イランやってないねってことになって、しかもこれ今年発売してちょっと話題だった本なんで、
このタイミングあるかなと思って、またとんでもない一冊に私は出会ってしまったなと思っております。
そうですよね。
感覚としては、結構マジックリアリズム満載の話なんで、ガルシアマルケスの百年の孤独を読んだ後の感覚に非常に近いんですけれども、
ガルシアマルケス読んだのが私も大学生の頃、社会人の初めの頃で、
まあおそらくまだそんなに読書経験が浅かった頃に読んでいるので、ちょっとマジわかんねえなみたいな感じで終わっちゃった感じはあるんですけど、
これもその感じはあるんだけれども、読み終わった後に描かれている切実さというか、ちょっとポップな部分もあるんですけど、
マジックリアリズム的なポップさみたいなのもあるんですけど、結構やられてますね。
なんか名作であるのは間違いないんですけど、うまく話せるか自信がない一冊ではあるし、まだつかみきれてない感じはありますね。
僕も同じで、去年百年の孤独を読んだんですけども、同じぐらい読みにくいなって思ってですね、話自体すごく面白いんですけども、
一体これ今何の話してるのかすぐに見失ってしまうぐらいですね、ちょっとね、わかりにくいんですけど。
ただ百年の孤独とか、アルビアンナイトの千夜一夜物語とかですね、そういうのがミックスされたような、すごく味わい深い作品で、すごい面白いんですけど、
あとはやっぱり大地さんと同じように最後、終盤ですね、読んでいった時に、これは百年の孤独とは違うんだってちょっと思って、
このスモモの木の啓示はやっぱりこの作品ならではというか、やっぱりあの今回知らんむけんの作品初めて取り上げたんですけども、
そこの現代社会というのが現れてきて、これすごい作品だなって最後の方思っていましたね。
ラストやばかったっすよね。そこまで話さないと思うけど。
これも本当ね、読んでみないとなかなかわからない作品の代表画かもしれないですよね。
確かに。これ我々収録するにあたって台本というか構成を書くんですけど、
なんとなくこういう内容をこのあたりで言って、こういうふうにしよう。
その後2人で打ち合わせて組み合わせて、じゃあ収録しようかみたいな流れなんですけど、
今書いてあることがね、まだなんかね、自分で昨日書きながらね、なんかこれじゃないんだよなとか思いながらちょっと書いてるんで、
台本と違うことを言い出すかもしれない。
そうですね。これ多分ね、2回目とか読んだら全然また違う印象。
うん、違うと思う。
そうなんで本当。
確かに読んでないから、うん。それは絶対ありますね。
という感じなんで、なんかこれ今聞いてる段階で、え、ちょっとどうなの?みたいな感じに聞いてる人になっちゃうかもしれないけど、
多分そうなっちゃうけど、面白い作品なんですよね。
やっぱりこの作品の持つ読ませる力みたいのはあるので、その辺りちょっとうまく今日は伝えられたらなと思ってます。
そうですね。頑張りたいところなんですけど。
半分ぐらいしかないけど。
まずは作者についてで、植部アーザルさんは1972年イラン生まれの女性で、イランでジャーナリストとして活躍された人で、
百科事典の編集とかですね、シルクロードにまつわる本とかっていうのをもともと発表されていた方なんですけども、
2011年に政治難民としてオーストラリアに移住して、そこからはオーストラリアの方で創作活動を行っていらっしゃって、
で、著作自体はプリシャ語で書いていらっしゃいます。
ただそれがですね、アーザルさんの作品が英語訳されてですね、この本集ですけども、
