10Xの競争戦略
こんにちは、ゼロトピックです。 今回は前回に続いて、競争戦略について話していこうと思います。
今回は、10Xの中で考えている競争戦略について、 可能な限り、ちょっと抽象化しながら話していこうかなと思っています。
ちょっとあまり具体的すぎると、生々しすぎるので、 そこは適度にぼやかしながらお話しようと思っています。
まず、10Xは自分たちのことを、どういう市場の競争に 晒されていると認識しているかというところから、
まずは自分たちのポジショニングから、少し整理をしていきます。
はじめに10Xが手掛けている現状の事業は、 ネットスーパーのための機関のプラットフォームのStaylerというものです。
これがプロダクトとプロフェッショナルサービス、 この2つの提供を通じて、
日本のネットスーパーの市場とか産業を立ち上げるぞと。
それを通じて小売業の変革を一緒に推進していくぞという、 そういった製品になっています。
ただ一方で、昨年より新規事業も開始していまして、
この新規事業というのは、このネットスーパーだけではなくて、
ある種同様に小売業のDXの広範なテーマを 取り扱っていこうというふうに考えています。
例えば、スーパーマーケットのこれまでとこれからという レポートを通じて公開したような採用の難しさとか、
労働生産性の低さとか、そういった問題を 根本的に解決していくためには、
より小売業の本質的な変革みたいなものが 必要だと思っていまして、
ここにはソフトウェア、プラットフォームの力は 大いに役立つんじゃないかなと思っていますので、
そういった事業を展開しようと考えています。
なので、この2つの要素を組み合わせると、
小売業の市場規模
DXが立脚している市場というのは、 小売業向けのソフトウェア市場というふうに
言えるんじゃないかなと思っていますし、
ひるがえって競争対象というのは、
この小売業向けにソフトウェアを提供している事業者というのが、
我々の競争相手、彼らとのシェア争いというのが、
1つ競争という括りで捉えられるんじゃないかなと思っています。
こうした時に、いわゆるタムですね、
我々がアクセスし得る最大の市場規模というのは、
どのぐらいなんだろうというのも簡単に試算します。
ざっくり言うと、小売業、スーパーマーケット中心とした食品小売と言いますかね、
これらの年間の市場規模というのが、 国内だけで15兆円ぐらいあると言われています。
すごい大きい数字ですよね。
もう1つ、一般的なスーパーマーケット小売事業者の、
年間のIT投資の予算規模というのも、 一般的な数値として出せます。
おおむね1%ほど売上高に対して投資がされていると言えます。
なので、1500億円ぐらい、これが毎年投資されているスーパーマーケットだったり、
小売業のソフトウェアへの投資、市場規模、タムと言えるんじゃないかと思っています。
もう1つですね、昨年我々小売業の方々、経営人だったり経営企画の方々へのヒアリングを
DXソリューションの今後
かなりの回数重ねまして、こういった予算がそもそも小売業の中ではどう形成されているのかということについても
研究を進めてきました。
ちょっとそれを簡単にご紹介させていただくと、
小売業の中で、いわゆるこういう新規投資みたいなものに類するものは、
IT以外にもいくつか要素があるんですよね。
ITと並ぶぐらい大きいものとしては、やっぱり進展の開発というのがあります。
それは土地を新しく買ったり建物を建てたりするっていう、あるいはすでに建っている建物を大きく改装するとか、
そういった店舗の開発投資っていうのがあります。
もう1つがこのシステムの開発投資、大きくこの2つが投資の大きな担い要素になっています。
大体この2つを合わせて、先ほどIT投資だけで最大1%ぐらいという規模感をお話ししたんですが、
この2つを合わせて1.5から2%ぐらいというのが小売業における新規投資の規模、目安になっています。
さらにこの2つってそれぞれキャペックスとオペックスというものに分けられるんですよね。
例えば固定資産への投資みたいな固定費的なものと運用費的なもの、その2つで分けられるということですね。
これを分割していって年間の予算みたいなものをアロケーションしていくっていうのが
大きく小売業の計画、経営人の投資の配分の考え方だというふうにざっくりと理解をしています。
