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2024-07-16 08:03

#22📕育休世代のジレンマより朗読

自己責任、個人の問題、で思考を止めてはいけない。
その背景にある構造を研究し言語化し、社会にアクションしていくことの意味と大切さを感じた一冊。

2014年9月20日出版 中野円佳 著
『育休世代のジレンマ~なぜ女性活用は失敗するのか~』
著者あとがき部分を朗読

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📕育休世代のジレンマ 中野まどかより
おわりに
私の経緯
大学時代、ジェンダー関連の発言をしている女性が理解できなかった。
女を扱わないと食っていけないような女にはなりたくなかった。
いつも隣にいて、肩を並べて、良心や将来について語り合い、
励ましあったり、傷を舐めあったりしてきたのは男友達だった。
幼少時代からサッカーを子より仲良いし、
女の子のグループが苦手で距離を取ってきた私は、
自分が学校や世界で評価される上で、
女であることを強く認識することを避けてきた。
私、自分が女であることに気がつくのが遅すぎたんですよ。
そう言うと男性や多くの女性は、
え?どういうこと?とちょっと笑う。
ほんの一部の自分と同じような質の女性は、
うんうん、それわかる。とものすごく深く、
何度も首を縦に振ってうなずく。
私が付き合いの長い男友達の一人から、
おいおい、どうしたんだよ。
一発のフェミニストみたいなことを言い始めて。
と言われたのは妊娠の前だったか後だったか。
入社5年目、結婚した途端に、
私の扱いを変えた人達がいた。
それまで、スーツは基本パンツスーツと決め、
ろくな化粧も髪を整えることもせず、
職場のソファーで仮眠を取り、
どんな仕事でも引き受け、
飲みの場でも会話についていこうとしていた。
女であることを決して同等に評価されたかった。
それが全て無駄だったかと思えるような、
お前はもう結婚したから飲み会には呼ばない、
というような独身女と既婚女への対応の違いに、
自分という人間に対する成果や評価が、
自分に張られた女というカテゴリーによるものだったのか、
自分の努力や能力によるものだったのか、
全く自信がなくなった。
同時に、女であることを引き受け、
女であることを含めて評価されることしかない、
ということをようやく理解した。
そうして、結婚・妊娠後に、
数々の初めて出会う女扱いに戸惑う中、
多くのことを分かち合ってきたはずの男友達と、
決して越えることができないと感じるような、
距離を感じるようになった。
うまく説明できないこと、
説明する気が起きないこと、
説明しても分かってもらえないことの多さに、
愕然とした。
私は彼らに説明できる言葉を持っていなかった。
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一方で、初めて、
これまでゆるりと付き合ってきた、
女友達と真剣に語り合うようになった。
彼女が経験してきたことを深く聞き、
自分の経験を話すということをするようになり、
経営し続けた女子会なるものを、
自ら企画して開くようになった。
女子が語る内容は、私にとっては全て新鮮で、
全部録音しておきたいくらい多くの発見を含んでいた。
上野千鶴子によれば、
私が最も素縁な女とさえ共有できる問題が、
最も親密であるこの男には分からないんだ、
という経験、
彼女が嫌いしていた女の問題に私を踏みこませた。
しかし、一方で、
女の問題として、
女の我慢と女子会の愚痴で終わるだけでは、
世界は変わらない。
多くの女性が、
代弁者を求めているようにも思えた。
夫や職場の上司にうまく説明ができない、
うまく戦えない、分かってもらえない。
政府が女性活躍を打ち出してから、
女性の募集を組んでいる。
一方で、女性活用が叫ばれるほどに、
企業の本音としての権利主張ばかりして、
ぶら下がる、甘えている、
お荷物の女性社員について厳しい視点も見え隠れする。
しかし、男性にぶら下がり社員はいないのか。
同割合いるとしたら、
女性だけ目立っているのは、
女性の母数が少ないからではないか。
女性の方が男性よりも割合が高いとしたら、
それはなぜなのか。
ケア責任が女性に圧倒的に偏っていることはもちろん。
ぶら下がる男女は同数いていいはずだが、
そうでないのは、
作られた社会的な政策によるものではないか。
就職時点、妊娠前後で、
甘える方の選択を有力にしてしまう構造があるからではないのか。
といったことに答えようとする論調は、
一切と言っていいくらい見当たらなかった。
本調査へ出てくる女性たちは、
ほとんどが20代のうちに、
総合職という仕事、
夫と子供を全て手に入れており、
その観点からは完全な勝ち組である。
そんな恵まれた状況で、
行きづらい、などと口走れは、
いろいろな方向から贅沢者と責められそうだ。
そもそも、大企業の総合職なんか、
世の中の超少数派であって、
そういう世界の狭いくだらない競争社会を下りることを、
問題みたいに取り上げることが間違っている。
というのも、まっとうな意見だと思う。
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しかし、それでもそこには、
悔し涙があると私は言いたかった。
この論文は、
第一に、同じように涙を飲んでいる女性に読んでもらいたかったが、
そんな涙の存在に思えもよらない人たちにも、
ぜひ読んでほしい。
今まで、あの人は勝ち組だから、
遠距離を置いていた女性には、
実はここに出てくるような女性たちと、
問題や行きづらさを共有することができて、
場合によっては、
一緒に戦うこともできるのだと思ってもらったらいい。
女はみんな、ああ、だな、とか、
ああ、両立が大変なのね、とか、
女の幸せを追求できてよかったな、
なおとぼんやりと一括りに見ていた男性人や企業経営者には、
女性の置かれた状況や抱えている思いの複雑さを知ってほしい。
今もバリキャリーであり続ける男並み女性には、
自分がいかに頑張ってきたかを誇ってもらえたらいい。
でもそこには、男並みになれなかった女性への
別視ではなく、共感を覚えてもらえたらいい。
こんなことを研究して世の中は変わるの?
社会を変えられると思っている時点では分かるよね。
世間の見方なんて変わらないよ。
期待する方が間違っている。
そういう言葉を投げかけられることも多かった。
でもこの研究は最初から学位を取るためのものではなく、
広くいろんな人に読んでもらいたいと思って始めた。
社会を変えるためであり、言論の論挙になってほしい。
いろんな人がこの論文を使って反論できるようになったらいいと思う。
これ読んで、で説明がされればいいと思う。
誰かが批判発展させ、研究が深まればいいと思う。
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