1. ugo Robotics Radio
  2. #18_Tech Trend : 物理を直感..
 #18_Tech Trend : 物理を直感する世界モデル ― LeWorldModelと言葉なき知性
2026-03-30 25:22

#18_Tech Trend : 物理を直感する世界モデル ― LeWorldModelと言葉なき知性

採用情報は⁠⁠⁠こちら⁠

【今回のエピソード】今回のTech TrendではLLMがなぜ物理世界に弱いのか。その限界を超える「世界モデル」とLeWorldModelのアプローチを解説。言葉に依存しない“物理を直感する知性”とは何か、フィジカルAIの次の転換点を読み解きます。


感想

まだ感想はありません。最初の1件を書きましょう!

サマリー

本エピソードでは、現在のLLMが物理世界に弱い理由と、それを克服する「世界モデル」の概念、特に「LeWorldModel」の革新的なアプローチを解説します。ヤン・ルカン氏が指摘する「言葉の知性」と「物理の知性」の断絶を埋めるため、LeWorldModelは「表現の崩壊」という長年の課題を、ガウス分布への矯正というシンプルな数式で解決しました。これにより、わずか1500万パラメータで既存モデルの48倍の推論速度を実現し、エッジデバイスへの実装という次のメガトレンドに繋がる可能性を示唆しています。

はじめに:AIの知性と物理世界のギャップ
こんにちは、ugo株式会社の松井です。
ugo Robotics Radioは、UGOで働いている社員や各領域のプロフェッショナルをゲストに迎えながら、
ロボット開発のリアル、最新の技術動向、事業や組織の経営論など、幅広くお届けするチャンネルです。
本日は、最新の技術動向として、世界モデル、ワールドモデル、
そして、その最新ブレイクスルーである、LeWorldModelを取り上げたいと思います。
突然ですが、こんな光景を想像してみてください。
今や、司法試験に上位10%で合格し、複雑なコードも数秒で書き上げる超優秀なAIですが、
そこのマグカップを取って?と頼んだ瞬間、途端に何もできなくなってしまう。
これは笑い話ではなく、現在のAIが抱える本質的な課題そのものです。
ディープラーニングの父である、ヤン・ルカン氏が、
現在のLLMは、猫レベルや犬レベルの知能にすら達していない、と言い放ったのも、
まさにこの、言葉の知性と物理の知性の断絶を指摘してのことでした。
本日のエピソードでは、なぜLLMは物理世界に弱いのか、
その構造的な理由から始まり、世界モデルとは何か、
そして、長年エンジニアを悩ませてきた表現の崩壊という難問を、
たった一つの数式でエレガントに解決したLLMの仕組みまで、
フィジカルAIの最前線を徹底的に深掘りしています。
わずか1500万パラメータ、単一GPUで数時間の学習、
既存モデル比48倍の推論速度、
このコンパクトさがエッジデバイスへの実装という次のメガトレンドにどう直結するのか、
最後まで聞いていただければ、フィジカルAIの次の地平線が明確に見えてくるはずです。
ではここからは、AIナレーターのお二人よりご紹介させていただきます。
司法試験に上位10%の成績で合格して、複雑なプログラムのコードもほんの数秒で書き上げてしまう。
本当に今のAIの進化はさまじいですよね。
ですよね。現在のAIは私たちの想像を遥かに超える知性をテキストの世界で発揮しているじゃないですか。
でも全く同じその超優秀なAIに、そこにある机の上のマグカップを取ってって頼んだ瞬間、
途端に不協になってしまうんですよ。
テキストではあんなに天才なのに、物理世界になると何もできないっていうすごく象徴的なギャップですね。
そうなんです。今日はですね、ディープラーニングの父であるヤン・ルカン氏が放った衝撃的な言葉の裏側にある、
言葉なき知能の世界に深く潜っていこうと思います。
はい。物理AIに関心を持つエンジニアやビジネスマンであるあなたにとって、
今日は非常にエクサイティングなトピットになるはずです。
融合ロボティクスラディオのテックトレンドコーナーがお送りする今回の深掘りへようこそ。
信仰の私と専門家の方と一緒に紐解いていきます。
よろしくお願いします。
LLMが物理世界に弱い理由:ヤン・ルカン氏の指摘と記号設置問題
今日のテーマはAIの歴史における非常に重要な転換点になりますね。
これまで私たちが追いかけてきた言語の枠を超えて、
AIが現実世界の物理法則をどうやって直感的に理解し始めているのか、その最前線を解き明かしていきます。
今回の深掘りのミッションなんですが、今話題になっている論文と、
クリス・パクストン氏のブログ記事、そしてAIの巨匠の動向を示す資料を掛け合わせまして、
全く新しい概念である世界モデル、ワールドモデルですね。
そして、その最新のブレイクスルーであるル・ワールドモデルについて徹底解説していくことです。
ル・ワールドモデル、本当に今大注目ですよね。
まず冒頭でお話しした、その天才なのにマグカップが取れないAIの話なんですけど、
これを象徴する強烈な出来事があったんですよ。
ああ、あの発言ですね。
そうです。2026年1月に新会社AMIを立ち上げたばかりのヤン・ルカン氏がですね、
現在のLLMの知能はイノのレベルにも達していないって言い放ったんです。
まあ、かなり刺激的な表現ですよね。
でもル・カン氏がなぜそこまで言うのかには、システムとしての明確な理由があるんですよ。
というと?