例えば予算を組み上げる前ぐらいの段階で来年はこの物件が出てくる、この土地はぜひ入りたいみたいなものが出てきたりしますと、
あるいはマクロの影響を受けて次はこういうのに投資すべきだ、例えばコロナとかネットスーパー投資すべきだみたいなものだったり、
今年とかで言うと賃上げがすごく来るんで、精進化みたいなものに投資すべきだといったマクロの影響を受けた投資トレンドみたいなものも存在します。
その他に中継とかあるいは他社がどういう事例が起きたみたいな、そういうものから投資したいもの、要素っていうのが出てきて、
こういった要素を組み合わせたときに店舗の開発にはこのぐらい、システム開発にはこのぐらい、
その中でもシステム開発では新規のシステム開発投資にこのぐらい、一方で昨年まで投資してきたものの運用にこれぐらいといった形で分割されていく、
そういったイメージで予算が構成されているという風に、我々がサンプリングした企業の中では大体共通して言えるんじゃないかなと思っています。
これが買い手である小売側の状態だとすると、売り手側はどういう人たちがいるかという話があって、
大きく言うと小売業向けのソフトウェアの提供プレイヤーは大手のSIがほとんど過剰しているような状態になっています。
例えばPOSシステムと言われるようなレジと一体となった販売時点情報を扱うデータベースとシステムがあるんですけど、
それがやっぱり小売業には必須のものとしてほぼすべてのお店に複数入っています。
それ以外にも機関システムと言われるような帳簿を出すためのシステム、例えば発注書とか請求書とか、
会計だったり企業のオペレーションを行うための帳簿を扱うようなシステム、
こういったものが過去40年ぐらいですかね、最も投資されてきた領域なので、
POSとか機関を提供する側として担ってきたプレイヤーというのは非常にこの市場のシェアを大きく取っています。
具体名で言うと、NRIさんとかViprogyさんとか東芝テックさん、寺岡聖子さん、NECさん、富士通さん、
こういった結構多くの人がご存知のSIRの名前が出てくるかなと思っています。
例えば代表例としてNRIというのは年間で、これちょっと決算資料からの概算にはなるんですけど、
700億円ぐらいの規模の売り上げを創出していて、大半が7&iグループじゃないかなというふうに言われているんですが、
そのぐらいの規模感のシステム投資を受けているというか、担っていると。
700億って先ほどの1500億みたいなタブみたいなものの半分ぐらいなので、やっぱり非常に大きいですよね。
この現在におけるNRIの利益の減成というのは、前回お話しした利益のレベル構造の中で言うと、
レベル2の事業ドメインの利益に依存するものがすごい大きいかなと。
過去から小売業にはこういう事業が必要で、こういうシステムが必要で、
それをストレートになってきたNRIがシェアを広さも相まって受け取っている利益みたいな、そういう整理ですね。
じゃあSI以外にそういったプレイヤーはいないのかという観点で言うと、そんなことはなくて、
特定のソリューションを提供しているベンダーさんというのもいらっしゃいます。
例えば機関システムで中小企業向けに強い会社として、サイバーリンクさんとかテスクさん、
あるいはDXソリューションに強い会社として、シノプスさんとかRシフトさん、Rさん、
これらの中に我々10Xもあるかなと思っています。
この他、小売業というのは卸との付き合い、あるいは広告代理店や印刷会社との付き合いというのもすごく多いです。
卸との付き合いは仕入れ、広告代理店や印刷というのは基本的にはチラシの発行とか、
そういった商業があって、彼らがシステム投資の領域にも染み出しているケースがすごく多いんですよね。
DNPさんとかトッパンさん、デンツ、白王堂、卸だと日本アクセスさんとか国部さんとか三菱食品さんとか、
そういった企業が小売のシステムになっているということも結構多いです。
最後に楽天とかヤフーみたいな、いわゆるインターネットプラットフォーマーみたいな会社も一部ポイントシステムとかそういったものになっていたりして、
実際には売り手はこういった多様性の中で形成されていて、
我々はその一プレイヤーというような位置付けになっています。
今後小売業がどういうところに投資するかというのが市場のシェアを上げていく上ではすごく重要だと思っています。
