先日、プラント設計に関するお便りをいただきました。せっかくですので普段どんなことを考えながら設計しているのか?について話してみました。
11/30のプラントライフ1周年を記念して、リスナーの皆さんからのお便りを大募集します!
ぜひ好きだった回を教えて下さい!
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プラントライフは、化学プラントの技術者である私かねまるが、化学と工場に関するトピックを、分かりやすく紹介する番組です。 毎週水曜日の朝に定期配信! LISTENで公開後、各種Podcastアプリにも配信されます。
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サマリー
このエピソードでは、プラント設計における重要なQCDの考え方を基に、品質、コスト、納期に加えてPQCDSMEという7つの要素を考慮する必要性について述べられています。特に製造プロセスにおける品質の確保やコスト管理、納期遵守のバランスをとることが、技術者としての力量を試される場面であると強調されています。
プラント設計の基本概念
どうも、かねまるです。
プラントライフは、化学プラントの技術者が、化学や工場に関するトピックを分かりやすく紹介する番組です。
今回は、プラント設計する時に私が考えていること、というテーマでお話をします。
これを話すきっかけとなったのが、あるお便りからです。
人参さんからいただきました。ありがとうございます。
プラントの設計の仕方に関する質問でして、ちょっと専門的かなって思ったのと、具体的な内容が書いてありましたので、個別に返信させていただきました。
この番組では、もう少し抽象化させて、どんな形で考えているのか、という話をしたいと思います。
製造業においては、アルファベット3つでQCDという考え方があります。
Qがクオリティで品質、Cがコスト、Dがデリバリー、納期です。
まず、Qの品質については、例えば価格反応をすると、メインの反応だけじゃなくて、副反応と呼ばれる目的以外の反応というのも起こり得ます。
もしくは、反応しなかった残りというのも含まれます。
前作った製品が種類が違ったら、異物として購入しているかもしれません。
これはコンタミネーション、コンタミと言ったりもします。
目的の製品には品質の規格というものがあって、例えば不純物がこの割合だけ含まれていたらNGとか、
この色になっていたらNGとか、製品によって規格が変わります。
最初に設計する時は、その製品がどれくらい厳密な規格に基づいて作らないといけないのかということを考えます。
どれくらい精密に反応を制御するのか、
もしくは、反応した後に蒸留をしたり、ろ過をしたり、
出来上がったものをどれくらいきれいにするかということも考えます。
条件が厳しくなるほど制御するプログラムが複雑になったり、設備の大きさが大きくなったり、コストがかかります。
この時、同じメーカーから同じ材料を買ったとしても、その中でも若干品質にばらつきがあります。
そして、1年を通すと外気温が変わったりもします。
様々な変化を予測して、安定した品質で提供できるように考えます。
次がコストです。
これは言わずもがなお金の話です。
とは言っても、単純に設備を買うお金だけじゃありません。
運転するときのお金、ランニングコストというのも考えないといけないです。
例えば、安いけどものすごく壊れやすいとか、エネルギーをすごく使うとか、
最初は安いけど、トータルで見たら結局高くついた、なんてことはよくあります。
プラントの設備を買うと、1台あたり数百万円とか数千万円とかしてきます。
億を超えるものもあります。
そうした初期のコストというのは高くなってしまいますので、かなり目立ちます。
上層部の方から初期コストを下げるように言われるというのはよくある話ですね。
そこに対して運転費用も加味して提案しないといけません。
そこには当然、人件費というのも乗っかってきます。
自動化された設備というのはやっぱり高くなります。
反対に手動でやるような設備というのは安いんですけど、見えない人件費が乗っかってきます。
そこも理解した上で、トータルで安いものを選びます。
そして3つ目、デリバリー、納期の話です。
これはお客さんに製品を予定通り届けられるかということを意味します。
一番わかりやすいのが在庫ですね。
例えば、1ヶ月分の在庫が持てるように大きな貯蔵タンクを設けておくという案があります。
注文が来たらすぐ出荷ができるので、納期は維持できます。
ただし、貯蔵のタンクっていうのはただ貯めているだけなので、
お金をかけても新しい価値を生んでないということになります。