リツナーのあなたもですね、現在のLLMが本質的にはテキストデータから次にどんな単語が来る確率が高いかを予測する統計モデルであることはすでにご存知かと思います。
ええ、言葉の確率ゲームみたいなものですよね。
そうです。でもテキストというフィルターを通してどれだけ高度な確率計算を行っても、
例えば重力とか摩擦あるいは因果関係といった物理世界の常識を計算することはできないんです。
なるほど。言葉のルールはわかっても物理のルールはわからないと。
だからこそ言語からではなくて世界そのものから直接学習するAIが必要不可欠になっている。
それがル・カン氏の詩意であり、彼がわざわざ新会社を立ち上げた理由でもあるんです。
ああ、そういうことですか。つまり、自転車の乗り方についての完璧なマニュアルを読み込んで、物理学の方程式とか体重をかける角度、ペダルを踏み込む力、そういうのをすべてテキストで完璧に暗記したとしても、
実際に自転車のサドルにまたがった瞬間、その言葉の知識だけでは転ぶのを防げないのと同じってことですよね。
まさにその通りです。テキストの知識と実際に重力に引っ張られる感覚っていうのは全く別の情報処理プロセスなんですよ。
全く別物ですか。
ここで鍵になるのがシンボルグラウンディング問題、日本語でいう記号設置問題というやつです。
記号設置問題、なんか難しそうな言葉が出てきましたね。
いえいえ、シンプルですよ。LLMはマグカップを取るという言葉、つまり記号は知っているんです。
でもそのマグカップが物理的にどれくらいの重さなのかとか、表面の材質はどれくらい滑りやすいのか。
あー、力を入れすぎると割れちゃうとか。
そう。どう割れてしまうのかといった現実世界の感覚、つまり設置と結びついていないんです。
割れるっていう文字は知っていても、割れる時のパチンっていう物理的な限界点とか、破片がどう飛び散るかっていう三次元的な結果を知らないわけですね。
世界モデルとは:物理的常識と予測能力
そこで今回のメインテーマである世界モデルが登場するわけです。
はい、世界モデル。これ具体的にどういうものなんでしょうか。
一言で言えば、AIに物理的な常識と次に何が起こるかの予測能力を持たせるためのアーキテクチャですね。
予測能力。
現在の状態と自分がこれから起こす行動のデータから1秒後あるいは数秒後の世界がどう変化するかをAI自身の内部でシミュレーションできる仕組みと言えます。
内部でシミュレーション。つまりこういうことですかね。
現在のLLMがスポーツのルールや過去の全試合データを暗記して完璧に状況を説明できるスポーツ実況アナウンサーだとしたら。
はいはい。
世界モデルは実際にコートに立って体を動かしてボールの重さとか風の抵抗みたいな物理法則を体感して自分の動きに対する次のプレイを直感的に予測しているアスリートの脳ということですか。
素晴らしい例えですね。その通りです。そしてそのアスリートの脳の例えに少し付け加えるならですね。
実況アナウンサーは過去のデータから次はこうなるはずだって客観的に語るがかですよね。
でもアスリートは自分がこう動けばボールはこう反発するっていう自分の行動アクションと結果がセットになった予測を常に回してるんです。
なるほど。自分が動いた結果どうなるかを予測してるんですね。
そうなんです。ロボティクスにおいて今最も求められているのはまさにその行動と結果を紐付けて予測するアスリートの脳なんですよ。
いやー面白いですね。ではそのアスリートの脳をどうやって作るのか。ここから論文の革新技術の深い部分に迫っていきましょう。
世界モデルの3つのアプローチと「ジェパスタイル」
はい。いきましょう。
ロボット工学の専門家であるクリス・パクストン氏の知見によると世界モデルには大きき分けて3つのアプローチがあるそうですね。
