近年増えている工場の閉鎖、閉鎖したら何が起きるのか>~ENEOS 和歌山製油所の閉鎖を例にお話しします。
プラントライフは、化学プラントの技術者であるかねまるが、科学や工場に関するトピックを分かりやすく紹介する番組です。
今回のテーマは、工場の閉鎖です。 工場がなくなることで、どのような影響があるのか。
そこで働く人のみに影響が及ぶわけではありません。 まず、最新の閉鎖事例を見てみましょう。
一つ目が、日産自動車神奈川のオッパマ工場の閉鎖です。 最近話題になりましたね。
2027年度末に生産終了を発表されています。 従業員が約2400人。
関連工場も含めると3600人になると言われています。 お昼休みに従業員の方がこれを知ったということでもインパクトがありましたね。
もう一つが、エネオス和歌山製衣所。 今回話すテーマです。
81年稼働した製衣所を2023年10月に停止しました。 そもそも製衣所って何でしょうか。
原油を蒸留して様々な成分に分離する施設です。 原油は主に中東地域から輸入されてきます。
分離した原油はガソリン、豆油、 経油、重油、
ジェット燃料、ナフサなど幅広く作られていきます。 ナフサというのはプラスチックをはじめとする
化学製品の原料となるものです。 原油から分離した成分は分解したり
需要のある成分に変換したりします。 例えば燃料の硫黄分を取り除いたり
ガソリンのオクタン化を上げて排浴を作ったり、そんなことが行われます。 なぜ閉鎖するのでしょうか。
大きくは3つです。 環境規制と海外生産の影響と設備の老朽化です。
まず環境規制の話からしていきます。 CO2排出量削減の社会構造変化によって
石油製品の需要は減少していきます。 令和6年4月に経済産業省から
2024年から28年度の石油製品の需要見通しというものが公開されています。 これはガソリンやナフサ、経油など
先ほど話した主要品目すべてを足した需要量の推移になっています。 だいたい年平均で1.6%ずつ需要が減少していっています。
2023年度と28年度を比較すると7.6%減少しています。 この需要が減ると設備の稼働率が減ってきます。
設備というのは稼働率が高いほど効率が良くなりますので 採算がだんだんと取れなくなってきます。
次に海外生産の影響の話をします。 主に中国です。
大型で効率の高い石油化学設備が次々と導入されていっています。 現在は供給過多の状態です。
石油化学業界の経済状況がわかる指標の一つとして エチレンプラントの稼働率というものがあります。
化学製品の基礎原料になりますエチレンを生産するプラント これの稼働率を表します。
石油化学工業協会から毎月稼働率というのは公表されていまして 当然稼働率が高いほど良くて
公共不況経済的な目安が90%と言われています。 現在はどれくらいなんでしょうか
この90%というのは2年以上下回っています。 そして
現在75%程度と非常に低い状態になってしまっています。 3つ目が設備の老朽化です。
配管不足とか電気系の故障など 設備が老朽化していって事故のリスクが上がっています。
大型の設備についても40年から50年経過して 蒸留等のような設備は更新が迫られています。
当然事故のリスクが増加します。 2024年3月に経済産業省から高圧ガス事故の状況についてという資料が公開されています。
事故にも種類があります。 爆発や火災、破損などいろいろありますけれど
近年の事故件数のうち約9割が紛失や漏洩による事故です。 つまりガスや液が漏れ出たということですね。
事故原因は圧倒的に維持管理不良が多いです。 特に不織管理不良が20%弱に及んでいます。
腐食管理不良も含めてもう少し広く見てみます。 長期の運転に伴う劣化とか維持管理要因を見てみると全体の60%弱に及びます。
その中には低血管理不良やシール管理不良などが含まれます。 例えばボルトの緩みとかパッキンの不良とか
そういうイメージですね。 設置から何十年とたつ設備はどんどん事故リスクが増加します。
ですけれどもこれを新しくするというにもお金がかかります。 であればここでタイミングがいいのでやめるということも一つの手になります。
合わせて不動産価格が下がってきます。 まずこうした身近なところから収入が減っていきます。
こうして収入が減少して次はサービスの利用を控えるようになってきます。 結局は工場の直接的な生産以外に飲食や不動産、サービスと全体的な需要が減少して税収が大きく減っていくということにつながってきます。
固定資産税や住民税、 関連事業者の売り上げなど地域経済に影響を与えてきます。
税収が減っていってインフラが維持困難になってきます。 役所機能も低下していきます。
エネオス和歌山聖書の閉鎖が発表された時の当時の和歌山県知事の言葉が残っています。 それを読んでみます。
和歌山県にとっても売上高、製造品出荷額の20%弱があの工場なんですね。 それから有田市は90%以上があの工場なんです。
次の展望も示さないで閉めますというのはその地域に死ねと言っているのと同じじゃないですか。
という発言をされています。 報道の一部ですので切り取りなど起きているかもしれませんけれど
言いたかったことは聖書が閉鎖されてサービス等も減少して 税収が減って維持できなくなります。そんな話だと思います。
そうとは言っても 和歌山聖書側もこれ閉めないともう成り立たないっていうような状況なんですけどね。
せっかくなので反対に工場が建って活気づく事例を紹介して終わろうと思います。
熊本県です。 熊本といえばTSMCが来ました。
半導体の受託生産で世界最大手の台湾企業です。 九州経済調査協会の資料を見てみましょう。
九州と沖縄、山口、これらにおける 半導体関連設備投資による経済波及効果というものが公開されています。
2021年から2030年までの10年間でこれら地域にもたらされる経済効果が23兆300億円の資産です。
この金額が大きいのはもちろんのことなんですけれども、個人的に興味深かったのはその内訳です。
23兆300億円のうち、半導体サプライチェーン関係が半分ぐらいの11.1兆円です。
科学とか機械、電気、金属など直接的な効果のものです。 そしてその他のサービスなどの産業が11.9兆円の効果。
つまり半分が波及効果なんですよね。 向上が立つというのは周辺に影響を与えるイメージがつきやすいかなと思います。
これを見ると向上が立つということがどれほど周りに影響を与えるかというのがイメージできると思います。
また県別に見たデータもあります。 TSMCがある熊本県が13.4兆円と全体の約60%を占めています。
裏を返すと約40%が県外への影響です。 長崎と福岡に10%ずつ影響が及んでいます。
そして面白いことに沖縄県も772億円の経済波及効果が見込まれています。 これは波及効果の一つで沖縄県に遊びに行く人が増えていっています。
収入が増えたら近場の観光地域である沖縄に行きたくなるというのはよくわかりますね。 生産拠点があるとその他のサービス業や周辺の県などにも影響を与えるということがイメージできたと思います。