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2020-03-13 12:22

短歌のセカイの歩き方 46【西村曜】コンビニに生まれかわってしまってもクセ毛で俺と気づいてほしい

内気な気持ちが可愛く思える短歌をご紹介します。社交的が良しとされがちだけど、短歌を通じて内向的な感情の魅力を一緒に見てみましょう。【西村曜】コンビニに生まれかわってしまってもクセ毛で俺と気づいてほしい
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こんばんは、若奈です。
このポッドキャストは、毎週一つの短歌を取り上げて、短歌のセカイの楽しみ方をお話ししています。
毎週金曜、夜8時に配信しています。
1週間の終わりの息抜きになったら嬉しいです。
今回は、内気な気持ちが可愛く思える短歌をご紹介します。
社交的が良しとされがちですけれども、短歌を通じて内向的な感情の魅力を一緒に見てみましょう。
コンビニに生まれ変わってしまっても 癖毛で俺と気づいてほしい
コンビニに生まれ変わってしまっても 癖毛で俺と気づいてほしい
今回は、西村あきらさんのコンビニに生まれ変わってしまっても 癖毛で俺と気づいてほしいをご紹介します。
最近はですね、2000年以降に発表された超近代短歌をですね、ご紹介しているんですけれども、
今回も2018年発表の歌集、コンビニに生まれ変わってしまってもという歌集に収録されている短歌をご紹介したいと思います。
これね、私この短歌を最初に読んだ時に、なんとなくですけど、引きこもりの人を想像したんですね。
この短歌に引きこもりっていうキーワード、それを連想させるようなキーワードって一つも入ってないんですけど、
なんとなくこういうこと言う人って引きこもってる人なのかなって勝手に想像していて、
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なんかすごく内向的じゃないですか、コンビニに生まれ変わってしまってもっていうそもそもの設定がまずありえないことだし、
なんかね、普段外に毎日出かけてる人が、俺がコンビニに生まれ変わってもっていう発想はあんまり出てこないような気がするんですよね。
なんでそういうふうに思ったかはわからないんですけど、なんかそういうふうに感じてですね、
コンビニっていうワードもそうなのかな。
例えば俺がディズニーランドに生まれ変わってもとか、そういう感じだったら、俺が山に生まれ変わってもみたいな感じだったら、ちょっと外に出てるようなイメージはあるんですけど、
コンビニっていうのがそもそもすごく、どこの家も近くにコンビニがあるので、生まれ変わる対象としてもすごく身近なものだし、すぐに行けるようなものだし、
中夜問わず24時間やってるので、昼夜っていう感じもあんまりしないし、だから日中の明るさみたいなのもあんまり感じないんですよね。
24時間ずっと同じ明かりが灯ってるっていう、そういう規則正しい生活とはちょっとかけ離れたような存在なんですね。
イメージ的にコンビニっていうのが。
だからなんとなく毎日朝起きて、外に出て日差しを浴びて、日が落ちたら家に帰って、夜は寝るみたいな、そういう生活をあんまり想像できなくて、それでなんか引きこもりの人の歌なんじゃないかなって思ったんです。
しかもコンビニっていう無機質なものに生まれ変わるっていう設定もすごく普通じゃない感覚だし、しかもくせ毛で俺と気づいてほしいって言ってるんですよね。
コンビニにくせ毛ってないじゃないですか。
コンビニってね、髪の毛生えてないからそもそもくせ毛も何もね、ただのコンクリートの四角いつるっとした箱なんですけど、くせ毛で俺と気づいてほしいって言ってて。
なんかその自分からはアピールしないんだけど、相手にわかってほしいっていうなんかそのたりき本願な感じも、なんとなく引きこもりっぽいなーって思っちゃったんですよね。
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思っちゃったって別にそれが引きこもりがダメっていうわけじゃなくて、なんかそういう引きこもりの人の愛おしさみたいなのがあるなっていうふうに思ったんです。
それはなんだろう、今自分が有機物として生物として存在しているのに、無機物と有機物だったらなんとなく有機物の方が有意義なイメージ、自分の意思で動けるし、
自由度が高いじゃないですか、ただの箱になっちゃうよりも動ける人間である方が自由度が高いのにコンビニに生まれ変わってもっていう想定をすることがそもそも、
普通に人間として活動できる人だったら、動けなくなって同じ場所にずっといなきゃいけないコンビニに生まれ変わるってすごく不自由になることだけど、
多分この人は動ける今の自分が自分も不自由だと思ってるんですよね。だからその動けなくなっちゃうコンビニに生まれ変わってもっていう想定ができるのかなっていうふうに思いました。
しかも、だけど、しかもじゃないわ、だけどそのコンビニに生まれ変わってつるっとした箱で一生誰にも俺だよっていうことを気づかれずいていいとは思ってなくて、やっぱり俺って気づいてほしいっていうその気持ちがあって、人間っぽい気持ちがあってね。
だって本当にコンビニに生まれ変わったら、俺って気づいてほしいなんてそんなことすら思わないわけですよね。
だけど気づいてほしいんですよね。だから本当は俺のことを見てほしいって、わかってほしいっていう気持ちがあるんだけど、なんかそれが人間である今うまく表現できなくて苦しんでいて、
だからなんとなくこういう意地らしいことを言うのかなっていうふうに思ったんです。
だからなんかコンビニに生まれ変わってしまってもコンビニにあるはずのないくせ毛でね、あのくせ毛は誰々君のくせ毛だって、じゃあこのコンビニは誰々君かっていうふうに気づいてほしいって言って、
すっごく意地らしくてすごく可愛い気持ちだなっていうふうに思いました。
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これって先週ご紹介したみたいに着ぐるみを着せるっていうことだと思うんですよ。
みんなに理解されないマイノリティの気持ちの着ぐるみを今まさに自分は着せられていて、
着ぐるみが何のことかわかんないっていう人は是非前回のですね、本村ひろしさんのインタビュー記事をご紹介した回を聞いてみてほしいんですけど、
マイノリティの気持ちをあたかも自分のことのように体感できるっていう、今なんかそれを体感させられているような感じで。
社交的にね、なんか俺俺とかって、おい俺だよ俺だよとかって言える人はいいんですよね。
そういう人は別に単価なんか読まなくたって、俺俺って言えばいいんですけど、
この人はそれができなくて、できないわけですよね。できなくて、だけど本当は俺だって気づいてほしい。
俺がいるよって、俺が生まれかってコンビニになったよって気づいてほしいけど、それをアピールすることができなくて、
せめてね、クセ毛を生やして、ほら俺のクセ毛だよ気づいてっていう、なんかそういう切ない気持ち。
なんか意地らしくて、だってね、俺っていう方が楽で、コンビニにクセ毛を生やすってすごく労力で、
そもそも労力かけたからって生えるものでもないんですけど、すごくまどろっこしいやり方じゃないですか。
だけどそうまでして、俺だって気づいてほしいっていうのがね、本当に可愛いなと思って。
だからなんかこれってね、なんかちょっとこう殺し文句というか、なんか好きな男の子にこういうこと言われたら、
なんか思わず分かったって、なんか頷いちゃう不思議な力があるなって思いました。
いかがでしたでしょうか。
今回は西村あきらさんの、コンビニに生まれ変わってしまってもクセ毛で俺と気づいてほしい、をご紹介しました。
単価の世界の歩き方は、毎週金曜夜8時に配信しています。
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また来週金曜夜にお会いしましょう。
それでは、おやすみなさい。
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