パクストン氏の分類は非常に整理されていて分かりやすいんです。
まず一つ目は映像などの結果から逆算してどんな行動を取るべきかを予測する逆動理学モデルです。
結果から逆算するタイプですね。
そうです。今回の資料にあるドリームジェンなどの大規模モデルがこれに該当しますね。
ドリームジェン。はい。
そして2つ目は未来の映像と行動を同時に予測していく統合型モデルです。
逆算タイプと同時予測タイプ。で3つ目は。
3つ目が今回私たちが最も注目する行動条件付き世界モデル別名ジェパスタイルと呼ばれるアプローチです。
ジェパスタイル。ジェパですか。
はい。これはですね現在の状態とこれから起こす行動を入力として未来の状態を自己回帰的に予測していく仕組みなんです。
行動を条件にして未来を予測する。まさにさっきのアスリートの脳ですね。
ええ。パクストン氏も指摘している通りこのジェパスタイルは教科学習の古典的な定式化に最も近くてですね。
理論的に非常に理にかなった正当で美しいアプローチだとされているんですよ。
待ってください。理論的に最高で最も正当なんですよね。
はいそうです。
だとしたらなぜ今までそのジェパスタイルが実用化されて物理AIの世界を設見していなかったんですか。
なんか実装上の大きな壁があったはずですよね。
表現の崩壊:ジェパスタイルの致命的な課題
鋭いですね。実はこのジェパスタイルには長年表現の崩壊というエンジニアを悩ませる致命的な課題が立ち障っていたんです。
表現の崩壊。AIがうまく学習できなくなってしまう現象ですか。
簡単に言うとですね。AIが学習のプロセスで予測をさぼる現象なんですよ。
さぼる。AIがさぼるんですか。
ええ。さぼるんです。AIは基本的に自分の予測と実際の結果とのずれ、つまり予測エラーを最小限にするように学習を進めますよね。
はい。エラーを減らしていくのは学習ですからね。
でも現実の複雑な物理変化を真面目に予測するのって計算コストが高くてめちゃくちゃ難しいんですよ。
まあ風向きとか摩擦とか全部計算するのは大変ですよね。
そこでAIは賢くもずるい回避策を見つけちゃうんです。
どんな入力が来ても常に同じ出力、例えば全てゼロの値とか真っ黒な画像だけを返すっていうずるです。
あーなるほど。テストで間違えるのが嫌だから全ての回答欄に分かりませんって書いて提出するずる賢い生徒みたいな状態ですね。
まさにそれです。確かにそれならどんな問題が出ても回答のグレはなくなりますから相対的なエラーはゼロになります。
それじゃあ物理法則なんて何も学習してないじゃないですか。
そうなんですよ。この表現の崩壊を防ぐためにこれまでの研究者たちは非常に複雑な発見的ヒューリスティック、つまり職人技みたいな細かなパラメータ調整を行ったりですね。
職人技?
ええ。あるいは事前学習された別の巨大な画像モデルをストッパーとして組み合わせたりと本当に涙ぐましい努力をしてきたんです。
ずるしないようにあの手この手で監視システムを作っていたわけですね。
そうです。でもそれはシステムを不必要に複雑にして学習を非常に不安定にさせていたんです。
なるほど。理論は美しいのにいざ作ろうとするとAIがズルをするからそれを防ぐための監視システムで継ぎはぎだらけになっていたと。
はい。
LeWorldModelによる表現の崩壊の解決:シグレグの導入
そこでいよいよ今回の主役の登場ですね。
ええ。ここで非常に興味深いのはですね。今回発表されたルーワールドモデルがこの長年の難問である表現の崩壊を驚くほどシンプルに解決したという事実なんです。
どうやって解決したんですか?今まで巨大な監視モデルを使って防いでいたものを。
数学的なアプローチです。具体的にはシグレグと呼ばれるたった一つの生息加工を追加したんですよ。
シグレグ?シグレグですか?たった一つの数式?
