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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、though と although の用法差と語源、という話題です。
though と although というのは、接続詞として何々だけれどもという意味を表しますね。
情報の説を導く接続詞というわけなんですが、この though と although ですね。
最初に al の部分があるかないかということなんですが、ほとんど同じ使い方をすると言ってもいいと思うんですね。
例えば、
という時に、though の節で始めていますが、これを although に変えることは全く可能ですね。
という具合ですね。ほとんど同じ意味になるっていうことなんですが、何から何まで同じっていうわけではないんですね。
これは英語に限らず、言語の一般的、普遍的な心理なんですが、全く同じ語が2つあっても、これは不経済ですので、全く同じ同義語っていうのは大抵存在しないですね。
かなり近いとしても、微妙な使い分け、様々な意味での使い分けっていうのがあるのが普通です。
実際、though と although も、微妙にいろいろと違うところは、実はあったりするっていうことなんですね。
例えばどういうことかと言いますと、使われるジャンルと言いますかね、専門的にはレジスターと言ったりしますけれども、
どういう文章、会話にしても、あるいは書き言葉であればテキスト、どういうタイプのものにどちらが使われやすいかっていうのは、割と決まっているっていうことが多いんですね。
では、この though と although の場合、どういう差がジャンルという観点からあるかと言いますと、
一般的に言って、although のほうがthough よりもちょっと硬い、フォーマルだっていうことですね。
実際にジャンル別にコーパスで調べてみますと、これは印象論ではなくて、きちんと統計的に有意差が出るっていうことですね。
although のほうが硬めの文章に出るというようなことが、はっきりと数字上出るんですね。
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一つの調査によりますと、科学の文章ですね、アカデミックな文章では although のほうがぐんと使われやすくなる。
それ以外の一般的な文章と言いますかね、それでは though が多くなるというようなことです。
また話す言葉っていうのは一般的にですね、硬いか柔らかいかといったら柔らかいほうですので、やはり though のほうがずっと多く現れるといったふうに、
いわゆる意味の違いというよりは、使われる状況、環境、これをレジスターと呼んでるんですが、それによって分布が違う、頻度が違うというようなことはまず言えると思うんですね。
一般的に言えば、though のほうがずっと普通であると。
そして although っていうのはややカタバクルしくて、そして文章にふさわしいというような意識で覚えているといいかと思うんですね。
ただ他にもですね、語法上と言いますか、このジャンルが違うからというだけではなくて、純粋にthough と although で使い方、語法が違うというような点もいくつかあります。
例えばですね、though っていうのは、会話、交互体で使われるときに、接続詞ではなくて、副詞として、何々だけどっていうふうな、ちょっとした情報の意味を表すときに副詞的に使うというのがありますね。
例えば、It's expensive, though. でも高いよって言ったときの、文末に添えるようなthough ですね。
これ非常に交互的で、これを although に変えることはできません。
It's expensive, though としか言えませんね。
他にはですね、フレーズとして、as though とか even though という言い方がありますね。
as though っていうのは、as if と同じ意味で、
even though っていうのは、何々だけれどもという意味なんですが、この though をですね、as although とか、あるいは even as though のように言い換えることはできません。
これは一種のフレーズと言いますかね、決まり文句ですので、as though は as though しかあり得ない。
even though も even though でしかあり得ず、although っていうのはここに入ってくることはできないということですね。
もう一つ、統合的な特徴としては、young though he is, 彼は若いとはいえ、おにゃららっていうような、though he is young でいいんですが、
これ、young を前に持ってくるっていう語順の、こうした統合表現がありますね。
このような時にも、although he is young とは言えるわけなんですが、
young を前に出して、young although he is という言い方は、普通は持ちにいないっていうことですね。
though にはできて、although にはできないっていうことが、いくつかあるっていうことですね。
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他にもっと全般的なこととしては、この though、although で始まる節は、主節に対して前に来ても後ろに来ても良い理屈ではありますが、
although の方は前に来ることが多いであるとか、主節の前ですね。
つまり、although で始まる文、although 〇〇 で、主節 〇〇 っていうような形が、though に比べると多いっていうこともありますね。
このように、どうもこのジャンル、レジスターであるとか、ちょこちょこっとした使い方において、
though の方が一般的で、常にthough で使えるところにalthough を代わりに使うっていうことはできない、というようなことが明らかになります。
別の言い方をすれば、although の方がやや特殊な使い方だったり、レジスターが限られるっていうようなことになりますね。
さあ、これはなぜなのかを考えたいと思うんですが、ここで歴史、英語史の登場です。
まず、語形性的にalthough って何かというと、though に all という副詞ですね。
これ強調の副詞で、いわゆる ALL で書くあの all です。
副詞として強調を示す all なんですね。
これが前に置かれたということなんです。
つまり、though の強めにすぎないんですね。
そうすると、もちろんデフォルトがまず though であって、それを強める目的で although ができたという順番です。
実際に歴史的に現れる順番もこの順で、though がまず小英語に現れて普通に使われています。
そして although っていうのが、all で強調した形で現れるのが中英語になってからなんですね。
あくまで派生的に出てきたっていうことがよくわかります。
ですので、普通に考えれば、though が一般的な意味を持っていて、
その後に出てきた強調の although が少し強調ですから、ある意味限られた意味で用いられるっていうのも全く不思議ではないということになるかと思うんですね。
最初は副詞 all に though がついた形ですから、ちゃんと分かち書きされてたんですね。
一語で書かれてない all があって、その後に though っていうことですね。
ところが、もともとは強調という意味なんですが、これ自体でこの二つですね。
although という形が一つの塊だと、though の一つの言い換えだという発想が強くなって、分かち書きもされなくなって、一語で綴られるということになった。
結果として、ことさらに強調という雰囲気も失われて、今に至るということなんですね。
ただ、やはり派生的、そして起源としては強調として出来上がった、ある意味二次的に出来上がったものですので、
使われる範囲であるとか、ジャンルであるとか、用法が大元のthough という一般的なものに比べれば限られるというのは、自然の利であるというふうに考えられると思うんですね。
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このように all が、副詞として強めの意味で、ある単語に前置される、前に置かれるということで別の単語を作るということがあります。
もともとは all たすその単語という二語だったんですが、よく使われるので一語にドッキングしてしまうということがあるんですね。
例えば、実は all so なんかがそうですね。これ so を強めただけなんです。
何々もという意味の all so ですが、all so なんですね。
それから together に対して all together というのは分かるかと思いますし、
そして意外なことに、one に対して all one これ alone です。一人のということですね。ではまた。