1日10分宇宙時間をテーマに毎日お届けしております宇宙話。 今日からスペシャル特集をやっていきます。
この放送が2023年11月の12日日曜日になってますが、この明け方にですね、 アメリカでSpaceXのFalcon9というロケットで
人工衛星が打ち上がりました。その名もNinjaSat。 理科学研究所の玉川高エネルギー宇宙物理研究室が主導となって開発した
人工衛星になっていてですね、そこはなんと僕のフルスでもあるんですよね。 で、そこから打ち上げが成功したというところになりましたので
開発メンバーに続々とゲストに来てもらってNinjaSatと呼ばれる、もうね、 ジャパニーズな名前を背負ってます。
一体どんな衛星なのか、そしてどんな科学を達成するのか、どんな装置が乗っているのか、 そのあたりをもう研究者の方々に出てもらって直接紹介してもらう特集になっております。
今回の特集では合計4人の方に登場していただきます。 で、今日から放送する2話分はまずはそのチームをリードしている
僕の元ボスですね、玉川さんに出ていただいてます。 一つの研究室で約3年で打ち上げまで、開発から打ち上げまで持って行った中での出来事だったりとか、
あとはそもそもNinjaSatがどんな衛星なのか、そのあたりについてお話しいただいておりますので、 ぜひ最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。
はい、ということで今回はスペシャルゲストを来ていただいております。 今回NinjaSatの特集をするっていうところでNinjaSatのチームをリードされている、そして僕が3年間
理研でお世話になった玉川さんに来ていただいてます。よろしくお願いします。 よろしくお願いします。
お久しぶりです。 久しぶりです。 卒業してからだいぶ、何年になるんだっけ?
21年の3月に卒業しているので、 だからそこから2年半、3年弱ぐらいですかね。
なんか色々と宇宙ラジオのやつ見てると、D論やりながらこんなことやってた?
やってました。 D論の時すごいしんどくて、しんどくやりながら、なんか逆にこのポッドキャストで、
こういう宇宙の研究あるんだ、楽しいんだみたいなのを自分の中で積み重ねてたのと、ポッドキャストがちょっとずつ数字伸びていってるのがギリギリメンタルの支えになってた。
そういう意味では才能だね。素晴らしい。 いや良かったです、本当に。ただでも、あの時はそれ以外の時間ずっと博論だったからギリギリだったし、
そんな周りの人に言うほどやってたわけでもないしみたいな。 なるほど。まあでも、僕自身は構成フリアの専門家じゃなかったけど、佐々木くんがやってた研究って非常に面白いなと思いながら見てたので。
本当ですか。 頑張ってるなと思って見てました。 かなり苦戦してましたけど、なんか玉川県のみんながやってる、それこそ今回のNINJA SATも僕いる時から動いてたから、
みんなはなんかチームでガーッて進んでる中で、違う研究分野やってるって中だったから、新鮮さも届けれてたらいいなっていう気持ちもあります。
そうですね。皆さんやっぱり、ハードウェアやってるとなかなかサイエンスの話まで到達しないので、佐々木くんがやってる構成フリアの話とかも非常に面白く聞いてくれたし、
いい頭の体操にはなったんじゃないかなと。 そう言っていただけると。それで3年間過ごさせてもらって、だからそこからずっと
ポッドキャストとかもやってて、今回えのとさんから連絡いただいて、NINJA SATの広報なんかできないかなっていうお誘いめちゃめちゃ嬉しかったので、
今回のコラボ収録すごい楽しませてもらってます個人的に。 ぜひこちらこそよろしくお願いします。
ちょっとじゃあ早速もうNINJA SATの話聞いていこうかなと思うんですけど、NINJA SATってざっくりどんな衛星なのかっていうところを、
なんかまあこのエピソードが1本目になるので、みんなにこう概要をお伝えできたらなと思うんですけど。
ああそうね。NINJA SATはCube SATって呼ばれる超小型衛星で、Cube SATっていうのは皆さんご存知かな。
10cm×10cm×10cmっていうサイズが1Uって呼ばれるサイズになってて、それを組み合わせることによって衛星を作っていこうっていう
そういうような企画の衛星で、NINJA SATは6Uっていう10cm×20cm×30cmってちょうどあのカバンぐらいの大きさの衛星ですね。
