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飛鳥山の窓から、TOKYO NORTH MOVEMENT。
東京都北区飛鳥山。暖炉のある小篠光洋さんの部屋には、未来を思うさまざまな人たちが遊びに来ます。
情熱とアイデアが交錯した素敵なおしゃべり。さあ、今夜はどんな話が飛び出すんでしょうか。
教科書編集のプロセス
こんばんは、小篠光洋です。今週も引き続き、東京書籍理科編集部の森田さんをお迎えしております。
普段聞けないような教科書の編集のお仕事について、今週は伺ってまいります。森田さん、今週もよろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
さてですね、まず教科書編集というお仕事そのものについて伺いたいですが、普段はどんな業務という感じなんですかね。
そうですね。まず教科書って4年に1回出版されるんです。
なるほど。
4年から時に6年ぐらいかかることもあるんですけれども、なので結構時期によって違うなという感じですね。
なので今とかは結構調査ですかね。今使われている、現場で使っていただいている教科書の調査ですね。
どういうふうに使い勝手ですとかを授業を見に行ったりですとか、先生にインタビューをして話を聞いたりみたいなことをやってますね。
それと今4年という単位を伺いましたけど、この頃はもう本当に特に理科系の技術にしても、その技術を使って調べることについても日進月歩なんで、その辺のサイクルについて追いつかなきゃみたいな感じはあるんですか。
正直小学校の理科だと本当にベーシックなものなので、そんなに変わらないですよね。
多少文科省側の学習指導要領の関係でちょっと変わってくるみたいなのはあるんですけど、そんなにドラスティックに変わる感じじゃないですよね。
高校に行ってようやくそういうのがガラッと変わったりするようなことは多少あるかなぐらいですかね。
そういうときはなんですか。保位板みたいなのをつけたりとか。
そこまで、もうちょっとちゃんと確定してからじゃないと。
学問としては結構成熟してからじゃないと、進化の話とかもそうですけど、そこを扱うのにやっぱり慎重になりますね。
その辺は先生がフォローするというか、考え方も含めてという感じになるんですね。
なんでもかんでも全部教科書に押し込んじゃうって感じではないということですね。
なるほど。東京市のときに森田さん入社されてから一つ一つお仕事を積み上げられてきたと思うんですけど、初めてのお仕事、印象に残っているお仕事は何かあります?
入ったとき私、今小学校なんですけれども担当が中学校の理科のほうに配属されて、生物の担当になって、
ちょうどそれが教科書出る直前1年前だったのかな。なので結構大変は大変だったんですけれども、初めての。
でもそのときに結構いろいろ任せてもらって、覚えているのが導入のところ、中学校とかでも結構バーンと写真載せるんですけど、
そこに自分は動物好きなんですけど、それもあって北極熊の事例を入れて、それの取材がすごい大変だったっていうのは覚えてますね。
手順としてちょっと教えてほしいんですけど、まずコンセプトというか、それを作って、それを肉付けしていくように取材をしていって、
つまり教科書もいっぱいいろんなカテゴリーがあるじゃないですか。生き物のこともあるし、天気のこともあるしみたいな。
それっていうのは縦割りに分担されているんですか。
デジタル教材の導入
そうですね。中学だと物理、化学、生物、地学で担当が分かれていたりはしますけれども。
小学校だとそれがごちゃめというか。
そういう程度ごちゃ混ぜですし。
それは分担があって、何ページから何ページがここの頃だったり。
そうですね。
なるほど。それで常にそういうものを深掘りしながら作っていって、擦り合わせていって絶対読まれていくみたいな。
教科書の場合は執筆者が先生なので、小学校の先生なり大学の研究者の先生なので、
そういう先生方を集めて会議を、編集委員会という会議をするんですけれども、その中でいろいろ内容を決めていくというような形ですかね。
そうすると普段編集長としてのお仕事というのは、先生とそういうコミュニケーションしながら、
こんなの面白そうですよねとか、そういう話を、割と漠然とした話をしながら積み上げていくみたいな感じですかね。
