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もしそれが良い考えなら思い切ってそれをしなさい
許可をもらうよりも謝る方が簡単だから
グレース・ホッパー
いちです おはようございます
このポッドキャストは僕が毎週お送りしているニュースレター
steam news の音声版です
steam news では科学、技術、工学、アート、数学に関する話題をお届けしています
steam news はsteam ボートのり組みのご協力でお送りしています
冒頭でご紹介したのは計算機科学者であり
アメリカ海軍の軍人でもあったグレース・ホッパーの
steam な言葉
人間やっぱり度胸ですね
(音楽)
改めましていちです このエピソードは2023年2月22日に収録しています
このsteam.fm エピソード119はsteam news 第118号から
アスキーアートの話題をお届けします
といってもアスキーアートを言葉で説明するのはとても難しいので
もし今スマホやパソコンを見られるという方はですね
アスキーアートで検索してみてください
もちろんご存知の方それから今車を運転中という方はこのまま聞いておいてくださいね
アスキーアートとは文字だけで描いた絵のことです
ネットで見かける顔文字もアスキーアートに含まれますが
複数の行をまたぐような縦に長い絵もよく使われています
メールでお送りしているニュースレターsteam news の方ではそんなアスキーアートの具体例もご紹介していますので
よろしかったらご覧になってくださいね
アスキーアートのアスキーとは
A-S-C-I-Iを続けて読んだもので
アメリカ標準情報通信用文字コード
アメリカンスタンダードコードフォーインフォメーションインターチェンジの略なんですね
これは1960年代のアメリカで
コンピューターを使った通信に使われる文字が集められたものなんです
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アスキーにはアルファベット26文字の大文字と小文字それから数字記号空白なんかが含まれていました
一言で言うとアスキーとはアルファベットと数字と記号ということですね
アスキー記号にはビックリマークとかハテナマークが含まれていますが
他に横棒、縦棒、スラッシュとバックスラッシュも含まれていました
このバックスラッシュっていうのはスラッシュの逆向きで
スラッシュ記号をちょっと頭に思い浮かべていただきたいのですが
右上から左下に伸びている斜め線ですよね
バックスラッシュというのは左上から右下に向かって伸びている斜め線です
この記号のおかげでアスキー記号だけを使って袋文字という文字を作ることもできました
アスキーアートの起源をたどるとタイプライターアートにたどり着きます
タイプライターアートというのはまだパーソナルコンピューターがなかった時代
タイプライターだけで絵を描いたものなんですね
タイプライターアートの伝統は現在でも続いていて
これはこれでとても聖地な絵が描かれています
こちらもよかったらネットで検索してみてください
タイプライターアートにはさらに起源があります
その一つが不思議の国のアリスなんですね
作者ルイス・キャロル本名チャールズ・ドジソンは不思議の国のアリスの第3章に
「コーカスレースと長い話」という詩を挟んでいるのですが
この詩が英語でいうところのコンクリートポエトリー
英語の詩をネズミのしっぽのように細長く成形して印刷したんです
「長い話」というのを英語ではロングテイルというふうに書きますから
それでテイルというのがお話としっぽと両方の意味があるのでしっぽの形にしたんでしょうね
もちろん不思議の国のアリスがコンクリートポエトリーの世界初というわけではなくて
その期限は17世紀までさかのぼるそうです
なんか面白いですね
さて日本にもアスキアートはあります
というよりも日本こそ本場なんじゃないかと思うぐらい
日本のアスキアートは独自の進化を遂げているんですね
その理由主に2つあると思うんです
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1つ目こちらはですね文字の種類です
英語圏はずっとアスキー文字を使ってきたんですが
日本ではずっと種類の多いジス文字を使うようになりました
ジスというのは日本産業企画
これは昔の日本工業企画のことですね
このジスが決めた文字の集まりがジス文字集合でよく使う漢字
平仮名カタカナそれに多くの記号が収められました
このためアスキアートの自由度が飛躍的に向上したんですね
そして2つ目これはもう偶然が重なったとしか言いようがないんですが
文字幅の文化が変化したことなんです
どういうことでしょうか
詳しくお話ししましょう
アルファベット文化圏では文字の幅は文字ごとに異なります
例えばMの文字想像してみてください
大文字でも小文字でも結構です
Mの文字横幅が広いですよね
ところが小文字のLこれ縦棒ですよね横幅がすごく狭いんです
葛字も文字ごとに幅が異なるので
英語文化圏アルファベット文化圏ではきっちり文章を組むと
文章の右端がガタガタになっていきます
でもこれはこれでOKなんです
これはこれでいいんです
現在はコンピューターの力を借りて両端揃えという
両端をきっちり揃える組み方も簡単になったのですが
古い印刷本、活版印刷の本だと右端が揃っていません
ただ右端を揃えなきゃいけないという文化はなかったので
特に不自然というわけではなかったんですね
葛字の場合だとこれでよかったんですが
問題はタイプライターが生まれたことでした
タイプライターは1文字タイプするたびに
紙を左へとずらしていきます
ただMを印字するときには大きく紙をずらして
Lを印字するときは小さく紙を動かすということは
タイプライターの機構が複雑になりすぎるため
当時のエンジニアは別の方法を考えました
そうなんですご想像の通り
全ての文字の幅を同じにしたんです
Mという文字もLという文字も
文字の幅を同じにしたんです
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これを遠幅フォントまたは遠幅フォントという風に呼びます
等しい幅と書いて遠幅ですね
どうなんでしょうね
コンピュータサイエンスの間では遠幅という読み方の方が
主流かなとは思いますが
遠幅という風に読んでも間違いではないというか