ええ。ルーワールドモデルは過去の複雑な職人技を全て捨て去って、このシグレグだけを導入しました。
これはですね、AIが予測する潜在空間のデータが必ずガウス分布、つまり正規分布になるように矯正するというシンプルな数式なんです。
ちょっと待ってください。ガウス分布に矯正するだけでズルが防げるんですか?どういうメカニズムでそうなるんでしょう?
ガウス分布っていうのは、データが平均値を中心に一定の広がり、つまり分散を持つという特徴がありますよね。
はい、ベルカーブみたいに散らばるやつですね。
ここが重要なポイントなんです。先ほどのズル賢い生徒を思い出してください。
AIが予測をサボって全て同じ値を出力しようとすると、データの広がりである分散はゼロになってしまいますよね。
ああ、一箇所に固まっちゃうからですね。
そうです。でもシグレグのルールによって、出力データは必ずガウス分布のように分散を持たなければならないと矯正されると、
AIは全て同じ値にするっていうズルができなくなる。
その通りです。数学的にデータの広がりを維持しなければならないので、
嫌でも現実世界の異なる特徴や状態を異なるデータとして保持し続けるしかなくなるんです。
なるほど、面白い。常に同じ答えを書いちゃダメだよ。答えはちゃんと散らばっていないといけないよっていうルールを根底に組み込んだから、
AIは嫌でも現実の物理的な違いを真面目に学習しなきゃいけなくなったわけですね。
いえ。そして驚くべきことに、調整が必要のハイパーパラメーターは、このシグレグのおもみくゆたった一つだけなんです。
たった一つ。信じられないくらいシンプルですね。
はい。たったこれだけで、AIは表現の崩壊を起こすことなく、カメラのピクセルから直接、安定してエンドトゥエンドで学習できるようになったんですよ。
LeWorldModelの効率性と高速性:コンパクトさと推論速度
それはすごい。私がこの論文のデータを見て興奮したのも、その驚異的な効率性なんです。だって、ルー・ワールドモデルのパラメータ数はわずか1500万ですよ。
非常にコンパクトです。
最近のLLMが数千億パラメータの規模で、GPUを何万個も使っていることを考えると、ちょっとあり得ないくらい小さいですよね。
しかも単一のGPUを使って、たった数時間で学習が終わってしまうとか。
はい。この軽量さがもたらす最大の恩恵は、やっぱりスピードなんですよね。
論文のデータによれば、既存の基盤モデルベースの世界モデルと比較して、ルー・ワールドモデルは最大48倍の速度でプランニング、つまり次にどう動くべきかの計画を実行できるんです。
48倍?アスリートで言えば、相手の動きを見てから筋肉に指令を出すまでの反応速度が48倍速いってことですよね。なんでそんなに速いんですか?
その秘密はですね、このモデルがピクセルを再構成しないという点にあるんです。
ピクセルを再構成しない?画像を作らないってことですか?
これまでの多くのモデルは、ビデオの次のフレームの画像を1ピクセルずつ綺麗に生成しようとしていたんですよ。
次の瞬間の映像そのものを予測して描こうとしていたんですね。
そうです。でも、ルーアールドモデルは、不要な細部、例えば壁の影の形とか、マグカップの表面の細かな光の反射なんかを切り捨てた、抽象的な潜在空間の中だけで物理状態の予測を行うんです。
確かに、飛んでくるボールをキャッチするときに、ボールの表面のロゴの向きまで正確に予測する必要はないですよね。質量とか軌道っていう本質だけを捉えていればいい。
ええ、まさにそれです。だからこそ、計算コストを劇的に下げて、これほど高速で効率的な推論が可能になっているんですよ。
すごく理にかなっていますね。でも、ここで一つ意地悪な質問をさせてください。
はい、何でしょう。
LeWorldModelの高速性の秘密:ピクセル再構成を行わないアプローチ
効率的で、数学的な工夫で学習が安定したのはよくわかりました。でも、そのピクセルを捨てた抽象的な空間の中で、本当にAIが物理法則を理解していると言えるんでしょうか。
というと?
ただ単に前後の画像のパターンを丸暗記して、それっぽくつなげているだけじゃありませんか。
ああ、非常に重要な視点ですね。実は、まさにその疑問に答えるために、論文内ではサプライズ評価という非常にユニークなテストが行われているんです。
サプライズ評価、AIを驚かせるんですか?
