これ木って一言で言っても、この寄木細工の木っていろんな木があるじゃないですか。
そうですね。
今、この見えている写真の中でも、1、2、3、4、5、5種20種類ぐらいの木があるのかな。
それぐらいあるかもしれないですね。
塊であるとすると、何種類だろう。
色がそれぞれ違うし、木と対話すると言っても、木の子供たちって言っちゃいけない。
木の子たちが、木の子じゃなくて、木の子供たちがいっぱいいるみたいな状態だから、みんな個性が違って、色も違って、それがギュッてなっているものがあるから、
これ、どうやって対話していくんだろうって思っちゃいました。
まずは、僕が思った寄木の美しさっていうのは、
実は、つゆきさんが残したこの出っ張りと、何て言ったらいいのかな、相反してて、
違う種類の木が出会った木と木が隣り合っているところに美しさを感じるんですね。
ちょっと画面を切り替えますけれど、
これは、出っ張っているところを僕が削っていった状態なんですけど、
ここを見ると、この白い木とこっちの茶色い木が出会っている線って言うんですかね。
見えます?ここ。
接着面みたいな線ですね。
見えます?ギュッてくっついている。
接着面のところが、ここが寄木の木を寄せたときに、
急に違う種類の木が、突然切り替わる場面なわけですよね。
ここのラインが、僕は美しいなって思うんで、
元のこの状態だと、このラインが隣り合って出てこないんですよ。
直角になっちゃうんですよ、必ず。
そうそうそう。
あー、そうか。角、角っていう風に。
あー、そっかそっかそっか。
四角い木と四角い木がくっついてるっていうことですもんね。
だから、繋がって見えないのか、一本の面に。
そうです。
面としてはなくて、必ずコーナーになっちゃうんですね。出会うところが。
うん。直角になってますもんね。
だから、僕が思う寄木の美しさと、ちょっと矛盾しちゃってる部分があるなって感じたので、
この出っ張りを残しつつ、寄木の木同士の出会いを見せたくて、
さっきみたいに、こうやって工具使って削って、
出っ張りはあるんだけど、出っ張りの根元を削り落としちゃって、出会った部分のラインを出したっていうことなんです。
うんうん。
出っ張ってる部分の根元をちょっとなだらかにすることで、木と木が出会ってる接着面が線として出てくるように削っていったところが、
僕にとってのこの彫刻のスタート地点になるってことなんですよ。
うん。スタート地点としてこの接着面が見える削り方っていうのを繋げるように、
デコポコしながら繋がっているように、このスタート地点を削った後で、どんなことを思うんですか?
それからどうしていこうっていうふうには。
はてどうしていこうっていうふうに、ここでまた対話をするわけですよね。
うんうんうん。
それで、僕にとっては、この今デコポコを削って、デコポコしながら寄せ木のつなぎ目のラインが出ている状態を見て、
なんだろう、ちょっとチョコレートが溶けているような、キューブがとろけているような表情に見えたんですね。
なんだろう、チーズフォンデュとか、チョコフォンデュじゃないんだけど、キューブ状のものに、なんかとろっとしたものが垂れてきて、かぶさって、
なんかこう、ちょっとこう、つるっとしながら、キューブがまだちょっと背後に感じられるみたいな状態。
あー、ちょっと溶け出している感じの、このなだらかな感じ。はいはい。
へー。
さっきのは、もうカクカクしてて、いかにも、なんていうのかな、こう、硬直して、緊張して座ってますみたいな、それぞれが、
そういう表情だったのが、ちょっとこう、とろけて、なんか熱が加えられて、
かくばったものが、少し柔らいで、つながり合っていくようなところが出てきたんで。
こういう表情が、面白いなって思ったんですよね。
うん。
ただ、これは今、一番端部、端っこのお話だけをしてるんですけれど、
元のを見ると、急に側面が、ここの横の部分ですね。
めちゃめちゃ平らなところが、まあ、もちろん、これは座るために作った面なんで、
めっちゃこう、ストーンとしちゃって、こう、絶壁になっちゃってるんで。
うーん。
急にね、その、とろけた、こう、チョコレートのような表情が、横になった時に、絶壁になっちゃうと、
なんとなく、こう、不自然な感じがするんで、こういう表情を、側面に投影して、
うん。
ちょっと、こう、チョコが溶けたような表情が、今度、横側にも出てくるように、
こう、何だろう、立体を的に、こう、彫り込んでってるんですよ。
うーん。
なんか、見た目の印象だと、例えば彫刻だと、一本の木から彫り出していくっていうイメージがあるんですけど、
その、彫り出していってるように見えます?横も。
ああ、そうですね。
彫り出していってるんです。
で、その、彫り出してる時に気をつけてるのが、例えば、こういう茶色い木と白い木が出会ってる、このラインですよね。
うーん。
このラインが、彫り込んでいくことで、こういう風に曲線を描いたりするんですよ。こうやって、こうやって、こうやって。
うーん。
このラインが、なんか、こう、ただ直線でね、ストーンっていくんじゃなくて、ここみたいに。
うーん。
あの、彫り込むことで、こう、豊かに奥に入ってたり、外に出てきたり、みたいなことが、こうやって起こるんですね。こうやって、こうやって、こうやって、こうやって。
うーん。
表情がね、全然違いますよね。ストーンっていうのと。
うん。
まあ、こういうところで、こう、ちょっと丸みを帯びて出てきたりとか、ここはこうやって奥に入っていっちゃったりとか。