それがオーストラリアで賞を取ってすごい話題になって、
2020年にアメリカとかイギリスとかそっちの方でも発売されて、国際物価賞とかですね、全米図書賞とかですね、
翻訳部分とかすごい輝かしい賞があるんですけども、その2つの翻訳文学の最終候補になったというですね、
そういうすごく実績のある方になります。
そうですね。で、ちょっとこの本について補足というかしていきたいんですけど、ちょっと政治的な話になるんですが、
英語版の翻訳者はですね、安全上の理由から匿名という形になっています。名前が明かされていません。
この本の内容がイラン革命とフォメイニシ、イラン革命後の指導者フォメイニシに対して結構親烈な内容が書かれているというところで、
ちょっと安全上の理由からですね、翻訳者の名前を伏せるという事情があるみたいです。
同じ理由でプレシア語版はイランで非公式な形しか手に入らないとなっており、
なかなかこのイランの表現の自由というか独裁政権のもとにある厳しさのようなものが伺える一冊でございます。
ですけどこの作品はですね、くしくもそれ上にですね、国境と文化を超える文学作品の重要性を私たちに密接けると同時に、
現代における翻訳の重要性を示すことになったと役者後書きで書かれていました。
実際2020年10月現在なんですけど、先週ぐらいだったかな、
イランで女性が、イランって紙を覆う布みたいのを女性は絶対しなきゃいけないっていうルールなんなんですかね、
法律なのかな、そういう強制的なものがあるんですけれども、
それがちょっと微妙に守られてないということで捕まってしまった女性が拘留されてそのまま死んでしまったという事件がありました。
これは政府側は治病のため死亡したと発表してるんですけれども、
どう考えても撲殺して殺したんだろうということで、今かなり国際的な問題になっていますね。
日本でもイラン大使館のとこに抗議のデモなんかが行われて、
在日イラン人による抗議のデモなんかが行われていますけれども、
かなりこの辺りの事情とこの小説の内容はリンクしますし、
かなりこの本も出版された時にだいぶ気を使われたんだろうなというのは伺えるところもあります。
だからちょっとこういうのをすると重い話になっちゃうんですけど、
でもやっぱりこういう背景を少し理解していると、
この本の表現の自由さんのようなところっていうのは非常に尊いものだなと感じることができるんじゃないかなと思います。
と、思い入りになってしまいましたけど。
そうですね。でもそれだけすごく重要な一冊であるというのはね、やっぱり言われているのかなと思いますね。
今回なんですけど、いつもは最近割と全体的な魅力を先に伝えてストーリー話して、
そのストーリーのことを深掘っていくみたいな流れだったと思うんですけれども、
結構話が細かい話でも伝わらないし、あまり意味がないかなと思っていまして、
この話が持つ雰囲気っていうのをまずは掴んでもらいたいので、
最初にストーリーをざっくり触れていきます。
その後この本から感じた魅力っていうのを、我々が感じた魅力っていうのをちょっとお話しして、
スマモの木の啓示という作品をしてもらいたいなと思っております。
なのでちょっといつもとスタイル違うんですけど、そういう意図があってやってますんで、
ご理解の上お聞きいただければなと思います。
じゃあちょっと私の方からストーリーを話していきます。
これはですね、語り手である主人公は13歳の少女、バハールという女の子になります。
基本1,2章で語られます。
これ白水社のエクスリブリスっていうシリーズ、レベルなのかな?