この場合、納期を優先してコストを支払っているという形になります。
新しい機器を導入するときは、その機器の納期を確認します。
例えば、特殊な金属を使った装置とか、海外製の測定機器とか、
発注をしてから1年かかるものというのもあります。
それらを見極めて、発注とスケジュール管理をしないといけません。
もう一つ、納期に関しては、トラブルが起きにくいというのも意識します。
設計通りだと問題なく納入できるけど、
トラブルが起きてしまうと、その間は製造ができなくなってしまいます。
身近な事例で言うと、配管凍結が1個ありますね。
冬場は水が凍って、氷の方が水より体積が大きいので、
配管の中から圧力がかかって割れる場合があります。
水は反応を制御するための冷却水として用いる場合もあります。
当然、冷やして安全を確保する水がないと製造ができないです。
それによって予定通り納品ができないという可能性もあります。
こうした予測できる事項は事前に対策したらいいんですけど、
予測不能なことが起きた時、そういう時に在庫が役に立ちます。
例えば、1ヶ月分の在庫を持っていたとすると、
トラブルを解消するまでの余裕が生まれます。
品質とコストと納期、どれを優先してどれを諦めるのか、
というのを常に考えないといけません。
製造業においてQCDという考え方が一般的なんですけど、
PQCDSMEの重要性
それを少し拡張してPQCDSMEという考え方もあります。
7つに増えています。
Pはプロダクティビティ、生産性です。
Sはセーフティ、安全。
Mはモラル、やる気とか、四季とか、そういうものを表します。
最後、Eがエンバイオロンメント、環境です。
先ほどQCDのどれを優先するかという話をしましたけど、
正確にはこの7つ、PQCDSMEというものを意識して、
どう設計するかということを考えます。
例えば、コストを優先して使いにくいプラントにした場合、
製造される方のモラル、四季が下がります。
最終的にそれが安全や品質の低下につながっていくということもあり得ます。
こういう考え方って日常でもよくやっていて、
例えば、移動なんかがそうですよね。
大阪から東京に行くとき、
もちろんドンコウで行けますけど、
安いからっていってあんまり使わないですよね。
自分の体力とか時間を優先して新幹線を選ぶと思います。
こうして挙げた7種類の指標というのは、
だいたいがトレードオフ、
あちらが立てばこちらが立たないというような関係にあります。
技術者は、この複雑な問題の中から
最適だと思うものを自分で選ばないといけません。
答えはないです。
少なくとも火事が起きるとか、人が亡くなるとか、
それだけはダメなんですけど、
他のところはコストについても納期についても、
その製品や置かれている環境によってだいぶ変わってきます。
1年前と状況が違うなんていうこともざらにあります。
だからこそ、それが技術者の力量を試される場所であって、
面白いところでもあります。
新しい設備を導入する場合は、
結局どれだけ計算をしたり想定をしたところで、
導入して蓋を開けてみない限りわからないこともたくさんあります。
導入し終わって情勢がどうなっているかというのもわからないです。
最終的には腹を決めて、思い切って投資をするか、
もしくはしないという判断をするかというところが大事になってきます。
ただしここは技術者が考えるというより、決済者が判断するところです。
私はよく、ここまでやったら後は腹を決めるだけですよって言ったりしますね。
このあたりはお互いに必要な情報が違いますので、
都度相談しながら調整していく形ですね。
今回はプラント設計するときに考えていることについて、
PQCD、SMEという7つの要素に分けて話をしました。
もし追加でわからないことなどがあったら、DMやお便りフォームから連絡ください。
最後にお願いです。
プラントライフは11月30日で1周年を迎えます。
日頃の感謝を込めて記念放送を予定しています。
そこで皆さんからのお便りを募集しています。
いつも聞いていますという応援メッセージ以外にも、
これが良かったとか、ここが印象に残っているといった好きだった回をぜひ教えてください。
概要欄のお便りフォームもしくはXのDMからご連絡をお待ちしています。
ぜひともよろしくお願いします。
今回はここまでです。
プラントライフでは化学や工場に関するトピックを扱っています。
毎週水曜日と日曜日の朝6時に定期配信しています。
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それではお聞きいただきありがとうございました。
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