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2025-04-30 19:28

#14 力が化学反応を駆動するメカノケミカル(モノづくり系ポッドキャストの日)

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今回はモノづくり系ポッドキャストの日に参加しました。共通テーマは「駆動」です。メカノケミカルについて話しています。
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プラントライフは、化学プラントの技術者である私かねまるが、化学と工場に関するトピックを、分かりやすく紹介する番組です。

プラント技術解説ブログ「ケムファク」
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MONOist連載記事「はじめての化学工学」
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/series/40825/

サマリー

このエピソードでは、メカノケミカルの原理とその適用について解説されており、化学反応の新たなアプローチや環境負荷の低減に向けた可能性が紹介されています。特に、固体飼料に機械的エネルギーを加えることで反応が進むことや、ペットボトルのケミカルリサイクルに関する実例が取り上げられています。メカノケミカルの分野では、窒素ガスと固体の組み合わせによる新たな化学反応が行われており、実用化には多くの課題が残されています。特に、反応装置の設計やスケールアップ、反応制御の確立が重要なポイントとなっています。

メカノケミカルの基本
どうも、かねまるです。
プラントライフは、化学プラントの技術者が、化学や工場に関するトピックをわかりやすく紹介する番組です。
今回は、モノづくり系ポッドキャストの日という企画に参加しました。
モノづくり系のポッドキャスト番組が共通テーマに沿って語る企画です。
今回のテーマは駆動です。
駆動というと、機械部品の駆動ですとか、人のきっかけ、ドリブンという駆動という意味もありますね。
そんな中で、私が話すのはメカノケミカルの話です。
そもそも、化学反応はどうやって進むのか。
それは分子同士が衝突することで起こります。
分子を溶媒、水やメタノールやトルエンなど、水もしくは有機溶剤に溶かして熱をかけることで反応を起こします。
熱をかけるのは反応速度を上げるためです。
その他にも、反応のきっかけというのは光を与えることで反応を起こすこともあります。
また、触媒を加えることで起こらないような反応も起こるようにするということもできます。
ノーベル科学賞で有名な鈴木宮浦カップリングはパラジウム触媒が使われています。
触媒というと金属系が多いんですけれども、三触媒という形で、例えば硫酸を触媒に使うということもあります。
主には溶媒に溶かして攪拌機で混ぜて反応させます。
他には管型反応機と言いまして、液体や気体を流しながら反応させることもあります。
この時触媒は管の中に固定して、気体や液体を通すことで反応が進みます。
そして今回話に挙がったメカノケミカルというのは、反応のきっかけが機械的エネルギーです。
環境負荷の低減
固体飼料に機械的エネルギーを与えることで反応を進めます。
使用されるのはボールミルという主に粉砕用で使われる装置です。
容器にボールを入れて振動や回転をさせます。
そうするとボール同士やボール壁面の衝撃によってエネルギーが与えられます。
本来だとこのボールの衝撃によってものが粉砕されるという仕組みになっています。
このメカノケミカルというのは環境負荷低減ですとかコスト削減の面で注目されています。
まずはメリットからお話しします。
一つ目が有機溶媒の削減です。
化学反応というのは水が使われていますけれども、主には石油系の溶媒が使われます。
メカノケミカルによって排液が発生しない環境負荷低減の反応にすることができます。
化学プラントでは有機溶剤というのは蒸発や蒸留で再利用します。
この溶剤を取り出す作業というのは非常にエネルギーを使いますので、
化学産業というのは鉄工業に次いで二酸化炭素の排出量が多くなっています。
だいたい全体の15%です。
そしてこの15%のうち蒸留プロセスというのは化学産業のだいたい4割程度エネルギーで使われていると言われています。
全てが溶媒だというわけではないんですけれども、多くが溶媒の蒸発、蒸留に使われているということで、ここの改善というのはかなり環境負荷低減につながります。
2つ目がエネルギーの効率化です。
機械的エネルギーで駆動することによって反応時間が削減したり、高温高圧にしないといけない反応が低温上圧になるということもあります。