はい。研究者たちは、AIに物理シミュレーションを見せている途中で、突然ブロックがテレポートしたり、物体が壁をすり抜けたりといった物理法則を完全に無視したイベントを意図的に発生させたんです。
マジックのイリュージョンを見せたわけですね。で、どうなったんですか。
物理的にありえない現象が起きた瞬間、リューワールドモデルの予測エラーが激しく跳ね上がったんですよ。
サプライズ評価:LeWorldModelの物理法則理解の検証
へー、つまり、AIが、えっと、物体が瞬間移動するなんてありえないって計算上でパニックになったってことですか?
そういうことです。もしAIが単なる画像のパターンマッチングをしているだけなら、突然映像が変わっても、あー次はこういうパターンですね、と受け入れるだけのはずです。
確かに。
しかし、エラーが跳ね上がったということは、モデルがオブジェクトの永続性とか因果関係といった物理的な常識を潜在空間の中でしっかりと獲得して、それに基づいて未来を予測していた確たる証拠なんですよ。
いやー、それは鳥肌が立ちますね。AIがマジックを見て驚くなんて。
ええ、本当に興味深い結果です。
LeWorldModelの限界:短期予測と行動ラベルの必要性
さて、これを聞くとですね、リューワールドモデルがロボット工学のあらゆる課題を明日にも解決する魔法の杖のように聞こえてきます。
ああ、そう思いたくなりますよね。
ただ、これが全てを解決する万能のソリューションだと思い込むのは、エンジニアリングの観点からは少し危険ですよね。
おっしゃる通りです。どのような優れた技術にも限界と前提条件があります。リューワールドモデルにも、現在のところメーカーの弱点が2つ存在することを忘れてはいけません。
はい、リスナーの皆さんが実際にエッジデバイスなどに実装を考える際に一番気をつけなければいけないポイントですね。教えてください。
まず、一つ目の限界は短期的な予測、つまり短いホライズンにしか対応できないという点です。
短期的な予測だけ?
で、リューワールドモデルは自己回帰的に予測を繰り返します。つまり、1秒後の予測をベースに2秒後を予測し、それをベースに3秒後を予測する。この仕組みの性質上、時間が経てば経つほど、わずかな誤差が雪だるま式に蓄積してしまうんです。
ああ、直線を引くときに角度が一度ずれているだけでも距離が長くなればなるほど、敵から大きく外れてしまうのと同じですね?
まさにその感覚です。瞬発力はあるけど、持久力や長期的な戦略を練る能力は今のところないと言えます。
なるほど。では、二つ目の限界は?
二つ目は、学習の前提条件として行動ラベルが必要だということです。
行動ラベル?
ルーワールドモデルは、現在の状態と行動から未来を予測します。つまり、右のモーターを何回転させたとか、どれくらいのトルクをかけたという具体的なアクションのデータが紐づいていないと学習できないんです。
ということは、インターネット上にある膨大なYouTubeの料理動画とかスポーツの動画をそのままポンと放り込んで学習させることはできないってことですか?
できません。YouTubeの動画には、人間の関節がどの角度でどれくらいの力を発揮したかという制御ラベルはついていませんからね。
確かに、映像を見るだけじゃ筋肉の動きまではわからないですからね。
そうなんです。ため、無数もラベルなしビデオデータをそのまま活用するという点では、まだ課題が残っているんです。
なるほど。じゃあ、瞬活力はあるけど長期予測が苦手で、構造ラベルが必要なこのルーワールドモデルは、現実のロボティクスにおいてどう使われるべきなんでしょうか?
