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2025-10-01 13:25

#37 ノーベル化学賞のカギになる触媒の話

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科学系ポッドキャストの日の共通テーマ「これができたらノーベル賞!」について話します。個人的にノーベル化学賞のカギと考える触媒について紹介します。

【参考資料】
・排ガス有害税分を取り除くガソリンエンジンの三元触媒とは https://motor-fan.jp/article/9273/

・広く応用される「鈴木‐宮浦クロスカップリング」 https://www.chart.co.jp/subject/rika/scnet/40/sc40-1.pdf

・【速報】2010年ノーベル化学賞決定!『クロスカップリング反応』に!! https://www.chem-station.com/blog/2010/10/2010-6.html

・チーグラーナッタ触媒 https://cmaj.jp/check/?privfile=47-50-48-49-57-47-48-51-47-50-48-46-112-100-102&catfile=all

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プラントライフは、化学プラントの技術者である私かねまるが、化学と工場に関するトピックを、分かりやすく紹介する番組です。 毎週水曜日の朝に定期配信! LISTENで公開後、各種Podcastアプリにも配信されます。

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サマリー

今回のエピソードでは、ノーベル化学賞に関連する触媒の重要性について解説します。触媒が化学反応を促進し、エネルギー効率の向上や持続可能な技術の可能性を示すことを説明します。具体的な触媒の例として、自動車の廃棄ガスの浄化やノーベル賞受賞に関連する反応技術についても触れます。