よく見るやつなんですけど、それなので結構裏拍子にストーリーが書いてあるので、
ちょっとそれを読み上げたいと思います。
これだけ割と端的にこの話を表しているので、やっぱりここから始めたいと思います。
1988年8月18日午後2時35分に村を見下ろす丘にある一番背の高いスマモの木の上で、母さんは啓示を受けた。
まさにそれと同じ瞬間、兄さんのソフラブは公主権になった。
それを遡ること9年、イスラムの革命の最中にテヘランで幸せに暮らしていた私たち一家は、
熱狂した革命支持者たちによって家に火を放たれ、かけがえのないものを失った。
私たちは道なき道を分け入り、ようやく外界から隔絶された村、ラーザーンに辿り着く。
そこはくしくも1400年前、アラブ人の来襲から逃れたゾロアスター教徒が隠れ住んだ土地だった。
静かな暮らしを取り戻したと思ったのもつかの間、ラーザーンにも革命の波が押し寄せる。
ある日、ソフラブが連行されると、母さんのロザー、父さんのフーシャング、姉さんのビーターの身にも次々と試練が降りかかる。
文学作品を中心にいろんな書物が、ここではそんな本は読んではいけないというですね、禁止されている本がいっぱいあって、
それが燃やされていくときに本から指名が聞こえてくるっていうですね。
それも読んでいるとね、ちょっとコミカルな部分はあったりするんですけど、ただ燃やされるだけじゃなくてね、ちゃんとそこに人の声、指名が入っているというところとかはね、
描き方としてすごく面白いなと。ちょっとそういうマジックリアリズムの要素がふんだんに入っているというところが確かに面白いところではあります。
なんかほんとこのあたりはガルシャマルエクス読んでいるような感じになりますね。
殺された政治犯、悪いことをしたわけじゃないんだけど彼ら、ただ生きてただけなんだけど、
彼らが流した涙が、幽霊が流した涙が川になり洪水になり街を追うっていうシーンはかなり印象に残りますね。
で今ちょっと話を聞いていると結構デタラメだなとか何でもありだなみたいな印象を持たれるかと思うんですけども、
これなんか展開にリアリティがあるんですよ。このリアリティを支えているものは一体何なんだろうなって読みながら私はずっと思ってたんですけど、
これかなと思うのはどのシーンというかですね、全てのシーンに共通するわけではないんですけれども、
主人公側が略奪されるということが多いです。というか略奪みたいなのが結構描かれますね。
何かを奪われたり何かを失ったり取られてしまったりということですね。
例えばさっき三枝さんが話した本を燃やされるところと、
あとこの政治犯たちの幽霊なんですけども、もともとは彼らは何もしないけれども捕まってしまって死刑に遭ってしまっていうことなんですけれども、
この奪われるっていう感覚が多分この作者に強いんじゃないかなと思っていて、
多分これはイランに住んでた時の作者が体験したことはおそらくベースになってるんだろうなと思います。
やたらこの辺りは非常に切実というか真に迫っているところで、
マジックリアリズムを使いながらも、やたらこの辺りがグサグサ来るのはきっとこういうところにリアリティがあるからだろうなとちょっと私は思いました。
略奪と言われてましたけども、やっぱり基本的に何かを失われていくっていう話だと思うので、
これがここにリアリティがあるというところがやっぱりちょっと悲しいところではありますよね。
ちょっとそこからまた関連するかもしれないんですけども、
魅力として挙げれる一つと思っていて、人物それぞれの物語がどれも豊かであるというのが感じています。
主人公の家族5人の物語ももちろん一人一人のがあるんですけども、周辺の人たちにもやはり物語があってですね、
結構それが読ませられます。
読んでいると人物がすごくたくさん出てくるんで、これは誰だって思ったりするときあるんですけども、
ただ読んでいくと、家族のこの人の恋人のお母さんだったとかですね。
この家族が持っている本をことごとく燃やされるシーンがあるんですけれども、
ここで結構ね、このお父さんがね、結構いいこと言うんですよね。
元々この本に関しては、
本っていうのは、人間にとって他人の暴力と無知と抑圧から逃れるかくれんぴかなんだっていう話があって、
ここはちょっと多分読書家からするとかなり刺さる名言なんですけど、
その後に本が燃やされてしまって、
一週間経った時ですね、100ページある白紙のノート4冊と、
そういうのをちょっと持ってきて、お父さんが言ったことは、
私たちは書くことから始めなければならない。書け。覚えていることを全部書け。
