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2025-10-27 15:05

80 アルトドルファー「アレクサンダー大王の戦い」

80 アルトドルファー『アレクサンダー大王の戦い』:宇宙的スケールと驚異の細密描写に込められた1529年のメッセージ

サマリー

アルブレヒト・アルトドルファーの絵画『アレクサンダー大王の戦い』は、ルネサンス期のドイツを代表する作品であり、紀元前333年のイッソスの戦いを題材にしている。作品には、細部まで描かれた歴史と壮大な風景が融合しており、当時のオスマン帝国の脅威に対するメッセージが含まれている。アルトドルファーの「アレクサンダー大王の戦い」は、壮大な風景と歴史的な戦闘が融合した高く評価されている作品であり、細密描写と大きなスケール感を持つ多層的な傑作で、鑑賞者に多くの疑問を投げかけている。

作品の概要と背景
こんにちは。さあ、今回はですね、アルブレヒト・アルトドルファーが1529年に描いた
アレクサンダー大王の戦い。これはルネサンス期ドイツを代表する絵一枚と言われてますね。
これに迫っていこうと思います。
ええ、非常に有名な作品ですね。
今回の、まあ、元にしている資料なんですけど、これがもともと視覚障害のある方に書かれた解説文だそうです。
ああ、なるほど。
それがですね、驚くほど詳細なんですよ。
へえ、それは興味深い。
ええ、なんかこう読んでいると、絵の細部まで目に浮かんでくるような、そんな感じです。
言葉でそこまで描けるというのはすごいですね。
本当に。で、今回はですね、この歴史画であり、同時に壮大な風景画でもあるというこの作品の、
その信じられないくらいのディテール、描かれた背景、そしてなぜ重要なのか、というあたりを皆さんと一緒に解き明かしていければなと。
はい。
さあ、じゃあアルトドルファーのこの驚異的な世界に入っていきましょうか。
絵の構成と詳細
ええ、お願いします。
まずは基本からですね、この絵が何を描いているのか。
はい。
これは紀元前333年のイッソスの戦い。
イッソス、はい。
若きアレクサンダー大ヨーマ、ペルシャのダレオス三世、この大軍を打ち破った。
まあ、古代史の中でもかなり大きな戦いですよね。
そうですね。歴史の転換点ともいえる戦いです。
で、まずこの絵を見て、全体としてどういうふうに捉えたらいいんでしょうか。
そうですね。まず圧倒されるのはその構図だと思うんですよ。
構図ですか。
画面全体が意図的なのか、大きく3つのパートに分かれているように見えるんですね。
3つのパート。
はい。一番上に広がる空。
空。
で、中央から奥にかけての山岳地帯。
山。
そして画面の下半分をもうびっしりと埋め尽くしている戦場。
なるほど。空、山、戦場。
この視点の誘導というか、構成がこの絵のスケール感を理解する上で、
一つ鍵になるんじゃないかなと思いますね。
面白いですね。
じゃあ、その3つのパート。
まずは一番上の空から見ていきましょうか。
はい。
これ解説にもありましたけど、なんか普通の空じゃないですよね。
そうなんですよ。渦巻くような雲があって、あと強烈な光を放つ太陽。
太陽。
さらに驚くのは、その背景に地球のような球体まで描かれているっていう。
地球?
そうらしいんです。地上のこの激しい戦いの上に、こんな宇宙的とも言えるような光景が広がってる。
それはすごいスケールですね。一体どういう意図があるんでしょうね。
本当ですよね。まさに非日常的なスケール感です。
で、その下に広がるのが中央の山岳地帯。
険しい岩間が連なっていて、その谷間をよく見ると、豆粒みたいに小さい兵士たちの長い列が進軍してるんですね。
本当だ。これも細かいですね。
これが単なる背景っていうだけじゃなくて、アルトドルファーっていう画家が、いかに風景そのものに強い関心を持ってたかっていうのがよくわかる部分だと思うんです。
風景画としての側面も強いと。
そうなんです。彼はいわゆるドナウ派っていう、自然そのものを主役級に描くことを重視した画家グループの中心人物でしたから。
なるほど、ドナウ派。
だから、下の船上の喧騒とは対照的な雄大でどこか静かな自然がここには描かれているんですね。
船上との対比が効いてますね。
そうですね。
そしていよいよ画面の下半分、この絵のメインとも言える船上。
はい。
これはちょっと言葉を失うというか、情報量がすごいですね。
ですよね。無数の兵士たちが文字通りぎっしりとひしめき合ってぶつかり合ってる。
うわー。
槍とか剣が林みたいに立っていて、色とりどりの旗がほろんのって、馬も暴れてるし。
まさに混沌、カオスですね。
ここがたぶんアルトドロファーの真骨頂なんでしょうね。
これだけの人物、馬、武器、甲冑、その一つ一つが信じられないくらい細かく描き込まれてるんですよ。
えー、そんなにですか。
ただの群集じゃなくて、個々の要素がちゃんと識別できるくらいの精密さで。
すごい。
それでいて、全体としてはこのすがましいエネルギーと混沌を感じさせる、この両立はちょっと驚くべき技術だと思います。