触媒の基本と重要性
どうも、かねまるです。 プラントライフは、化学プラントの技術者が、化学や工場に関するトピックを分かりやすく紹介する番組です。
今回は、「化学系ポッドキャストの日」の企画に参加しています。 化学系ポッドキャスト番組が、毎月10日頃に共通テーマに沿って話す企画です。
今月のホスト番組は、青春アルデヒドさんです。 そして共通テーマは、これができたらノーベル賞。
なかなか難しいテーマですね。 私はバックグラウンドが化学の化学ですので、ノーベル化学賞の話をします。
2025年の化学賞は、日本時間の10月8日水曜日18時45分に発表予定です。 これまで様々な研究が受賞されてきましたが、個人的に化学賞で受賞しやすい
鍵となるものがあると考えています。 それが、触媒です。
今回は、そんな触媒についてノーベル化学賞も交えて話してみます。 まず、触媒って言葉を初めて聞いたという方に向けて
触媒とは何ものなのかということを解説します。 触媒は、化学反応の進み方を助ける見えないスケットです。
普段だったら進みづらい反応も、触媒があれば進みやすくなる。 そんな役割があります。
化学反応を進めるためには、活性化エネルギーというトリガーとなる 大きめのエネルギーが必要になります。
この活性化エネルギーを小さくしてくれるのが触媒です。 通常であれば大きいエネルギーをかけなければならないところを
触媒のおかげで小さくしてくれるということです。 そしてもう一つが反応の選択性を高めてくれるということです。
多くの化学反応というのは原料を混ぜ合わせて必ず一つの物質ができるわけではありません。
化学構造のいろんなところに反応させやすい場所があって、目的に応じて反応させたい場所が異なります。
そんな時に触媒を使うことで決まったポイントだけ反応させるような役割を果たしてくれます。
必要なものだけできるということは、反応後の精密な上流といったエネルギーを大量に消費するような操作をなくせる可能性もあります。
まとめますと、触媒は反応を進みやすくしたり、目的の物質を手に入れやすくしたりしてくれます。
そして触媒の重要なポイントは、反応によってなくならないということです。
化学反応する時に触媒は影で手助けしてくれるだけで、目の前の手助けが終わったら隣の反応の手助けをしに行きます。
自分は元の姿に戻って何度も働きます。
身近な触媒の実例
正確には劣化したりということはあるので、無限に使えるわけではないんですけれども、理論的に考えると触媒はほんのちょっとで十分に機能します。
なぜ触媒がノーベル科学賞の鍵になりやすいかと言いますと、理由はシンプルで、化学の作り方そのものを変えるからです。
触媒の役割は先ほど紹介しました。 反応を進みやすくしたり、目的の物質を手に入れやすくしたりしてくれるというものです。
反応が進みやすくなるというのは、過剰なエネルギーの投入を抑えられるということを意味します。
高い温度や圧力で反応させる場合は、設備の価格も高くなってしまいます。
少ないエネルギーで済めば、エネルギーの費用も抑えられます。 そしてCO2排出量の削減にもつながります。
せっかく作り方が分かってても、経済的に成り立たなければ普及はしません。 そして、化学反応で重要なのは反応そのものだけではなくて、反応後の分離の部分です。
不要な反応も一緒に行われていると、不要物を除去しなければなりません。 この時に行われる分離操作が、エネルギーを大量に使う蒸留です。
その他にも、吸着やろ過など、目的の順度に合わせて様々な処理が組み合わせられます。 この操作にも時間やエネルギーが使われます。
分離して取り除いたものは再利用するのが基本なんですけど、 使えないものは廃棄になってしまいます。
当然、使用した原料が100%目的物になるのが理想です。 触媒を使うことで目的物を得やすくなるため、重要な役割を果たします。
ここで、生活に直結する身近な触媒の話をします。 それが、車の廃棄ガスを浄化する触媒です。
車の廃棄ガスには厄介なものが3つ混ざっています。 一酸化炭素と燃え残りの炭化水素、そして窒素酸化物、ノックスと呼ばれるものです。
この自動車の廃ガスを浄化するのが酸原触媒というものです。 酸原触媒は走っている間、厄介となる3つの物質を浄化してくれます。
一酸化炭素と炭化水素は酸化することで二酸化炭素と水に変換します。 窒素酸化物、ノックスは還元して窒素に変換します。
この酸原触媒、どこにあるかと言いますとマフラーのところにあります。 車のマフラーの中にはハチの巣みたいなハニカム構造が入っています。
そのハニカム構造の表面に、白金やパラジウムやロジウムといった金属が目に見えないレベルで散らばっていて、
排気ガスがその間を通り抜ける一瞬で反応を進めます。 マフラーから排出されるときに一瞬で酸化や還元の作用が起こって、
排ガスの浄化が行われます。 これが身近な触媒の例です。
触媒とノーベル化学賞
そして、ノーベル科学賞にも触媒が関わる受賞内容がたくさんあります。 代表的な2つを紹介します。
まずは鈴木宮浦クロスカップリングです。 キーワードは炭素同士を狙った場所でカチッとつなぐというものです。
ここで行われているのが、炭素原子同士をくっつけるクロスカップリング反応と呼ばれるものです。
有機化学の世界で炭素原子同士をつなぐ反応というのは難しくて、これまでの反応では高温で長時間といった厳しい反応条件だったり、
反応性にばらつきがあったり、原料が水と空気に触れることですぐに反応性が落ちたりするような 使いづらいものでした。
複雑な化合物を作る際は職人技になっているという状況です。 そんな中、有機放素化合物を使う今回の反応は水や空気に比較的強くて扱いやすいのが大きな特徴です。
その結果、反応条件は温和で、実験ごとの再現性は高くて、そして医薬や農薬、電子材料といった幅広い分野で使い回せるようになりました。
この分子の作り方を変えた反応が世界中に広がって、2010年のノーベル科学賞につながっていきました。
2つ目の触媒が関わるノーベル科学賞受賞の内容はシーグラーナッタ触媒です。 こちらのキーワードはプラスチックをきれいに整列させて作るといったものです。
エチレンやプロピレンのような化合物から触媒の力で精密に制御された構造のプラスチックを合成できるようになりました。
私たちの身近なプラスチックとしてポリエチレンやポリプロピレンがあります。 袋や容器に使われる汎用的なプラスチックです。
原料にはエチレンやプロピレンが使われていて、例えばポリエチレンだと一連分子が数万個もつながった構造の分子です。
科学的には高分子やポリマーといったりします。 ここで大事なのが分子の並び方です。
ポリプロピレンを例に話しますと、イメージとしては1本のポリプロピレンの長いメインの鎖があって、その鎖から小さな鎖がいくつも出ています。
1万個のポリプロピレンがつながっていたら、1万個の小さな鎖が横から出ていると思ってください。
触媒がうまく働くと、その小さな鎖の向きが揃った綺麗なポリプロピレンが作れます。 その他にポリエチレンの場合だと分岐が少ないポリエチレンが合成できます。
これらの何がすごいかと言いますと、分子の整列ができると強さや耐熱性がグッと上がります。
同じ原料を使ってできたプラスチックでも作り方次第で性能が跳ね上がるんです。 ですけれども、ただ合成するだけでは当然作れません。
触媒が必要です。 ここで使われた触媒がチーグラーナッタ触媒です。
安価で強靭で用途が多様なプラスチックを社会に普及させたことで、1963年のノーベル科学賞に輝いています。
原料の性質というのが何でできているかではなくて、どう作ったかで決まる。 そんな価値観を普及させた歴史的な発明です。
最後に未来の話をします。 これまでの話を聞いて、どんな触媒が出てきたらノーベル科学賞に近いと思いましたか。
大きくは4つの特徴があると思います。 いろいろ使える汎用性。
誰でも使える再現性。 産業用途に使える規模感。
そして、波及効果です。 これからはカーボンニュートラル関係の内容が話題になりそうですね。
アンモニア合成とか、プラスチックのリサイクルとか、 二酸化炭素を原料にするとか、そんな内容です。
2025年のノーベル科学賞は日本時間の10月8日水曜日 18時45分に発表予定です。
もしかしたら、触媒が関わる話が受賞されるかもしれません。 この知識があると少し理解の助けになりますので、ぜひ覚えておいてください。
今回はここまでです。 プラントライフでは、化学や工場に関するトピックを扱っています。
毎週水曜日の朝6時に定期配信していますので、 通勤時間や朝の準備などにお聞きください。
番組へのお便りは概要欄にあるお便りフォームから投稿ください。 プラント技術に関する専門的な内容は、ケムファクというブログで解説しています。
最後に、このプラントライフがいいなと思っていただけたら、番組のフォローや各ポッドキャスターアプリから評価をお願いします。
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