そうですね。
先生からも、この頃こういう話がやっていると興味持つんだよねとか。
そうですね。例えば、内容に紐づいた話を、結構具体的な話をしていくという形ですかね。
水溶液という単元があったら、その水溶液の内容を学ぶために、どういう展開にしていったらいいかみたいな話を、具体的な話をしていく感じですね。
先週伺ったように、それが子どもたちの生活からあまり離れないように。
そうですね。
水溶液のこういう料理の話にくっつけようかとかみたいな。
そうですね。そういうイメージです。
なるほどね。なんか楽しそうですね。
そうですね。楽しいですね。
先生、現場の先生と話すのはやっぱり楽しいですし。
そうすると、4年のサイクルという中で、実際に教科書を一冊作るのに、まず最初に4年後を目指して書いて作っていこうといって、どのくらいトータルで時間をかけてやっているんですか。
本当に作っているのは2年ぐらいですかね。2年ぐらいで文科学省に提出をするんですね。検定のために。
そうかそうか。
なので、内容としてはそのタイミングで。そこからもう2年かかるんですけど、出るまでに。という感じですね。前半の2年で作っていくというような感じですかね。
なるほど。それでその後半の2年というのは、もうある意味、次のものの準備というか、最初のネタ集めみたいなのを。
それもやりますし、あとは検定というのがあるので、文科省から意見が来るんですね。ここちょっと間違ってますとか、そういうのの対応をしたりですとか、あとは教師用の指導書というのがあって、先生向けの教科書みたいなのがあるんですけども、それを作ったりということですね。
子供たちの反応
そうかそうか。骨格というか子供たちのものがまとまると、今度は先生がどういう教え方をされたらいいかというガイドというか、そういう要領書みたいなものを作っていくという作業になるんですね。
先ほど現場の先生とのコミュニケーションというお話は伺ったんですけれども、子供たちの声というのはどういう感じで収集するものなんですか。
そうですね。小学生の場合はインタビューとかがなかなか難しいんですよね。試みたことはあるんですけれども、やっぱりなかなか言語化が難しいので、そこはやっぱり授業を見に行くということですね。
学校に入っていって、いろんな授業を見て、それを観察して、ここでこういうことを言うんだとか、ここちょっと分かりづらそうだなというようなことを見るということですかね。
それと先生から子供たちの様子を聞くという、その大きくはその2パターンですかね。
先週も伺いましたが、この頃はQRコードがすごくここにあって、これをバジッとやると動画に行ってみたりとか、それからより詳しい解説に行ってみたりというふうに、前に僕、書籍さんに伺って見せていただいたことがあるんですけれども。
どうですか。これが結構大変でしょう。
大変ですね。
文字のところだけ作っているならいいけれども、多分著作権とかややこしい話も出てきたりとか。
そうですね。純粋にそこがプラスになっているので、今までとは今までなかったものを作らなければならないので、そこは負担は負担ですね。
どうですか。先生方にとっても、より豊富にいろんな可能性というのは広がると思いますけれども、結構やっぱりどう活用するかがなかなか難しいような気もするんですけれども。
そうですね。そこはなので、提示の仕方というのは結構工夫をしているところではあるんですけれども。
そこもだから指導要領的なものにこんな使い方がありますみたいな。
指導省ですか。
指導省ですね。
そうですね。流れの中で使っていただけるような形で、子どもたちが見れるような形でやっているという感じですかね。
子どもたちが結構QRコード面白がって、ジョブジョブチチチやりながら見たりとかっていうのはあるのかしら。
それはそれでありますね。子ども、QRコードに限らず、今1人1台端末持っているので、小学生も中学生もそうですけど、文房具のように当たり前に使っているという実態があるので、だから普通に必要なときに使っているなみたいな、そういう感じですかね。
教科書のデジタル化と仮想現実
