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星の進軍 第3話
箱館湾海戦
陸上戦で敗退し、旧幕府軍の領土といえるものは、 もはや箱館市内だけとなっていた。
五稜郭、星の形をした城郭、 一度は江蘇地全土を制圧し、新しい国を作ると行きまいていた榎本軍は、
それが、星の輝く夜の間の夢でしかなかったと、 思い知ろうとしていた。
さて、敵が最も攻撃してくる場所はどこか。 箱館は海に突き出た土地だ。左右、そして箱館山の背後に広がる海は、天然の堀と言っていい。
五稜郭の背後、神川には、 ウリュネ大尉の指導で四稜郭を築いた。
おそらく新政府軍は、海からこの箱館進行を企てる。 海…
だが榎本さん、軍艦はたったの3艦しかない。 3艦あれば叩ける。
私は幕府の下で軍艦頭だった男だよ。 むしろ3艦しかないと敵が油断するなら、好都合。
ほう、上等だ。 この頃、榎本と肘方は互いを認め合うようになっていた。
肘方さん、なぜ笑う? 鎌さん、いや、総裁。
何だい副総裁、改まって。 敵はお主の戦の腕前を見くびってはいない。
油断だけはするな。 わかってるよ、太郎さん。
だが榎本の頼みの綱の軍艦に悲劇が訪れる。
4月30日、夜。 千代田、万隆、海天の3艦が見張る箱立湾に
新政府軍の軍艦が偵察に訪れる。 榎本軍はすぐに砲撃し、新政府軍の船を
外海へと退けることができたのだ。 だが
森本艦長、敵は引きましたね。 だが油断はするな。ここは和のどのあたりだ。
弁天岬と思われます。 暗いですが、あそこに弁天台場の石組が
艦長! しまった!雑魚死だ!
離脱急げ! 離脱できません!森本艦長!
いかがいたしましょう? 新政府軍の軍艦は
まだこちらの様子を伺える場所にいる。 もしこの千代田を敵に奪われ
味方が攻撃されるようなことがあれば 軍人としての恥だ。
機関を破壊せよ! 艦長?
今なんと? 船の機関を破壊せよ!
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この船を使えないようにするのだ! 敵の手に渡すよりはいい!
森本耕作は千代田を航行不能の状態にし 乗組員と共にボートで脱出した。
ところが明け方、満潮になると千代田は 自然と離所し
函館湾の外に漂い出て なんと新政府軍に打破されてしまったのである。
この知らせを聞いた榎本は激怒した。 榎本総裁。
森本耕作。 艦長の任を解き一水平に降格する。
しばらく五稜郭の郭内において金庫系とする。
何か言うことはあるか? こうして江戸を出た時は八艦編成だった榎本艦隊は
凱天と万隆の二艦を残すのみとなった。 一方、攻めてくる新政府軍は
徴用、香須賀、陽春、延年、邸房。 そして鉄の化け物
鋼鉄の六艦。 5月7日
函館湾に新政府軍の軍艦が現れた。
凱天で指揮を取るのは 新井幸之介である。
怯むな!砲撃!
万隆は未だ支援中。 動けるのはこの凱天しかない。
鋼鉄さん、私も戦います。
近づいてくる。 あの船は?
鋼鉄!
機関焦燥!凱天、航行不能に陥ります! 塩田のようにはしないぞ!
そうだ、浅瀬に上陸しろ! わざと座礁させるのだ!
凱天の攻撃機能は健在だ。 ならば撃ち続けろ!
凱天は今より放題とする!
見ろ! 新政府軍の軍隊が散りどいていく!
凱天も軍艦としては使えなくなった。 残るは万隆、ただ一艦。
榎本総裁、ドーデル。 太郎さん、いや副総裁。
後を頼む。 ああ、鎌さん。
その頃、五稜郭では榎本が自ら指揮を取り、 騎士改正の夜襲を仕掛けようとしていた。
肘肩さん、行ってきます。
その時鎌さんは、肘肩に向かってにっこりと微笑んだ。
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おそらく、死ぬつもりだったんだと思う。
たくさんの命を犠牲にした責任を取ってね。 ところが、
武士として、死に場所を求めていたはずの肘肩は、
鎌さんと真逆のことを考えていた。 生かすことをね。
榎本総裁、戦場で笑うもんじゃない。
榎本隊、出陣する!
とうとう、総裁自ら兵を率いて夜打ち。 止めないんですか、肘肩さん。
あんたこそ、副総裁でありながら、 なんでいつもあいつのやりたいようにやらせている。
止めてはいる。 本気で止めろ。
死なせるな。 肘肩さん。
死ぬのは俺たちの仕事だ。
はぁ。 鎌さんの背中についていく。
それが、 私の役割だと思っているのでね。
あなたになら、 わかってもらえると思うのだが。
はっ。 結局、この時の7Nの夜襲は失敗だった。
榎本総裁は無事に戻ったが、 味方は20人以上の死傷者を出した。
私はこの失敗が、 肘肩さんにある決意をさせたんじゃないかと思う。
自らを犠牲にしてでも、 生きるべきものを生かすという。
お呼びですか。 市村。
お前に頼みたいことがあってな。 なんでしょう。
こいつを日野の佐藤彦五郎のところまで届けてほしい。 俺の姉の嫁入り先だ。
箱立てで撮った俺の写真と、 そして、
肘肩さん。 これは、
威圧にするつもりですか。 そんな、
私に箱立てを離れろというのですか。 そうだ。
待ってください。 榎本さんがフランス軍人たちを帰国させたのは知ってます。
でも私は、 最後まであなたと一緒に戦いたいのです。
命令が聞けないものは切る。 肘肩さん。
哲。 最後の命令だ。
わかりました。 務めさせていただきます。
市村哲之助。 この時16歳。
京都時代に新選組に入隊し、 肘肩に仕えていた少年は、
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無事に箱立てを出し、日野の佐藤家に、 肘肩の写真と威圧を届けている。
彼はその後、西南戦争に加わったとも、 故郷で病を得て亡くなったとも伝わる。
いずれにせよこの時、 間もなく激戦の地となる箱立てから、
肘肩が若い命を逃したことだけは事実だ。 決戦が近い。
榎本の夢は落ちるだろう。
俺は、 どうする?
脚本 日野 曹
演出 岡田 康史
出演 榎本武明
谷沢龍馬 肘肩俊造
田辺雅樹 松平太郎
斉藤雅俊 堀本耕作 和田修介
新井幸之助 山崎健斗
平 A 大東英文
市村哲之助 及び平 B 平 C
平塚 蓮 詮曲 高価
章 佐子 音楽協力
アマチャ スタジオ協力
スタッフアネックス
プロデューサー 富山 雅明
製作 株式会社
ピトパ