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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回の素朴な疑問は、feet-feed-length-elder の共通点は何か、というものですね。
この今挙げた4つの単語なんですが、これ自体はですね、比較的よく知られている単語ということになりますね。
足、footの複数形です。
これ、餌をやる、食料を与えるということですね。
これはlongの名詞形で、thをつけて、中小名詞をつくる、というあれですね。
length、長さということです。
それからelderというのは、oldの比較句の一つと言うべきですかね。
olderという、そのままerをつけるものもあるんですけれども、
とりわけmy elder brotherとかいう場合ですね、兄弟の上下関係を表す場合にはolderとも言うんですが、
特にイギリスなんかでは、my elder brother sister、みたいな言い方がありますね。
oldに対してelderとなっているということです。
さあ、このようにfeet、feed、length、elderにはですね、
つづり字で言うところのeの文字が出る、あるいはeeとダブらせて出るということが共通点ということなんですが、
なぜこうした、一見すると全く関係のない、意味的にはバラバラの単語なんですけれども、
これに似たような現象が関わってきているということなんですね。
これは歴史的に見ないとですね、この共通点というのはわからないと思うんですけれども、
一つはですね、何か元になっている単語から、実は派生して出てきている、というのが4つとも共通点なんですね。
feetに関してはfootですよね、という単数形があって、それに対する複数形ということでfeetであると。
そしてfeedについてなんですが、これは先ほどは述べなかったんですが、わかるでしょうか。
何から派生してきたかということですね。
これ、餌をあげる、食料を与える、食べ物をやるということですから、想像つくかと思うんですが、
これ実はfoodなんですね。
food、f-o-o-d、これの動詞形に過ぎないんです。
いわば名詞foodから派生してできた動詞ということなんですね。
こういうふうに見たことがなかったかもしれませんが、元の単語の形があって、そこから派生したという意味では、
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そのfootとfeedの関係と似ている、food、feedということですね。
名詞とか動詞とか、だいぶ違う役割にはなっていますが、実は似たような方法でこのように語形を派生させているということなんですね。
lengthについては、もちろんこれlongなんですが、名詞形になるとどういうわけか、thがつくばかりではなく、oがeに変わってしまう、lengthですね。
同じように形容詞ですがoldに対して比較句をつくる場合、erをつければいいだけではなくて、oがeに変わる。
というふうに、全体として元々の形はoがあった、あるいはスペリング上はooとなっていますが、
とにかくoのものが、どうも全体的にこの4つの単語ではaに変わっているぞということになります。
これは何でかということなんですね。
ここからは少し音声学の基礎みたいな話なんですけれども、このoとeという2つの母音ですね。
日本語にもあります。o、eというのは、ある一点において似ています。
響きも発音の仕方もだいぶ違う、だからこそ違う音として、違う文字としても記されるということになっているわけですが、
これは日本語でも英語でもそうなんですが、1つ共通点としては、oとeというのは下の高さという言い方をするんですが、
これが同じなんです。下の高さは同じでありながら、何で違うかというと、他に違う点はというと、
oは口の奥の方でこもった音になるんですね。それに対して、eは口の前の方で発音しているということです。
上下の位置はだいたい一緒なんだけれども、後ろの方か前の方かという前後の違いによって、oかeかが決まっているということなんですね。
その意味では、水平移動というんですかね。o、後ろにあったものをそのまま水平移動して前にやると、aになると。
o、e、o、e、o、eというふうに連続して発音してみるとわかる通り、後ろ、前、後ろ、前というふうに下の位置が前後している。
ただし上下には動いていない。o、e、o、e、o、eという意味では、違いと似ている点というのが今整理してみたわけなんですけれども、
何でこれが後ろに行ったり前に行ったりするのかと言いますと、まず元々後ろにあった語形の元の形は後ろのoだったと。
ところが何かのきっかけで、これが下が前の方に動くとaになっちゃうわけですよ。
その何かのきっかけというのは何なのかというと、実は今日の話題となっているこの4語では、
今となってはもう消えてしまっている、見えなくなっているものもあるわけなんですが、実は語尾にiの音が含まれていたんです。
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語尾としてiの音が含まれていた。このiというのは実は非常に前寄りの単語で、下の位置がaに近いということなんです。
そうすると本来後ろにあったi、今は隠れちゃっていることが多いんですが、元々あったiの引き付け力によって、その前の部分、単語の前半部分に来るoが、
その後ろに来るiの音に引き付けられる形でグッと前寄りになるんですね。その結果がaだということです。
つまり次の音節にiが来るよと、前寄りの音が来るよということを見越して、その前の単語の前半の部分の本来oだった音が、最初から歩み寄ってですね、
完全にiにはならないんですが、iにそれなりに近い音ということで、aになってしまうということなんです。
例えばフットで言いますと、これ今でこそフットなんて発音ですが、スペリングを見れば分かる通り、これf-o-o-tですからフォートだったんですね。
フォート、語彙語の時代にはフォート。
この後ろに実は複数形を作る語尾が、isっていうのが付いたんです。
i、zとでも表記したくなるようなisが来たんですね。
そうするとフォーティズになるわけですよ。
この語尾のiの音に影響されて、前のoの部分が下が前寄りになってaになります。
つまりフォーティズが本来だったのが、フェーティズになるわけですね。
フェーツ、つまりf-e-e-tと書きたくなるような発音に今やなりました。
そして本来的にはですね、複数形を作るのはあくまでisの部分だったんですが、これが消えてしまうんですね。
なので残ったのはフォートに対して複数形はフェートだという見え方になります。
ここでooは単数形、そしてeeっていうのは複数形なんだという捉え方になったわけですね。
本当は後ろにisがあるからそれに誘われてoがaになっただけで、別にこのa自体が何か複数形という意味ではなかった。
あくまでisの部分でしっかりと複数形だよということを示したのに、それがなくなってしまったばかりにですね、今やooとeeという単複の対立になってしまったということなんです。
同じようにですね、foodもf-o-o-dですからfordという名詞だったわけですね。
これに実はですね、英語ではianという語尾を付けると動詞化したんです、名詞が。
なのでfodeanになったんですね。
ポイントは例のeの音が含まれていたことです。
これによってfodeanは前寄りになってfadeanになります。
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そして先ほどのfeetと一緒で、結局この語尾ですね、iを含んだ、eの音を含んだ語尾が結局消えてしまったので、
fordに対してfadeみたいな名詞動詞の関係になった。
今のfood、feedということです。
同じようにlong、oldというのもoが含まれていますね。
これlongに抽象名詞を付けるthなんですが、もともとはithだったんです、iがあったんです。
なので引き付けられてlength。
old、elderの場合はerがありますが、このerのeがですね、実は今でこそeですが、iで表せるeの音だったんです。
ということでoldに対してelderとなっているという具合なんですね。
このようにi音の引き付けというのが犯人でした。
それではまた。