ああイメージしやすい。 僕持ち運べる、1人で持ち運べるぐらいのサイズの衛星ですね。
ただCube SATっていうとどうしても小さい衛星で、学生の教育みたいな感じで扱われることが多かったんだけども、
そういう小さな衛星でも、ちゃんと目的を絞ってやれば優れた科学観測ができる、そういうのを実証したいっていう、それをやるための衛星だと我々は考えてます。
構想自体が2019年ぐらいからスタートしたんですかね。
ああそう、何かこの小さな衛星を使って宇宙観測をしたいっていうのはそれより前からずっとあって、
それが何か形になってきたのが2019年ぐらいで、実際にプロジェクトがスタートできたのが2020年。
はい。 そんな感じですね。
それは研究費とかもちゃんと確保して、よしスタートできるぞが2020年だったんですね。
そうですね。研究費っていうのもあるんだけども、やっぱりそれを支える人、例えばこの後話が出てくる榎本君とか武田君とか、
やっぱりこういうミッションに人生をかけられるような人、優れた才能を持っている人っていうのがやっぱり集められたっていうところが一つ大きなポイントかなというふうに思ってます。
お金は例えば頑張れば何とでもなるのかもしれないけど、人ってなかなか集まらないんですよね。
確かに、どの場面でもそうですね。
だからそういううまく人が集まったっていうところが一つかなと思います。
あとは2019年の3月に東大の中塚先生が超小型衛星のシンポジウムみたいなのを東大でやられて、そこで僕発表したんですけども、
その時に自分たちは何をやりたいのかとか、何ができそうなのかなみたいなのがうまく整理できたと、そういうことはありますね。
僕がいたのが2019年からって感じなので、たぶんその構想が加速し始めたぐらいの時にたぶん研究室にいて、
たぶん2020年のスタート、僕の中での確実にこの時だなっていう印象があるのは、いきなり3Dプリンターが研究室に搬入されてきた。
よく覚えてるね。
あのタイミングからあれみたいな、何か始まるのかなみたいな思って、そうしたら結構研究室の手入れの中でもどんどん衛星の話が本格化していく流れを見てたから、
そこからのスピード感すごいって今すごい思いますね。
確かにそうね。大きな衛星だとやっぱりプロジェクト始めてから実現するまで10年とか平気でかかってしまうけども、
キヨブサットみたいな小さな衛星っていうのは、いかに早く作って早く結果を出すかっていうところが重要なので、
だから2年とか3年とか、本当はまあ2年ぐらいでやれればいいなと思ったんだけども、コロナがあったりいろいろあって、
ちょっと遅れて今3年目、でもそれでもやっぱり3年で形にはできたので、すごく早いかなという気がします。
そうですよね。
なんかこれって最終人工衛星打ち上げるのの目的って、やっぱりみんなが達成したいサイエンスの課題を観測で解決していくっていうところだと思ってて、
それでいうとX線って結構大型ミッションがみんなのキャリアに寄り添って存在してるじゃないですか。
そうですね。
こういうちっちゃいのでX線って今までほとんどないですかね。
そうですね、基本的には全く、世界的に見てもほとんどなくて、アメリカと中国で1基ずつぐらいが今上がってるぐらいで、それもやっぱり目的を特化してるっていうこともあるんだけども、
X線を捉える感度っていうのがやっぱり小さくて、我々のNINJA SATっていうのはそれの10倍ぐらいの感度でやるので、
例えば皆さんがこの天体をこういうサイエンスで観測したいっていうのがあれば、NINJA SATだったらそれを実現できるぐらいの十分な感度だなというふうに思ってます。
そこがやっぱり特徴の一つですね。
そうですね、だから空を見てみても実際にこの衛星で見れる天体は1天体しかありませんとか2天体しかありませんだと全くサイエンスとかできないので、
少なくとも20天体とか30天体とか、時間が許せば100天体とかたくさん見ることができるので、そういうような研究ができるっていうのがNINJA SATの大きな特徴かなと思ってます。
そういうカバーできるもろもろを、多分最初の構想の時とかにいろいろ考えていく部分だと思うんですけど、片面で言って。
さっきの話にもしかしたらちょっと被る部分もあるかもしれないですけど、そういうプロジェクトをスタートさせた動機みたいな気持ちのきっかけみたいなところって、こういうのあったなとかってあるんですか?