高い温度で反応させるというのは非常にエネルギーを使いますので、通常は圧力を変化させます。
また、圧力を変化させるのも当然エネルギーが得りますので、偽装としては常温常圧での反応です。
3つ目は新規反応の開発につながるという点ですね。
主に有機化学反応は溶媒に溶かして行います。
それもあって溶媒に溶けないような物質っていうのはあまり反応に使われません。
もちろん、固液反応ということで固体表面と接触させて反応させることもあるんですけれども、液体同士、液体に溶かしての反応よりは遅くなってきます。
メカのケミカルによって固体同士での反応がやりやすくなります。
例えば、半導体や電池や航空宇宙など先端技術へ応用できる可能性があります。
反応の実例と成果
何件かメカのケミカルに関連する事例を紹介します。
メカのケミカルといえばという企業がありまして、それがメカノクロスです。
メカノケミカル反応で有名な伊藤はじめ先生が23年の11月に設立しました。
すでに医薬品作りでよく使われる20個程度の化学反応についてはメカノケミカルを扱う技術が確立されています。
一例を挙げますと、鈴木宮浦カップリング、園頭カップリング、グリニアル反応、バーチ感源など、
有機化学を扱う方であれば少なくとも名前を聞いたことあるような有名どころの反応実績です。
メカノクロスによると、メカノケミカル反応を使った例で二酸化炭素の総排出量が25分の1、
産業廃棄物の量が15分の1、ランニングコストが40%削減という話がありました。
さすがにチャンピオンデータだとは思いますけれども、これぐらいの効果が出てもおかしくないような反応の仕方です。
次はメカノケミカルを実際に使った反応例を紹介しますと、ペット、ポリエチレンテレフタラートですね。
このケミカルリサイクルに使われた例があります。
ペットボトルのリサイクルは、排気になるペットボトルを回収して、洗浄して、ゴミを取り除いて、フレーク状にした後に再度ペットボトルに戻します。
このようなリサイクルはマテリアルリサイクルと言います。
その他にもサーマルリサイクルやケミカルリサイクルというものがありまして、今回ペットのケミカルリサイクルが行われています。
これはペットの原料のモノマーが大量にくっついてできたポリマーという分子なんですけれども、それをちっちゃいモノマー単位に分解する操作になります。
詳しい話はシャープ8番、様々な化学品のリサイクル手法を知ろうという放送を聞いてみてください。
ペットを従来のマテリアルリサイクルをしていきますと、何度か重ねると品質が低下してきます。
それは分子が傷ついていってちょっとずつ分解してくるということが原因です。
それもあってペットを原料の形にケミカルリサイクルして、また1からペットボトルを作るということを行います。
酸化カルシウムや酸化マグネシウムのような塩基性金属酸化物を触媒としてジメチルテレフタラートとエチレングリコールを得ます。
こうした単純にメカのケミカル反応を行うだけじゃなくて、触媒を添加してメカのケミカル反応を行う場合はメカノキャタリシスとも呼ぶみたいですね。
メカのケミカル反応を行って何がすごいのかと言いますと、これまでであれば同じような反応はあったんですけれども、
ジクロロメタンというハロゲン系の体にあまりよろしくないような溶媒を使って溶かしたり防塵させたりしていました。
もう一つ反応例を紹介するとアンモニア合成ですね。
常温常圧で窒素からアンモニアを合成したという報告が東京大学でありました。
窒素ガスというのは非常に反応性が乏しいのでハーバーボシュ法という反応が行われます。
窒素ガスからアンモニアへ変換するには鉄系触媒が存在する中で高温高圧の極めて厳しい反応条件が必要です。
この高温高圧というのはだいたい400から600度、そして100から200気圧という圧力で行われます。
また窒素ガスN2からアンモニアNH3に変わるために水素源が必要なんですけれども、これは主に化石燃料由来の水素ガスが用いられます。
こちらも環境負荷が高い原料になりますね。
今回の報告ではモリブデン系触媒に還元剤としてヨウカサマリウムが使われています。
そして水素源として水やアルコール、そしてセルロースも使っています。
メカのケミカル反応によって常温常圧でアンモニアを合成できたということだけでもすごいんですけれども、水素源としてセルロースを使っているところも注目したい点です。
セルロースは細胞壁の主成分になってまして、木材ですと約50%含まれます。
かなり分子の結合が強いので溶けなかったり分解できなかったり、有機溶媒にはほとんど溶けません。
ですので有機化学反応するにはあまり向いていないような材料です。
ただ木材に大量に含まれているということでバイオマス原料としては非常に価値のあるものになります。
個体同士の反応であるメカのケミカルを使うことで、セルロースも原料として使えるようになりました。