我々のStellaというネットスーパーの事業はネットスーパー向けのプラットフォームという業界、領域にすごく細分化して区切ると、
非常に大きいシェアを現状持っている状態です。
ただ一方でこのDXとかシステム全体に見るとめちゃめちゃ小さいという状態なので、
我々が事業の規模、人員を拡大していくという意味でもこのシステム全体に広げていく必要はあるが、
既に既存のプレイヤーが強くて満足度が高いような領域というのはこれから参入してもすごく戦いが難しいし、
独自性を出したり競争戦略を発揮するということが難しい領域だなと思うんですよね。
レベル3とかレベル4の利益を出していくのが難しい領域なので今後何が新たに伸びる領域かというと、
それはやっぱりDXのソリューションになっていくんじゃないかなと思っています。
ただDXのソリューションって別に真新しいものってあまりないんですよね。
ものすごい真新しいものがあるというよりは既存のソリューションが高度化していくとか、
既存のソリューションがもっと横に広がっていくという形で増えていくんじゃないかなと思っています。
背景としては、そもそもスーパーマーケットって各社がチェーンストア理論を元に作られていることになっているので、
解決したい課題は似通っているんですよね。
当然地域性とかそういったものによる差分は大きくあったりするんですが、
それ以外の一般的なオペレーション上は解決したい課題は似通っていたりします。
あとは重要な課題については大手の企業はDXを自社のスクラッチで取り組んでいたりします。
ただこういったものが中小まであるいはローカルまで普及しているかというとそれはノーです。
最後にこのDXソリューションを導入するコストが下がっているかというと下がっていなかったり、
それをインプリできる人材が増えているかというと増えていない、むしろ不足している状態なので、
こういったことを考えていくと既存のソリューションが高度化するというのもそうなんですが、
大手が取り組んでいるようなテーマを中小規模あるいはローカルこういったところにも
インプリしていけるようにするというところが今後大きく広がる市場なんじゃないかなと思っていまして、
我々もこの辺りに目をつけて新しい事業を練り出そうとしてやっています。
もう少し先の話を語る前にネットスーパーのシステムみたいな
区切られた市場における我々の競争みたいなものを少し振り返ります。
大体3つにまとめられるかなと思っていまして、
10Xの競争戦略
1つ目は我々が参入した段階で競合プレイヤーと比較した明確な違い、
ユニークバリュープロポジションを生み出して、
それを強く市場の中で印象付けることにはすごく成功したなというふうに思っています。
その結果としてネットスーパー事業のアーリアダプターに対しては
競合となっている我々も資本も人員財も非常に大きいSIを押しのけて
コンペに勝って導入をしていただけたなというふうに思っています。
その違いって何だ、UVPは何だったかというと、
1つは短期的に損失を許容してでも良いものを提供するというビジネスモデルですと、
2つ目が顧客の事業成功と完全にアラインしたというところ、
最後が自前でプラットフォームを開発しているという、
この辺りが大きい違いの中身になっていると思っています。
特にこの根本的な部分はやっぱりステラの利用者とか市場の成功自体に
重きを置いた我々の企業が持っている価値観だったり、
あるいはスタートアップであるということによって短期的に損失を大きく許容できたということが、
ある種そういった戦い方を過去してこなかった大手のプレイヤーと比較したときに
模倣が嫌がられてレベル4の利益に繋がった可能性があるんじゃないかというふうに整理しています。
最後にステラ事業というのは、もともと長期かつ副利の性質がすごい強いんですよね。
今コンパウンドスタートアップと言われていますけど、
あのコンパウンドって副利という意味なので、
ある種はじめから副利の性質がすごく強かったなと思っています。
どういう意味かというと、
事業の要素としてネットスーパーを展開している店舗数とか、
それを利用している顧客数とかがあるんですけど、
この継続率が極めて高いんですよね。
なので積み上がっていくということと同時に、
ある顧客の成長みたいなものが店舗の成長みたいなものにも起因していたりして、
毎年X%ずつ伸びていくような副利性質を強く持っているということですね。