技術的にもすごいんですね。
じゃあその混沌とした戦場の中心人物たちを見ていきましょうか。
まず主役のアレクサンダーだよ。
はい、アレクサンダー。
どこにいるんでしたっけ。
画面の左下の最前線ですね。
あ、いたいた。
城場にまたがって。
そうですそうです。
まさに敵陣深くへ突撃しようっていう瞬間。
うわー、すごい勢い。
輝く鎧をまとって、表情もすごく勇敢な感じで前をぐーっと見据えている、もう英雄そのものっていう描写ですね。
かっこいいですね。
彼の周りにはマケゾニア軍が密集していて、画面の左から中央にかけて明らかに優勢に戦いを進めているのがわかります。
押し気味なんですね、左側が。
それに対して画面の右奥、ここで対照的に描かれているのがペルシャ王のダレオス3世ですね。
ダレオス、あーいましたね。
彼は豪華な戦車に乗ってはいるんですけど、体勢を崩して何か必死に逃げれようとしている感じなんですよ。
あららー、逃げてる。
この構図がすごく巧みで、左のアレクサンダーの前進する力強さと、右のダレオスの配送する混乱、これが画面上で鮮やかな対比を生み出しているんですね。
なるほど、勝者と敗者がはっきりわかるように。
そうなんです。ダレオスの周りのペルシャ兵なんかは、もう統制を失って、まさに雲の子を散らすような感じで。
あー、見てるだけで戦況がわかりますね。
ええ、一目ら全然わかるようになってます。
で、そうした主役たちだけじゃなくて、画面を埋め尽くしているその他大勢の無数の兵士たち、これもすごいんですよね。
これがまたすごいんですよ。一人一人は本当に小さいんですけど、その描写がまた。
どんな感じなんですか?
剣を振るうもの、槍で突くもの、倒れるもの、踏みつけられているもの、もうなんか地獄絵図みたいなんですけど。
うわぁ。
でも目を凝らしてみると、苦痛とか恐怖、怒り、あれはまだ残っている勇気とか、そういう多様な感情まで描け分けられているって言うんですから。
歴史的背景と意義
え、そんな細かいところまで?
そうらしいんです。もうちょっと気が遠くなるような細密さですよね。
信じられないですね、それは。
その細密描写をさらに際立たせているのが、多分色彩の豊かさだと思うんです。
色彩ですか?
はい。全体にすごく鮮やかで、多様な色が結構大胆に使われてるんですね。
例えば兵士たちの鎧とか武器には、銀色とか金色が効果的に使われてて、ドゥヌイ金属光沢を放っている。
金属感がありますね。
あと衣服には赤とか青、黄色みたいな原色が多用されてて、戦場のエネルギーとか視覚的な興奮を高めてる感じがします。
鮮やかですね。
それから空の色彩もすごく印象的で。
ああ、あの不思議な空ですね。
そうです。深い青とか渦巻く灰色、あと太陽の周りにはなんか神々しい金色が使われてたりしてて、幻想的で、どこかこの世のものじゃないような雰囲気を出してるんですね。
確かに。
一方で山岳地帯は茶色とか灰色、緑といった比較的落ち着いた自然な色合いで描かれてて、風景画としてのリアリティもちゃんと持たせてる。
なるほど。場所によって使い分けてるんですね。
ええ。色材が場面の雰囲気とか感情をすごく豊かに表現してる。そういう良い例だと思いますね。
しかしまあこれだけ壮大で、これだけ緻密な絵を、なぜアルトドルファーはこの1529年という年に描いたんでしょうね。
その当時の時代背景とか何か関係があるんでしょうか。
ああ、それはすごく重要な点ですね。1529年。
はい。
この年、ヨーロッパ、特に神聖ロマ帝国、まあ今のドイツとかオーストリアあたりですけど、ルネサンス文化が花開く一方で、東から非常に大きな脅威に直面していた時代なんですよ。
東からの脅威?
ええ、それはオスマン帝国です。
ああ、オスマントルコ?
そうです。まさにこの絵が描かれた1529年には、オスマン軍による第一次ウインホーイっていう大事件が起こってるんです。
ウインホーイ、じゃあまさにその年じゃないですか。
そうなんです。だから当時の人々にとって、東の強大な異京都の帝国っていうのは、もう現実の差し背もった脅威だったわけですね。
うわあ、それはただ事じゃないですね。
ええ、そう考えると、アレクサンダー大王が古代において東の強大なペルシャ帝国に勝利したというこの主題は、単なる歴史物語以上の何か特別な意味を持っていた可能性が高いですね。
と言いますと?
つまりアルトドルファーがアレクサンダーの英雄的な勝利を描くことで、同時代の人々、つまりオスマン帝国の脅威にさらされているキリスト教世界の人々を勇気づけてこぶしようとしたんじゃないかと。
なるほど。忘れてはいけないのが、この絵はただの歴史画じゃないっていう点ですよね。
そうなんです。
アルトドルファーの作品の特徴
さっきもちょっと話に出ましたけど、同時にアルトドルファーの得意分野である風景画としてもものすごく素振れている。
まさにそこがこの作品のユニークさであり価値を高めている点だと思いますね。