だから、あの、寄せ木と寄せ木が出会う、その木の色と木目がこう、切り替わる面が、ただの直線だけじゃなくて、奥に入ってて出てきたりみたいな入り組み方をするような形で、えっと、彫り込んでいるんですね。
うーん。
それが、なんだろう、こう、木が合わさってるっていうことの、僕の素材に対する経緯っていうか、なんです。
これ、一本の木だとできない表現ですもんね。
一本の木だと、こういうラインって、あの、入り組んだりしないんで、こういう発想にはならないですね。そもそも、一本の木切ってたら。
うーん。
この、いろんな色の種類がある木だから、ここの、それに、色によってこのカーブとかも決まっていくのかな。
そうですね。一本の木だと、多分こういう細かい、なんていうのかな、パーツみたいなものは、僕は作らないかな。
寄せ木で寄ってるから、まあこういう細かいのを、なんかちょこちょこ作ってる感じですね。
この色も、つゆきさんが組み合わせた色だから、この並びで並んでいて、その時の、つゆきさんが作っている状態が、この並び方になったっていうことも、
そうですね、はい。
偶然性というか、意図的であったとしても、この作品にとっては、すごい面白い偶然性になってるっていうことなんですかね。
はい。そういう並びであるからこそ、こういうちょっと細かい形が、こういうバランスで出てくるってことなんですよね。
これで横が少しまた進んでくると、次どの辺どうしようかなって思うんですか。
で、今ちょっと考えているのが、今これちょっと遠景でね、見ている状態なんですけど、
今の状態で掘り続ければ、下まで、なんか同じようにずっとやれちゃうんですけれど、
なんかちょっと僕は、単純作業ってことに対しては、ちょっと抵抗感があって、ある程度掘ったら、ちょっと距離を置いて、真奥って言ったらいいのかな、少しこう離れてみる?
なんだろうね、このまま続けてやれば、この調子で掘れるのに、それは僕にとって、言い方がいいのかわかんないけど、自分にとって怠慢に感じてしまうんですよ。
なんだろう。
作業みたいな感じになっちゃうところとかする?
そうですね。やれる作業をただやっていくっていうことは、発想するっていうことをやめちゃうことでもあるんで、
このままやればできるんだけど、なんか別の考え方はないのかなっていうことを立ち止まって、そのまま続けないで、新しい発想を常に取り入れるような形でやっていきたいんですよね。
それって、ある時パッと止まるのかな。どこで止めるって考えてないじゃないですか。
そうですね。
この辺で、ちょっとなんか作業に変わってきちゃったかも、みたいなのがあるんですか?
あります、あります。
それ立ち止まるサインなんですかね。
それサインなんですけど、だいたいそれ見逃しちゃうんですよね。
へー。
人って、人って多分そうだと思うんですよ。
楽な方に流れちゃうから、このままやってれば、ある程度作業って快感なんですよ。
やってれば削れていくし、形はどんどんできていくから、そういう快感はあるんだけど、それでいいのかって話なんですよね。
なんかストップした時に、ちょっと行き過ぎちゃったなとかが、見逃したなっていうのがあったとしても、やっぱり気づいてストップするわけじゃないですか。
その時に離れてみたり、少しさっき言ってた間を置いてみたりってすると、なんかまた違う見方っていうのがあるんですか?
はい、はい、はい。出てきますね。
へー。
例えばこの作品だと、どの辺りが、なんかこれっていう、サインの後の何か対話っていうか。
例えば、今見てる写真の上の部分、この辺。
反対側からも同じ進め方で、
彫っていけるんですよ。それで出会ったところをどうしようかなっていう形に進めていけるんですね。
でも、それをまず最初にとどまったんですよ。
なんでかわかんないんだけど、直感的に、なんか作業になっちゃうなっていうのは警戒したんですよね。
だから、こっちは残しとこうって思ったんですよ。今見えてる下の方はね。
同じように、ゴツゴツしないようには、滑らかにはチョコが溶けた、チョコのキューブが溶けたような状態にはしてあるんだけど、
側面までは全然手をつけない。で、残しといったんですよ。
それはなんだろう、もう本当ね、ピンとくるって言ったらいいのか、直感って言ったらいいのか、警戒、アラートが鳴ったって言ったらいいのかはわかんないですけど、
こっちから同じことやってたらダメだなって思ったんですよね。
その時点では、こうやって今写真に写ってるように浮かすっていうか、足をつけてこう、ちょっと浮いてるみたいになる状態っていうのはなってたんですか。これはその後ですか。
その後ですね。だからその時点では、そこまでは想像できてなかったんだけど、
僕は彫刻っていうのは、なんだろう、
やっぱり重力ってすごく大事な要素で、例えば人間とか木とかって立ってるじゃないですか、人間も休むと横たわるじゃないですか。
重力にやっぱり従わないと、なんだかのバランスを取ったり筋力を使ったりして、
要は活動してるから疲れていくわけですよね。疲れ切ったら布団履いて横になって、重力に従っておやすみなさいっていうことだと思うんですけど、
やっぱり彫刻に僕が求めているのは、活動している姿っていうのが、なんだろう、存在感があるかなっていうのがあるんで、
横たわる彫刻も作ることはあるんだけど、でもなるべく立っててほしいっていう気持ちがちょっとあるんですよね。
だからさっきのそのベンチ。
次回は製作過程第1弾の最後の回です。最後はこうありたいという創作に対する思いが出てきました。