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この番組では、私が行っている怪談売買所で買い取った、世にも奇妙な体験をされた方のお話をお届けします。
今週は、フィクションの怖いお話をお聞きいただく特別編です。
お送りするのは、ポッドキャストの番組【意味こわ】【意味が分かると怖い話】から【トンネル】です。
もちろん、お話の後には、私が解説をさせていただきますので、そちらもどうぞお楽しみください。
ついに来ちゃったね。幽霊トンネル。
えー、せっかくここまで来たのに、引き返すなんてありえないよ。
とにかく、入ってみようか。
そうだね。今なら車も来なそうだし、チャンスだね。
うわー、思ったより雰囲気ある。
別に怖くはないけど、不気味といえば不気味なトンネルよね。
ちょっと!いきなり肩触らないでよ!
触ってないよ!
私も触ってない!
止まって!なんか、後ろから足音聞こえてこない?
ねえ、もう!
ほら、やっぱり聞こえるよ!
はぁ、やっと抜けれた。
もう、怖すぎ!手繋いでくれて本当によかった。
あなたはこの意味がわかりましたでしょうか。
本来、いみこわではここで終わり、解説はありません。
100円で買い取った怪談話では、いつものように私が解説させていただきます。
創作された物語といえども、実話の範疇を超えてしまっては、リアリティを担保することができません。
リアリティ、つまり現実味がないということは、その話をバカバカしいものにしてしまい、
特に聞く者に怖さを感じさせることを目的とした物語の場合、
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怖いどころか失笑を買ってしまうことにもなりかねません。
つまり、このような話の場合、現実味がないということは致命的な欠陥と言っても過言ではないのです。
今回の話は、そういう意味ではよくできていると思います。
3人の女の子が心霊スポットと噂されるトンネルに肝試しにやってきます。
3人はおっかなびっくり中に入り、不気味な気配に圧倒されながらも、
なんとか無事に出口から出ることができます。
そこでほっとした3人が言います。
続いて、3人同時に同じことを言うのです。
真ん中でよかったと。
ここで描かれている階は、トンネルの階としては差もありなんといったところでしょうか。
大げさすぎず、ちょうど良い加減のものだと言えるでしょう。
この大げさすぎない、ちょうど良い加減というのが、現実味につながります。
この話の場合、3人が同時に発した、真ん中でよかったというこの最後のセリフが、
そこで起きた最大の怪異を想定したものになっているのですが、
その怪異は実話に即したものであり、実にちょうど良いのです。
それでは、その怪異について説明しましょう。
3人並んで歩いているので、真ん中に位置する人は1人しかいません。
真ん中の人は、左右にいる友達と手をつないでいますが、
左右の人は片方の手が開いているはず。
ところが、3人とも自分が真ん中だったという認識を持っている。
ということは、左右の人も両手を握られていたということになり、
だったら開いている方の手を握っていたのは誰なのか。
3人を挟んで、さらにその右側と左側に、何者かが1人ずついたのではないか。
そんな想像につながります。
もっと言うと、実はこの3人、お互いには手をつないでいなかったのかもしれません。
1人1人の両手をトンネルの中に潜む何者かが握っていたということも考えられます。
そう考えると、もっと怖いですね。
誰かに手を握っていてもらえると、不思議と安心感が湧いてきます。
感触だけではなく、手のぬくもりが伝わってくることで、
自分は1人ではない、その人に守られているというふうに感じられるからなのかもしれません。
怪異な体験を引き集めていると、あやかしに手を握られたという話を聞くことがあります。
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手を握られるという事象については、当番組の第9話、見えない訪問者で解説していますので、
興味のある方はそちらもあわせてお聞きください。
さて、このお話の肝は、3人が3人とも自分が真ん中だったと思っていた点にあります。
そこに的を絞って考えると、また別の怪異の可能性も立ち上ってきます。
実際に、3人はそれぞれ真ん中に立って歩いていたという可能性です。
第5話、心霊スポット取材の回でも解説しましたが、
複数の人が同じ時、同じ場所にいて、同じ体験をしているにもかかわらず、
後で記憶を照らし合わせてみると、細かい部分で疎後が見つかるといったことがあります。
とても不可解な出来事であり、これも劣気とした怪談です。
実際に私が取材した話の中にも、このようなものがあります。
ある3人の男性が歴史的建築物の中を歩いていた時に、
さまざまな奇妙な出来事があり、後日そこで起きたことを語り合ってみると、
細かい点でさまざまな食い違いがあったというのです。
1人は、とある部屋の前を通りかかった際に、
中に布団が敷いてあって誰かが寝ていたのが見えたと言いますが、
別の1人は、そこには誰も寝ていなかったと言います。
もう1人は布団すら敷かれておらず、赤いランブが灯っていたと証言します。
また、途中にあった階段を上る際、幅が狭かったため、
一列になって上がっていったのですが、3人全員が自分が先頭に立ったと言い張るのです。
このような記憶の食い違いがほんの十数分の間にいくつもあるため、
単なる見間違いや記憶違いではないと思われるのです。
こういった話はたまにあり、幽霊の出ない階段として扱われます。
今回お送りした話の中で、トンネルに入った女の子も、
全員が3人の記憶の中では実際に真ん中を歩いていたのかもしれません。
そのため、各々の両手を握ってくれていたのは、残りの2人ということになります。
このような体験談を目の当たりにすると、私たちの世界認識はあまりに頼りないものとなります。
現実とは何なのか。
私たちが生きているこの世界は、確固とした揺るぎないものではなく、
不定形で常に流動的に移り変わっていく、傍用としたものなのかもしれない。
そう思えてくるような解釈です。
トンネル内にすくう何者かに手を握られたと見るか。
個々人によって現実が変動したと見るか。
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それとも、もっと違う何かが起きていたと考えるのか。
あなたはどう解釈しましたか。
今回の意味子は、意味がわかると怖い話をもっと聞きたいという方は、
番組概要欄一番上のリンクから聞くことができます。
気になった方はアクセスしてみてください。
来週は15分を超える長編会談、除霊式をお送りします。
それではまた来週、水曜日の18時にお会いしましょう。