そうですね。なんか、昔から小さな衛星をやれるんだったらやってみたいなっていうのはあったんですけども、一番大きいのは今、理科学研究所で国際宇宙ステーションに前天X線モニター、MAXIっていうのをJAXAと大学と一緒に運用してるんだけども、
これは前天のX線源の明るさみたいなのをずっとモニターすることができる装置なんだけども、宇宙ステーションが地球を一周する90分間に1回だけしか決まった天体を観測できないんですね。
そうすると、例えばすごく明るい星が突然、突然なんか明るくなった星が出てきたとしても、1回観測したら月の90分間は見れなくなってしまう。この間ってやっぱり何が起きたのかとか、そういう変動とかを見てみたいなっていうのはすごく強くあるんですよね。
だから、その間の部分をしっかりとモニターできるような装置があるといいなっていうのは、なんとなく皆さんと話はしてたんです。そういうものが実際にMAXIのそばに何か別の装置を置くんじゃなくて、こういうキューブサットみたいな小さな衛星レベルでも多分できそうだと、そういうのが分かってきたので、
それなら、いろいろ考えて悩むよりも、やれるうちにやっちまおうみたいな感じで進んだプロジェクトですね。
じゃあ、それで言うと、僕、NASAのゴードアート宇宙センター行ったときって、玉川くんの所属だったときで、あの時は僕MAXIをずっと触ってて、さっき言ったみたいに突発天体とかを見つけたときに、その変動が見れるような装置が宇宙ステーションにNASA側からついたっていうので、
それのコラボで行ってっていうところが、僕の博士課程のキャリアの第一歩目だったというか、
確かにそう。 だったから、なんかまあそういう国家プロジェクトレベルで乗ってるミッションとかもあるけど、よりなんかフレキシブルに、なおかつ他のこともできそうなもの打ち上げちゃうと、打ち上げちゃえば面白いこといろいろできるなっていうワクワクする気持ちがスタートにはあったって感じなんですね。
そうですね、確かに大きな衛星とかだといろんなことはできるのかもしれないし、ただやっぱり大きな衛星は多くの人がやっぱり参加しているので、なかなか自分の研究のためだけに一つの天体を見続けるみたいな、なかなか難しいですよね。
そういうところがNinja SATだったら、チームの中でしっかりと話し合えば、一つの天体を例えば1ヶ月間見続けますとか、そういうようなことができるので、そういうメリットはあるかなと思って。
それは面白いですね。じゃあちょっときっかけの話も伺ったんですけど、3年間開発期間があったわけじゃないですか。
今この収録の段階ではまだ打ち上がってない状態ってなったときに。
そうですね、ドキドキだね。
そうですよね、今アメリカから繋いでもらっているので。
そんな中で開発期間、その中であった、ここ大変だったなみたいな、もうその連続だと思うんですけど。
そうですね、そういう意味では最初の開発を始めてから、我々ももともとCubeSatをやってたわけじゃないので、今まで大型衛星とかで培ってきた技術をそのまま小型化したら、
小型衛星に乗せる装置ができるだろうなって、それぐらいのある意味軽い気持ちでスタートはしたんだけども、実際にいろんなものを、
例えば我々のX線を観測する装置っていうのは、10cm×10cm×10cmの1Uっていうサイズに全部押し込んでるような形になってて、
それをもっと大きな空間の中で実現しようと思ったら比較的楽なんだけども、やっぱりそのサイズに物事を押し込むっていうのはやっぱりすごく難しいなっていうのは、
設計とか制作の中ではそれが一番難しかったですね。
物理的な規制がかかった状態。
逆に物を作る方としては燃えるんだけども、なかなかやっぱり最初の想定通りにはいかなくて、何回やってもうまくいかないっていうのが半年とか1年とか繰り返されて、ようやくそれで宇宙にあげれるものができた。
完成したときは嬉しかった、めちゃくちゃ。
そうですよね。
それで言うと、玉川さんのこれまでのキャリアの中で言うと、結構物作りがメインだったんですか?