なのでこういった性質が強いってことは初めからもう分かっていたので、
短期的な利益のためにこの競争戦略を歪めるってことをしないってのがすごい大事だったかなと思っていますし、
現状もそういうつもりですね。
ある種長期での両者というか我々と小売事業者イコール市場の成長のために戦い抜くことをすごく重要だと思っていたので、
そこの部分がやり切れているってところは、
一つこのネットスーパー事業における競争戦略をうまく働かせる上では良かったのかなというふうに思っています。
顧客の事業成功へのアライン
一つ自分が理解しているSI、
事業者との我々みたいな事業者の大きい違いみたいなものをテーブルで整理していたりするんですけど、
いくつか致命的というかクリティカルな要素だけ挙げていくと、
一つはシンプルに企業の価値観がやっぱり大きく違っているなと思っています。
SIというのは基本的には要求重視のマーケットインの企業、事業スタイルなので、
お客さんの言うことはやるっていうのが彼らのスタイルだと思うんですよね。
我々は逆でプロダクトアウトというか、
顧客が喜ぶ姿にするためにはどうしたらいいかというのを自分たちで考えて、
かつ顧客の体験を重視しているという点で大きく違ったかなと思っていて、
これがビジネスモデルに思いっきり反映されるんですよね。
ビジネスモデルの差分は、SIベンダーさんは委託の契約が多いので、
要件定義をまず下敷きにして、
それの上に開発とか納品とか保守っていうのを乗せていくっていう、
人月課金と重量課金のモデル。
一方で我々はプラットフォーム自社で開発して、
それを使っていただく立場なので、
かつ事業成果に対して伴奏していくっていうユーザー員の視点を持っているので、
成果課金のモデルを取って、
より深いところでアラインをしようとしているっていうような形です。
このビジネスモデルが最終的に事業の上のリスクの差分につながっていて、
SIベンダーさんは顧客の事業リスク自体は負わないんですよね。
要はその事業がそのシステムを使ってうまくいくかどうかっていうのは、
SIベンダーさんのリスクにはならない。
一方で我々っていうのは顧客が事業がうまくいかないと、
当然ですけど打ち切られる。
かつ伸びないまま終わると、
我々は一切回収できないっていうリスクを負っているので、
かなり扇望としているっていう。
この3つにひもづいていろんな違いが生まれているんですけど、
根本は価値観とか考え方の部分の差分が出てるんじゃないかなっていう風に思っています。
こういった形で自分たちの過去のネットスーパーシステムの競争戦略みたいなものを、
社内向けに整理を進めていったりしています。
もうちょっと詳しいところもお話ししようかなと思ったんですけども、
結構ここから先がかなり我々の企業の具体の革新に触れてしまう部分もあるので、
一旦今回はこんな形で短めですが閉じようかなと思っています。
もしこういった内容について少しディスカッションしてみたいとか、
壁打ち相手に使ってもらいたいみたいなのも結構自分の勉強のためにもなるので、
喜んでやりたいなと思ってまして、
何かあればお便りの方をいただければなと思っています。
最後にこの競争戦略のドキュメントを前回の放送でお話しした、
私が参考にした本の著者である楠木さんにある人を経由してレビューしてもらったんですよね。
そのレビューしていただいたコメントっていうのが結構まとえてるなと思って、
まさに競争戦略が重要な領域で勝負していて、
その中においてシュアな考え方を持っていると思いました。
ただ社名が10Xであることから売上市場主義的な考え方がもしかしたら社内にはあるのかもしれないが、
それはこの競争戦略とコンフリクトがあるので見直した方が良いのではないか、
あるいはこれが起因だったらごめんなさいみたいなことをコメントでいただいて、
さすがめちゃめちゃ鋭いなっていうのと、
このコメント自体は自分の考え方みたいなものにもすごく響くものがありました。
ということで、一旦2回に分けて競争戦略についてお話ししてきました。
今回もお聞きいただきありがとうございました。
今回もゼロトピックをお聞きいただきありがとうございました。
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それではまた次回のエピソードでお会いしましょう。