ハイブリッドアプローチ:システム1とシステム2による統合
そこで、先ほどのクリス・パクストン氏が提唱するハイブリッドアプローチの視点が生きてくるんですよ。
ハイブリッド、何かと組み合わせるわけですね。
はい。彼は人間の認知アーキテクチャに例えて、システム1とシステム2による統合が未来の自立型ロボットの最適解だと述べています。
システム1とシステム2。ああ、行動経済学のダニエル・カーネマンが提唱したファスト&スローの概念ですね。直感的で高速なシステム1と、論理的で熟考するシステム2。
まさにそれです。ルーワールドモデルが持つ48倍の推論速度と、局所的な物理制御の強さは、まさにロボットにとっての反射神経、つまりシステム1として機能するんです。
なるほど、反射神経。
一方で、ラベルなしの大量のビデオデータから学習できて、長期的な文脈を推論できる、先ほど挙げたドリームジェンのような大規模なモデルが、論理的思考であるシステム2を担うわけです。
完璧な役割分担じゃないですか。ちょっと工場で働くロボットを想像してみますね。
ドリームジェンみたいなシステム2が、よし、あの棚から重い部品を取って、障害物を避けてベルトコンベアまで運ぼう、という数分単位の長期計画を立てる。
そして、実際に部品を持ち上げる瞬間、表面の滑りやすさに応じて指先の力加減をミリ秒単位で微調整するのが、ルーワールドモデルというシステム1の超高速な反射神経で行われる。
その通りです。この2つが組み合わさることで、初めて真に自立的で実用的な物理AIが誕生するという大きな絵が見えてくるんです。
いやー、すごくクリアに未来が見えました。
次のメガトレンド:エッジデバイスへの軽量・高速モデル実装
これをですね、より大きな視点で捉えると、物理AIやロボティクスに関わるビジネスマンやエンジニアであるあなたにとって、非常に重要なトレンドが浮かび上がってくるんです。
今後のメガトレンドですね。
ええ、これまでAI業界はクラウド上で動く巨大なLLMばかりに注目してきました。
しかしLLMの次のメガトレンドとして、物理世界を理解する軽量で高速なモデルを、工場や家庭のエッジデバイスへ直接実装する波が目前に迫っているということなんですよ。
確かにパラメータ数が1500万なら、高価なクラウドサーバーに通信しなくても、ロボット本体の小さなチップで十分にリアルタイム処理できますからね。
ええ、エッジでの自立制御が一気に現実味を帯びてきます。
アスリートの脳を持ったAIが私たちの生活空間にやってくる日も近いですね。
そうですね、本当に楽しみな時代になってきました。
言葉なき知性とのコミュニケーションの課題
さて、今日の深掘りを通して、AIがテキストベースの言葉の図書館から飛び出して、重力や摩擦といった泥臭い物理世界の直感を身につけ始めていることがよくわかりました。
はい、非常に大きなパラダイムシフトです。
ここで最後に、リスナーのあなたに一つの試行実験を投げかけたいと思います。
おっ、何でしょう?
ルーワールドモデルのような仕組みで、言語に依存せず純粋な物理法則の直感を身につけたAIは、言葉というフィルターを通さずに世界を理解していますよね。
ええ、身体感覚に近いもので世界を捉えているわけですからね。
もし将来、彼らの持つその物理的な直感が人間のそれをスピードや精度で完全に凌駕したとき、例えば私たちが目で見て気づくことすらできないわずかな床の傾きとか空気抵抗の変化をAIが瞬時に感じ取って動くようになったとき、私たちは一体どうやってそのAIと言葉でコミュニケーションを取り、糸を擦り合わせればいいのでしょうか。
ああ、なるほど、それは深いですね。
私たちが自転車の乗り方を言葉で完璧に説明できないように、彼らが見ている物理世界の真実はもはや人間の言語には翻訳できないものになっているかもしれないんです。
テキストを持たない知性とのコミュニケーション、これはAIと人間のインターフェースの根幹を揺るがす技術的にも哲学的にも非常に終焉なテーマになりますね。
ええ、言語モデルの次に来る言葉無き知性の進化。次にAIのニュースを見たときは、ぜひ彼らが今テキストを学んでいるのか、それとも世界を体験しているのかを思い浮かべてみてください。
そういう視点を持つだけで、AIの見方がガラッと変わるはずです。
いかがだったでしょうか。テキストという言葉の世界を超えて、AIが重力・摩擦・因果関係といった物理の直感を身につき始めているという大きなパラダイムシフトの入り口に立てたのではないかと思います。
まとめと今後の展望
ルーワールドモデルに代表される軽量・高速な世界モデルは、まさにUOが取り組むサービスロボットの自律制御にも直結する技術だと思います。
フィジカルAIに興味を持っていただけるエンジニア仲間が一人でも増えてくれたら嬉しいです。
今後もフィジカルAIやロボティクス領域の最新の技術動向をご紹介してまいりますのでお楽しみに。
それでは。
25:22

コメント

スクロール