そうですね。基本的にはうちの研究室は物を作って、それを衛星に乗せて打ち上げて観測してっていうサイクルを回せるような研究室にしたいというのが元々の僕のビジョンにはあって、
だからそれを全部一通り経験できるような流れができるといいなとは思ってたんですね。
だから物を作るっていうところももちろんうちの研究室の一つの方向性だし、あとはそれを使って宇宙に持って行って観測する。そこも重要なポイントだと思います。
じゃあ今回、これまでもいろんな観測装置を宇宙に届けてとか、これまでもいろんなサイエンスの成果を出してきたけど、それをなんかこの3年で思ってやりたいなと思ったところをワンパッケージにできたみたいなところの達成感は結構あるんですね?
それはありますね。やっぱり衛星に載せる装置そのものは作るだけじゃなくて、やっぱり宇宙の過酷な環境とかそういうところに耐えれるようにしなきゃならなくて、自分たちが設計して作ったものっていうのがちゃんとそういう試験、いろんな試験を突破してようやく衛星に載せるところまで持ってこれたっていうのはやっぱり達成感はあります。
でも実際にはこの先でちゃんとこれで天体が観測できて、サイエンスができて、論文書けたら我々の仕事は一順するっていうことです。そこまで持っていかなきゃならないので、まだ道半ばっていう感じです。
なるほどね。なんかそういうビジョンがあったからこそというか、僕はものづくりの人じゃない状態で玉川県に所属しててってなると、まあなんかものづくりの人ばっかりでいるっていうよりはサイエンスに特化した人もいてとかっていう研究室の中のバリエーションとかも結構メンバー構成みたいなのを考えて動かれてるんですか?普段も。
そうですね。やっぱりあの衛星はいろんなフェーズがあるので、特に大型衛星やってるときはものを作るフェーズっていうのもあるし、その作ったもので観測するフェーズっていうのもあって、それをうまく少しずつずらしながらやっていかないとやっぱり人も育たないし、研究室も回っていかないので、なるべくいろんなフェーズの人を
一箇所に集めて、いろいろと議論ができるような状態が作れるとすごくいいなっていうのはもともとありましたね。
それは結構、なんか研究所ならではみたいな感じなのかなと個人的には思うところはあって。
まあそうかもしれないですね。大学とはちょっと違うのかな。
そうまさに思いました。なんか大学は結構教員の人が数人いて、でそれに対して学生がドバッて入って、その人たちはもう2年とかっていうサイクルでどんどんいなくなってっちゃってみたいなって感じになるのと、違うなって僕、理研入ったときにすごい思って、なんか面白い環境だなと思ってたし、だからNASA行ったときも結構同じ感覚になったというか。
まあ確かに研究機関っていうのと教育機関っていうのはそこが違うかもしれないですね。
そうですね。でもなんか研究機関も学生を取り、こう受け入れて、たわがけも毎年いるじゃないですか、学生いたりしてっていうところの、だからより縦の幅が広い感じもするなっていうのが、
なるほど。
さとしては面白いなって個人的にはずっと思ってた。
良かったですね。ちゃんと経験してくれたので。
そうですね。なんか改めて研究室にいるときに、そういう研究室運営の角度の話って、わざわざしないじゃないですか。
まあしないね、確かに。飲み会でもない限りやらない。
しかもなんかね、飲み会とか少ない時期だったから、余計。
確かに。
そうなんですよね。
うん。
ありがとうございます。