1. 100円で買い取った怪談話
  2. #52 劇団員の最後
2022-01-12 12:54

#52 劇団員の最後

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今から35年くらい前のことになるんですけれども、私はある劇団に所属していました。
幹部劇団員の、その方、仮にAさんということにさせていただきますが、
ちょっと病気になられて、入院されたんですね。
結果、精子に関わる病気で、復帰は無理ではないかということになって、
その方の代わりに、私がその事務所で働くことになったんですね。
それからしばらくして、Aさんは奇跡的に回復して、戻って来られて、一緒に働くことになりました。
ある日、Aさんが朝、出勤して来られなくて、昼になっても来られなかったので、
病院にでも行っているのかね、というふうに話をしていたんですけど、ついにその日は来られなかったんです。
念のために、Aさんの近くの住んでいる友人に訳を話して、Aさんのお家を見に行ってもらうことにしたんですね。
それで私は帰ることにして、その日は帰りました。
電車を降りたところは、もう真っ暗になっていて、電車を降りてから家に帰るまでは線路沿いをずっと歩いて行って、
左側に踏切があって、右側にお地蔵さんがたくさんあるところがあるんですけど、
そこに差し掛かったときに、後ろから男の人の声で、「死んだと思っているでしょう。死ねばいいと思っているでしょう。」って聞こえたんです。
それで、はっと後ろを振り向いてみたんですけど、誰もいませんでした。
それで怖くなって、うわーって猛ダッシュで家まで走って帰って、その間に頭の中でぐるぐるといろんなことを考えながら、
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この声はAさんだって思って、急いでAさんに電話しました。
そしたら、電話に出られたので、よかったって心配してたんですよって言ったら、
私、浦安警察のものですけど、このお家の方、亡くなりましたよって言われたんですね。
それで、あーっと腰が抜けるような感じになって、警察の方からは、
どういう関係かとか、最後に会ったのはいつかって聞かれて、いろいろお話をしたんですけど、
やっとの思いで、あそこに誰々がいるから変わってほしいってお願いして変わってもらったんです。
で、そのお家を見に行ってもらったお友達に電話を変わってもらって、
事情を聞いたら、チャイムを鳴らしても出てこないし、鍵は閉まってるし、お家は真っ暗だし、
そのアパートの周りをぐるっと回ったら、お風呂場だけが電気がついていて、窓が開いていたので、
そこから覗いたら、Aさんが浴槽に浸かって亡くなってたっていうことだったんですね。
具合が悪くなって、運悪く浴槽の中に倒れてしまったのか、それか自殺だったのかっていうことは明らかではないんですけど、そういうことがありました。
今回のお話は、Sさんという女性が体験されたものです。
彼女が体験した回は、いわゆる虫の知らせの類だと言えるでしょう。
突然遠く離れたところにいる親族や親しい友人の声が聞こえたり、些細ではあるがその人を想起させる明らかな出来事が起きる。
あるいはその人自身の姿を見る場合もあります。
そして多くの場合、その直後にその人の死を知らせる連絡が入るというのが定番になっている。
そんな現象です。
人は死に際して、最後に心に浮かんだ人の元へとその意識だけを送ることができるのかもしれません。
ただし、この一般的に虫の知らせという言葉で知られる体験は、体験した人と亡くなる人との関係は良好であるか、少なくとも悪くはない間柄であることがほとんどです。
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その結果、虫の知らせ体験のほとんどは、亡くなる人が生前世話になった人に対して、「もう行きます。今までありがとう。」という意味を込めて、その死を知らせるという印象を与えます。
虫の知らせ体験で語られる個人は、いずれも安らかな死であることが多く、また、事故による突然の死であったとしても、そこから誰かを恨むような負の感情は読み取れないことの方が多いようです。
ところが、Sさんの体験の場合、彼女が聞いたAさんのその言葉には明確な悪意がありました。
自分を卑下し、Sさんが自分の存在をおとましく思っているという思い込みのもとに、案に彼女を責め立てるかのような、そんな物言いでした。
まるで捨てゼルフです。
貶められ、そのせいで不本意ながらその場を去らなくてはならなくなった自分に対する憐れみの強要と、相手に対する憎しみの念を感じずにはいられません。
もちろん、Sさんに彼を凶として職場での立ち位置を奪おうといった野心はありませんでした。
それどころか、入院のため出てこられないAさんに代わって、慣れない事務仕事に打ち込み、職場を守っていたのです。
職場復帰してから、AさんはしばらくSさんと一緒に働いていました。
それを通してAさんにもそのことがよくわかったはずです。
誰も悪い人はいない。Aさんにもそれはよくわかっていたことでしょう。
しかし病気が彼の人生を狂わせ、彼自身をも変えてしまったようです。
人生のすべてを費やしてきた演劇と、その活動の場である劇団の運営に取り組めなくなったことは、すなわち生き甲斐を奪われたも同然です。
その先にあるのは失意と絶望であり、それらは人を変えるのです。
そうしてその結果、彼の怒りと鬱憤の矛先は、その当時最も身近で立場的にも弱く、何よりも彼の後釜に収まっていたSさんに向けられたのでしょう。
こんなはずではなかった。こうはなりたくはなかった。しかし誰も悪くはない。では、どこにこの不満をぶつければよいのか。
自分が弱っている隙を突いて居場所を奪っていったSさんしかいない。そんな思考の流れが、彼の心の深いところであったのかもしれません。
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Sさんにしてみれば、とんだとばっちりなのですが、だからといってAさんを責めることはできません。極限の状況においては、人は本性をさらけ出します。
ましてやそれが、不本意な死を前にした時であれば、自暴自棄にもなるでしょう。しかし、Aさんはそれでも、Sさんに当たるのは筋違いだということはじゅうじゅうわかっていました。
生前彼女に直接苦言を呈するようなことがなかったことからも、そう判断することができます。
しかし死に際にAさんの自我は、Sさんに対してあのような心ない言葉を投げかけてしまいました。それはもちろん、意図的にやったことではないと思われます。
彼自身、そんなことを彼女に言ったことに気がついていたのかどうかもわかりません。
彼の心が、最後にそれまで抱いていた誤った認識を、ほんの少し爆発させてしまっただけです。
人の心というのは、得てして厄介なものなのです。
一方、Sさんの方はどう感じたのかというと、その時は本当に恐ろしい思いをしたようですが、その後、特にAさんに対して悪い印象を持ってはいないようでした。
彼女にも、Aさんが普通の精神状態ではなかったことがよくわかっていたからです。
Aさんも含めて、この話に悪い人は一人も出てきません。
皆、なすべきことをしただけです。
結果は大変残念なものになってしまいましたが、誰かがどうにかできるものではなかったのです。
生と死、善意と悪意、執着と断念、希望と絶望、人の心が一方向に極端に偏った時、他人に対して怪異を引き起こすことがあるのかもしれない。
人の心の持つ見えない力の恐ろしさと、その可能性を垣間見せてくれる、そんな体験談でした。
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