前回の話の続きで、業務委託の仕事の代表として知られている某フードデリバリーサービスの業務形態は、雇用なのか業務委託なのか、様々な視点から社労士×社労士で語りました。
業務委託=自由? その前に知っておくべき「請負契約」の落とし穴
業務委託という働き方が一般化している昨今、建設業や配達業などの現場では「請負契約」という形式で仕事が回されています。本来、受け負いとは“成果物”に対して報酬が支払われるものであり、いつ働くか・どのように作業するかは請け負った側の自由のはず。しかし実際は、「○時に現場集合」「土日は出てください」など、雇用に近い働き方をしているケースも多く、実態と契約内容にズレが生じています。社会保険の加入義務や労基法の適用がされない働き方で、実際には従業員と変わらない働き方をさせられているとすれば、それは“偽装請負”と判断される恐れがあります。
「消費税の処理」からバレる“偽装”
労務の観点に加えて、税務上も「業務委託契約」は厳しい目で見られます。特に重要なのが“消費税”。本来、業者に仕事を発注した際には報酬+消費税が発生し、受け取った業者はそれを国に納める必要があります。しかし、偽装請負的な契約が増えると、この消費税処理が不自然になり、税務署のチェック対象になることもあります。たとえば、時間単位で給与的に支払っているのに「請負工事一式」として計上していると、あとから「それは実質的に給与だ」と指摘され、追徴課税を受けるケースも。社会保険とあわせて、“税務の視点”からも偽装のリスクは無視できません。
「一人親方」や下請け社長も“労働者”になる可能性がある?
元請け企業から業務を受ける下請けの社長やフリーランスも、働き方によっては「実質的な従業員」とみなされる可能性があります。たとえば、「毎日この時間に来て」「会社の車で動いて」「社内ルールに従って」といった指示を受けている場合、形式がどうであれ内容が“雇用”に近いと判断されることがあります。このようなケースでは、たとえ代表者であっても労災や社保の適用対象とされる可能性があり、元請け企業にとってもリスクとなります。契約書の形式に安心せず、実態と契約が一致しているかを常にチェックすることが大切です。
学校で教わらない“働き方のルール”を知らないと損をする
業務委託や請負といった働き方は、学校では教わる機会がありません。そのため、新卒や転職希望者の中には「業務委託って自由に働けるんですよね」といった漠然としたイメージで契約してしまう人もいます。しかし実際には、「自由」には自己責任がつきまとううえ、保険や保障が弱くなることも多く、リスクを伴う働き方です。「入社後3ヶ月は業務委託で様子見」など、会社側が曖昧な制度設計で濁しているケースもあります。本来“入社”と“業務委託”は両立しない概念であり、言葉遣いに騙されない知識が求められます。
配達員やライダーも“働き方改革”の焦点に? 法の抜け穴と命のリスク
近年増加している“黒いバッグを背負った配達ライダー”たち——通称E社やU社の配達員たちも、多くが業務委託契約。働き方の自由度はある一方、事故に遭っても労災保険の対象外であるため、現場では自己責任が重くのしかかります。さらに、業務委託であれば適用されるべき「貨物自動車運送事業法」なども、原付バイクや自転車の場合は適用対象外で、アルコールチェックや運行管理がなされない状態。結果として、安全面でも法の網の目をすり抜けた“グレーな働き方”が生まれている実情があります。
「自由な働き方」を選ぶなら、リスクも自覚しよう
業務委託は決して悪ではありません。むしろ、組織に属さず自由に働きたい人にとっては理想的な形とも言えます。ただし、それは“きちんと自分の責任で選ぶことができた場合”に限ります。契約内容が正しく理解されず、雇用との違いを知らないまま契約を結んでしまえば、不利益を被るのは働く本人です。自由と責任はセットです。これからの時代、自分の働き方を選ぶ力と、契約を見抜く知識こそが最も重要な「自己防衛術」なのかもしれません。
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サニーデーフライデーは、社会保険労務士として活動する田村が普段のサムライ業という固いイメージから外れ、様々な分野で活躍する方やその道の専門家・スペシャリストと語るトーク番組です。
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パーソナリティー:田村陽太
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナー等のPRブランディング事業も手掛ける。
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