なるほどね。教科書って、先ほど言ったように4年に1遍の改定の中で、それを繰り返していく形になるんですけれども、逆に改定して変えた、それは変えたほうがいいと思って変えるんですけれども、一回り二回りしたら、いや、変えないほうが良かったなとか、変えたくなかったんだけどとか、ちょっと言いにくいかもしれないけど、そういうのってあるんですか。
それはあんまりないですかね。やっぱり同じように見えても、ちょっとずつ前進していくというか、よりわかりやすく、より伝わりやすくというようなことを意識してやっているので、昔の教科書はやっぱりすごく工夫されているなと思いますけれども、そこからだんだん前進しているなというのはやっぱりあるはありますかね。
僕は小学校の生物っていうとやっぱりすごく印象に残っているのは解剖実験なんですよね。
船を、教科書に船の解剖の図が出てて、それを実際に小学校の観察池から取ってきて、船を解剖してとかね、それからカエルもコイルしてとかってこうやったもんですよ。
実際に兆候を出してとかね。今はないでしょ、それは。ないですよね。ないですよね。ないんだけど、こうやって先ほどの気荒なことじゃないけれども、仮想現実みたいなものの中でやれるっていうのはこれから出てくるわけじゃないですか。
そうですね。
そういうのは何か少し短所というか目みたいなのはあるんですかね。
そうですね。シミュレーションみたいなものはやっぱり先生方よくご活用いただいているなという印象はありますけどね。
だって極端なこと言えば人間だってできるようになったわけだから。
そうですね。
我々のところは人間の機関みたいなのはこれは人間で言うとなんとかって言って、カエルなりなんないでやったわけだけど。
でも実際にやるのとコンピューター上で見るのは全然違うと思うので、とは思いますね。
そうですね。
実体験の方がやっぱり大事だろうなというのは大前提としてあると思います。
それで最後にみんなでお墓を作って、お祈りというか弔うところまでやるみたいなことを僕らやって。
だからすごく命に関する感覚っていうのが何とも言えない。
それで心優しい人間になったかどうかわかりませんけれども。
でもなんかこう自分たちの勉強のために彼らが命がなくなっていくんだみたいなね。
そういうのはすごくさっき言ったようにふわっと生物っていうもしくは理科っていうものを学ぶという依然というか、それ以外のものを感じたような気がしますけどね。
別に解剖にこだわるわけじゃないんですけれども、
そういう教科書を作るプロセスの中で子どもたちにそういうものを感じてもらえればみたいな。
そうですね。
生命愛護みたいなことは常にやっぱり意識はしてはいるので、植物を取ってきたら観察終わったらまた戻しましょうとか、元に行った場所に返しましょうみたいなことは大事な視点かなとは思ってますけどね。
東京書籍の教育理念
なんか命を慈しむみたいなことがね、特に生物の分野で言えばね、子どもたちが感じ取ってもらえるってすごく大事なことのような気がしますよね。
やっぱり実際触れ合ったりっていうのは大事かなと思いますけどね、生き物と。
ただ生きてるものを可愛い可愛いって言ってるだけじゃなくて、命が限りあるものであって、それが循環していくために生物の多様性を認めていかなきゃいけない。
そうですよね。
そんな風になっていくとね、面白いなと思いますけどね。
東京書籍の教科書、これ昔から新しい理科っていう名前なんですけども、だからこその強み、特徴っていうのがあれば教えていただけますか。
そうですね。
やっぱり先ほどからちょっとお話はしてるんですけども、実際に授業を見に行って先生方に徹底的な話を聞いて作ってるので、そういうところに裏打ちされたその使いやすさというか見やすさみたいなものは強みかなというふうには思ってますね。
それはよくご評価いただくところですかね。展開がわかりやすいとかっていうようなことを。
現場の声をしっかりと聞いて、それを表現に落とし込んでいってるっていうね。
そうですね。
これはやっぱり東京書籍の伝統の力がある。
そうですね。
なるほど。ありがとうございました。
これだけ時間と知恵が詰まっている教科書を、なんと声で表現しようと森田さんは昨年からポッドキャストを始められていると、こういうふうにスタッフが書いておりますので、
次週はこのお話を伺ってまいりたいと思います。来週もどうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。