川辺での思い出
タイトル 渡り鳥の手紙
川べりの道に 冬の名残がかすかに残っていた。
枯草と雪どけ水の冷たさが朝の空気にかすかに混じる。
古い石のベンチの端に老人は静かに腰を下ろした。
定年を迎えてから10年以上が経つが、
この時期になるとどうしてもここへ来ずにはいられなかった。
川の向こう岸には細い柳が並び、
川面には渡り鳥の影が映る。
一人で眺めていると不意に妻の姿が思い出された。
白いマフラー、川風に揺れる髪。
妻が言って季節は巡っても、この川辺はあの日の匂いをどこかに残している。
ベンチの上のパンブクロを開け、かけらを指でつまむ。
手の甲のシワが年齢を語る。
パンの香りに誘われて一羽のつぐみが近づく。
幼い鳥の足に色糸と小さな紙片がくくりつけてあった。
子供の字でこの鳥を必ず返してあげてくださいと書かれている。
老人は胸の奥に熱いものを感じた。
パンを差し出し鳥の足を優しく包む。
傷がある。
妻の残したハンカチを細く裂いて足に巻き、そっと空に放つ。
つぐみは羽を震わせて川面の向こうへ飛び立った。
手紙のやりとり
鳥の体温が指先に残った。
次の日も老人は川べりのベンチに通った。
鳥が現れるたび目で追う。
再びつぐみが来た日、足にはまた色糸と手紙。
おじさんありがとう。鳥は帰ってきましたか。
返したくなり紙片に鳥は元気です。
川のそばはまだ寒いですと書いて鳥の足に結ぶ。
それから何度も小さな手紙のやりとりが続いた。
時には寂しいです。誰かに会いたいですと書かれ、
老人は今日も川はきれいです。春がもうすぐ来ますと返した。
返事を書きながらかつて妻と交わした会話や静かな時間を思い出す。
季節が変わり柳に新芽がつく。
ある日、つぐみは来なかった。
老人はベンチで空を見上げた。
雲の切れ間から光が射し、川もが輝く。
誰もいないベンチに川風だけが吹いていた。
数日後、小さな靴音が近づく。
再会と新しい春
見知らぬ少女が立っていた。
ずっと鳥を見送ってくださった方ですか。
老人はうなずく。
少女はぽつりと話す。
鳥に手紙を託していたこと、家族を失い、
誰にも言えない思いを鳥に書いてきたこと。
老人は少女の話に耳を傾ける。
鳥と少女と川の流れが遠く離れていた心を
結び直しているように思えた。
少女は小さな手紙を老人に差し出す。
私の願いを運んでくれてありがとう。
老人はそれをそっとポケットに入れ、
空を見上げる。
鳥たちの群れが川の上空を渡っていく。
春になると老人はまた川べりのベンチに座る。
季節はめぐり、思いは空をめぐる。
老人は思う。
失われたものは戻らない。
けれど誰かを思う気持ちはきっとどこかでつながり
新しい春を運んでくるのだと。
老人は目を閉じる。
手のひらに鳥のぬくもりと
少女の手紙の柔らかさが残っていた。
川べりに風が渡り遠い空へ
渡り鳥の影が静かに消えていった。
以上、本日の小説は渡り鳥の手紙でした。
この小説はAIによって生成しています。
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