アレクサンダー大王もの戦いはアルトドルファーの代表作であると同時に、北方ルネサンスにおける風景画の一つの到達点として非常に高く評価されています。
風景画としても金字塔なんですね。
ええ。壮大な自然のパノラマと歴史的な大事件のドラマチックな描写、これがこれほど高いレベルで融合している例っていうのはなかなかないと思います。
へえ。
現在はミュウヘンのアルテピナコ提供で見ることができますけど、実物を目の前にするとやっぱりそのスケールと細密さに圧倒されますよ。
見てみたいですね。
ええ。でもここで改めて考えてみると、ちょっと不思議じゃないですか。
不思議というと?
一方で、さっき言ったみたいに宇宙的な広がりを感じさせるほどの壮大なスケール感がある。
はい、あの空とか。
で、もう一方では兵士一人一人の表情まで描き分けようとするような極限的ともいえる細密描写がある。
うんうん、あの無数の兵士たち。
このともすれば反するような二つの要素をアルトドルファーはどうやって一枚の板の上に共存させることができたのか、技術的にもそして画家の意図としても非常に興味をそそられる問いだと思うんです。
確かにそうですね。
壮大さと細密さ、普通はどっちかに寄りそうですけど、両方極めてるっていうのがすごい。
ええ。
本当にまあこれだけ情報量が多い作品ですから、言葉だけでそのすべてを伝えるっていうのはなかなか難しいですよね。
そうですね。
私たちが今こうして話していることも、実際の絵が持ってる迫力とか豊かさのほんの一部に過ぎないのかもしれないです。
それは否めないですね。
でも、だからこそ今回のような詳細な解説を手語りにするっていうのはすごく意味があると思うんです。
なるほど。
あるいは音声ガイドとか、触覚で理解できる模型とか、そういうものも作品の多層的な魅力を解き明かす助けになるんですよね。
ああ、そういうツールも有効なんですね。
こうしたツールって視覚に障害のある方はもちろん、私たち誰もが普段なんとなく見過ごしがちな細部に気づいたり、作品への理解を深めたりする上でとても有効だと思うんです。
多角的な視点を持つことで、鑑賞体験っていうのは格段に豊かになりますから。
なるほどな。いろんなアプローチがあるんですね。
では、これらすべてを踏まえて、このアレクサンダー大王の戦いっていう作品の本質というか、一番大事なところって何なんでしょうか。
今日話してきて見えてきたのは、これが単なる戦いの記録じゃないっていうことですよね。
まさにそうですね。
古代の英雄物語があって、息を呑むほど美しいけど、どこか不穏なあの風景があって、顕微鏡で見るかのような精密描写があって、
そして描かれた時代の社会状況とか、画家の思いみたいなものが響き合っている。
そうですね。
これらすべてがもう分かちがたく結びついた驚くほど多層的な傑作だと、そういうことになりそうですね。
素晴らしいまとめだと思います。
戦いと空の象徴
いやー、今回はアルブレヒとアルトドルファーのアレクサンダー大王の戦いに秘められた歴史、風景、驚異的なディテール、
そして時代背景といった本当に様々な側面に光を当ててきました。
一枚の絵の中にこれほど豊かな世界が広がっているとは改めて驚きです。
本当に知れば知るほど奥深い作品ですよね。
ええ。
最後にリスナーの皆さんにも一つちょっと考えてみていただきたい問いがあるんですが。
おお、何でしょう。
先ほどから話に出ている異様なまでに壮大な空です。
ああ、あの空。
解説文ではまるで宇宙空間のようと表現されていましたけど、
なぜアルトドルファーは地上のこの生々しい人間の戦闘の上に、
これほどまでに現実離れした広大無変ともいえる空を描いたんでしょうか。
確かに改めて考えると不思議ですね。
これ単なる背景じゃないのかもしれないなと。
と言いますと。
もしかしたらアルトドルファーはイッソスの戦いというこの特定の歴史的な事件を、
もっと大きな、普遍的な、あるいは神とか運命とか、
そういう人知を超えた力が作用する広大な文脈の中に置こうとしたんじゃないかって思うんです。
ああ、なるほど。
この宇宙的ともいえる空の下で繰り広げられる人間の営み、
それは歴史とか運命、あるいはこの世界における人間の存在そのものについて、
アルトドルファーが私たちに何かを問いかけているようにも思えるんですね。
深いですね。
地上の激しい戦闘と天井の壮大なパノラマ、この二つの関係性について、
あなたならどう考えますか?
というのをちょっと思いを巡らせてみていただけると、また違った見方ができるかもしれません。
なるほど。
地上の戦いと天井の光景、その対比の意味するところ、これは考えさせられますね。
ええ。
この探求の後もぜひ皆さん自身の目で、そして心でこの絵ともう一度向き合ってみてください。
今回はアルトドルファーの傑作への旅をご一緒できてとても刺激的でした。
ありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
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