を持った電子です。
ただの玉とか棒じゃなくて電気的な反発があるようなものなんです。
マイナス同士は反発し合うので、4つの水素原子は3次元空間で、
それぞれが一番遠ざかるような場所に位置するようになります。
お互いの反発が少なくて一番落ち着くような場所が静止面体の形だったということです。
ここから立体化学のもっと詳しい話をしていきます。
キラル分子:右手と左手のような関係
皆さんは自分の右手と左手を見比べてみてください。
形はそっくりですけど、右手に左手用の手袋って入らないですよね。
基本的に形は一緒なんですけど、鏡写ししたように反対を向いているような、そんな関係があります。
立体化学の世界にも右手と左手のような、基本的な化学構造は同じだけど、
鏡写ししたような形になってぴったり重ならない、そういう分子があります。
化学の世界ではキラルと言います。
このキラルな化合物が私たちの生活にどう影響するかと言いますと、
分かりやすいのが匂いです。
例えばリモネンという分子があります。
右手型のリモネンと左手型のリモネンがあるということです。
キラルな化合物は分子の名前の頭にDやL、もしくはRとSという形で区別をつけます。
Dリモネンはオレンジの爽やかな香りがします。
反対にLリモネンは松の葉みたいな少しツンとした香りがします。
化学構造式は一緒で立体的な違いがあるだけで、なぜ香りが異なるのか。
それは人間の鼻の奥にある嗅覚の受容体というものが三次元の構造になっているからです。
私もものすごく詳しいわけではないんですけど、
カギである分子の三次元的な形が異なることで別のカギ穴に入ってしまって脳が違う匂いとして認識するんです。
今回は例として匂いを挙げましたけど、体の中っていうのはこういう右手と左手、キラルを使って認識を分けているようなシチュエーションが山のようにあります。
そしてその認識方法はもっと複雑です。
サリドマイド事件:立体化学の悲劇
こうした三次元的な違いが悲劇を生んだ歴史があります。
それがサリドマイド事件です。
サリドマイドという妊婦のつわり止めとか睡眠薬として販売されていたんですけど、
サリドマイドという分子にも右手型と左手型がありました。
片方のサリドマイドには目的とした鎮静作用があって、
もう片方のサリドマイドには胎児の手足に深刻な障害を与える危険な子供が生まれやすいという効果があったんです。
当時の製造プロセスだと右手型と左手型が一対一で混ざっているラセミ体という形で合成をされていました。
不斉合成技術:キラル触媒とメントール合成
それがそのまま薬として流通していました。
本来であれば右手と左手、両方ではなく効果のある片方だけを入れて販売するべきだったということです。
じゃあどうやって分けるのか、片方だけ作るのかという話を最後にして終わります。
サリドマイドの教訓もあって、現在では特定の三次元構造を持つ分子、片方だけを狙って製造することが求められています。
現在流通している医薬品というのは、おそらく多くがキラルな分子だと思います。
基本的な化学構造は一緒なので、反応の仕方というのも一緒です。
だからこそ作るのが難しいんですよね。
何も気にせず反応させると、右手と左手が一対一のラセミ体になってしまいます。
そこで登場するのが不整合成と呼ばれる技術です。
この不整という言葉は無理に覚えなくてもいいんですけど、
右手と左手を特徴づける炭素を不整炭素と言ったりするので、その関係で不整合成と呼ばれています。
この不整合成で有名なのが、日本のノーベル科学賞を受賞した野良理良二先生が開発したキラル触媒バイナップです。
この触媒はそれ自体が特徴的な三次元構造を持っていて、右手型や左手型専用の胃型みたいな感じで働きます。
このバイナップのおかげで大量生産ができた例があります。
それがエルメントールです。
ガムとか歯磨き粉に使われている成分ですね。
2020年に公開された資料でも、1年間に2000トンのスケールで作っていると記載があります。
つまり、1年間に200万キログラムということです。
右手と左手、今回のメントールで言うとD体とL体のメントールをちゃんと作り分けられるこのメリットは、工業的に分離する作業の手間がだいぶ減るということです。
基本的な分離の方法として上流があります。
それは不定の違いを使います。
もしくは抽出ということで、溶媒、つまり水とかアセトンへの溶けやすさの違いで分離する。
その他にもクロマトグラフィーというサイズとか電気的な違いで分離するような操作があります。
ただ、今回みたいなキラルな分子っていうのは基本的に物性がほぼ同じです。
今挙げた分離方法だと、ほとんど物性が一緒だと分離ができません。
そこでキラルクロマトグラフィーという技術が使われます。
左手型もしくは右手型の分子だけを吸着する特殊な3次元フィルターみたいな小さい粒がありまして、
まとめと今後の展望
それを筒の中に詰め込んで分離したい成分が溶けた液体をその筒の中に通す。
そうすることで片方の分子だけが引っかかって先にもう片方の分子が出てくる。
そんな仕組みです。
このクロマトグラフィーという技術はキラルな分子以外にも使われておりまして、
分子のサイズが大きいものを捕まえるものだったり、電気的に極性があるものを捕まえたり、いろいろあります。
どちらかというと、クロマトグラフィーの中でキラルクロマトグラフィーがちょっと特殊な部類に入ると私は認識しています。
今回はものづくり系ポッドキャストの日の共通テーマ3次元にちなんで、立体化学についてお話ししました。
この話は本当に導入的な話で、キラルっていうのはものすごく奥が深いです。
螺旋型の分子とか、キラルな光を出す分子とか、個人的に話したいことがいっぱいあります。
今回の話を踏まえて、まず紙に書いた分子の形っていうのは、3次元にすると形が変わる、もしくは複数種類の形が見えてくるという場合があるということを覚えておいてください。
今回はここまでです。プラントライフでは化学や工場に関するトピックを扱っています。
配信は毎週水曜日と日曜日の朝6時です。もしかしたら前後する可能性もあります。
番組への質問やご感想は概要欄のお便りからお待ちしています。
そしてもしこのプラントライフがいいなと思っていただけたら、番組のフォローや各ポッドキャストアプリから評価をお願いします。
Xでシェアしていただくときは、ハッシュタグプラントライフをつけてもらえると嬉しいです。すぐに見に行けます。
最後にお知らせです。ノートにてメンバーシップかねまるのここだけの話を公開しています。
発信活動の試行錯誤や技術者としてのキャリアなど、オープンな場では少し話しにくいけど残しておきたい本音をお届けしています。
興味のある方はぜひ覗いてみてください。
それではお聞きいただきありがとうございました。
15:52

コメント

スクロール