漢字の読み方としては遠幅の方が正しいのかもしれませんね
遠幅フォントはコンピュータにとっても扱いやすかったために
昔のコンピュータ、80年代とかのコンピュータは
遠幅フォントだけを内蔵していました
もちろん後でお話するような先進的なコンピュータは
この遠幅フォントだけではなくて
文字の幅が変化するようなフォントも扱えたのですが
一般的には遠幅フォントだけをかつては内蔵していました
今では活版印刷のような文字ごとに幅の異なる文字
これプロポーショナルフォントと呼ぶのですが
このプロポーショナルフォントを使って文章を書けますよね
おそらく皆さんが普段お使いのワードであるとか
excelであるとか、あるいはメールソフトですね
ここら辺みんなプロポーショナルフォントを使うようになっていますので
特に何も指定しなければプロポーショナルフォントを使っていると思います
でアルファベット文化圏のアスキーアートですね
このタイプライター文字で絵を描くというアスキーアートなんですが
こちらはコンピュータを使っていても遠幅フォントを使います
で日本のコンピュータもアメリカのコンピュータの真似をして
これ1980年代の話なんですが当初はアスキー文字を採用していました
まあ80年代というか70年代から80年代にかけてですね
でところがですねこの時代バックスラッシュ
つまり左上から右下へ抜ける斜線だけはどういうわけか真似をしなかったんです
まあおそらくバックスラッシュはめったに使わないということで
日本の円記号お金記号に置き換えられてしまいました
まあアスキー文字というのはアメリカの企画なのでドル記号はあるんですが
あの円記号がなかったんですね
で円記号ないとまあ日本で使うには不便だろうということで
何かその1文字を円記号に割り当てたんですがその中でバックスラッシュが選ばれました
というわけで日本ではバックスラッシュを表示することができませんでした
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でこれが字数文字集合が一般的になった1980年代に
ようやくその字数文字集合にバックスラッシュが入っていたおかげで
日本人もバックスラッシュを手に入れたということになります
しかしですね1995年まあこのすぐ直後ですね
大変なショックが日本を襲います
Windows 95ですね
Windows 95の標準日本語フォントは遠幅ではなかったんです
その名もMSP Gothic
MSはMicrosoft Pはプロポーショナルの意味です
遠幅フォントを前提にしたアスキーアート作者は大打撃を受けます
もちろん精神的なという意味なんですけれどもね
アルファベット文化圏の場合
遠幅フォントで見てくださいねという指定をすることで解決しました
Webページにはこれこれのフォントで表示してくださいねという
隠しメッセージを入れることができるんですが
英語に限っては遠幅フォントを指定できたので困らなかったんです
一方の日本語ユーザーたちですが
これは常識の斜め上を行く対応と言いましょうかね
MSP Gothicプロポーショナルフォントだけで完成するアスキーアートを作り始めたんです
メールで送りしているニュースレター
Steam Newsにその具体例をご紹介していますので
ぜひね確かめていただきたいと思います
MSP Gothicはプロポーショナルフォントですから
文字ごとに幅が異なります
つまりブロックを並べるように絵が描けないんです
しかし日本のアスキーアート職人たち
そこを乗り越えてプロポーショナルフォントでしかできないアスキーアートを次々と完成させてきました
それはもう曲芸のようなものなのですが
当幅フォントでは決して描けないような作品が生まれていったんです
ところでMSP Gothicはマイクロソフト社の製品です
中身は日本のリコーが作ったんですけれどもね
このMSP Gothicを持っていない人は日本のアスキーアートを見ることができません
他の日本語フォントを使うと表示が崩れてしまうんです
そこで有志たちがMSP Gothicと互換性のある日本語フォント
モナーフォントを開発しました
アスキーアートを見るためにフォントを作り直すというもはや本末転倒というか
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変態ジャパンなんですが
まあこれこそ日本の底力だと思いましょう
元々日本には原稿用紙のように両端をきちっと揃えてこそ美しいという文化があります
また漢字もひらがなも文字幅は基本同じで
文字幅を微調整するよりも縦横に文字がビシッと並んでる方が美しいと感じる習慣もありました
そこらへんも踏まえてなのでしょうか
1980年代の日本のパソコンNECのPC-901なんかも
遠幅フォントだけを採用していましたし
プロポーショナルフォントが使えることが売りだったAppleのマッキントッシュも
日本向けには遠幅フォントの大阪というフォントを採用していました
それがいつの間にかアスキーアートに限った話ではあるんですが
アルファベット文化圏は遠幅フォントに行って
日本はプロポーショナルフォントに行ったんですよね
これは文明の衝突ではなくて文明のすれ違いというふうな呼び方をしてもいいんでしょうかね
これも本当面白いですよね
最後にアスキーアートの起源を辿っていた時に出会った意外なアートをご紹介したいと思います
Wikipediaの英語版に顔文字にあたるエモーティコンというページがあるんですが
こちらを読んでいたんですね
このエモーティコンのページにアマチュアムセンのスラング
73英語の73ですねこの73が紹介されていたんです
アマチュアムセンの73は主に男性によって
手紙の締めの言葉である敬語ベストリガーズ
あるいはもうちょっと気やすくさようならの意味で使われます
日本のアマチュアムセンでも更新の終わりに73っていうことがありました
女性は73の代わりに88を使うことが多かったんですけれどもね
アメリカ映画で無線通話の終わりにオーバーって言ってるの聞いたことあるかもしれないんですが
オーバーっていうのは日本語で言うところのどうぞっていう意味なので更新の終わりに使うわけではないんです
逆にアメリカ人が通話で73使っているというシーン見たことないんですが日本人が使う73というのも
起源はアメリカなんです 73ってどういう意味だと思います?
