酸素欠乏の定義と影響
どうも、かねまるです。 プラントライフは、化学プラントの技術者が、化学や工場に関するトピックを分かりやすく紹介する番組です。
今回は、酸欠、酸素欠乏についてお話ししたいと思います。 なぜこのテーマを選んだかというと、
2025年10月に徳島大学で非常に痛ましい事故があったからです。 1名亡くなっています。
公開されている情報を見る限り、室内の二酸化炭素濃度が上昇しておりまして、 原因が研究室に置かれていたドライアイスでした。
酸素がなくなる酸欠、ドライアイスでも起こり得ます。 これは製造業だけの話ではなくて、私たちの身近な場所でも起こり得ます。
非常に恐ろしい事故の典型例なんです。 今回はこの酸欠というのが一体何なのか、何で恐ろしいのか、そしてどうやって防ぐのかというところを話ししていこうと思います。
まず私たちが普段吸っている空気の中には酸素が約21%を含まれています。 意外に少ないんですよね。
78%は窒素で、それがほとんどです。 残り1%はアルゴンや二酸化炭素が入っています。
では酸欠というのはどういった状態を指すんでしょうか。 労働安全衛生法が参考になります。
空気中の酸素濃度が18%未満になった状態を酸素欠乏、 酸欠と定義しています。
普段が21%で酸欠が18%って、 わずかですよね。
たった3%減っただけで私たちの体に致命的な影響が及ぼされるんです。 酸素濃度が21%から下がっていくとどうなっていくのか、
簡単に紹介していきます。 まず法律で定義されている18%というのは安全の限界です。
人によっては初期症状が出始めます。 そこから16%に下がると呼吸とか脈拍が早くなって頭痛や吐き気が起こるようになってきます。
さらに12%にまで下がると、 めまいがして筋力が低下して、
場合によっては階段やはしごから落ちてしまうような、 つまりは酸素がなくなるんじゃなくて転落死とか
デキ死とか起きかねない状態になります。 8%にまで下がると意識を失って倒れて、
7、8分で死亡してしまいます。 そして6%以下にまで下がってしまうと、
一瞬で意識がなくなって倒れて、 呼吸が停止して、
6分以内に死亡してしまいます。 これの恐ろしいところは、
酸素がかなり減ったところだと息苦しさを感じる前に意識を失ってしまうというところです。
酸素濃度が低い空気を1回吸い込んだだけで死亡することもありまして、 とても危険です。
危険な作業環境の安全対策
じゃあどうやって危険な場所を知るんでしょうか。 それはもう測るしかありません。
普段は測定器を持っていませんので、どういった場所が危険かっていうのを後で話をします。
測定には酸素濃度計が使われます。 工場には必ずあります。
作業前とか立ち入り前は安全な濃度、 21%近くあるのかというのを酸素濃度計で確認します。
もちろん作業中も測定を続けて、リアルタイムで監視して、 アラームが鳴るように設定しておかないといけません。
作業者のほかに立ち会い者も設けます。 こういった危険な場所で作業をするときは、
酸素欠乏有化水素危険作業主任者というものを専任しないといけません。 技能講習を修了した人の中から専任されます。
その資格を持った人が重要な安全管理を行います。 例えば、作業前の酸素の測定、
作業中の換気、 監視員の配置、
保護具の準備、 そういった安全管理です。
そして作業をする方というのも特別教育を受けた人が行います。 ちょっと余談ではありますけど、さっき
作業主任者の中に酸素欠乏有化水素危険作業主任者という言い方をしました。
酸欠だけじゃなくて有化水素も一緒に含まれています。 酸欠と同様の条件で有化水素中毒というのもお聞かねません。
密閉空間や地下作業で発生する労働災害になっておりまして、 考え方が似ていることもあって基本的には同時に2つの教育を受けます。
酸欠の危険な場所
酸欠というのは特別な場所だけで起こるわけじゃないんです。 酸欠が起きかねない場所をいくつか紹介します。
まずは井戸とか古い防空壕とか地下室、 そういうところは空気が淀んでいて微生物の活動で酸素が消費されていることがあります。
もう一つ似たようなところでマンホールの中というのがあります。 下水道の中の有機物が腐敗して酸素が消費されていたり、場合によっては有化水素が発生していたりします。
どちらも密閉した空間で酸素が消費されて濃度が薄くなっているような状態です。 今度はもっと身近な事例になると密閉されたテントの中というのもあり得ます。
例えば締め切ったテントの中でガスコンロとかランタンとか使ってしまうと だんだんと酸素が消費されていきます。
体積が小さい密閉したテントの中なので酸欠になる恐れがあります。 この場合だと一酸化炭素中毒というのも考えないといけません。
そして最も気をつけたいのがドライアイス。 まさに徳島大の事故例です。
ドライアイスっていうのは二酸化炭素を冷やして固体にしたものです。 固体から気体に変化する消化という現象が起きて二酸化炭素のガスになります。
