実家の訪問とオルゴール発見
タイトル、母のオルゴール。
引き戸を開けると、ひんやりとした空気が頬に触れた。
サオリは、水着の小さな手を引いて、
長い間使われていなかった実家の廊下をゆっくりと歩いた。
窓ガラスには埃が薄く積もり、
午後の日差しが鈍く反射している。
廊下の奥からは、畳の乾いた香りと、
かすかに残る線香の匂いが漂ってきた。
母の49日の放養が終わってから、
サオリは何度も家の片付けを先延ばしにしていた。
仕事も子育ても思うようにいかず、
実家に足を運ぶたび、母との距離や、
分かり合えなかった日々の記憶が、
胸の奥に沈殿したままだった。
玄関に置かれた小さな靴を見て、水着が、
バーバの家、広いねと無邪気に言う。
サオリは、曖昧にうなずき、
リビングの襖を開けた。
お花屋、時の止まったような振り子時計。
ダイニングテーブルの上には、
母が生前好きだった湯飲みが、
一つだけ残されている。
水着が床に落ちていた小さな箱を拾い上げる。
これ、なあに?
箱は薄い桃色で、ところどころ塗装が剥げていた。
蓋を開けると、中には小さなオルゴール。
鍵をまくと、かすれた音色が部屋いっぱいに広がる。
このかすったメロディは、
サオリが幼い頃、母の膝で聞いたものだった。
旋律にのせて、母の柔らかな手の感触や、
夜更けに聞いた子守唄の声が、
鮮やかによみがえる。
母との思い出
水着は、興味深そうに箱をのぞき込み、
バーバ、どうしてこの歌好きだったの?と、
首をかしげる。
サオリは、少し答えにつまりながら、わからない。
何度寂しい時や悲しい時、
このオルゴールを聞いていたんだと思うと、静かに答える。
母の背中は、どこか遠く寂しそうだったこと。
自分が反抗期だった頃、
母の愛情をうとましく感じ、素直になれなかったこと。
今になって初めて、その不器用な優しさや、
手料理の匂い、
毎晩欠かさずかけてくれた毛布の重さが、
心の奥にしみていく。
サオリとミズキは次第に、母の話を交わすようになった。
ミズキが、ママもバーバに叱られた、
と尋ねる。
もちろん、よく泣いたし、怒ったりしたよとサオリは笑う。
母と向き合えなかった悔しさ、
伝えられなかった言葉。
それでも、母と過ごした日々が、今の自分を形作っている。
ふと、ミズキと目が合う。
彼女はオルゴールの音色に合わせて、小さく歌い始めた。
サオリはその様子を見つめながら、
母の愛情が、目に見えない糸のように、
自分と娘をそっとつないでいることを実感する。
その晩、片付けを終えて家を出ると、
夕暮れの光が、二人の影を長く伸ばした。
オルゴールを手に、
サオリはミズキの手をしっかりと握る。
新しい家までの帰り道。
沈黙の中に、どこか温かな余韻が残る。
サオリの手のひらには、母から受け継いだ温もりと、
これから娘へ伝えていくものの重みが、
確かに息づいていた。
エンディング
以上、本日の小説は、母のオルゴールでした。
この小説は、AIによって生成しています。
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