小説に出てきた登場人物、霊暗関係、戦争、平和の孤島、彼らの冒険、憎しみ、裏切り、
本を読んで覚えていることは何でもいいから書くんだって言って、
みんな言われた通りに朝から晩まで書き続けるっていうことをするんですけど、
結構これはなんていうか、奪われても奪われきれないものみたいな象徴な気がして、
ちょっとすげー感動しちゃった。
いやいや、この描写すごい良いですよね。
小説を書いているときに、やっぱり冒険とか人物とかね、
そういうのが蘇ってきて、その人物たちの歌とか声で、
家の中がね、また光と死で満たされていったっていう、
そういうような描写もあって、すごい良いところですよね。
こういう強さみたいなのも、この小説は結構描かれるから、
何度奪われてもみたいなところはちょっとあって、
結構この辺りは感動してしまいますね。
そうですね。結構お父さんって感動するところはいっぱいありますよね。
お父さん強いよね。すごい強い人間だなと思う。
さてこんな感じにしますか、今回は。
そうですね。伝わったかな。
まだまだ話していない話が本当にいっぱいあるんですけど、
でも何か雰囲気感じてもらえたらなとは思いますね。
すごい小説であるのは間違いないので、
一人でも多くね、ちょっと手を取ってもらえたらありがたいなと思いますね。
じゃあちょっと最後、この本と密接に関わるテーマトークなんですけど、
刑事について話しましょうか。
そうですね。
この本が言っていた刑事。
これ冒頭すぐ出てくるんですけど、
お母さんが刑事を受けて、その刑事の内容っていうのは、
何か思っていたのとは違うということですね。
おそらくこれは人生が一瞬で全部見えたんだと思うんですよ。
俺が解釈するに、全然値打ちがない。
人生は思っていたようなものと違うっていう刑事っぽくて。
なんかこれ読んでみると分かる部分ではあるんですけど、
この刑事の意味は何なんだみたいな。
ちょっとタイトルにもなってるからね。
確かに何なんだろうって。
読み終わってもよく分かってる。
そうそう。本当に面白い。
これちょっとお題に出てきて、
分かんねーって思ってしまったんですけど。
でもタイトルになってるからリスナーからしても、
刑事って何なんですかってなるよね。
どちらの切り口からでも興味がある人は楽しめるんじゃないかなと思っています。
じゃあ次回を告知で終わりたいと思います。
次回はですね、五名域の歩道橋の魔術師という作品をご紹介します。
番組の最後になりますが、メルマガ会員を募集しております。
これは無料版、有料版とありまして、無料版はですね、毎回のエピソード長すぎたものをカットした音源をお届けしております。
これ冒頭で話しましたけれども、今回ちょっと割と厚めに配布すると思うので、ぜひお楽しみに。
これはもう、もっと我々のエピソードを聞きたい人のためにやっておりますので、無料ですのでよろしかったら登録ください。
有料版はですね、サポーター特典という形になっておりまして、
ちょっと我々の活動というか、文学ラジオ猿飛猫たちを応援したい人のためにご用意しております。
お返しとしては、毎週我々の日記のような編集講義をお届けしております。
そこでしか言えないことを言っています。
もしよろしければ、興味あればご登録ください。
詳しいことは番組概要欄に記載しておりますので、ぜひご確認ください。
ちなみにですね、この回からですね、マイクを新調しまして、
これが結構高いマイクを買いました。
ポッドキャストという名前が付いているマイクなんですけど、
ポッドキャストマイクという名前なんですけど、かなりこれによって音質が良くなったのと、
私の編集の手間がかなり改善されますので、
これをサポーター比から出しておりますので、ありがとうございます。
とともに、ちょっと実はですね、高いマイクで完全に足が出てしまっているので、
この機会にサポートしたいという方はいたら、ぜひご協力いただけるとありがたいです。
何卒よろしくお願いします。
何卒って感じですね。
とはいえ、趣味でやっていることでもあるので、
この日にはちょっとお金かけていくのはいいかなと思っております。
番組の感想やリクエスト、またこのラジオを聞いて紹介された本を読みました。
読み返しがございましたら、
ハッシュタグ空飛猫たちをつけて教えていただけると大変嬉しいです。
TwitterやインスタのDM、投稿などでお待ちしております。
メッセージ本も番組情報欄に載せておりますので、そちらから直接いただいても大丈夫です。
この番組気に入っていただけましたら、積極的に拡散共有していただけると助かります。
それではまた来週。
ありがとうございました。