空気より重いので下に溜まります。 密閉された部屋とか車内
あとはエレベーターなんかで充満すると酸素が上に追いやられてしまって酸欠状態になってしまいます。 身近に手に入りますので使用する時は注意しないといけません。
煙が出て楽しいんですけど ちゃんと換気をしないと楽しい中で急な事故というのも起きかねないです。
ケーキ屋さんでもらうようなちっちゃいやつだったらそんなに影響はないと思うんですけど 例えばお風呂場とか
あそこは密閉されているので大量にドライアイスを使うのは絶対やめましょう。 あと思いつくのは真空の中ですかね。
あそこは窪みになっていて二酸化炭素が溜まりやすいですね。 ドライアイスの入った真空の中はもしかしたら酸素が全然ない状態かもしれません。
顔を入れないようにしてください。 似たような話で葬儀の時に遺体の冷却目的で棺にドライアイスを入れることがあります。
棺桶って顔が見えるように小窓がついてますよね。 そこに顔を入れた状態で亡くなった事例というのもあるらしいです。
最後に酸欠が起こりやすい場所。 研究を行う学生であればぜひ覚えておいてほしいもの。
液体窒素です。 液体窒素はマイナス196度というすごく低い温度です。
それもあって常温だと少しずつ低下していきます。 例えばエレベーターで液体窒素の容器を運搬するとき
絶対に一緒に乗ってはいけません。 容器が倒れたら一気に液体窒素が低下して酸素濃度が急激に低下してしまいます。
自分はしっかり持ってるから大丈夫だよという方。 停電する場合があります。
停電してエレベーターに閉じ込められたら だんだんと酸素濃度が低下していきます。
気をつけるとか気をつけないとかそういう話じゃないんですよね。 もう閉じ込められてしまったらあとは酸素が低下していくのを待つしかないんです。
恐ろしいですよね。 必ず液体窒素の容器だけをエレベーターに乗せて
そして絶対他の人がならないように表示をして運ぶようにしてください。 そして私が携わるような化学プラントや製造業というのはさらに多くのリスクがあります。
例えばタンクとか反応の装置の中とか 点検や清掃で入るときが最も危険なんです。
必ず酸素濃度を測って外から新鮮な空気を送りながら入ります。 あとは化学プラントだと爆発とか火災を防ぐためにあえてタンクとか配管の中を窒素ガスで満たすことがあります。
酸欠の恐怖と漫画のシーン
酸素を追い出す窒素パージという操作になります。 作業後のタンクの中っていうのは当然酸素を追い出しているのでありません。
窒素自体に毒性はないんですけどそこに入ったら酸素がないので酸欠状態になります。 こうした酸欠の恐怖っていうのは意外とフィクションの世界でも使われています。
私は漫画が好きなのでいくつかそんなシーンを紹介します。 一つ目が宇宙兄弟ですね。月面で酸欠になるシーンがあります。
宇宙は酸素が全くありませんので最も重い症状が起きます。 恐ろしいですね。二つ目がドクターストーンですね。
硫酸を取りに行くようなシーンがあります。 硫化水素が溜まった真の谷のような場所が出てきて
空気より重いガスが谷底に溜まるっていう現象がまさに酸欠とか 硫化水素中毒が起こる原理そのものです。
そして最後3つ目がワンピースですね。 意外とあるんですよね。
シーザークラウンというキャラクターがカラクニという技を使います。
一定範囲の大気から酸素を取り除くような技です。 色も音も匂いもなくて速攻性がある強力な技だなって思いました。
漫画の中だとルフィが急に倒れるようなシーンが描かれていましたね。 こうした漫画で描かれるとまさかとは思うかもしれないんですけど
こういうことって現実に起こりうるんですよね だからこそ酸欠というのは恐ろしいんです
最後に酸欠事故を防ぐための鉄則ともし遭遇した場合の絶対やっておきたいルール というのをお伝えします
酸欠というのは見えないし匂わないし 苦しさを感じないっていう三拍子が揃っています
だからこそ必ず測って換気をして 作業中は監視をするというのが絶対です
そしてもし万が一酸欠と思われるような場所で人が倒れていたら 絶対に助けに行っちゃダメなんです
その場所というのは酸素が少なくなっている状態の可能性があって 助けに入った人も酸欠になる
二次災害が起きかねないからです 必ず安全な場所から通報して酸素濃度を測定して
安全が確認できてから救助を行ってください 徳島大学の事故というのはドライアイスという身近なものが原因でした
皆さんの身近なものはやっぱりドライアイスです 換気ができているのかというのは必ず考えてください
怪しかったらそこで使わないのが一番です そして特に研究者の方は使用頻度の高い液体窒素にも気をつけてください
製造業に関わる方はもちろんなんですけど すべての方に酸欠の危険性というのを知っていただきたいと思います
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