00:13
みなさんこんにちは。大林でございます。
2020年4月10日に大林信彦監督が他界して、はや1年が過ぎました。
今月、わおわお日本映画専門チャンネル、衛星劇場などBS、CS各局で大林映画の特集放送が行われています。
2月11日には、わおわおで大林監督の代表作の一つである「転校生」が久しぶりにテレビ放映されました。
自分も見直したのは多分20年ぶりぐらいじゃないかなと思います。
実は去年ですね。名古屋のシネマスコーレでも上映されてたんですが、コロナの影響で残念ながら行くことができず、非常に悔しい思いをしました。
さて、この転校生。1982年公開。主演は尾見利と小林さとみ。
原作は山中久志の児童文学。俺があいつであいつが俺で。
ふとしたことがきっかけで心が入れ替わってしまった中学生。斉藤和夫と斉藤和美。
やむを得ず和美を演じる和夫と和夫を演じる和美のトタバタを笑えと涙で描いた青春映画の傑作です。
本作は大林監督が初めて故郷である広島県尾道市を舞台に撮った長編作品で、後に尾道三部作の第一作と呼ばれるようになりました。
実はこれ以前の大林映画は、デビュー作のハウス以降、手塚治虫のブラックジャックを原作とした瞳の中の訪問者、
横水製紙のミステリー作品のパロディー、近代値耕介の冒険、
三浦智和、山口桃江のゴールデンコンビによる振り向けば愛、
薬師丸裕子主演のSFAが狙われた学園、といったご作品が公開されました。
細かいカット割り、派手な効果音、わざと演出された安っぽい構成シーン、
こういったものがですね、一部には熱狂的なファンを生み出したんですが、
公開当時は世間的にも評論家にも高い評価はされていなかったと記憶してます。
03:01
ところがこの転校生では大絶賛というような感じでした。
それまでの作品とは異なり、非常にウェルメイトな青春映画となっています。
作品の冒頭、モノクロの8ミリフィルムで撮影された尾道の風景を見た瞬間、
誰もが懐かしいと思ったのではないでしょうか。
この作品の魅力の一つは間違いなく尾道の風景です。
しかも観光名所的な場所はほとんどとられておらず、
普通の民家、急な坂道、狭い路地裏、普通のアーケード街、
そういった生活感あふれる場所で撮影が行われました。
これは尾道で生まれ育った大林監督ならではじゃないかと思います。
実際のところはですね、撮影直前にスポンサーが降りてしまい、
カズオやカズミの自宅のセットを作る予算もなく、
尾道の民家を借りてそのまま撮影に使用したということです。
また尾道の観光名所で撮影をしない監督に対して、
地元の人たちや行政からは非難の声が上がったとも聞いています。
ところが公開後、多くの若い観客たちが尾道を訪れ、
尾道を巡ることになりました。各有自分もその中の一人です。
30年近く前に尾道に行ったんですけれども、
本当に映画のままの街並みだったということを覚えています。
そしてこの作品のもう一つの魅力は主演の二人の演技力ですね。
特に中身がカズオになったカズミを演じた小林さとみの演技は本当に見ものです。
途中から、これ実は男の子が演じてるんじゃないかと、
そういうふうに錯覚させられてしまうほど難しい役を見事に演じていました。
劇中何回か胸を見せるシーンがあり、
当時10代の小林さとみがカメラの前で演じるのは相当抵抗や羞恥心があったと思います。
でも画面に映っているのは男の子であるカズオがカズミの体に驚いたり面白がったりしている様子で、
一切女性としての感情は見えません。
だからこそ見ているこちらも本当に中身が男の子ではないかというふうに錯覚を起こしてしまうわけですね。
男女が入れ替わることによるドタバタコメディ要素も多いんですが、
06:00
割とカズミになったことを楽しんでいるカズオに比べて、
カズオを演じなければならないカズミはだんだん精神的に追い詰められていきます。
尾身俊則の演技は嫌々ながら男の子を演じる女の子の役を演じるわけなんですが、
これまた小林さとみに負けず劣らず上手いなと思いました。
この作品をきっかけに彼は大林映画の常連となるわけなんですが、
それも納得できる演技だったと思います。
脇役で出てくるカズオの母親役のキキキリン、
クラス三人役のシホミエスコ、非常にいい感じですね。
そしてですね、今回見直して初めて気が付いたんですけれども、
カズミのお兄さんを演じてたのが中川和彦、と言ってもわからない方多いと思うんですが、
中川翔子、翔太の父親ですね。
彼は1994年に32歳の若さで亡くなったんですけれども、公開当時はまだ二十歳。
なんだか見ていて不思議な感じがしました。
この映画、現時点ではNetflixとかAmazonプライムなどのネット配信はされておらず、
DVDは相当前に出たんですけれども、ブルーレイは出ていません。
理由はわかりませんが、テレビ放映もずっとされてませんでした。
もともと日本テレビが出資してましたので、
昔は水曜ロードショーとかで年に一回ぐらいはやってたんですけれども、
最近も本当に見る機会が少ない映画となってました。
今回のワーワー放映版は、いわゆる4Kリマスターのような超高画質というわけじゃないんですが、
発色も良くて保存版にしておいた方がいいかもしれません。
自分もこの後ブルーレイにダビングして、
保存しておこうかなと思っています。
この後ですね、転校生は何回か再放送されますし、
CSの日本映画専門チャンネルの方でも放映される予定になっておりますので、
視聴環境をお持ちの方は、この機会にぜひご覧になってみてください。
そういうわけで今回は大林信彦監督の転校生、こちらについてお話してみました。
それではまた。