今回の東京大学の報告は、もともとモリブデン触媒ですとか、還元剤の硫化サマリウム、アルコールを用いたアンモニアの合成というのは報告自体はありました。
今回はそれをメカのケミカルで行ったということになります。
メカノケミカル反応の新たな挑戦
またメカのケミカルの分野でも新しい取り組みになってまして、個体同士ではなくて窒素ガス、機体と個体によるメカのケミカル反応が行われたという点が非常に新しいことになります。
最後に実用化に向けた課題を紹介します。
メカのケミカル反応はまだ小さいスケールでしか実用化できていない状態です。
これを実機スケール、産業用途で使えるようにするために今後進めていかなければなりません。
一つ目の課題が専用の反応装置の設計です。
現状は粉砕用の機器を転用していますので、メカのケミカル用の反応装置が設計できればさらに効率化されます。
二つ目の課題は実績のある反応を増やしていくということです。
先ほどお伝えしたメカのケミカルの企業、メカノクロスでは大体20種類くらいの反応に適応してますけれども、これから着実に増加していくと思われます。
三つ目はスケールアップです。
現状メカノクロスの資料を見ますと、25年の1月時点では1バッチの処理で最大1kg処理できるようです。
これを26年までに1バッチ100kg、100倍まで引き上げることを目指しています。
四つ目が反応制御ができるようにすることです。
溶媒を使用しませんので、原料の濃度と密度が高い状態で反応させます。
発熱などの反応暴走というのが起こりやすくなります。
安全を確保しながら量産に向くような装置や量産プロセスというのを設計する必要があります。
技術士試験と課題
少し余談ですけれども、液体の原料をそのまま溶媒のように使うということは既に行われてまして、ニート反応と言います。
社会的に言われているようなあのニート、N.E.E.Tではなくて、N.E.A.Tと書いてニートです。
意味はストレートですとか、そのままとか、無溶媒という意味になります。
反応に使われる原料が液体であれば、そこに溶かし込むことで溶媒を使わずに反応ができるという特徴があります。
それもあって容器を小さくできたり、溶媒除去の操作が不要になったりします。
ただ、メカノケミカルの時と同じで、反応制御ということが難しくなります。
今回メカノケミカルの反応ですと、ニート条件を個体で行っているというところが新しくなります。
ここからクロージングです。
技術士試験まであと12週を切りました。
シャープ3番、今年の目標というところで、筆記試験の合格をまず目標にしています。
論文を書くこと自体は問題ないんですけれども、制限時間の中で大量の文章を書くというところがちょっと難しいですね。
添削いただいた限りは、A評価を今のところもらえるようになっているので、大丈夫かなと思っています。
合格率を上げるために、大体3つぐらい課題があるかなと思っていまして、
1つが専門知識が少し足りないかなというところで、ここは実務経験の少なさが影響しています。
2つ目の課題が、きれいに書く速さを上げないといけないなと思っています。
4月中頃から手書きに変えているんですけれども、パソコンで書いたものを書き写すだけでだいたい25分、600字で25分ぐらいかかっています。
もうちょっと早くしないと考える時間がないかなというところですね。
3つ目の課題が、プロセス理解があまりできていないかなというところですね。
私は科学部門の科学プロセスという分野で受験するんですけれども、
他の部門の方ですと自分の領域に落とし込んで話ができることも多いんですけれども、
科学プロセスだと、例えばポリマー合成の反応不良が起きたというシチュエーションを与えられたり、
半導体プロセスの廃棄物がシチュエーションとして与えられたり、
すでにプロセスというのが限定されます。
それもあって、各分野のプロセスというのは基本的な知識を抑えておいた方がいいかなと感じています。
ここは実務経験を補うような広い専門性が必要になってくるなと特に感じていますね。
何にせよあと12週間しかありませんので頑張りたいと思います。
今回はここまでです。
プラントライフでは科学や工場に関するトピックを扱っています。
毎週水曜日の朝6時に定期配信していますので、通勤時間や朝の準備などにお聞きください。
番組へのお便りは概要欄にあるお便りフォームから投稿ください。
プラント技術に関する専門的な内容はゲムファクというブログで解説しています。
最後にこのプラントライフがいいなと思っていただけたら、番組のフォローや各ポッドキャスターアプリから評価をお願いします。
そうしていただけると今後の励みになります。
それではお聞きいただきありがとうございました。
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