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数字で73って書いてこれ顔文字かなと思ってもあまり顔にも見えないし
どうなんでしょうねっていうのがすごく疑問だったんです 少し話はそれますがアメリカの警察無線では
了解っていう意味で104 104ですね104というのをよく使うんですがこれ別期限なので置いておきます
この73なんですがモールス信号の時代から使われていたそうなんです
1857年にすでに使われていたという記録があるのでこれは
無線通信 グエル・マルコーニによる無線通信発明以前の優先通信の時代から使われていたんですね
wikipediaの解説はここまででどうやったら73が締めの挨拶になるのかというのを書いてなかったんです
これなんだと思います73って 僕ピコーンって閃いたんです
73モールス不合で打ってみますね
お気づきになりましたでしょうか 頭の中でこのモールス不合ってねトンとツーなんですけれどもトンを
点でツーを横棒で想像しながらもう一度聞いてみていただけますかね
どういうことかというとモールス不合で73は
ツーツートントントン少し曲がってトントントンツーツー これ英語ではトンをドットそれからツーをダッシュと言いますからダッシュダッシュドットドットドット
ドットドットドットダッシュダッシュ まあこれのビジュアルイメージをノーナに思い浮かべてほしいんですが横棒2本で点が3つ
それから点が3つで横棒2本 これあの本とか読んでると
長い文章の区切りにちょっと現れたりしませんかこれ文章区切り これ英語ではディンカスっていうそうなのですがどちらかというとチャプターディバイダーとかセクション
ディバイダーとか そんな言い方の方が通じるかもしれませんあの文章の区切りですね区切りの横線なんかに使われる記号
なんですがこれが73のモールス不合とそっくり なんですねで僕これが答えじゃないかなぁと思ってるんですつまり文章の区切りを
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アスキアート風にしたのが73なんじゃないかなと だからこれはアスキアートじゃなくてモールスアートなんじゃないかなというふうに
思っています で確かに調べていくとこのグエルマルコーニの無線通信以前の時代
モールス信号というのは耳で聞かずに紙テープに印字させていたそうなんですね 紙テープから端典ドットと頂点ダッシュが出てくるわけで
通信オペレーターはひょっとしたら通信終わりのつもりで73という 画家の署名を残したのかもしれません
ここらへんもし真相知っていらっしゃる方おられたら ぜひご一方くださいお待ちしております
というわけでこのエピソードでは音声メディアでアスキアートをご紹介するという まあかなり無謀な挑戦をしてみました
ぜひメールでお届けしているニュースレター steam ニュースの方を無料でお読み頂けますのでご登録いただいて概要欄の方にリンクを貼っておりますので確認していただければなと思います
概要欄の方には まあこの番組の冒頭でご紹介を始めたsteam な言葉の過去のシリーズも載せてリンクを貼っておりますのでね
よかったら見ていただければと思います このエピソードでご紹介したグレースホッパーなんですが日本では
コボルのおばちゃまとかコンピューターおばあちゃんとかいうニックネームの方でよく知られている方です
グレースオッパーの時代コンピューターは機械語という機械に寄り添った言葉を使わないといけないというのがまあそれが常識だったんですが
彼女はですねより人間に近い言葉英語に近い言葉でコンピュータをプログラムしようとして
コボルという言葉を考えたんですがこれ未だに使われています もう本当ねコンピュータ言語プログラミング言語の中では最初期のものです
フォートランと並んで最初期のものです 残念ながらもう亡くなりにはなっているのですが彼女の写真見るとねすごくかっこいいんですよ
なんか彼女のメッセージ僕たちも受け止めて背中押されて生きていければいいなというふうに感じています このエピソードも最後まで聞いてくださってありがとうございました
コーヒーの差し入れくださった方本当にありがとうございます steam.fm の1でした
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